ログイン午前中めいっぱい、肩慣らしと称してコボルトスカウトとコボルトファイター相手に思い存分戦い尽くした。レベルもまた一つ上がり、これで剣術レベルが……6になったかな。
自分で自分を見て鑑定したので間違いない。セルフィは剣聖レベル6のままらしいが、6から7に上がるにはそれなりに時間がかかるらしい。俺が剣術レベル6と火魔法レベル3の間ぐらいだから……結構かかる感じか。
そういえば、いつの間にか鑑定でスキルレベルまで見られるようになっているな。これも鑑定レベルの上昇の影響とかだろうか。午前中の仕事を終えて、一層の安全地帯に戻ってそこで食事。今日は黒パンのサンドイッチだ。ちゃんと両面を軽く炙ってくれてある。
冷えたそのままのパンを硬いまま食べることはせず、アイテムボックスの効力で温かく辛うじて柔らかい食感を残しつつも、焼いた肉と野菜の味わいもそのままに食べることができている。
「今日のは食べ応えがあります」
「さすがに少ないと言ったら一個分多めに入れてくれるようになったみたいだ。後でお礼を言っておかないとな」
今こそダンジョンのモンスターたちと全力で戦わなければならないのです! と言わんばかりのセルフィをなだめつつ、銀の卵亭に帰る。 たかがEランク冒険者が二人、たとえ片方が剣聖であったとしても稼働時間には限界があるし、俺も今日はしっかり働いていい心持ちであり、おまけに空腹である。せめて空腹と睡眠欲、三大欲求のうちの二つは満たしておかないと、人類として役に立ち続けることはできないだろう。 銀の卵亭に着くと同時に、夜の鐘が鳴る。時空魔法で時間を見ると、きっかり18時。どうやら、ズレはないらしいな。まだ明るい中でメリーさんからお湯をもらい、しっかり動いた分の汗を拭く前に、先にセルフィの髪を洗ってやる。 清潔魔法を髪にかけつつ、静かに湯へ頭の後ろをくぐらせて、そっと撫でてやるように髪をとかしていくと、髪から油が抜け始め、桶の表面に油が浮き始める。これは……もう一杯お湯を別でもらわなきゃいけないかな。俺も残り湯で髪を洗ってから、メリーさんにもう一杯お願いしよう。「すごいな清潔魔法。どんどん汚れが落ちていく」「そんなにですか、どれだけですか」「もう髪を洗ったら体を拭くのに使えないぐらいだ。後でもう一杯お湯をもらおう。そのぐらいは稼いできたし問題はない」「うー、気になります」 上を向いて桶の中身を覗けないのでセルフィが心配そうにしている。髪も長いし、洗うには大変だからと俺が世話しているが、こんな小さな手桶一杯分のお湯ではさすがにそれだけを洗いきることは難しかったのだろう。「こうなると、風呂にでも入りたくなってくるな。もう風呂なしの生活を始めて9日か。少しだけあこがれはあるな」「お風呂とは? 」 セルフィはお風呂を知らないらしい。説明をどうするものか少し悩んだ後、言葉をうまく紡いで説明する。「体ごと入れるぐらい広いお湯の桶のことをお風呂という。ちなみにそれが自然にできてるのが温泉だ。すっごい気持ちいいぞ」「温かい井戸に入るみたいなものですか」 広い桶をイメージするより、熱い井戸をイメージするほうがセルフィにはわかりやすかったらしい。
冒険者ギルドの中に入って呼吸を整える。さすがに若い肉体とはいえ、10キロメートル少々のマラソンは呼吸器にも来る。セルフィもかなり苦しそうにしている。12歳で剣聖とはいえ、この距離のマラソンはいかに体力があっても厳しいだろう。 でも……ダンジョン探索や肉狩りよりもいい運動になったような気はするな。しっかりとカロリーを使わされたような気分になる。「走り込んできてどうかされましたか? 何か事件でも起きましたか? 」「ちょっと……もうちょっと待って……」 呼吸を整えて、ふぅ……と一息呼吸が落ち着くまで二分ほど待ってもらい、その後で報告を始める。「パナメラのダンジョンの四層でコボルトリーダーが発生していました。本来五層じゃないと確認できないモンスターのはずなら、活性化の兆候のはずです」「……間違いありませんか? 五層に下りてしまっていたとか、そういう可能性はありますか? 」「それはないですね、逆に、コボルトバーサーカーが五層に発生するような状態が発生するならその限りではないですが」「なるほど……ちなみに、その時のバーサーカーは強かったですか? 」 一問一答形式で質問をされるので、それに返答していく。「強かったですね。私は鑑定スキルを持っているのですが、モンスターのスキルレベルも一段階高くなっている様子でした」「それは……間違いなさそうです。でもおかしいですね、パナメラのダンジョンの活性化は予定通りなら四年後に発生するはずですが、今回はなぜこんなにも短時間で活性化の予兆が現れたんでしょう? 」「さすがにそこまではわかりません。ただ、普段と違うことを感じたので道中の冒険者に伝えながら急いできたので、あったことをそのまま報告することしかできません」「わかりました。とにかく注意するよう触れ回っておくことにします。では……これは貴重な情報料ということで、
