LOGIN木工ギルドの職員に詳細を話してしまうことにする。
「実は、新しいゲームを考えたのでそのゲームの説明をするにあたって木工職人の手を借りて、そのゲームの素になるパーツを作ってほしいのですが、職人の手を借りて一つ一つ丁寧に……というほどに豪華なものではないのですよ。なので、どのように注文していいものなのか迷ってしまって。それで」
「なるほど。だとすれば徒弟の出番ですかね」
「徒弟の制度があるんですか」
「ええ、木工ギルドにも、鍛冶師ギルドにも、それぞれ徒弟制度があります。あえてお弟子さんを取ってらっしゃらない親方もいますが、複数人抱え込んでどうやって育てていこうか悩んでいる親方もいらっしゃいますので、糊口をしのぐ形になるとしても、何かしら仕事を募集してる工房に引き合いがあれば……あ、モクロク親方! 」
後ろを見てふと手を振っている先を見ると、人間の親方らしい人がお供を三人連れてカウンターに寄ってきた。
「なんだい、仕事でも見つかったかい? こい
昼食がまだだ。移動やこの後の仕事の手間も考えて銀の卵亭で取ることにする。久しぶりに昼食を銀の卵亭で取ることになるな。お弁当を除けばだが、普段の昼食は買い食いかお弁当だし、ここのところは外で食べることのほうが多かった。 久しぶりに昼に食堂へ入ると、昼間からそこそこにぎわっている。これもリバーシのおかげ、ということなんだろうか。「リンカちゃん、白二つね」「はい、白パンセット二つ! 今日はまだどこにもお出かけしてないんですねえ」「今一旦用事を終えて帰ってきたところだよ。今日はこれから肉集めかな」「頑張ってくださいねー」 周りを見ると、やはり食事を終えてすぐにリバーシの台に向かう人がちらほら。リバーシの台数もちゃんとあるおかげで、スムーズに新しい対戦相手を見つけることはできているらしい。むしろ、三台に増えたことで新しい対戦相手を待つ時間すらできている模様。 常に満員で順番待ちができるのはやはり昼より夜らしい。夜なら、宿に泊まる住人達もリバーシに参加しやすい。それから一仕事終えたギルド職員も、昼休憩だと仕事を抜け出すことなく堂々とプレイできる、ということだろう。少なくとも昨日の夜はそんな感じだった。 今はさすがに昼だからか、ギルド職員の姿は見かけていない。もしかしたら商人ギルドの近くで新たに店に売り込みをかけて、リバーシを置いてもらってわざわざここまで来なくてもプレイできるようにしているのかもしれないな。ずるい。 白パンセットが運ばれてきたところで、今日もありがたく食事をいただく。この白パンも安定供給されているのはヤマナリパンのおかげ。それなりに策は講じてきたのであとはうまく回ってくれるかどうかだけ。 とりあえず今は、サンプルの一枚だけが綺麗に焼きあがればそれでいいのだ。後は実際にお皿に手が届きそうになったところで枚数や物がちゃんと存在していればいい。 本当に量産する必要もないのだから、そろそろ何人ぐらい交換されそうだ、というところでヤマナリパンからデクレール親方のところへ連絡をして、それから焼き上げるのでも問題はないことになる。むしろそのほうが無駄がなく、より高級さがあっていい。
暇つぶし二日目。昨日に引き続き、デクレール親方のところへ向かう。親方はさっそく骨を焼く準備をしていた。「おはよう、昨日一晩かけて自然風で乾かしてはみたんだが、まだ濡れてるような気がするんだ」「大丈夫じゃないですかね。もろくなるまでしっかり焼き込むので。それと、今回は試験的な面も含めてなので、骨を半分原料に混ぜ込む形で行こうと思います。最良の配分がどれだけになるのかは親方任せになりますが、こっちの国では半分ほど混ぜ込むのが基本になっていましたのでそれに従おうと思います」「おう、そこは問題ない。早速加熱してもらって、焼こうと思うんだが、お願いしていいか? 」 デクレール親方が炭を持ってきたが、炭が混ざっても困るので、今回は俺が直火で焼いてみると言って、自分のレベルアップに流用させてもらうことにする。