Share

第12話

Author: みそ煮
last update Petsa ng paglalathala: 2026-05-09 09:54:59

目覚めたその日の夕方、由利は近くにある美容院を訪れていた。

「バッサリ切っちゃってください」

「思いきりがいいですね、お客さん」

彼女が訪れていたのは都内でも有名な美容院だ。回帰して早々、美容院へ行くだなんてと思うかもしれないが、由利にとっては大きな意味があることだった。

由利と碧斗が結婚してすぐ、二人きりで過ごしていたときのことだ。由利は正面に座る碧斗に対し、自分の髪を指で触りながら尋ねた。

『ねぇ、碧斗……私の髪、ちょっと長すぎると思わない?』

『……そうか?』

碧斗は彼女の触っている髪を見つめた。このときの由利は数年近く髪を切っておらず、腰まで伸びたスーパーロングヘアだった。毎日の手入れを欠かしていないため不潔ではないが、不便に感じることも多かった。

『こんなに長いとシャンプーだって大変だし、切ろうか悩んでいるんだけど……どっちがいいかしら?』

『……』

彼はしばらく黙り込んだあと、ゆっくりと口を開いた。

『俺は……髪が長い女の子のほうが好きだな』

『…………そう、だったんだ』

碧斗は由利から視線を逸らしてただそれだけ言った。彼がサラサラのロングヘアが好きなら、と由利は髪の手入
Patuloy na basahin ang aklat na ito nang libre
I-scan ang code upang i-download ang App
Locked Chapter

Pinakabagong kabanata

  • 愛人の死に耐えられなかった夫、お前が死ねばよかったのにと言い残し自死ー妻は回帰したー   第113話

    淳子は洋介と結婚し、第一子を無事に出産した。病院にて、出産を終えたばかりの彼女はまだ生まれて間もない由利を抱いていた。その顔は、洋介によく似ていた。淳子に似ているところはほとんどなく、誰から見ても彼の子であることが一目瞭然だった。初めての子の誕生に、洋介は大層喜んだ。「よくやった、淳子。俺たちの子ができるだなんて……嬉しいよ」「……ええ、そうね」淳子は素っ気なく返事をした。出産を終えた彼女は、洋介と違って、我が子の誕生をあまり喜んではいなかった。淳子は冷たい目で、赤子を見下ろしていた。実は、由利と名前を付けたのは彼女自身だった。なぜ、由利という名前にしたのか。特に深い意味はない。ただ、病室に百合の花が飾られていたからそれでいいかと思って由利に決めた。お腹を痛めて産んだ我が子を見てもなお、淳子は何の感情も湧き上がらなかった。いや、強いて一つだけ言うとすれば……。(……アイツに似てる、可愛くないわ)淳子がこの世で最も憎む男・夏目洋介にそっくりな顔。彼女は赤ん坊を近くにある窓から投げ飛ばしてしまいたいという欲求を何とか抑え込んだ。洋介の代わりとして、元恋人を頭に浮かべた。未だに僅かに未練が残る彼のことを考えると、少しずつ乱暴な気持ちが落ち着いて行くようだった。しかし、昔の恋人を思えば思うほど、別の感情が湧き上がる。――あぁ、あなたがこの子の父親だったらよかったのに。どうしてあなたが私の傍にいないのか。今頃他の女性と温かい家庭を築いているであろう彼に、彼女はまだ恋をしていた。彼の作り上げた幸せな家庭。想像した淳子の目から涙が溢れた。「淳子……子が生まれたことがそんなに嬉しいのか……!」彼女の目から溢れ出た涙を見た洋介は、嬉しそうに彼女を抱きしめた。本当は子供が生まれたことに対する涙ではなかったが、彼は彼女の心の内など知るはずもない。(どうして……こんなにも辛い気持ちになるのかしら……)ただ、自分が今この場所にいるのがとても辛くなった。***出産を終えてからというもの、淳子は洋介の持つ財力を使い、贅沢な暮らしを始めた。結婚当初こそ遠慮していた彼女だが、散財でもしてストレスを発散させなければ気が済まなかった。その間、由利は放置された。淳子はベビーシッターを雇い、娘の世話を全くしなかった。洋介に似た娘など顔も見たくなかったし、泣かれ

