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第5話

こたか
「そう」

短く答えた。

いつか、この日が来ると分かっていた。

養母は言葉を失ったあと、問い詰めるように言った。

「『そう』って何よ。まさか、病気なのが自分じゃなくて彩花だと、最初から知ってたの?」

私は否定しなかった。

「うん。最初から知ってた」

養母はたちまち取り乱し、罵声を浴びせてきた。

「知ってたなら、どうして早く言わなかったの?わざと黙ってたんでしょう!」

私は静かに答えた。

「そっちの家のことでしょう。私は家族じゃないんだから、どうして教えなきゃいけないの?」

夜中に夢から覚め、涙で枕を濡らしたことが何度あったか分からない。

けれど、半年の旅でさまざまな景色や人に触れた今は、こんな言葉も平静に口にできた。

養母は息を詰まらせ、しばらく何も言えなかった。

「ほかに用はある?もう移動しないと」

そう言って、すぐに電話を切った。

6時間後、目的地に着いてスマホを確認すると、画面は大量の不在着信とメッセージで埋め尽くされていた。

母に折り返した。

「彩乃、どうして今まで折り返さなかったの?どれだけ心配したと思ってるの!」

焦りきった母の声が聞こえ
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  • 捨てた私に、今さら家族面ですか?   第8話

    全員の顔から血の気が引き、唇まで色を失っていた。うつむいたまま、誰一人として私と目を合わせようとしなかった。配信の視聴者数は50万人に達していた。コメントが画面を埋め尽くす勢いで、次々と流れていった。つい先ほどまで正義を振りかざして私を責めていた視聴者たちは、たちまち態度を変えた。【信じられない!ここまで露骨にひいきする家族だったなんて。育ての親が実の娘を優先するのはまだ分かるけど、実の親まで、どうして育てた娘のために自分の娘を苦しめられるの?】【本当に恥知らずな人たち。そこまで都合よく態度を変えるなら、最初から配信者を頼らなければいいのに!】【これこそ因果応報だよ。人を傷つけたら、いつか自分に返ってくるんだね】母は画面の前で涙を流し、何度も繰り返した。「ごめんなさい、彩乃。本当にごめんなさい……お母さんは……」けれど、その言葉はもう聞き飽きていた。期待するたびに、私は裏切られてきた。誰にも応えてもらえなかった子どもは、いつしか誰の答えも必要としない大人になっていた。「謝らなくていい。もう必要ないから」配信を終了し、電話番号も変えた。これで、あの人たちとは完全に縁を切る。あの日の配信は、瞬く間にSNS上で拡散された。最も反響の大きかった投稿には、100万を超える「いいね」がついた。私の境遇に、たくさんの人が心を痛めてくれた。それまで投稿してきた旅の動画を見ると、逆境の中でも前へ進み続ける姿に励まされたと言ってくれる人も少なくなかった。ほどなくしてフォロワーは一気に増え、企業案件も次々と舞い込むようになった。報酬も上がり、私は旅行系でも指折りの人気配信者になった。それでも、あの人たちは諦めなかった。養父母は裁判を起こし、私に腎臓を提供させようとした。もちろん、他人に臓器を提供する義務など法律には定められていない。訴えは退けられた。次に、彩花の治療費をすべて負担しろと要求してきた。けれど、法律上、私と彩花は他人だった。私に治療費を負担する義務はなかった。それから半年もたたないうちに、彩花は病院で亡くなった。ほどなくして、養父も尿毒症と診断された。二人の病気は、遺伝によるものだったらしい。1年もしないうちに養父も亡くなり、養母も耐えきれず、自ら命を絶った。

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    画面の向こうで、全員の顔から血の気が引いた。「何のことか分からないわ。話をそらさないでくれる?」しどろもどろになりながら、知らないふりをした。私はそれ以上追及せず、一本の動画を再生した。「覚えてなくても構わない。あのときは、きちんと動画も残したでしょう。せっかく大勢の人が見ているんだから、皆さんにも見てもらおうよ。半年前、私と彩花は一緒に検査を受けた。そのとき、彩花は異常なしで、私の検査結果には尿毒症と記載されていた。けれど、その後、病院で私たちの情報が取り違えられていたことが分かった。それから起きたのが、この動画に映っていること」あの日の映像と、契約書の内容が、配信画面にそのまま映し出された。家族は私を不要品のように押しつけ合っていた。彩花の腎臓を欲しがることは許さない。私の治療費が200万円を超えることも許さない。「お母さんたち、あのときは書面にして約束したよね。これから先、何があっても私を頼らないって。もう忘れたの?」二人の母親は真っ青になり、互いの顔を見合わせた。養母はむきになって言い返した。「あのときは、ほかにどうしようもなかったのよ。私たちだって、ごく普通の家庭なんだから、あなたの治療費まで払う余裕はなかった。少しはこっちの事情も分かってよ!」私はすぐに言葉を遮った。「じゃあ、今は?たった半年で宝くじにでも当たったの?それとも、急に大金持ちになった?どうして今は、彩花の治療費なら払えるの?」養母は怒りと動揺で全身を震わせ、何も言い返せなかった。彩花が泣きながら口を開いた。「彩乃、助けてくれないのは仕方ない。でも、飛び降りろなんて言うのはひどいよ。私にだって生きる権利がある。まだダンサーにもなってないし、家族に何一つ恩返しできてないの!」私は黙ったまま、半年間ずっと持ち歩いていたボイスレコーダーを取り出し、再生ボタンを押した。「彩花。もし病気になったのがあなただったら、この契約書に署名する?」「もちろん。みんなが大変なのは分かってるもの。私が病気になったら、すぐに飛び降りる。絶対に家族の負担にはならない」かつてそう言い切った彩花自身の声が流れた瞬間、彩花は言葉を失った。私は小さく笑った。「今のは私の言葉じゃない。彩花が自分で言ったことだよ。私が病気のときは家族のため

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