ログイン30分待つことなく、武器だけ買いそろえた俺は南門へ向かった。その場で先に待っていたイアンちゃんと合流する。イアンちゃんはさっきより一枚二枚多く着込んだような服装で、頭には軽めの帽子をかぶっていた。
腰にはしっかりナイフを持ち、戦う準備は万端という感じだ。実際にはもっと重苦しい装備もできたんだろうが、薬草採取ならこのぐらいで大丈夫だろう、という感じだな。
「早かったですね。そういえば、武器も持たせずに待ち合わせに来てしまいました。今から急いで武器だけでもそろえに行きますか? 」
「いや、アイテムボックスに入れてある。この通り」
アイテムボックスから手の中に滑らかな動きでショートソードを取り出すと、それで納得したのかおおっという声を出して反応する。
「あんまり人前でアイテムボックス使いだって見せないほうがいいです。隠しておくほうがいいです」
「そうか。あんまり使う人が多くないってことだな」
「それもありますが、スリや盗みの犯人だと難癖をつけられることもありますからね。注意してください」
なるほど、俺の財布はこいつのアイテムボックスの中だ、と言いつけるわけか。そのやり口は確かに効果的だな。
「じゃあ、外に出ようか。冒険者証を見せれば通行料はいらないんだよね? 」
「はいです。私も冒険者証を持ってますから、問題なく通り抜けることができます」
南門を抜け、門を出る際に冒険者証を見せると、登録したてであることを確認される。
「日が沈んだら門は閉まるからな。それまでに帰ってくるんだぞ」
「はい、お気遣いどうも」
「新人が毎回やらかすんでな。新人を見かけたときは一声かけることになっている」
なるほどね。注意喚起ご苦労様。さて、薬草が生えているという茂みのほうまで、少しピクニックと行くか。
行くまでの道中で、冒険者のシステムについてレクチャーしてもらう。冒険者ランクはSSSからFまでの9段階あり、SSSランクには常に一つの冒険者パーティーしか到達できないという厳しい掟と、現段階ではSSSランクは空席であり、空いた椅子をめぐって今SSランクの冒険者がしのぎを削り合っていることなどを話してくれた。
競争をあおって大きなヤマを片付けさせながら、消耗もさせることで決して楽はさせないという冒険者ギルドと国家の結託が後ろに若干透けて見えるが、少なくとも1年そこらの活動でそこまでランクが上がることはないだろう。俺には関係ない話だな。
「そんなわけで、今は「ちゃ団」と「炎の妖精」が張り合っている状況なんですよ」
「なるほどなあ……と、そろそろかな? 」
俺の鑑定眼が光る。このあたりに薬草がある、ということを教えてくれている。
「たしか、半分は残せ、だっけ」
「そうです。そうすればまた取りに来る頃には育っていて、取りつくさない限りは比較的町の近くで採取を続けられることになります」
半分かあ……そこそこあちこちに生えてはいるな。鑑定スキル持ちだと、生えているのが薬草かどうかも見分けがつくので非常に便利だ。後は根っこから抜けば品質は問題ないだろう。
「これで薬草採取一束目は完了かな。さあ、もうちょっと奥のほうへ探しに行ってみよう」
「あんまり草むらに近い所に行くとホーンラビットが出てくるので注意してください。頸動脈を噛み切りに来る非常に危険なウサギさんがいます」
「それってこいつのこと? 」
体当たりしてそのまま首へ食らいつきに来ていたウサギを捕まえる。首の後ろを持っているので首筋までは届かず、じたばたともがいている。
「そうです、そいつです。たしか常設依頼で討伐も行っているはずなので、シメて血抜きをしてやればそのお肉が肉屋に買い取られて、そしていろんなお店でスープに入ってる肉スープの原材料になります」
お昼に食べた銅貨8枚のスープの中の肉がこれか。肉スープにされても銅貨8枚ってことは、こいつ自身はそれほど価値のあるモンスターではないということだろう。
ちなみに、このホーンラビットの買取価格は銅貨5枚らしい。よほどの間抜けや子供、重傷者でもない限りはホーンラビットに襲われることは少なく、さっきの俺みたいにひょいと首根っこをつかんでやれば、後は肉にされるまで心配することはないらしい。