悪いな親方、金にならない分だけ経験値として自分の身に付けさせてもらうぜ。 全力で高温で焼き始める。温度が何度まで出ているのかはわからないが、少なくともライターよりは熱いつもりで出しているので、1600度ぐらいは出ていると思われる。しばらく焼いたところでハンマーで砕きながら、細かくしつつ、全体によく火が回るようにしながら均等に焼きを入れていく。 時間にして一時間ぐらいかけて火をしっかり回して、粉々になるまで細かくしながら骨を焼くと、本当にもろくなったのか、ハンマーでコリコリと叩くだけでポロポロと崩れるようになってきた。焼き具合は問題なさそうだな。 そのまま、粉にできそうな部分は親方に渡し、冷やしながらハンマーで細かく砕いてもらっていく。残りのまだ硬い部分は焼き続け、きっちり焼く。 この間、セルフィはデクレール親方と徒弟のさらに手伝いみたいな形で、食事を買いに行ったり俺の汗を拭いたり、小間使いのように動いてくれていた。火魔法を自分で扱ってるとはいえ、さすがに熱いものは熱い。「大丈夫ですか。そろそろ出来上がりそうですが、疲れていませんか」 手伝えないセルフィが仕事がなくなってあわあわしているが、気にすることはないし、朝出かけるときも、やることないから丸一日休みで好きに遊んでていいとも伝えたのだが…&he
さらに6時間煮込み、スープがいい感じに美味そうな匂いを立ち上らせてきたころ、煮込む手を止めて中から骨を取り出した。骨を洗って火魔法で引き続き乾かし、あちこちを触っては状態を確かめる。 そして、火魔法のまたレベルが上がった。豚骨スープを作るだけで火魔法のレベルを上げている男はこの世界広しと言えども俺ぐらいのものだろうな。「うん、どうやら綺麗に取れてくれたみたいですね。これなら砕きの工程に入ってもいいと思います」 脂っぽくなく、匂いこそ残っているものの、その匂いは骨に染み付いたものだから、砕いて焼いて粉にしている間に抜けていくだろう。これでやっと第一工程終了なのだから、ボーンチャイナも作り始めたころは悪戦苦闘の連続だったんだろうな、と思わされる。「で、このスープはどうするんだ? かなりうまそうな匂いだから捨てるのはもったいないと感じるんだが」 デクレール親方が気にしている。正直、俺も豚骨ラーメンが食べたくてたまらない匂いだ。この臭さがいいんだよな。「そうですね、臭み消しを入れて、パンにでも浸して食べるとかなり美味しいと思いますよ。後はミニボア肉を甘辛く作って、そこにスープをかけていただくのも悪くないですが、お勧めは麺ですね。スープにいろんな具材を入れて、麺と一緒にして食べるのがお勧めです。俺の国でも同じようなことをやってました」 昼の残りのパンを持ってくると、デクレール親方が試しに……と、白パンを浸して食べようとしていたので、アクを掬って取り出し、清潔魔法をかけた綺麗な布で軽く濾した後のスープを味わってもらうことになった。 本当ならここに浮いている背脂なんかも一緒に味わったほうがいいのだろうが、そこまで製法を確実に守って作ったスープでもないし、残骸と言えば残骸なので、美味しさは二の次みたいなところがある。「ほう……これはなかなかうまいな。これだけの出汁が出るなら、いろんな料理店でも使いだすところが出てくるかもしれないな」「でも、ここまでの味を出すのにざっと鐘一つ分かかってるんですよ。かかった時間と燃料費を考えると、ちょっと商売にはしにくいので、もうち
骨を煮込んで2時間ほど経過した。最初に強火で茹でこぼしてアクを取ったおかげで、この後味付けをしてスープとして楽しめるようにはできるはずだ。 激うま豚骨スープとまではいかないだろうが、しっかりとゼラチン質と豚骨の中の成分、骨髄のコラーゲンや脂が乳化して白濁化してクリーミーな味わいを生むはずだ。 油の甘みやアミノ酸の栄養価と、豚の味わいをしっかり感じられるうまいスープになる。後で味わってもらうのは悪くないだろうな。 途中から炭がもったいないな……とデクレール親方がぼやき始めたので、俺の火魔法で鍋を温め始める。休みだが、今日は火魔法トレーニングということで火魔法を鍛え始める。 