  • 愛人の死に耐えられなかった夫、お前が死ねばよかったのにと言い残し自死ー妻は回帰したー   第112話

    洋介は次第に淳子を追い詰めていた。彼女が拒否すればするほど、彼は燃え上がり、淳子は逃げ場を失った。そんな現状に、淳子も恋人も疲弊していった。そして淳子はある日の夜、同棲中だった彼に関係の断絶を突き付けられた。「ごめん……淳子……もう耐えられない……婚約はなかったことにしてくれないか」「そ、そんな……」淳子は引き留めようとしたが、恋人は聞く耳を持たず、彼女を一人置いて家を出て行った。淳子はメールを送ったが、返事は来なかった。彼女はとうとう、愛する恋人から見捨てられてしまったのだ。自分を置いて出て行った彼に対する憎しみがないわけではなかったが、彼を責めることはできなかった。彼もまた、洋介によって精神的に追い詰められていたのだ。淳子は早くに両親を亡くし、兄弟たちとも疎遠になっていた。そのせいで、彼女は一人ぼっちの辛い日々を過ごすことになった。恋人との婚約で、前まで勤務していた職場は退職してしまった。生活に困った彼女だったが、とても新しく就職活動ができるような状態ではなかった。一ヵ月経っても、恋人は帰ってこなかった。心のどこかで彼を待ち続けていた淳子だが、とうとう諦めがついた。愛する彼との幸せな未来も、思い描いていたもの全てが粉々になって崩れ落ちていく。そんな淳子の前に現れたのは、恋人ではなく、例の彼だった。「――淳子」「……夏目社長」高そうなスーツに身を包んだ洋介が、口元に笑みを浮かべながら淳子を見下ろしていた。彼は今、淳子が置かれている状況を知っている。当然だろう、そうなるように仕向けたのは紛れもなく彼なのだから。洋介は疲弊している淳子の肩に優しく手を触れた。「生活に困っているようだな、私が助けてあげようか?」「そんなこと……」言いかけた淳子は、思わず言葉を止めた。(働けない今の状況で……社長の提案を断ることはできないわ……)この男に助けられるなんて屈辱だったが、もはや他に頼る相手は残されていなかった。淳子は洋介に生活の援助をしてもらうことと引き換えに、彼の恋人となった。彼は元々遊び人ではあったが、淳子との交際を機に女遊びは落ち着いた。しかし、愛してもいない男に抱かれる日々は、彼女にとっては地獄のようだった。彼に触れられるたびに、淳子は前の恋人のことを考えることで何とか耐えていた。身体を重ねていれば、いつかは彼への憎しみ

  • 愛人の死に耐えられなかった夫、お前が死ねばよかったのにと言い残し自死ー妻は回帰したー   第111話

    「ど、どうしよう……社長が職場にまで……」「淳子……」この頃、淳子は洋介の執拗なストーカー行為に悩まされるようになった。洋介は人目を憚らずに淳子の職場にまで姿を現わし、熱烈なアプローチを始めるのだ。周囲の目がある以上、強く拒絶することもできない淳子は彼の行動に頭を抱えていた。元々、淳子は優しく穏やかな性格で、人を拒否することができなかった。(それに、あの人は本気になったら何をするかわからない……)それ以上に、彼女は洋介が傷付いてストーカー行為が過激になることを恐れていた。穏便に解決することができればいいが、洋介の淳子への気持ちはハッキリ言ってかなり重い。きっとそう簡単には解決できないだろう。「アイツ……俺の淳子になんてことを……」恋人は当然、洋介の行動に憤った。今すぐにでも洋介の前に飛び出していきそうな恋人を、淳子は必死で抑えた。「お願い、変なことはしないで。社長に目を付けられたら……あなたも無事ではいられないかもしれないわ」「淳子……」恋人が間に入ることで解決するのであれば、すぐにそうしていただろう。しかし、淳子は洋介が彼の存在など気にも留めていないことに気付いていた。恋人が出たところで、彼の行為は止まないだろう。誰から見ても、明白だった。不安げに俯く淳子を、恋人は優しく抱きしめた。「淳子……警察に行こう。アイツのストーカー行為を記録し、捕まえてもらうんだ」「……ええ、そうね。それが一番いいはずよ」困り果てた二人は、とうとう警察を頼ることにした。淳子は洋介のストーカー行動に耐えられなくなり、最寄りの警察署に駆け込んだ。警察が介入すれば、いくら洋介であろうとこれ以上変な真似はできないと思っていた。しかし、事態は思わぬ方向へと転がった。「ど、どういうことですか……!?」「ですから、私たちにできることは何もありません」淳子の悲痛な叫びを聞いてもなお、警察は動こうとしなかった。(ど、どうしてなの……!?証拠だって揃っているのに……!)淳子は恋人と協力し、洋介が彼女の周辺をうろつく瞬間を証拠として動画に収めていた。他にも彼から送られる大量のメールなど、十分すぎるくらいの証拠品を警察に提出した。しかし、それらの証拠を見てもなお、警察は事件性無しと判断した。信じられなかった、なぜこれを見ても事件ではないなどと言えるのか。「夏目社

