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last update Last Updated: 2025-10-06 06:00:13
 東京駅は人の流れそのものが大きな生き物みたいにうねっていた。入場切符を購入し、新幹線のりばへ。蓮司に会えると思うと、胸の高鳴りが止まらない。

 自動改札を抜けると、ホームへ吹き上げる冷たい風が頬を撫でた。掲示板には「のぞみ98号 東京」の文字、その右に17:57:の時刻。私はホームの表示を頼りに、8号車から10号車のグリーン車のあたりまで歩く。床の足元に描かれた号車番号、柱の青いプレート、緑のクローバーマーク。9号車の少し手前で立ち止まり、マフラーの端を指で整えた。手袋を外し、リップを軽く塗り直す。息が白い。

 新幹線到着のチャイムが鳴り、続いてアナウンスが流れる。

 ホームの床が、ごくごく小さく震え出す。先に風が来て、遅れて光が来る。ヘッドライトが線路の銀を走り、白い車体が音を纏って滑り込んでくる。髪がふわりと持ち上がり、瞼が一度だけ瞬いた。

 ブレーキの擦れる音、足元に伝わるわずかな揺れ。目の前でドアが開く。溢れ出す人波はみんな忙しそうで、それでもそれぞれに「おかえり」と「ただいま」を胸に抱えているのが分かる。私はその波の端に立って、背伸びをせず、ただ目を澄ませた。

 ――いた。

 降りた瞬間、肩に乗っていた緊張がすっと抜け落ちて、目尻の線がやわらぐ。私と視線が合う。彼の歩幅が、少し速くなる。私の足も、自然に前へ出た。

「――来てくれたのか」

「はい。お迎えに参りました」

 言い終えるより早く、世界が近づいた。胸の前に、ひとつ分あたたかい壁。コート越しに伝わる彼の温もりと、その奥にある確かな熱。

 ハグしようと思っていたら、向こうからハグが来た!!

 しまった。この時のシミュレーションは計算外だった!!

 どうしたらいい? 驚いて息が止まる。

「……悪い。つい」

 耳元で、低く落ちる声。ホームのざわめきが遠のいて、心臓の音だけがやけに正確に刻まれる。私は両手をそっと上げて、彼の背中に触れた。固かった息が、ふっとほどける。

「いえ。嬉しいです。夫婦ですから、なにも謝ることはありません」

 少しだけ腕の力がゆるんで、彼が私を離す。ちゃんと顔を見せてくれる。目の奥の疲れは残っているのに、その周りはあたたかい。

 夫婦を盾にすればいいことを思いついた私。賢い! これからいろいろな場面で使える。

 契約とはいえ夫婦になっていてよかった。様々な免罪符になりえるの
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