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第6話

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「……あなた、まだ人なの?」

頬を打たれた莉子は、その場で呆然と立ち尽くした。いつも自分を溺愛してくれていた母が、手を上げるなんて、想像したこともなかった。

彼女は頬を押さえ、泣きそうな顔で母を見上げる。

「ママ、私、何か間違ったこと言った?どうして叩くの?

美咲を私の召使いにするって言ったの、ママでしょ。あの子が生きようが死のうが関係ないって言ったのも、ママじゃない」

その言葉を聞いた瞬間、母が必死に押し込めてきた記憶が、一気に浮かび上がった。

莉子がこの家に来た、あの日。母が私に向かって吐き捨てた言葉。すべてを、はっきりと思い出してしまった。

そして、母はようやく気づいた。莉子が私を平気で踏みにじり、侮辱できた理由は、すべて自分にあったのだと。

私を「ふさわしくない」と言ったのも、私の生死など気にしないと言ったのも、全部、自分だった。

あのときは、ただ感情に任せていただけだった。まさか、それがそのまま自分に返ってくるなんて、考えもしなかった。

母はとうとう耐えきれなくなり、その場に崩れ落ちた。頭を抱え、声を上げて泣き出す。

「美咲……私の美咲……母さんが悪かったの……

あなたは母さんの娘よ。愛さないわけがないでしょう……ただ、父さんを憎みすぎて……その憎しみを、あなたに向けてしまっただけなの……

お願い……帰ってきて。あなたがいなかったら、母さんはどうやって生きていけばいいの……」

その光景を、私は冷めた目で見下ろしていた。胸に浮かんだのは、悲しみよりも、ただの皮肉だった。

生きている間、あれほど欲しかった母の愛を、死んでから、ようやく手に入れた。

でも、お母さん。もう、何もかも遅すぎる。

やがて母は、警察に支えられながら、霊安室へと私の遺体を引き取りに行った。

潔癖症で、いつも周囲に気を遣っていた母は、漂う死臭にも構わず、まっすぐ私のもとへ駆け寄った。

白い布を勢いよく引き下ろし、両手で私の顔を包み込み、泣きながら笑う。

「美咲……私の美咲……怖がらないで。母さんが来たわよ。

目を開けて……お願い、母さんを見て……

全部、母さんが悪かったの。全部、母さんのせい……」

母の胸が張り裂けるような泣き声の中、霊安室のドアが、再び開いた。父だった。

来る途中で泣いていたのだろう。両目は赤く腫れ、いつも整えていた髪も、今は
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