水魔法も使ってそこそこの感じでスープの濃さを調節して、しっかり煮込んで後で仕事をした後の一杯として美味しくいただくことにしよう。豚骨ラーメンは食べられないが、スープだけでも濃ゆい、臭いところをしっかり飲んでおくのも悪くない。 ネギとショウガは朝市にも並んでいたので、臭み消しに一緒に煮込めば美味しい豚骨スープを作ることも難しくはない、というのがなかなかにいい所ではある。 ラーメンをこっちの世界でも流行らせる……レシピを売るのはマヨに続いて二件目になるか。これも商業ギルドの販路とつながりをもとに開発すれば、流行りにできるかもしれないな。何せ、ミニボアはあちこちに存在する分だけ豚骨は無限にあるしな。料理店から無料引き取りで骨を引き取ってこれば骨代はタダで回収できる。 後は小麦とかん水から作った麺をうまく作れるかどうか……ここはさすがに知識だけしかないからな。再現するには料理人を雇う必要もあるし時間がかかるだろう。こっちの世界でラーメンを作る……これは異世界チート100選からは番外編として載せられていたが、ラーメンを広めるというのも悪くない。 しばらく火魔法で鍋を熱し続けていると、頭の中でアナウンスが流れ、火魔法がレベル4になった。これでまた長持ちするようになるだろう。 ◇◆◇◆◇◆◇ 鍋を引き続きぐつぐつと煮立たせる。昼の準備と称
ヤークトさんは、一足先に店に戻っていった。次のパンを焼く時間までに戻らないといけないそうだ。そんなわけで、デクレール親方のところへ置いていかれた俺とセルフィ。 デクレール親方は土の準備をしに行ったらしく、工房の販売スペースに置いていかれることになった。さっきと同じく、親方や徒弟の作品をいろいろと見回す。陶器のベースの色は土地の土の材質で変わるんだったな。「これだけ詰め込め! 異世界に行ったときにチートできる知識100選」の中にも、強化ガラスの作り方やボーンチャイナの作り方についてのネタがあったので俺の頭の中にもしっかりインストールされている。 本当はガラス職人がいれば、確実に白いパン皿を作ることができたのだろうが、先日街巡りついでに調べたところ、どうやらこのあたりにはガラスの材料である石英の砂や珪砂の類のものが産出しないらしい。 本来ならガラスを高温で形状を決めた後、再度熱したあと、冷気で急冷して強化ガラス化することにより、白いパン皿のような強度と、内部で光を乱反射して美しい白さを保つのだが……この地域でガラス工芸を勃興させるのは難しそうである。 その点で言えば、もうオッサラー商法はある意味破綻しているのだが、ボーンチャイナをいかに安く作らせるかと、その希少性をパン屋のおまけでそれを入手できる、という面白さを少し観察してみたいといういたずら心もある。人は欲しいもののためにどこまで日常の延長戦を戦い続けるのか。 白磁は土に含まれる鉄分が少なければ少ないほど白くなるらしいが、この辺の土は……緑になるかならないか、程度には鉄分が少なめではあるらしい。惜しい、というところだろう。 ここに焼いた動物の骨の骨灰に含まれるリン酸カルシウムを混ぜ込むことによって乳白色の温かみある色合いと、陶器よりも高い強度が得られることになる。「本当にうまく行くんですかね……? 白いお皿なんて高級品ですよ? 」「やはりこの辺でも白いお皿は高級品になるのか」 セルフィに一応尋ねてみる。もしかすると知っているかもしれないから、できる限りの知識吸収はしてお