冷静に、これは食糧なんだと自分に言い聞かせると、首筋を狙って動脈のありそうなところを切り開き、そのまま放置して血抜きをしておく。初戦闘はショートソードすら使わずに終わってしまった。ほかに何かモンスター的なものはないんだろうか。
気になったのでイアンちゃんに聞いてみることにした。
「他にモンスターとか、この辺にはいないの? 」
「そうですねえ。しいて言えばスライムですかね。薬草を食べに時々スライムが発生するので、見つけ次第駆除ってことになってます。スライムは体内で薬草を溶かして食べて、十分薬草を食べたスライムは錬金術の素材にも使われるそうです。ただ、人工生育も行われてるのでわざわざ野生のスライムを捕まえてまでやる話じゃないですね」
「じゃあ、見つけ次第倒してしまって問題ないのか……と、もう一匹ウサギが来たぞ」
今度こそは、と、ショートソードを持ち直して迎え撃つ。と言っても体格差があるし、それほど強敵というわけでもないので、下手にへっぴり腰になって腰を打って傷める、というほうがまだ可能性が高いな。
小動物らしく、まっすぐ向かってくるホーンラビットを受け止めるように中腰で迎え撃つと、首筋に一撃入れ、その傷を確かなものにするべく軽くグリグリとねじ込み、出血させる。あまりズタズタにしてしまうと、肉や毛皮としての質が落ちるだろうから丁寧に、確実に食べないであろう脳みそと血管を狙った。ショートソードでも大げさだったかもしれない。
イアンちゃんみたいに、このあたりではナイフ一本で十分だったのだ。もうちょっとケチっておくべきだったか。でもまあ、今日の上りは金貨5枚。それ以上に稼げるような話はしばらくなさそうだし、この貯金と最初に持ち込んだお金でなんとか暮らしていこう。それに明日になったらあの奴隷の子がいくらになってるかも気になる。
その後も合わせてホーンラビットを合計5体、ホルム草を16束、ハププ草を5束見つけることができた。さて、ホーンラビットは血抜きと毛皮や肉の具合で値段が差し引きされるらしく、いくらになるかで今日の稼ぎが決まるな。いくらになってくれているのやら。
引き続き四層を回る。楽にバーサーカーとフェンサーを倒す方法を見つけてからは、三層と同じぐらいのペースでモンスターを倒せている。 モンスターの生息数は少しだけ少ないが、この層でもらえる魔石が一個銅貨四枚だと考えれば、一時間に25匹倒せれば銀貨1枚分の仕事ができることになる。実際はもう少し多いので、銀貨1枚よりは稼げてるかな。「順調ですね。四層でこのまま回っていていいかもしれません」「三層でしっかり稼いだのと、これまで戦ってきた分だけレベルも上がってるしな。レベル二つ分の成長は伊達じゃないってことだな」「私も剣聖レベル……いくつなんですかね? そういえば覚えてないです」 セルフィが指で何個かを数えている。鑑定で観察し、セルフィの剣聖レベルを確認する。セルフィの剣聖レベルは6のままであっているようだった。「6で合ってるな。俺の鑑定がそう教えてくれている」「ご主人様の鑑定はレベルまで分かるのですか? 」「なんかわかるようになったらしい。ちょこちょこと鑑定使ってるから知らないうちにレベルが上がって使えるようになったのかもしれないな。鑑定もレベルがあるって話も初めて知ったが、まあ便利に使えるようになったのは間違いないな。しっかり細かく使って鑑定レベルも上げていこう」 そろそろ剣聖レベルも7になるんじゃないか? 今日中に上がる可能性は高いな。よし、まじめに戦っていくか。 この階層も他の階層と同じく、複数匹で出てくるパターンが少なくない。三匹出てくる場合はうまく二対二の状況を作ってささっと倒し、残ったもう一匹が戦いに参加する前に素早く倒す必要があるため、結構な時間勝負になる。 時間勝負になる分、素早くモンスターを倒すことになる。結果として周回効率も良くなる。二時間ほど集中して戦ったところで、セルフィの剣聖レベルが7に、そしてまた一時間ほどして俺の剣術レベルも7になった。 どうやら、剣聖レベルと俺の剣術レベルにはそれほどの経験値量の差はないらしい。火魔法をレベル3まで上げた影響は、ほぼ誤差の範囲に収まってくれているようだ。こうなったらあとは気になるのは一つ。レ
