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last update Last Updated: 2025-10-18 06:00:45
 翌日。朝いちの始発に乗り込んだ。夜中のうちに大雨は去ったけれど、天気は悪く重い雲が神戸の空に広がっているため、窓の外はまだ真っ暗。昨夜の雨の名残だけがガラスに点々と残っていた。

 横並びの席、通路側の蓮司は「寝てていい」と言いながら、私の首元のスカーフを直してくれる。触れた指先が一瞬だけとどまって、昨夜の熱が胸の奥でぽっと再燃する。彼とのキスを思い出す。

(帰ったら話す――)

 その一言が、なんども頭の中を巡った。いったい何を話してくれるんだろう。

 思わず期待してしまうけれど、あまり期待して天国から地獄へ落ちるのも嫌だ。過度な期待は禁物だと思うも、あのキスの意味の答えを聞けるのだと思ったら…。ぐるぐるぐるぐる、思考が回る。

 始発ということもあり、私たちは多くを語らず、東京に着くとそのまま会社へ。コーヒーを二つ買って、無言で片方を渡してくれる蓮司に「ありがとうございます」とだけ答える。言葉にしなくても、今はそれで十分だった。

 やや遅れて出社し、ミーティングに参加。急な出張だったから仕事が溜まりまくっていて、午前は怒涛。私は現場メモを清書し、指示ポップのデータを共有し、神戸店向けのフォローアップメールを打つ。席を立つたびにブレスレットの小さな鍵が手首で揺れて、気持ちが整う。蓮司は部門横断の報告ミーティング。扉が開くたび、目だけで「大丈夫か」と聞いてくるから、目だけで「大丈夫」と返す。

 いつもの仕事、いつもの私たち。

 なのに、昨日の出来事があったから、心の深いところだけが違う。

 蓮司と、ほんとうの夫婦になれるのかな――

「午後の資料、置いときます」

「助かる」

 短い会話でも嬉しい。昼は亜由美と早めに済ませ、彼女には昨夜のことはもちろん黙っておく。言葉にした途端、どこか壊れてしまいそうで怖かったから。

 ちゃんと整ったら、決まったら、亜由美には一番に言おう。

 終業間際、内線が鳴った。受付からだ。

『御門本部長あてにご来客です。ロビーで九条家の方々がお待ちでございます』

 九条?

 どうして会社に?

「かしこまりました。伝えます」

 蓮司のデスクに行って、九条様がロビーでお待ちのようです、と伝えた。彼は端末を閉じて立ち上がった。

「ひかり、一緒に来
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