LOGINちゃんと日が落ちる前に南門から街中へ帰る。
「お、ちゃんと帰ってきたな、えらいぞ」
門番からはちゃんとお使いできてえらい! と褒められた。40過ぎのおっさんが、だ。でも、新人冒険者には違いないからな。言われたことをきちんと守るのも冒険者の務めなら、今日一日は立派に過ごせたということになる。
にしても、腰を痛めなくてよかったな。最近は歳のせいか、ぎっくりの気配が近寄ってくると、察知できるようになってきたが、今日は中腰仕事を半日してもいつもなら現れるであろうぎっくりの気配がかけらも来なかった。これも異世界転移特典だったりしてな。わはは。
さて、冒険者ギルドに戻って仕事の報告だ。今日の成果をきちんと提出して、その分の報酬をいただかなくてはいけない。
冒険者ギルドに戻り、カウンターへ今日の成果である薬草類とホーンラビットの死体を受付に提出する。
「はい、では鑑定していきますね。薬草類は……はい、丁寧に根っこから抜いてくれてありますね。量もそれぞれ問題ありません。ホーンラビットは……綺麗に処理してくれてありますね。ちょっと毛が血で濡れてますけど、このぐらいなら許容範囲です。五体ありますから……はい、OKです。では、ホーンラビット5体、ホルム草16束、ハププ草5束で合計銅貨228枚分になりますので……銀貨2枚、大銅貨2枚、銅貨8枚での支払いになります。問題はありますか? 」
「いえ、思ったよりお金になったなと」
「そうですね。薬草の品質が良いのと、ホーンラビットが綺麗に血抜きされてるのが高い買取料金の理由ですね。普通は適当に抜いてきていたり、毛皮がボロボロだったりでお金にならないケースがあるんですが、今回はそれらの事情は一切なし、ということでこの金額になります」
「そうですか、ではありがたく受け取ります」
食事が三食銅貨8枚として、一泊銀貨1枚だから銅貨80枚分の儲けか。6日繰り返せばショートソード代も捻出できそうだな。いや、明日は奴隷商のところへ行ってあの子を……彼女を救い出す……保護……いや、誰かの尻拭いか? 何にせよ、明日は盛大に金を使う必要がありそうだ。
しかし、安いなら安いでそんな安い生まれにしてしまって申し訳がない、と罪悪感が湧くが、あまり高くないと財布に嬉しいと思っている俺もいる。
「では、私は今日のところはこれで失礼するのです。また明日すぐに様子を見に来るので、それまでこの世界を楽しんでくださいなのです」
程よい所でイアンちゃんと別れ、なかなか難しい気持ちを胸に抱きながら銀の卵亭に戻ると、ちょうど鐘が鳴った。そういえば、この時間に体を拭くための湯を頼んでくれると都合がいいと言ってたな。急いで戻ろう。
メリーさんに湯をお願いし、部屋まで運んできてもらう。桶いっぱいの湯で銅貨2枚らしい。20円でお湯。安いか高いかは微妙なラインだが、飲み水ではなく体を拭く水として考えたらまあわからなくもない所ではあるな。ほとんどサービスみたいなものだろう。
体を拭いた後、さっぱりした気持ちで食堂へ行き、昼と同じ銅貨8枚の定食を頼む。夜のメニューは黒パンに、豆と肉のシチューらしい。シチューといっても日本食で言うところのルゥを使ったようなタイプではなく、透き通ったスープに豆と、少量の肉が入ったシンプルなもの。後はどうせ寝るだけなので、これでもまあ十分かな。
相変わらず顎になかなかのダメージを与えてくる黒パンをシチューでふやかし、これが異世界体験か……でも、こういうものを体験するのもなかなかないよな。俺一人のためにこれだけの世界を用意するなんてツアー……にしては前の客の残しものとかがあるけど。
さて、お腹をそこそこに満たしたし、体も綺麗になった。細かいことは、異世界だし気にしたら負け! 早速の一日目を終了しよう。そういえば、RMTの試験だけしてなかったな。これだけ部屋でやってしまうか。
と、一応髭を剃りたいから鏡の代わりになるようなものないかな……そうだ、水に映った自分の顔を見ながら、水面に物を落とさないようにすれば自分を見られるな。角度的にちょっと難しいが……よし、自分の顔見え……あれ、俺こんなに若々しかったっけ?