  • 愛人の死に耐えられなかった夫、お前が死ねばよかったのにと言い残し自死ー妻は回帰したー   第110話

    淳子がいたそのレストランは、実は洋介の知り合いの社長が経営していた。そのため、彼は常連客も同然の存在。淳子はレストランの常連である彼にとって、初めて見る異質な存在だった。特別着飾っているわけでもない美しい女が、見るからに平凡そうな男と共にいる。どう見ても釣り合っていないその姿は、余計に洋介の興味を引いた。「――ちょっと、洋介ったら。何をそんなに見ているのよ?」「……いや、何でもない」洋介は当時、モデルの女性と交際していた。スタイルが良く、美しい恋人だったが、結婚までは考えていなかった。不誠実で最低だと思われるかもしれないが、何かと高価なディナーやプレゼントをねだる女に本気になれるはずがなかった。ただ、見た目が良いから付き合っていただけ。気付けば彼の視線は、目の前にいる恋人ではなく、淳子に固定されていた。「あの女……名前は何て言うんだろうか」不意打ちで見せた彼女の笑顔が、脳裏に焼き付いて離れなかった。料理が出てくるまで待っている時間も、食事を摂っている最中も、彼女のことばかりを考えていた。***その後、洋介は先に恋人を家に送り返した。なぜ一緒に帰れないのかと不満を露わにされたが、既に淳子に夢中になっていた彼にとって、見た目が良いだけの恋人などどうでもいい存在。どうしてもあの子と話したい。ここで見逃してしまったら、二度と会えないかもしれない。そのような思いが彼を突き動かした。彼は食事を終えて店を出ようとする二人に向けて、ある仕掛けをした。洋介は淳子の目の前でわざとらしく、ハンカチを落とした。床に落ちたハンカチに気付いた淳子が、洋介に声をかけた。それが最低な罠だと、彼女は知る由もなかった。「すみません、落としましたよ」「……あぁ、ありがとうございます」偶然を装い、洋介は淳子と話すことに成功した。そして彼は、何とか彼女との関わりを持とうとした。「母から貰った大切なものだったんです。後日お礼をしたいので、名前と連絡先を教えてくださいますか?」「いえ、大したことはしていませんので、気にしないでください」そのまま立ち去ろうとする淳子の腕を、洋介は掴んで引き留めた。すぐ横にいた彼女の恋人が眉をひそめたが、彼は気にしなかった。「それでは私の気が済みません。どうか、連絡先だけでも教えてくださいませんか?」「……」淳子は悩みながらも、彼

