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第2話

Author: 氷の如き
わがまま?

この言葉を見つめ、私はふっと笑いが零れる。

今になっても、彼は私が駄々をこねていると思っているのだ。

私は返信しない。

指で電源ボタンを長押し、画面が暗くなる。

その時、インターホンの音が響く。引越し会社の人が到着した。

私はとっくに家政婦を解雇していたので、今、この広大な家にいるのは私一人だけだ。

「お客様、こちらの箱ですか?」先頭に立つ山田という若い男の声がとてもきびきびしている。

私はうなずく。

山田は作業員たちに指示を出し、【不要品】とラベルの貼られた箱を一つひとつ運び出していく。

動作は速く、効率がいい。

私は車椅子を動かし、五年間住んだこの家を最後に見回す。

そして、持ち歩いているハンドバッグから、とっくにサインを済ませた離婚届を取り出す。

玄関で最も目立つテーブルの上に置く。

ドアを入れば、すぐ目に入る位置だ。

「行きましょう」

私は山田に向かって言って、振り返らない。

車のドアが閉まる瞬間、古守玲人とのこの五年間を、完全に後ろに閉じ込めた。

車が通りに滑り出すと、私は山田にカードを一枚手渡した。

「中に入っているお金で、長距離を走って、新車に乗り換えても十分です」

彼は呆然とする。

「お客様、これは……」

「二つお願いがあります」

私の声は静かだ。

「一つ、『不要品』とラベルの貼られた箱はすべて、焼却場に運んで、きれいさっぱり燃やしてほしい。

二つ、私を南町まで送ってほしい」

あそこは私が一度も行ったことがなく、ここから遥かに離れた小さな町だ。

私は電車にも、飛行機にも乗れない。

玲人の手腕なら、私の出発記録を調べるのは朝飯前だろう。

私は消えたい。完全に。

山田はしばらく沈黙したが、結局エンジンをかけた。

「かしこまりました」

エンジンが轟音を立てている。私たちの最初の目的地は、ごみ焼却場だ。

山田と彼の仲間は、それらの箱を巨大な焼却口に一つひとつ放り込んでいく。熱波が顔を襲う。

一つ目の箱が烈火の中で破れ、中身がむき出しになる。

あの紫檀の車椅子用テーブルだ。

続いて、あのスコットランド産のカシミアの毛布。

最後に、あの巨大なウェディング写真。

フレームが高温の中でぱちぱちと爆ぜる音を立て、砕け散る。

「お客様」

山田は目を見開き、信じられないという顔で私を見つめる。

「あんな高価なもの、よく平気で焼けるもんですね……」

燃え盛る炎を見つめる。その熱が、私の瞳に映り、一片の灼熱になる。

私は声を潜めて言う。

「捨てているのは、物じゃない。ボロボロになった私の心だ」

五年間も大切に抱きしめてきた、それから彼の手で粉々に叩きつけられた、この心だ。

どうせ、不要品だから。

車は再び走り出す。夜はさらに深まる。地平線の彼方に、かすかな雷鳴が轟く。

以前なら、こんな日は、玲人は全ての付き合いを断り、早々に家に帰ってきていたものだ。

私の車椅子の前に片膝をつき、温かい大きな手で、もう感覚のない私の足を何度もマッサージしてくれた。

「明莉、雨の日は、足がもっと痛むんじゃないか?」

「明莉、怖がらないで、僕がここにいる」

……

けれど今、彼の手は、ほかの若く生き生きとした身体を抱きしめている。

彼の優しさも、思いやりも、今はもう別人に与えられているんだ。
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