まあいいや。髭を剃ってしまおう。剃刀を借りて……あちち、ちょっと切っちゃった。やっぱりT字剃刀がないと不便だな。やはり工業製品の量産技術が欲しければ自分でチートして使えるようにしろ、ということなんだろうな。
手先の器用さなんかもそのうちレベルアップして剃刀一本ですべての身支度を完了させられるようになるかもしれないし、今日はまずその一歩ってところか。とりあえずこの傷は器用になるためへの自分への教訓だ。しっかり数日残して髭を剃るのを欠かさずやるようにしよう。
さて、身支度をし終えたところで、ろうそくをちょっと借りて、暗い中だがスキルの訓練だ。RMTというスキル、どこまでの金額が使えるようになっているかを把握しておかないとな。
……この金額は、どうやら俺の貯金と連動しているらしい。試しに10万円の資金移動を行ったら、手元に金貨がポンっと現れ、それと同時に俺の貯金金額から10万円と220円の金額が減った。ちゃんと取引手数料も取られるらしい。逆はできないのかな。試しに金貨をスキルの向こう側へと押しやってみる。
すると、10万円の入金があり、その後440円貯金が減った。どうやら、こっちの世界から現実の預金へ移動するには倍の手数料がかかるらしい。このやり取りだけで三日分の食費が飛んだ。まあ、食費は良い。その気になればあと金貨10枚ぐらいは手にすることができる、ということが分かれば十分だ。
ろうそくを返した後、ほぼ月明かりだけが頼みの中、窓を開けて空を見上げる。空には緑と赤と黄色の月が、三色綺麗に輝いていた。光の加減でそう見えているのか、実際にその色の大地をしているかまではわからないが、月が三つある地球は存在しないはずなので、ここは間違いなく異世界なのだろう。
もしくは……衛星が三つあるどこかの星の居住可能惑星にワープした……その可能性もあると言えばあるのか。しかし、人間型……ケモミミ少女もいるとはいえ、具体的になじみやすい形態になっているのを加味しても、やはり同世界別惑星よりも、異世界である可能性はぐんと近づいたわけか。
それにしても、今日は月が綺麗だな。明日も同じような顔を見せてくれるのか、それとも一日で月の満ち欠けが変わり得るのか。寝て起きて、そして明日の取引を終えて、その後、全てはわかるはずだ。
side:アザーワールド社「部長、小鳥遊さんの件ですけど」 神崎がイアンからの報告書をもとに、現地での行動をまとめた調査報告書をあげる。神崎の上司である茅野が閲覧し、渋い顔をする。「ふむ……ふむ……なるほど」 茅野は書類を一通り見終わった後、静かに調査報告書を読み終わり、神崎に向かい直し、コーヒーを一口飲むと、静かに語り始めた。「小鳥遊さんは向こうでも仕事をしっぱなしで休んでないどころか、本業以上の収入を得ている可能性がある、ということだね? 」 神崎も茅野からコーヒーを受け取り、グイッと一気に飲み干すと、ため息をつくようにはぁ……っと呼吸をしてから上司に対して口頭で報告を始める。「そういうことになります。さすがに小鳥遊さんの本業での収入について調べ上げることはプライバシーの観点から調べることはできませんが、厚労省に問い合わせて有休強制消化法案第18条第3項を理由とした、個人口座の記録の参照を厚労省に依頼し、それを元にして本業よりも稼いでいることが確認された場合、同じく9条2項の副業規定にかかるかどうかを確認する必要があります」「しかし、二週間そこそこで預金口座に振り込めるほど稼いで、それでいて生活費は現地調達。奴隷を購入してなおまだ余裕あり。奴隷と共に手数を増やして生活を自力で稼ぎ切っている……と」「そうらしいです。現地ガイドの三回目の報告書はまだ受け取ってませんが、二回目の報告書の時点でこういうことになってますから……今の段階で考えると、莫大な金額を稼いでいる可能性がある……ということになります」 茅野は腕を組みながら椅子のローラーをころころさせながら、ぐるぐるとその場で回転し始め、止まった後、神崎の顔を見たあと、下を向いて机の上に軽く突っ伏すような格好になった。「神崎くぅん、この場合どうすればいいと思う? 有給消化に来てもらってるのに有休中に働いてしまっているんだけど」「過去に同じようなケースがなか
