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第13回:奴隷少女の生きる道

Author: 大正
last update publish date: 2026-04-25 07:00:51

 奴隷商で茶を出される。ちゃんと商売をしている以上飲み物に何かを混ぜられたりはしていないし、鑑定で鑑定してもただの茶葉……といってもそれなりに値段はするらしいので、これは客だ、と見込まれて出されたことになる。普通なら水か白湯、というところだろう。

「さて、まずは奴隷を探しに来た理由を聞こうか」

「知り合いの子が昨日奴隷として売られていたのを見た……では理由として薄いか? 」

 知り合いではないし、一方的に知っているわけでもない。ただ、出自は俺と同じだろう、ということだけがわかる。そんな微妙な関係だが、知り合いということにしておいたほうがわかりやすいだろう。

「いや、よくあることだ。親類縁者が奴隷に落ちていて、救い出すために金を出し合って買い戻すなんてのは日常の内だ。それで奴隷から解放されて、一般人に戻れる奴だっている。買う側としても立派な理由だし、最も多い話ではある。知り合いなことを黙って前を通り、こんな時だけ他人のフリかと罵倒合戦になることだってしょっちゅうある。それに比べれば静かで、そしてまっとうな買い主だと思うね」

 冷静に語ってくれる。こっちが商売としては初めてなことも察せられているのだろう。奴隷として買わなくちゃ、と俺が焦っていることも考えると、多少吹っ掛けられる可能性もあるな。ある程度まではRMTで出せるので、手持ちの資金とも勘案してよく考えておこう。

「さて……では、昨日仕入れた奴隷を一通り見ていってもらおう。その中にいるんだろう? 」

「ああ、見ればわかるはずなので連れてきてほしい」

「わかった、ちょっと待っていてくれ」

 奥にいったん引っ込むと、中から幾人かの奴隷を連れてきた。奴隷といっても鎖につながれているわけではなく、どうやらシエキジュツ……使役術かな? というスキルにより行動、発言に制限が加えられた状態で存在するため、そういった物理的制約はしなくてよく、反する行動をとろうとした際には強い自己抑制が働き、それにより無理やり押さえつけられるような形で行動が制限されるらしい。

 順番に通されてくる中に、その少女はいた。程よく日に焼け褐色の肌を持つ彼女は、下を向き何かを待っているかのような暗い目で、ずっとカーペットの一点のシミを見続けるような形でその暗い表情を保っていた。

「あの子だ」

 連れられてくる子を教えてイアンちゃんにどの子を買い取ろうかとしているかを教える。イアンちゃんはその子を冷静に見定めて、その上でアドバイスをくれた。

「あの子ですか。でも、精神的に壊れかけていますね。もう少ししたら完全に壊れて、奴隷としても使い物にならなくなるかもしれませんよ。その覚悟はおありですか」

「立ち直らせてみせる。そのためにはまずは引き取る手続きをしなきゃな」

 並べられた奴隷を前に、男が値段を告げる。

「さあ、どの奴隷も金貨1枚からだ。年齢と体格、健康の良さによってはさらに値段が張る場合はあるが、底値は金貨1枚だ。まず、それを持っているかどうかから確認させてもらおう」

「なるほど、ちゃんと金はあるかどうかと、お茶の代金としては見せ金は必要だろうな」

 男に金貨1枚あることをちゃんと提示し、男は口笛を吹くと、全員にしゃべる許可を出したらしく、奴隷がそれぞれけたたましく話し始めた。

「お兄さん、あたいを買っておくれよ! なんでもするからさ! 」

「いや、俺だ、力もあるし犯罪奴隷だがもう二度と行わないと誓える! だから俺を買ってくれ! しっかり働いてみせる! 」

「……」

「あの、僕を買ってくれませんか。故郷に帰りたいんです。そのためならどんな仕事だってします。お願いします。借金奴隷ですけど、借金を返して無事に故郷へ……」

 それぞれ、理由があっての奴隷落ちということはわかった。しかし、今回の目的はひたすら無言で立ち尽くしている女の子に用事があってきたのだ。

「その子と話をさせてほしい。他はいい。その子に用事があって俺は今日ここに来た」

「……」

「おい、セルフィ。お前をご所望だ。ちゃんと話せるか? 」

「……はい」

「残りの奴隷は戻らせましょう。まずは話し合うことですな。どうやらお互いのことをまだ認識し合っていないらしいようですし、その時間はゆっくりあるでしょう」

 急に言葉遣いがまともになった。どうやらちゃんと客と認められたらしい。セルフィと呼ばれた女の子とイアンちゃんと三人、応接室に残って話を続ける。どうやらセルフィ以外の奴隷は再び口を閉じられて、元の部屋に戻されていったのだろう。

「セルフィちゃんといったね」

「……はい」

「俺は君の祖先……つまり、君の親族とつながりがある」

「……はい」

「いうなれば親類縁者、ということになる。君を買い戻す理由としては充分だ。君は犯罪奴隷かい、それとも借金奴隷かい? まずはそこから確認していこう」

「……名前は、セルフィ、です。種類は……借金奴隷です……」

「そうか。ならそれほど制約もひどくはないはずだな。犯罪奴隷は行える範囲に制限がかかるらしいし、借金奴隷なら奴隷身分からの解放もそれほど難しくないという話だしな」

「そうですね。そういう話であれば日常に戻るのも難しくないかもしれません」

 イアンちゃんに確認を取るが、そこに問題はないらしい。借金奴隷だからと言って買う側が何でもしていいわけではないらしいのは既に確認済みだ。

「とりあえず、君のことを奴隷の身分から解放するかどうかは別として、君を買い取ろうと思う。そこに問題はあるかい? 」

「私なんかで、いいんですか? 」

 セルフィは震えているのか、言葉を紡ぐのも精いっぱいといった状態だ。

「君だから買い取る。君が親類縁者だと判断できないようならそもそも出会えなかっただろうしね」

「どうやって、私が親類だとわかったのですか? お会いするのは、初めてですよね? 」

「そこは……ちょっと内緒にしたい部分だが、君がついてきてくれるかどうかで話を決めようと思う。どうするね、俺の提案に乗ってくれて、買い取られてくれるかい? 」

「タカナシさん、本当にいいんですね? 」

 イアンちゃんが最後の口出しをしてくる。

「ああ、構わない。それで俺が気持ちよく過ごせるならそれに越したことはないからな」

「ならいいです。タカナシさんが納得できる形で済ませるのも私のお仕事なのです」

「私を……買ってください。何でもします」

 ここで、セルフィちゃんが初めて、自分を買ってほしいと申し出る。その一言を待っていた。

「何でもはしなくていい。できることをやってもらう。とりあえず、価格交渉からだな」

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