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第4話

Autor: 匿名
次に紬が目を覚ました時、頭はまだ重たいままだった。

「紬、やっと目が覚めたんだね」

紬がまぶたを持ち上げたのを見て、正人はすぐに彼女の手を取り、優しく口づけを落とした。

「お前が床に倒れた時、心臓が止まるかと思った。本当に、無事で良かった」

ビジネスの世界で恐れられている正人が、この時は震える声で話し、手のひらには冷や汗でびっしょりになった。

誰が見ても、紬に深い愛情があるように見えるだろう。

しかし、紬は顔を背け、彼から目を逸らした。

自分が助けを求めようと手を伸ばした時、正人は美羽を優先したことが信じられなかった。氷のように冷たい床に倒れた自分には、気づきもしなかったのだ。

紬のあまりに冷たい態度を見て、正人の心の中に、焦燥感のようなものが広がった。

「紬、お前も倒れていたなんて気づかなかったんだ。だから美羽を先に助けようと……」

自分が倒れていたのは、美羽からわずか1メートルの距離だった。

正人は本当に気づかなかったのだろうか?それとも美羽のことしか目に入っていなかっただけなのだろうか?

紬は正人に握られている手を引き抜き、疲れ切ったように目を閉じた。

意識が回復したばかりの体はあまりに弱くて、もはや本当のことを探る気力さえ残されていなかった。

紬が口を閉ざすと、正人は渋々切り出した。

「美羽はまだ体調が悪くて、啓太も手術を終えたばっかりなんだ。俺は……」

言葉の続きはなかったけれど、紬にはその真意が分かった。

笑わせないでくれる?

正人は自分の前にいるけれど、心はとっくの昔に美羽母子のところへ飛んでいってしまっていたようだ。

「行っていいわよ」

どのみち、もうどうでもいいことなのだ。

正人は紬の静かな横顔をしばらくじっと見つめていたが、彼女が目を瞑ったままでいるのを見て、ようやく肩の力を抜いた。

「すぐに戻るから。しっかり休んでいろ」

その「すぐ」という言葉は、7日間後を意味していた。

退院の日、紬は一人で退院手続きを済ませた。

ある病室の前を通りかった時、聞き覚えのある声に足が止まった。

「啓太、ちゃんとパパを繋ぎ止めておくのよ。これからの生活がかかっているんだから」

「でもママ、あの人はパパじゃないよ……」

紬の心臓がドキリと跳ねた。

どういうことだ?啓太は、正人は自分の父親じゃないと言っているのか?

紬は息を潜め、スマホの録音アプリを起動した。

人前で見せる善人の仮面を脱ぎ捨てた美羽が、啓太を罵った。

「何を言っているの?息子だと認めてくれれば、啓太は堂々とした宮崎家の息子なのよ。

また昔の貧しく惨めな生活に戻りたいの?啓太が良くても、ママはもう二度とごめんなんだから!」

一人の看護師が通りがかり、紬に不思議そうに声をかけた。

「すみません、何か困りごとですか?」

病室の中の声が途切れたことを察し、紬は小さく首を横に振り、急いでその場を立ち去った。

退院手続きを終え、紬は病院から帰ろうとした。

しかし、病院の入り口で二人のボディーガードに行く手を阻まれた。

「奥様、社長からお話があるようです」

紬は眉をひそめた。

この1週間、正人は顔すら見せなかったのに、急に何の用だというのか?

スマホを取り出して彼にメッセージを送ろうとした瞬間、ボディーガードがスマホを奪った。

「社長の命令です。すぐにお越しください。社長にお会いすれば理由も分かります」

二人が左右から紬の腕を固め、ほとんど力ずくで連れ去った。

馴染み深い病室の前へ辿り着いた瞬間、彼らが自分を美羽母子の病室へ連れてきていることに気づいた。

部屋に入ると――

パシッ!

美羽が、紬の頬を思いっきり叩いた。

その横には正人が立っていて、冷めた目で彼女を見下ろした。

美羽は目を真っ赤に潤ませ、悲痛な声で訴え始めた。

「奥様、私と啓太は宮崎家のことなど全く興味がないんです。ただ、啓太を無事に健康に育てたいだけなのに、どうしていつまでも啓太を追い詰めようとするのですか!?」
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