報酬を受け取って、銀の卵亭に帰る前に少しだけ書棚に用事。時空魔法について書いてある本や冊子はないかを検索する。すると、非常に薄っぺらい”ジクウマホウノキホン”というそれっぽいものを見つけることができた。 時空魔法とは、時間と空間をある程度掌握し、使いこなすことのできる希少な魔法である。この時空魔法の使い手は非常に希少であり、存在した時点で国家の中枢機関である大知能館という名称の大学か研究機関のようなものに所属することになり、年に二回の時間合わせや、時空魔法の研究に人生を費やしてもらうことになるらしい。 詳細については今もなおもって研究中であるが、一番初歩の魔法として現在の世界時間を知ることができる、というものは共有してもいいが、それ以上の情報はここに記したり知られること自体が社会全体へのダメージになりえるので詳細を書くことはできない、とのこと。 要するに、何も教えてやれんから、知りたければ大知能館へ来い、という話なのだろう。しかし、そこへ行ったが最後死ぬまで時空魔法の研究に人生を費やされることは確実である。セルフィのこともあるし、俺がそこへ行って学ぶことは何もないだろう。 しかし、時空魔法か……名前からして時間を止めたり、空間をずらしてその隙間を利用することで攻撃に応用したりとか、そんなことは思いつく。実際にできるまでには相当量のレベルや技量、慣れが必要なのは間違いないだろう。 後は、アイテムボックスのスキルではなく、物理的にアイテムボックスとして作用させられる鞄や入れ物を作成できるのもこの魔法の応用だったりするのかもしれないな。「お探しの物は見つかりましたか? 」 後ろで剣聖の物語の絵本を読んでいたセルフィが、本を閉じるタイミングを見計らって声をかける。「残念ながら。ここでは俺の欲しい情報は手に入らないようだ。もっと大きい書棚を探すか、首都へ行くか、もしくは大知能館という場所に行けば知れるらしいが、その代わり一生その魔法の研究に費やす必要があるらしい。調べるのはここまでだな」「そうですか、残念ですね。でも、本棚二つ分しかないこの冒険者ギルドの情報の中で、ほんの少し
食事を終えて、休憩した後五層から四層へ移動して、戦闘を継続しようとしたが、セルフィから待ったがかかる。「お金稼ぎも大事ですが、お金は後でも稼げます。ここは更に確実にお金を稼げるように、自分たちの修行……つまり、剣術や火魔法のレベル上げに費やすほうが先ではないでしょうか」 ふむ。たしかに、四層よりも五層のほうが自分の経験を積み重ねるには都合がいいだろうし、その分早く剣術や剣聖のレベルも上がることになる。セルフィの言う通りかもしれないな。「じゃあ、引き続き五層で戦うか。でも、その代わり前ほど稼げないかもしれないがそれは構わんか」「構いません。急いで稼ぐ必要はない、と昨日確認したところですし、強くなることが遅くなっていくほうがこの際問題ではないでしょうか」「じゃあ、五層でもうちょっと頑張るか。今日中にもう一つか二つ、レベルを上げておきたいしな」「はいっ」 実力アップに念頭を置く、ということを確認した後、すぐにレベルアップの機会は来た。剣聖レベルと剣術レベルがそれぞれ上がり、火魔法もレベルが上がった。 どうやら使ったら使うだけレベルが上がるのが魔法で、剣術や剣聖レベルも、剣を振るだけ振った時にレベルが上がり、モンスターを相手にしている時のほうが上がり幅が大きい、ということらしい。 より強いモンスターを相手にするほうがお得なので、もう少ししたらワイルドボアを集中的に狙っていって倒す、というようなことで、金も実力も両方手に入れることができるようにはなるだろう。 ワイルドボアをメインで倒していくようなことになったら、単純計算で10倍の収入になるのだから、かなりの収入になるのは間違いない。これは皮算用がはかどるな。 よそ事を考えながら戦える程度には五層の戦闘も慣れてきた。コボルトマジシャンも高密度で威力のあるものや誘導性のある魔法などは使ってこず、純粋に一方向に飛ばす程度の簡単な魔法しか使ってこないので、盾で逸らせばそれで終わる。 面倒なのはやはりコボルトリーダーのほうだ。立派な胸当てをつけているおかげで時々攻撃を防がれることもあり、剣と盾を持っている分だけ