「いくつか確認しておきたいことがあります。白い皿が作れないのは土がないから、つまり白く焼くための原料が手に入らないから、ということでいいんですね? 」 適当に開いている椅子に座って、お互い話し合いをはじめる。お茶も何も出てこないが、そういうものをもらいに来たわけでもないので気にせずにおく。ちなみにセルフィは奴隷の身分で自分も座るわけには……と、立ったままだ。「そうだ、白く焼くための土が近くで取れるならその限りじゃないが、この辺ではそこの水差しみたいな碧を出すのが精いっぱい。それ以上白っぽいものとなると釉薬を使うしかないわけだが、白と言っても若干黄色味を帯びてしまう。なかなか作り出せるものじゃないし、運よくうまく行っても作れる枚数を考えたらかなりお高いものになってしまう」「ちなみに、その白の皿を一枚作るにはいくらぐらいかかるとお考えで? 」「そうだなあ……銀貨二枚ぐらいはいっちまうかなあ。ヤマナリさんところで利益をちゃんと確保しつつ、銀貨二枚のおまけをつけるにはパンを何個売れば元が取れそうなんだ? 」「うーん……一年? とてもじゃないがその間待っててくれというには値段も時間もかかりすぎる。その間につぶれてしまうのが関の山だと思う。もっと短期間で収益を上げられて、安くお皿を作る方法があればその限りじゃない。もしくは、その一年に見合うだけの高品質なものである必要があるね」 高品質か、低価格か。どっちを実現するか、というところなのかははっきりしているが、高品質過ぎてもいけないというのはわかる。つまりそれなりにお安くできなければいけないということだな。「骨って、安ければいくらで買えますか? この際牛ではなくてもイノシシ……ミニボアでもいいです」「骨なら……ゴミ捨て場に行けばいくらでもあるんじゃねえかな。何に使うんだそんなもん」 ということは、この世界には豚骨料理もないんだな。もしくは、出汁として知らないうちに使ってしまっているか、というあたりか。これならいけそうだな。「骨を焼
朝が来た。相変わらず日の差し込みやすいこの建物の一室は、俺の目を直撃するように日が入ってくるので、目覚ましとしては中々に性能がいい。 ふともう一つのベッドに目をやると、セルフィが丸くなって眠っているので、もう少し寝かせておいてやるかと一人起き出し、トイレと顔洗いを済ませる。ボットン海綿トイレにも三日目にして慣れた。二日目は気になった、服に染み付いた自分の匂いも気にならなくなった。やはりこういうところではいかに早く慣れるかが大事だ、と神崎さんも言ってたっけ。 井戸から水を汲んで顔を洗うと、口もすすいで後は磨き砂でも口に含んで歯のほうも綺麗にしておく必要があ
食事を終えて、満腹になる。結局、もも肉の茹でたやつを追加で注文して、お金は定食と合わせて銅貨30枚ということになった。いいお店を教えてくれたのでここは俺のおごりだ。「さて、今後何をしていくかだが……ダンジョンへは一度向かってみたい。ダンジョンではどういう稼ぎができるんだい? 」「では、まず説明を。ダンジョンでは、モンスターの死体が残らず消滅します。その代わり、モンスターの体内に存在する魔石が必ず落ちてきますので、それを冒険者ギルドに出すことで報酬を得られます。モンスターが強いほど魔石の質もいいものが落ちると考えてください。そし
イアンちゃんのおすすめのお店に連れて行ってもらう。だが、少し血の匂いが残っている以上、まずは身支度を整えるのが先だ。イアンちゃんも一旦血の匂いを落としてから行きたいとのことなので、家へお互い戻って体を拭いてから再合流することになり、イアンちゃんに迎えに来てもらうことになった。 セルフィと宿に戻る途中で夜の鐘が鳴る。これは急がないといけないな。急いで宿に戻って、メリーさんに湯を二人分頼む。部屋に戻ると、ベッドがもう一つ運び入れられていた。どうやらセルフィ用にもう一つ運び入れてくれたようだ。ありがたいことだな。寝床をどうしようか少し悩んでいたところだ。「私の
日が暮れる前に門まで戻ってきちんと出入りを終える。「さて、急がないとな。今日は買い取ってもらうものが昨日より多いし、夜の鐘に間に合わないかもしれないな。血抜きはしてあるからある程度はいいとして、数があるからな。できるだけ急いで買取に出さないといけない、テンポよく行こう」「はい! 」 一日体を動かしてやる気があふれているのか、セルフィが鞘に入ったままの剣をぶんぶん振り回しながら町中を進む。「まず、冒険者ギルドに向かう。そこで今日の稼ぎを換金してもらって、それからそのお金で夕食をとって、宿を取ろう…&hellip







