LOGIN木工ギルドの職員に詳細を話してしまうことにする。
「実は、新しいゲームを考えたのでそのゲームの説明をするにあたって木工職人の手を借りて、そのゲームの素になるパーツを作ってほしいのですが、職人の手を借りて一つ一つ丁寧に……というほどに豪華なものではないのですよ。なので、どのように注文していいものなのか迷ってしまって。それで」
「なるほど。だとすれば徒弟の出番ですかね」
「徒弟の制度があるんですか」
「ええ、木工ギルドにも、鍛冶師ギルドにも、それぞれ徒弟制度があります。あえてお弟子さんを取ってらっしゃらない親方もいますが、複数人抱え込んでどうやって育てていこうか悩んでいる親方もいらっしゃいますので、糊口をしのぐ形になるとしても、何かしら仕事を募集してる工房に引き合いがあれば……あ、モクロク親方! 」
後ろを見てふと手を振っている先を見ると、人間の親方らしい人がお供を三人連れてカウンターに寄ってきた。
「なんだい、仕事でも見つかったかい? こい
朝、いつもの日差しで目覚める。そういえば、この日差しが訪れる時間は何時なのだろう? と時空魔法で時刻を見ると、5時46分と出た。8時間ぐらいは眠れていることになっているのか、健康的でいい話だな。 今日は目覚め共にセルフィも起き上がってきた。いつもは俺より遅く起きるセルフィだが、今日はそういうわけではないらしい。起き上がると、まだ少し眠たげな表情をしているが、俺の顔を見るとのんびりと寝ぼけたままこちらに向かってくる。「おはようございます、ご主人様」「まだだいぶ眠たそうだが、昨夜は眠れなかったのか? 」「そういうわけではないですね。ただ……顔を洗えば元通りになると思いますよ」「そうか、では顔を洗って服も洗いに行こう。ついでに着替えていくか……」 俺が着替えだすと、背中を向けてセルフィも着替えだした。背中合わせに服を脱ぎ、肌着を変えて、いつもの汚れていい服に着替えると……よし、清潔魔法と洗濯板でどれだけ汚れが落ちるのか、今日はそれを試してみよう。 井戸のところまで行って、顔を洗って身支度を整えた後で、洗濯板に洗濯物をセットしてから、清潔魔法をかける。すると、皮脂汚れが浮いてきて、洗濯板から水へ汚れが移っていく。これは便利だな。 ちょいちょいと服をこするだけで清潔魔法の効果で汚れがどんどん水に移し出されていく。おっほっほ、これは気持ちいいぞ。においもとれていてくれたら完璧だが、においのほうは……鼻が慣れてしまったからな。今更自分や他人のにおいに再度気づくぐらいならにおいぐらいはまあ、残っているほうがわかりやすいだろう。 自分の洗濯が終わり、セルフィの洗濯の番になると、セルフィの洗濯物に向かって清潔魔法をかける。「これで洗濯してみな、たぶん綺麗になると思う」「本当ですか、試してみます! 」 セルフィの服と肌着……触ってないのでセーフだと思って、そのままスルーしてしまっているが、本来ならセクハラものだ。ご主人様と奴隷ということで勘弁していただき
お互い体を拭き終わって、桶をメリーさんに返しに行くついでに、井戸の水を使って帰ってきている桶を一つずつ、清潔魔法で綺麗にしながら水で洗っていく。ここで一つずつ清潔魔法を使うことで、使用回数を稼いでレベルアップに持っていけるように、というせこい稼ぎ方だ。 せこいが、綺麗になっているのは確かなのでメリーさんにとってもいいことであるはず。もしかしたら、昨日の一晩で桶が綺麗になっていて驚かれるかもしれないが、問われたときに答えようと思う。こっちから率先して広める必要もないだろうしな。 メリーさんに、桶を綺麗にしておいた、とだけ報告する。ありがとうね、と一言だけ帰ってきたが、その一言で十分だ。全身を綺麗にした後で食堂に下りて行って、リンカちゃんと親父さんに、リバーシを設置する許可と黒パンセット二つを頼む。「そのリバーシってのはなんだい」「新しい娯楽だよ。これから広まっていくはずだ。まずはお世話になってるここに一つ置かせてもらおうと思ってさ。明日には商業ギルドかどこかに置かれることになると思うんだけど、第一号をここに置かせてもらおうと思ってるんだけど……どうだろうか」「新しい遊びってことは遊び方を教える人が要るってことだが……遊び方は複雑なのか? それとも簡単なのか? 」「一応遊び方をまとめたものがある。