四層で出てくるコボルトバーサーカーとコボルトフェンサーは普通に出てくる。三層でも数回出会った。どっちも気軽に倒せるようになった相手ではあるが、盾を持つことでより安全に戦えることになった。何せ、相手の攻撃を最低でも一回は止められる。 そしてその間にこっちは一、二回攻撃することができるので、一発で倒せる相手ならそれで振らせて受け止めて、そのあいだにやり返して終わり、となる。コボルトフェンサーはもっと単純で、突き込んできた攻撃を盾で受けて外側へ弾いて、バランスを崩したところで一刀入れて終わり。 やはり、軽めとはいえ盾が一枚あるだけで随分戦術が変わるものだな。もっと早く買い入れておけばよかった。持ち運びや移動にはアイテムボックスがあるし、費用対効果はこれからきちんと出していこう。 しかし、盾がないほうがより気軽に戦えるのも事実。五層に下りてから盾を出すでもよかったが、五層のモンスターが四層に上がってきているのを確認してから盾を渡すのでは間に合わない可能性もあったからな。 でも、盾があると確実に便利であるのはわかった。今後はどうしようかな……ダンジョンで活動するときは盾を装備したまま活動して、という方法でもいいし、もしかしたらワイルドボアの突進を盾なら止められるかもしれない。 さすがにセルフィは身が軽すぎて弾き飛ばされる可能性はあるが、俺はショートソードで受け止めるよりも安全に止められる可能性が高まったか。今度ワイルドボアに出会った時に試してみよう。 四層から五層に向かい、ついに最下層に足を踏み入れる。五層にはコボルトマジシャンとコボルトリーダーが出現する。それ以外には出現しないという情報は仕入れているし、今更活性化の度合いが増して新しいモンスターが出てくることもないだろうしな。「コボルトリーダーがいると周りのモンスターが強くなるんでしたね」「ああ、だからコボルトマジシャンもただ出てくるだけじゃなく、一段階強くなって出てきているはずだ。面倒だがその分収入にはなるはずだ。真面目にやって今日も稼いで帰るぞ」「はい、でも、怪我しないのが第一ですよ」「そのためのこれだからな。しっかりやってい
どうやらあのレモンみたいな果物はビッグラットスレイヤーという俗名があるようだ。皮が分厚くビッグラットの歯でも中身まで貫くことは難しく、仮に中まで到達したとしても、強烈な酸味にビッグラットも負けるであろう……ということかららしい。 実際にぶつけたらビッグラットが死ぬであるとかそういうわけではない。もしそうなら、値段によってはビッグラットにぶつけ続けることでパナメラのダンジョンの一層は気軽に突破できそうなものではある。 さて、帰ってきてさっそくマヨづくりだ。いつも通りアイテムボックスから泡立て器を出し、綺麗に水で洗った後清潔魔法をかけて、材料にも一通り清潔魔法をかけて消毒をした後でいつもの手順で混ぜ合わせ始める。 もったりと、油以外の材料を混ぜ合わせたところでセルフィの出番。ちょっとずつ油を流し込んでもらい、その間にきっちりかき混ぜていく。油も分量をちゃんと計って買ってきたため、ちょっとずつ流し込むだけで規定の量のマヨができるように調整済みだ。「さすがに慣れてきました。結構退屈ですが、この退屈さが大事なんですよね? 」「一気に入れるとうまく混ざらないんだよ。辛抱が大事だ」「はい、ゆっくり入れていきます」 セルフィの補助もあって、すんなりとマヨづくりがうまく行き、容器いっぱいになったマヨを親父さんに渡し、今日の一つ目の仕事完了。これで数日かけて銀貨2枚分のお仕事をこなしたことになる。マヨのレシピが頭の中にあり、なおかつ商業ギルドのシノギを邪魔しない範囲での小遣い稼ぎとしては十分だろう。 俺が直接関わってるならば一店舗ぐらい……というのが商業ギルドとしても落としどころだろうから、俺個人が携わってもいいのは銀の卵亭だけということになる。それ以外はなしだ。これは宿泊サービスへのお礼みたいなものだからな。 マヨを作り終えていつもの冒険者装備に着替えた後、冒険者ギルドへ立ち寄って、パナメラのダンジョンの活性化が収束したかどうかの確認を取る。 すると、まだ活性化の最中で、五層は普段より三割増しで危険であることを教えてくれた。四層でうろつくだけでも十分かもしれないと