  • 愛人の死に耐えられなかった夫、お前が死ねばよかったのにと言い残し自死ー妻は回帰したー   第109話

    後に夏目社長夫人となる淳子(じゅんこ)は、元々一般家庭の生まれで、大企業の御曹司と結婚できるような家柄の人間ではなかった。そもそも彼女には結婚を約束した恋人がいたし、夏目家の御曹司とは接点すらなかった。そんな淳子が一体どのようにして、今の夫と出会い、結婚するに至ったのか。二人が結婚するまでの経緯は、実はかなり複雑だった。淳子は当時、勤めていた会社内で話題を集めていた。二十代前半だった彼女は、芸能人顔負けの輝くほどの美貌を持ち合わせていたからである。一言で言えば、今の紫苑によく似ている。そんな彼女には、婚約していた恋人がいた。恋人との付き合いは学生時代からで、何と七年にも及んでいた。彼はお金持ちでもなく、特別何かに秀でているわけでもなかったが、誰よりも優しい淳子の一番の理解者だった。結婚相手は彼以外にあり得ないと、淳子はそう思っていた。交際七年の記念日を迎えた日、淳子は彼からのプロポーズを受け入れた。あの日は人生で最も幸せな一日となり、数十年の年月が流れた今でもよく覚えている。このまま彼と結婚し、温かい家庭を築いていくのだと信じて疑わなかった。しかし、結婚を間近に、淳子はある不幸に見舞われてしまった。クリスマスの夜、淳子は恋人と共に高級フレンチレストランへと訪れていた。都内でも有名な場所で、芸能人などの富裕層が多く訪れることでも知られている。ワインの入ったグラスを片手に、淳子は微笑んだ。「こんなに良い店を用意してくれるだなんて、嬉しいわ。ありがとう」「この場所が、美しい君に相応しいと思ったんだ」恋人は特別裕福というわけではない。しかし、クリスマスくらいはと愛する彼女のために奮発したのだ。その気持ちを、淳子はしかと受け取った。(もうすぐ籍を入れる予定だし……楽しみだわ)淳子は近いうちに来るであろう恋人との幸せな未来を待ち望んでいた。しかし、魔の手は彼女に刻一刻と差し迫っていた――「式場はどこがいいかしら。ドレスはもう決めてあるのよ」「楽しみだな、君ならきっと何を着ても綺麗だろう」和気あいあいとフレンチのディナーを楽しむ淳子を、遠くからある人物がじっと見つめていた。「……何だ、あそこにいる女は」「初めて見る女性ですね。どこかの社長令嬢でしょうか?」それは、後に淳子の夫となる夏目洋介(なつめようすけ)だった。彼は初めて見る淳子の

  • 愛人の死に耐えられなかった夫、お前が死ねばよかったのにと言い残し自死ー妻は回帰したー   第108話

    その頃、由利が出て行った夏目家では。夜になっても帰ってこない由利に、母親は自身の夫を問い質した。由利は子供の頃から無断外泊も夜遊びもほとんどしたことがないほど真面目な子だった。そんな由利が何の連絡もなく家に帰ってこないのだから、驚くのも当然だろう。しかし、それは娘の身を案じる心配から来るものではない。ただ、夏目家の名前に泥を塗らないでほしいというとても親が娘に抱くようなものではない感情からだった。父は眉をひそめる母に、事の事情を説明した。「……あの子が碧斗君の実家に泊まるですって?どうして急に?」「薄井夫人が由利を誘ったそうだ。夫人は昔から由利を可愛がっていたからな」「だからといって……紫苑や碧斗君は誘わずに由利だけを招くだなんて……明らかに贔屓してるわよね、あの人」最も子供たちを贔屓しているのが自分であるということに、彼女は気付いていなかった。ただ、由利が家からいなくなると家事を手伝う人がいなくなるから困る。今日は雇っている家政婦が休みで家にいないし。「あなた、どうして許可したのよ」「……由利にも、たまにくらい息抜きさせてあげるべきだろう」「息抜き……?何のことを言って……」わけがわからないというような妻を、夫は呆れたような目で見た。この期に及んで、気が付いていないのか。「――これまで由利には、色々と苦労をかけてきたからな」「……」その言葉を最後に、彼は妻から顔を背けた。これ以上、犯した罪に気付かない彼女を視界に入れていたくはなかった。結局父親もまた、心が弱いのだ。気付いていながらも、認めたくはない。そのような感情が見て取れる。母は、そんな父の後ろ姿をただじっと見つめていた。その瞳に宿っているのは、少なくとも夫に対する愛情ではなかった。――一言で言うのならば、憎悪。「何よ……アイツ、ムカつくわ」母は誰にも聞こえないような小さな声でポツリと呟くと、そのまま近くにあったソファに腰を下ろした。ちょうど部屋に飾ってあった結婚式の写真が視界に入る。その一枚の写真に写っている二人は、若い頃の夏目夫妻だった。幸せそうに笑みを浮かべる新郎と、暗い表情の新婦。二人は正反対の表情をしていた。愛し合って結婚したとは思えないほど、新婦の顔色は悪かった。その写真に隠された真実を知っているのは、当の本人たちだけである。彼女は写真を手に取り、口

