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4. 「異世界ほのぼの日記2」⑤

Author: 佐行 院
last update Last Updated: 2025-05-11 11:09:38

-⑤ 違くない?-

 好美は日本にいた頃、徒歩で通勤できる範囲に住んでいた。朝日を浴びながら散歩感覚でゆっくりと家へ帰る、帰り道の途中に「パラダイス」があるあのスーパーが建っていた。

 そこで割引の惣菜やスナック菓子を買い、それを肴に家での昼呑みを楽しんでいた。少し良い事があった時は缶ビールを1本余分に購入し堂々と呑みながら帰った。こちとら仕事帰りだ、正直朝だろうと知ったこっちゃない。

 なので車など必要なかったので免許も持っていなかった、たまに遠くに呑みに行く時は近所のバス停からバスで目的地へと向かえばよかったのだから。

 ただ今、3人は車屋の前にいる。先程通り好美は免許が無いから買っても運転など出来ないのだが。

好美「車・・・、ですか?私免許持って無いんですけど。」

渚「いや違うんだよ、この建物の地下がギルドになってんの。」

 促されるまま好美は「珠洲田自動車」へと入って行った、店主の珠洲田本人がにこやかに3人を迎えた。

珠洲田「いらっしゃいませ・・・、ん?なっちょじゃないか、まさかまた屋台を故障させたのか?」

 渚の使い方が荒いのか今年に入って拉麵屋台を5回も修理に出していた、珠洲田も呆れ顔を見せている。

渚「一昨日の今日で壊している訳がないじゃないか、この子をギルドに登録して欲しくてね。」

珠洲田「この子・・・、いらっしゃいませ。申し遅れました、私ギルドマスターの珠洲田です。ご登録で宜しいですか?」

好美「は、はい。宜しくお願いします。」

渚「スーさん、あたしと態度が偉い違うじゃないか。」

珠洲田「初めてお越しの方だぞ、緊張しているじゃないか。」

 そう言うと、珠洲田が温かな緑茶を振舞いながら説明を行い、好美は言われた通りに登録用紙への記入を進めていった。

 好美の事がタイプなのだろうか、ギルドマスターの珠洲田が珍しく自らずっと対応している。

珠洲田「因みに好美さんはどの様な商売をお考えですか?」

好美「コンビニを作ろうかと。」

珠洲田「そう言えばこの世界にはありませんでしたね、建物のご予定はどちらに?」

 好美はまだこの世界に来たばかりなので場所に全く詳しくない、その上ここでの登録を済ませた後不動産屋へと向かう予定だったので建物など探してもいない。

珠洲田「では建物が決まり次第お知らせ頂けますか、登録が必要なので。」

 そうして珠洲田自動車を後にした3人
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