これどおりに遊んでくれればいいって感じかな」 親父さんに説明書を渡し、代わりに黒パンセットを二つ受け取る。セルフィと食事をしている間に親父さんが説明を読み込んでいる。リンカちゃんも説明を読み出して、親父さんに質問をしながら二人で解釈を試みている。 まだリバーシセットは渡してないので、まずは説明書で理解してもらえるかどうかと、実際にプレイしてみるまではわからないところだろう。だが、説明書だけで大まかな内容を知ってもらえればそれで万歳だ。「ふむ……食事客がはけた後でなら問題なく遊べるな、試しに俺とリンカでプレイを……」「失礼、銀の卵亭であっているかな? ここでリバーシが遊べると聞いてきたんだが」
正式な文書を作って、1セットあたり銅貨3枚での取引となった。なお、補足事項として俺が受け取りに来られない際はセルフィを代理人にすることもここで明記された。セルフィがどんな立場であったとしても、セルフィが無事である限りこの金額は商業ギルドの名の下で保証されることになる。 セルフィは俺がいなくなった場合、その金額を何に使ってもいい、ということになる。セルフィ自身がまだ自由になっていない場合、その一助にすることもできるし、自由の身であってもその金額分のあがりを受け取ることでちょっとだけ人生に楽ができるようになっているはずだ。 そう頭の中で皮算用をしながら帰り道をルンルン気分で歩く俺に、今までずっと黙っていたセルフィが口を開き始める。「ご主人様はいずれ自分の国におかえりになるんですよね? あんな長い期間の契約をしてしまってよかったのですか? 」「問題ない、俺が受け取れないときはセルフィが受け取るようにしてあるからな。俺がいる間に奴隷から解放してやれるかどうかまではわからないが、少なくとも食いっぱぐれないようにはしてやるからな」「私のため……ですか? 」「そうだ。マヨの特許もそうだし、このリバーシもそうだ。すべてはセルフィにある程度困らないだけのお金を残していくことで、セルフィが楽に暮らしていけるようになるためだ」 ただ、不労所得に胡坐をかいて男に貢いだり酒を飲んで自堕落に暮らしていくセルフィ、という未来もあるかもしれないわけだが……まあ、そうなるころには俺はもういないはずだ。それまでにはセルフィも親離れをしてもらわないとな。 だが、今のセルフィを見る感じ、その心配はなさそうだな。まあ、それなりにしっかりした子だからな。きっと来年の今頃には、剣聖として大いに力を振るいながら一人か、もしくはパーティーメンバーを見繕って冒険者として力をつけていくところだろう。「私のため……私のため……」 セルフィが同じ言葉を繰り返しながら、後ろをついてくる。若干、言葉の端に嬉しそうな感情が乗っている気がする。
冒険者ギルドを後にして、続いて商業ギルドへ向かう。忘れてなかったぞ、俺。えらい。 セルフィを伴って商業ギルドへ行き、銀の卵亭に滞在しているタカナシですが、木工ギルドかモクロク親方から届け物が届いてないかと確認を取る。「こちらですね、届いておりますが……これは何でしょう? 」 目ざとい商業ギルドの職員に怪しいものを発注した、と目をつけられてしまう結果になった。「これは、新しい遊びの道具です。これから頑張って広めていこうと思っています」「ほう、遊び、ですか……ちなみに、どんなものかうかがっても? 」「いいですよ。後日モクロク親方からこれと同じものが送られてきますし、もし気に入った方がいたなら商業ギルドにもサンプルとして一つ置いてもらってもいいとは思っています。これはリバーシという遊びでして……」 カウンター嬢ともう一人応援を呼んできて、さっそく二人の対戦がはじまる。ルールブックは数があるので、今は二つとも渡して両方にルールを覚えてもらう。「なるほど、意外と簡単なルールですね。では、さっそく行かせてもらいます。黒いほうが先攻らしいのでお先にどうぞ」「では、さっそく……ここは奇をてらってここに! 」 いきなり斜めに置こうとするが、斜めにおいてもひっくり返せるコマがないのでその打ち筋はダメだ。「ひっくりかえせるコマがないのでそこにはおけないことになります。もし、盤面の進行上で何も置けない場合はパスとなって相手の手番になりますよ」「では、最初はこの四カ所しか置けないということになるのですね。しかし、その後は……なるほどなるほど」 片方はルールをもう完全に覚えたのか、俺にルールブックを突き返してさっそく先読みと相手の打ち筋に対してどうすれば自分の得になるように置けるかどうか算段を始めたらしい。「えっと……じゃあここで」「じゃあここ」「ここ」