いつもの日差しに目は覚まされなかった。昨日はセルフィと一緒に眠ったんだったな。いつもより暖かな懐に潜り込んでいるセルフィを見て、少し苦笑い。 奴隷と主人、仲を深めたとは言え同じベッドで寝るのは少しやりすぎたかもしれない。まぁ、他の宿や遠征先で、ベッドが一つしかないときに、セルフィが床に寝る必要がないということが確認できたから良いだろう。 セルフィも起き出した俺に気づいて目を覚まし、昨日のテンションのおかしさにようやく気づいたらしい。「昨日の夜のことは忘れましょう。改めて、ご主人様の気持ちが伝わったということで」「その言い方だと何か俺がやらしいことをしたみたいに聞こえるからやめよう? 仲良く眠っただけだ、何もなかったし、何かをするつもりもない」「はい、そこは信用しています。今までいくらでもそういうことはできたはずですし」「よし、いつも通り着替えて顔を洗って身支度をして、ご飯を食べたらマヨの材料の買い出しに行くぞ」「はいっ」 井戸へ行って顔を洗って、その後いつもの肌着洗い。清潔魔法をしっかりとかけて……お、アナウンスがあった。清潔魔法のレベルが上がったらしい。 しかし、レベルが上がる原因が汚れの強さなのか回数なのかは今後調べていきたいところだな。汚れだったら相当汚れていることになる。それはちょっとへこむが、日々仕事を頑張っている証拠でもあるので一概に悪いとも言いきれないか。 セルフィの分も綺麗にすると、新品同様とまでは言わないが、ほとんど汚れのない清潔な着替えが出来上がった。時間があるならここで服を乾かすところまで行きたいが、今日は仕事があるので自然乾燥に任せることにする。 食堂へ行き、昨日の残り物でできた朝食を銅貨8枚でいただく。考えたら、残り物と昨日の食事が同じ料金というのもどうなんだ? というところだが、腹が満たされるならそれでいいし、買いに行く手間や腹が満たされるまでの時間を考慮すればちゃんとした食事ではある。 それに、下手すると昨日の夜のスープよりも具が多かったりするので、朝と言えどきっちり食べておくに越したことはない。あと、意外とみん
食事を終えた後、宿の部屋に戻る。メリーさんにはちゃんと今日から二人になるけど追加料金が必要かどうかを確認しておく。 どうやら一部屋いくらの計算らしく、よほどうるさくしたり人数を詰め込んだりしない限りは人数としてカウントしないらしい。それにセルフィはまだ子供でもあるし、子供で一人にカウントするのは問題だ、ということのようだ。ここはメリーさんの温情に感謝だな。 部屋に戻り、まだ何もない部屋に移動すると、さっそくセルフィと正面に向かって話し始める。こっちは椅子に座って、セルフィはベッドに腰かけて、足をブランブランさせながらこっちに向いて話しかけ始める。
話し合いが終わり、さっきまでいた店員を呼びに奥へ顔を出す。「すまない、話し合いが終わった。この子を買い取ることにしたい。いくらだ」「そうですか。お決めになりましたか。この子は……正直なところ性格も暗く、まだ幼いのでこれから育つ分も考えると……金貨4枚というところでしょうかね」 指を4本、差し出してきた。「ちなみになんだけど、人が一年間生活するのにいくらぐらいかかる? 」 小声でイアンちゃんに確認する。「そうですね、家がある前提だと金貨2
奴隷商で茶を出される。ちゃんと商売をしている以上飲み物に何かを混ぜられたりはしていないし、鑑定で鑑定してもただの茶葉……といってもそれなりに値段はするらしいので、これは客だ、と見込まれて出されたことになる。普通なら水か白湯、というところだろう。「さて、まずは奴隷を探しに来た理由を聞こうか」「知り合いの子が昨日奴隷として売られていたのを見た……では理由として薄いか? 」 知り合いではないし、一方的に知っているわけでもない。ただ、出自は俺と同じだろう、ということだけがわかる。そんな微妙な
翌日、朝日の出とともに目覚める。角部屋で窓にカーテンがないためだが、それにしてもまぶしい部屋だなここ。誰だこんな部屋借りたの……俺か。 二度寝を決め込もうとも考えたが、今日は大事な日だったな。これは寝てはいられないし、微妙に日当たりが良すぎて暑くもなってきそうだ。よし、起きるか。 昨日履いたパンツを、井戸の横に設置されていた、桶と洗濯板で洗う。ここで洗い物していいんだよな……? パンツだけは毎日替えないと気分悪いからな。洗ったパンツは後で干しておこう。 パンツの洗濯が終わったところで