午前中めいっぱい、肩慣らしと称してコボルトスカウトとコボルトファイター相手に思い存分戦い尽くした。レベルもまた一つ上がり、これで剣術レベルが……6になったかな。 自分で自分を見て鑑定したので間違いない。セルフィは剣聖レベル6のままらしいが、6から7に上がるにはそれなりに時間がかかるらしい。俺が剣術レベル6と火魔法レベル3の間ぐらいだから……結構かかる感じか。 そういえば、いつの間にか鑑定でスキルレベルまで見られるようになっているな。これも鑑定レベルの上昇の影響とかだろうか。午前中の仕事を終えて、一層の安全地帯に戻ってそこで食事。今日は黒パンのサンドイッチだ。ちゃんと両面を軽く炙ってくれてある。 冷えたそのままのパンを硬いまま食べることはせず、アイテムボックスの効力で温かく辛うじて柔らかい食感を残しつつも、焼いた肉と野菜の味わいもそのままに食べることができている。「今日のは食べ応えがあります」「さすがに少ないと言ったら一個分多めに入れてくれるようになったみたいだ。後でお礼を言っておかないとな」「そうですね、催促したみたいでなんだか悪い気分です。でも、リバーシでお客さん読んだりマヨで儲けさせたりしてますからそこはイーブンですよね」「むしろ、マヨで儲けさせてる分だけ向こうのほうが美味しい思いをしているはずだ。その分昼食でサービスしてもらっていると思えば悪い気はしないな」「……これにもマヨが塗られているみたいですね。なんか高級っぽいお味になってますよ。酸味があって美味しいです」 焼いたパンの内側に塗ったマヨ。そしてお肉の汁とまじりあってこれがなかなかにイケている。イメージ的にはウサギ肉のマヨレタスサンドイッチなのだが、ウサギ肉に塗られたソースがまたマヨと混ざり合って美味しさを引き立て合っている。「次はどんな食べ物にするかな……」「まだ何か美味しいものが出てくるんですか? ご主人様の頭の中にはどれだけの食べ物への情熱が詰め込まれているんでしょう。楽しみです」「まあ、思いついたらちょこちょこと作って出す……程度のものかな。まあ、材料があるかどうかはわからんからな。また市場調査して作
パナメラのダンジョンの本っぽい何かを読み終わり、元の位置に戻すと冒険者ギルドを後にして、そのまま北門へ向かう。北門では今日も門番が暇そうにしつつも、まじめに出入りする人間の身分確認を行っていた。「おつとめご苦労様です」 探索者証を見せてそのまま通り抜けようとする。……が、Eランクの探索者証を見せたとたん少し顔色が変わり、こちらに少しだけ圧をかけ始める。「ん? お前たち、この前までFランクだったんじゃないか? 気をつけろよ、Eランクになってすぐに怪我をする奴が多いんだ。パナメラのダンジョンへ行くんだろうが、無理に五層へ行こうとせずに体を慣らしていくんだぞ」 普通にいいおせっかいだった。ここは素直にお礼を言っておこう。「ご忠告どうもありがとうございます、気を付けます」「うむ、無事帰って来いよ」 門番もこうやって適度にコミュニケーションを取っておかないと暇なんだろうな。それでも、誰も守っていなかったらモンスターが大発生したりした場合の対応が遅れることになる。先日のようなミニボアやワイルドボアの大発生に対応するときも必要だろう。「暇なんですかね。もしくは新人冒険者には一言かける決まりでもあるんでしょうか」「さあな。さて、三十分歩く間にミニボアを狩りながら行こう。何もしないよりは金になる」 パナメラのダンジョンまで片道30分。セルフィとのんびり話をしながら行くのも悪くないが、それでは金にならない。 それに、30分も語るほどのネタはお互いにないのはわかり切っているし、思い出話はセルフィのトラウマを刺激する可能性があるので危険。だから、モンスター退治をしているほうが合理的といえるだろう。 草原部分からちらちらと見えているミニボアに軽く水魔法や土魔法で刺激を与えてやり、こっちを向いたところでミニボアを仕留めては、アイテムボックスから半分だけ出して血抜きをしながら歩く。そしてそのうちに血抜きが終わり血が止まると、完全にアイテムボックスの中にしまい込む。 これを繰り返してミニボアをできるだけ綺麗な状態でアイテムボックスにしまい込み、冒険者ギルドに