二層から三層に下りて、コボルトファイターとコボルトスカウトを相手にする。コボルトスカウトは素早い。素早すぎてこっちの炎の球が当たらない場合は剣で追撃しなければならない。 それを確かめるためにも、まずは単独でうろついているコボルトスカウトを探さなければいけないが……その前にコボルトファイターを見つけたので早速火魔法で攻撃してみる。 炎の球はコボルトファイターの顔を焼き焦がし、その間にセルフィが首をはねて倒していく。「さすがにコボルトファイターは一撃じゃ無理か」「強さから考えると、あと2レベルぐらいは必要かもしれません。それまでに三層を卒業しているか、四層に入り込んでいる可能性が高そうですが」「うむむ……そうなると剣術レベルを上げていくか火魔法レベルを上げていくか、悩ましいところではあるな。剣術は上がったばかりだし、でも火魔法は積極的に上げていくほうが多分いろいろと便利なはずなんだよな」「ご主人様はなんとしてもお守りしますので、好きなようにされるとよろしいのです。私に任せておいてください」 セルフィがまだ小さな胸を張って大丈夫だと主張する。たしかに、剣聖様の補助があればなんとかなるような気がしてきた。ここは適度に頼って、頼り切れないときは自力で何とか頑張っていくことにしよう。「じゃあ、さっきまでと同じ流れで、一発ずつ交互に入れていく感じで行こう」「はい、それで大丈夫です。次のレベルを目指して頑張りましょう」 しばらく進むと単独のコボルトスカウトがいたので、火魔法をさっそく放つ。こっちに気づいたときにはもう火魔法がすぐ目の前まで来ていたので、コボルトスカウトはそのまま火に包まれて黒い霧になって消えた。当たれば倒せるのは間違いないらしい。 次のコボルトスカウトには気づかれた後に火魔法を打ってみたが、すんでのところで回避された。やはり、奇襲じゃないとだめらしい。「次のレベルに上がるまでコボルトスカウトに当てようとするのは悪手だな」「かもしれません。レベルが上がった後、コボルトスカウトにも当たるようになるかどう
「セルフィに出会う前に鑑定ばあさんのところで鑑定してもらって、御同輩かって言われて鑑定が最初のほうに書かれていたんで、詳しく読み込まなかった俺が悪いんだが……これを見てどう思う、って読めないんだったな」「とりあえずいっぱい書かれてることはわかります。こんなにスキル持ってる人いないかもしれないです」「うむ……とりあえず内緒にしておいて、セイケツマホウというのが清潔にしておける魔法なら、もう石鹸は要らないかもしれないな。それどころか、もしかするとセルフィの髪をツヤツヤのサラサラにしてやれるかもしれないな」「サラサラの……ツヤツヤ? 」 セルフィがそんなの知らないって顔をしている。生まれてこの方味わったことのない清潔さと髪の毛のサラツヤ具合を確かめたら、もう普通の生活には戻れなくなってしまうかもしれないな。それは危ないが、俺としても本気で綺麗にした時のセルフィの破壊力というのも見てみたくはある。「帰ったら試してみような。しかし、魔法のイメージか……妄想の力が必要ってことだよな? 」「ご主人様の言い方は非常に悪いですが、そういうことになりますね」「例えば……火、起きろ、とか」 瞬間、俺の手の中で火がボッと燃え盛り、そして消える。手に何も持ってなくてよかった。何か持ってたら燃え移るところだったな。「……こんな感じか」「みたいですね。そんなわけで、魔法を使える人は希少なので、魔法の使い方を習うのも難しいという形らしいのですが……できちゃってますね」「できちゃってるねえ。これはちょっと午後からいろいろ試してみることにするか」 それぞれの想像ができればいいなら、一つずつ試していこう。もしかしたら途中でMP的なものが尽きて気分が悪くなってしまうかもしれないが、そうなったらそこでいったんスキルの行使は止めて、普通の戦闘に戻せばいい。 さっそくスキルがどんな威力や発生をしてくれるのか、三層に行くまでにいろいろ試していくか。一層でビッグラット相手に火属性の魔法を試してみる。 頭の中でイメージして、炎の球をビッグラットに向けて撃ち放つ。目の前に魔方陣が展開され、その