  • 愛人の死に耐えられなかった夫、お前が死ねばよかったのにと言い残し自死ー妻は回帰したー   第2話

    それから碧斗は、毎日のように紫苑のいた病室で泣き続けた。彼女がいなくなり、火葬されたあともずっと。仕事も手に付かなくなるほど毎日のように大声で泣き、隙あらば彼女の痕跡を探した。彼女が生前着ていた服を抱きしめ、服が濡れるまで泣いた。もちろん両親も深い悲しみに暮れていたが、それでも彼の絶望は異常ともいえるほどだった。この世の全てを失ったかのように、真っ暗な部屋で酒を浴びるように飲み続けた。彼女のいない世界なんて、意味がないのだろう。由利はそんな彼をただ見ていることしかできなかった。姉妹ではあるが、紫苑に似ているところなんてほとんどない由利に、彼女の代わりなんて到底務まらないからだ。そして

  • 愛人の死に耐えられなかった夫、お前が死ねばよかったのにと言い残し自死ー妻は回帰したー   第1話

    「紫苑……!紫苑……!しっかりしてくれ……そんな……どうして急に……!」水藻区(みなもく)にある大病院の一室にて。一人の男がベッドに横たわって微動だにしない女に必死の思いで呼びかけている。彼の呼びかけも虚しく、彼女はビクともしなかった。病室が静寂に包まれ、人々のすすり泣く声が耳に入る。この場にいる全員が彼女の死を悲しみ、現実を受け止めきれないでいる。そんな中、一人の女が複雑な表情で彼ら家族を見つめていた。「……」――どうして、こんなことになってしまったのか。彼女は心の中で自分自身に問いかけた。当然、答えなど出てこなかった。元より、答えられる問題ならそのように思ったりはしないだろう

  • 愛人の死に耐えられなかった夫、お前が死ねばよかったのにと言い残し自死ー妻は回帰したー   第7話

    両親、碧斗は紫苑の妊娠に大層喜んだ。このときには既に紫苑は病気を克服し、強く生き始めていた。そんな彼女の変化は、由利にとっても喜ばしいことだった。「二人とも、妊娠おめでとう」「ありがとう、姉さん」紫苑は嬉しそうに微笑んだ。まだ平らな彼女のお腹を、隣にいた碧斗がそっと撫でた。その顔はとても幸せそうで、由利は回帰してよかったと心の底から思えた。紫苑は複雑そうな目で由利を見つめた。「姉さんから祝いの言葉をもらえるとは思っていなかったから……驚いたわ」「……そんなことないわ、私は誰よりもあなたたちの愛を応援しているもの」強がりでも嘘でもない。紛れもない本心だ。由利の言葉を聞いた両親は

  • 愛人の死に耐えられなかった夫、お前が死ねばよかったのにと言い残し自死ー妻は回帰したー   第6話

    結婚してから三年が過ぎたあたりのことだった。前世で由利が妊娠したのとちょうど同じ時期。今世では由利の代わりに紫苑が彼の子を身籠った。前世と違って驚きはしなかったし、怒りすら湧いてこなかった。彼女自身も、そうなることを望んでいたからだ。このときには既に、碧斗と紫苑は不倫関係にあった。そのことに由利も薄々勘付いていた。思えば、最初から気付かなかった自分がおかしかったのだ。前世から、碧斗は看病を理由によく紫苑の部屋を訪れていた。その頻度は週に五回以上、妻である由利よりも紫苑と過ごす時間のほうが多いほどだった。由利と夜を共にするのは週に一度であるのに対し、義妹である紫苑とは異常ともいえるほど夜

Higit pang Kabanata
Galugarin at basahin ang magagandang nobela
Libreng basahin ang magagandang nobela sa GoodNovel app. I-download ang mga librong gusto mo at basahin kahit saan at anumang oras.
Libreng basahin ang mga aklat sa app
I-scan ang code para mabasa sa App
DMCA.com Protection Status