銀の卵亭を出て、まず冒険者ギルドへ。カウンターへ行き、受付嬢へ簡単な質問をする。「パナメラのダンジョンの地図とか、出てくるモンスターの特徴を知りたいんですが、まとめてある資料みたいなものはありますか? 」 受付嬢もその手の質問には慣れているのか、すんなり頭の中から知識を披露してくれた。「二階部分の書物棚にパナメラのダンジョンという名前そのままの本がありますので、そちらを参照されると宜しいと思います。事前に知っておけば怪我のリスクも減りますし、モンスターの強さにも対応しやすくなりますからね。無謀にもいきなりダンジョンへ行ってしょんぼりして帰ってくることに比べればかなり賢い行動だと思いますよ」 笑顔でちょっとハートに刺さるセリフを言ってくる。確かにそうだが、初日二日目と二回も何の情報もなしにダンジョンに突っ込んでいったことは間違いないので言い返せない。 早速二階にある、本棚二つ分ぐらいの書棚を調べて……あった、パナメラのダンジョンとだけ、本当に書かれている簡素な本……本というより、厚紙に挟んである紙束だな。それを取り出して、破らないように丁寧に扱って読む。 待ってる間セルフィも暇だろうし、ここは図書館と違ってお静かにとも書いてないので、読み聞かせて情報を共有する。 パナメラのダンジョンがいつからあるのか、という話と、商用利用されるようになった話やダンジョンからモンスターがあふれそうになった時期があるのかどうか。それから活性化……ダンジョンが活発にモンスターを出現させる時期がいつ頃になるのかなどが記されている。 ダンジョンも活性化という、いわゆるモンスターの繁殖期みたいなものがあるんだな。最近の活性化の時期は……どっかに載ってないかな。後ろのほうにとか……お、あった。 どうやら昨年度に活性化し、その前は5年前、さらに前は10年前と、ほぼ5年おきに発生しているらしい。ということは、しばらく活性化の可能性は薄そうだ。少なくとも俺がいる間に活性化が発生することはないだろう。
「ちょっと寄り道してから帰るか」「寄り道ですか? いいですけど、あてはあるんですか? 」 セルフィに少し話をしてから商業ギルドに立ち寄ってみる。すると、商業ギルドの入り口に大きく貼り出しがしてあった。「マヨ専門店、マヨチュッチュ、本日開店! 容器持ち込みで容器代サービス! 」 ネーミングセンスぅ……商業ギルド内で適当に決めたんだろうなという気がするが、しかしマヨチュッチュしたいほどのマヨ中毒者がいた、ということにはなるか。 場所は……ちょっとだけ離れたところになるか。食品を扱う店舗に近い場所にはあるので、各種の食事店や宿屋からのアクセスは悪くない場所ではあるな。ここで今後マヨを販売していくことになるんだな。「どれ……朝早くから開いてるかどうか確認しに行こう。自分が原因でできた店だし、どのぐらいの人や人気が出てるかは気になるしな。それが自分の収入に直結するならなおさらだ」「ご主人様のマヨがもう売られているんですか……これからは毎朝作らなくても、マヨチュッチュに来るようになればマヨが気軽に買えるようになる? 」「そういうことになるな。それを確かめにお店のほうに寄ってみるんだ。もしかしたらもう並んでたりして」「どうでしょうね……昨日の鳥騎士にも来ていた通り、マヨを配っていましたから、もしかしたら話題になっているかもしれませんね」 早速商業ギルドの案内図に従って……そして、途中から列ができていたので、すぐに店の場所はわかった。なかなかの長蛇の列。そして、入れ物を持っている人たち。入れ物は千差万別だが、同じような容器を持っている人も多いので、もしかするとマヨを配った容器なのかもしれない。「多いですねー……でも、順調に進んではいますからペースは悪くなさそうですね」 並ぶ列の先を見ていくと、食品店街に近い一角にそこそこの広さの店が営業を始めていた。どうやら急ぎで店を改装して、一刻も早く食事処に
朝のぎらついた、煩わしい太陽に視線を貫かれて目が覚める。もうこの目の覚め方も慣れた。慣れてしまえば、毎朝お日様が昇るありがたさを感じようともいうものだ。 そういえば、こちらへ来てまだ雨が降ったことはないな。雨が降らない地域なのか……いや、それにしてはあんまり埃っぽくないな。今は降らない時期なのかもしれないな。 外で仕事をするにしてもダンジョンに行くにしても、晴れているほうが都合がいいのでその点は感謝はしている。おひさまありがとう。 セルフィも目を覚ましたらしく、目を軽くこすりながらくぁ……と小さくあくびをして起き上がってきた。「おはようございます……」「まだ眠たそうだな。顔を洗ってさっぱりしに行こう」「ふぁい……」 本当に眠そうだが、冷たい井戸の水で顔を洗えば気分も落ち着くだろうし、昨日してやれなかった髪の洗浄を清潔魔法でしてやることもできる。朝からちょっと冷たい思いをすることになるかもしれないが、それでしゃっきりして今日一日を過ごす必要がある。 着替えて着替えをもって井戸へ。洗濯板に洗い物を入れておくと、その間に顔を洗い、口を漱ぎ、塩と布で口の中を綺麗にしてさっぱりする。うむ、今日も一日気持ちよく過ごせそうだ。 身支度を済ませてから洗い物を始める。清潔魔法を唱えてから下着と上着を洗い始める。しかし、洗濯板って割と近代の発明品だったはずだが、この世界の文明水準からすればオーパーツなんだよな。 これも、俺以外の異世界転移者が残していった痕跡だったりするんだろうか。だとしたら……助かった、というべきだろうな。さすがに洗濯板までは思い浮かばなかった。 洗濯機と洗濯板を比較すると、洗濯板のほうが綺麗に汚れが落ちやすい部分があって近年再評価されているらしいし、頑固な汚れになりやすい血の汚れや匂いも、清潔魔法をかけながら落とすことでよりきれいになってくれるはずだ。少なくとも、汚れ以外の菌なんかは落ちるだろう。 自分の分の洗濯が終わった後、セルフ
泡立て器を使って滑らかに混ぜ込みながら、油を継ぎ足していく。おおよそ酢や卵と油の割合は5分の1ほどだ、とわかってはいるものの、実際に作った分量はレシピとして残さないといけないので、それぞれ重さや分量を計ってもらって計算してもらうことに。俺作る人。彼記録する人。なのでこっちは分量ぎりぎりまで油をちょい足ししながらマヨをひたすらかき混ぜる。「そのかき混ぜてる道具は見たことありませんね。それも新商品ですか? 」「鍛冶師のギド親方のところで作ってもらったんです。これがあるとマスタドの実をつぶすのはともかくとして、かき混ぜるのがずいぶん楽になりますから」
「では、さっそく作り方を教えていただきたいところですが……紙とペンだけあればいいですかな? 」 マルタさんが商売っ気を出し始め、レシピの継承を開始する。「それもいいですが、実際にできたものを持ってくるほうが速いと思います。店に戻って残ったマヨと……可能ならば材料を集めて実際に作ってしまうほうがより確実だとは思うのですが」「それもそうですね。では、材料とレシピを書いておいてくれますか。準備ができ次第、品物を買い集めて待っていることにいたしましょう」「あ、ではちょっと一旦銀
マルタさんは俺の言葉を飲み込むと、一口ティーを飲んで落ち着いた後、話をまとめ始めた。「タカナシ様は冒険者を続けたいのですか、それとも店を持って商人として今後やりくりを続けたいのですか、そのどちらを取るかで決まる、ということでしょうね」 ある程度将来の展望をこれまでの商売の例になぞらえて、いくらかのアドバイスをくれるようだ。「商人の道を選ばれるなら、商業ギルドとしても全面的に支援し、マヨの専門店を立ち上げることも叶うでしょう。その利益は莫大なものになるでしょうし、タカナシ様は毎日ひたすらマヨを作るだけで済みます。当然雇う従業員には奴隷契約な
商業ギルドの男の食事が終わるのを待って、親父さんに一声かけてから出かける準備をする。「親父さん、さっそく商業ギルドから接触があった。ちょっと話し合いに出向いてくるよ。早ければ数日でこの騒ぎも収まると思う。もう数日の辛抱だから我慢してくれ」「おう、せっかくの稼ぎ時だ。今のうちにしっかり働かせてもらうぜ」「今日は宿の仕事をしてる場合じゃないわね。こっちも稼がせてもらうわ」「ジャガの実蒸かすのが追い付かないですー」 さすがに三人で回していくのは難しいらしい。ふと窓の下の手元を見ると、銅貨が山のように積もり始めたよ