そろそろ帰り支度も始めようかという頃、モンスターがなぜか少しだけ強くなったような感覚に陥る。不思議だな? と思い、コボルトバーサーカーの鑑定を試みると、斧術のレベルが3になっていた。夜が近づくとモンスターは強くなるのかな。 でも、そんな注意書きはパナメラのダンジョンの本にはなかったな。だとしたらほかの原因で強くなった可能性があるな。モンスター同士で戦い合った、とか? しばらくその違和感をぬぐい切れず、次々にモンスターの様子を見るが、どのモンスターも強くなっている。そして、強くなったモンスターに苦戦させられつつ戦っていると、見慣れないモンスターの影を目にすることになった。 少しだけ立派な胸当てに腰に布を巻き、ショートソードよりも長い剣と盾を持つ、コボルトだ。コボルトに似合わぬ体格を持ち、俺ほどではないが十分な背丈と服装を持つコボルト。書物で見た、コボルトリーダーが四層に出てきていた。 コボルトリーダーは五層にしか出てこないはず。それが四層にまで上がってきているということは……活性化か? でも、去年活性化したばかりで、パナメラのダンジョンはほぼ五年おきにしか活性化しないダンジョンだという前情報は仕入れている。 それが今日今ここで活性化するということは、何かしらの異変が起こっている、と考えるのが正しいのだろう。冒険者ギルドに報告しないとな。「どうしますか、戦いますか」「出会った以上は戦うのが筋だろう。他にモンスターもいないし、二人でかかれば十分倒せるはずだ」 前に俺が出て、剣と盾のどちらかをふさいでいる間にセルフィがもう片方を相手にして、二人で相手にする。いくらコボルトリーダーといえど、俺とセルフィの二人がかりなら倒せないことはないはずだ。 コボルトリーダーに向けてショートソードで斬りかかりにいくと、コボルトリーダーは余裕そうな動作でこちらの武器を剣で受けた。そして、そのまま盾を俺に向かって突き出し、シールドバッシュの姿勢で俺を弾こうとする。 おそらくは、弾き飛ばした後で俺にできた隙を狙って斬り込んでくるつもりなんだろう。しかし、その隙間には今回はセルフィがいる。
引き続き四層を回る。楽にバーサーカーとフェンサーを倒す方法を見つけてからは、三層と同じぐらいのペースでモンスターを倒せている。 モンスターの生息数は少しだけ少ないが、この層でもらえる魔石が一個銅貨四枚だと考えれば、一時間に25匹倒せれば銀貨1枚分の仕事ができることになる。実際はもう少し多いので、銀貨1枚よりは稼げてるかな。「順調ですね。四層でこのまま回っていていいかもしれません」「三層でしっかり稼いだのと、これまで戦ってきた分だけレベルも上がってるしな。レベル二つ分の成長は伊達じゃないってことだな」「私も剣聖レベル……いくつなんですかね? そういえば覚えてないです」 セルフィが指で何個かを数えている。鑑定で観察し、セルフィの剣聖レベルを確認する。セルフィの剣聖レベルは6のままであっているようだった。「6で合ってるな。俺の鑑定がそう教えてくれている」「ご主人様の鑑定はレベルまで分かるのですか? 」「なんかわかるようになったらしい。ちょこちょこと鑑定使ってるから知らないうちにレベルが上がって使えるようになったのかもしれないな。鑑定もレベルがあるって話も初めて知ったが、まあ便利に使えるようになったのは間違いないな。しっかり細かく使って鑑定レベルも上げていこう」 そろそろ剣聖レベルも7になるんじゃないか? 今日中に上がる可能性は高いな。よし、まじめに戦っていくか。 この階層も他の階層と同じく、複数匹で出てくるパターンが少なくない。三匹出てくる場合はうまく二対二の状況を作ってささっと倒し、残ったもう一匹が戦いに参加する前に素早く倒す必要があるため、結構な時間勝負になる。 時間勝負になる分、素早くモンスターを倒すことになる。結果として周回効率も良くなる。二時間ほど集中して戦ったところで、セルフィの剣聖レベルが7に、そしてまた一時間ほどして俺の剣術レベルも7になった。 どうやら、剣聖レベルと俺の剣術レベルにはそれほどの経験値量の差はないらしい。火魔法をレベル3まで上げた影響は、ほぼ誤差の範囲に収まってくれているようだ。こうなったらあとは気になるのは一つ。レ
午前中めいっぱい、肩慣らしと称してコボルトスカウトとコボルトファイター相手に思い存分戦い尽くした。レベルもまた一つ上がり、これで剣術レベルが……6になったかな。 自分で自分を見て鑑定したので間違いない。セルフィは剣聖レベル6のままらしいが、6から7に上がるにはそれなりに時間がかかるらしい。俺が剣術レベル6と火魔法レベル3の間ぐらいだから……結構かかる感じか。 そういえば、いつの間にか鑑定でスキルレベルまで見られるようになっているな。これも鑑定レベルの上昇の影響とかだろうか。午前中の仕事を終えて、一層の安全地帯に戻ってそこで食事。今日は黒パンのサンドイッチだ。ちゃんと両面を軽く炙ってくれてある。 冷えたそのままのパンを硬いまま食べることはせず、アイテムボックスの効力で温かく辛うじて柔らかい食感を残しつつも、焼いた肉と野菜の味わいもそのままに食べることができている。「今日のは食べ応えがあります」「さすがに少ないと言ったら一個分多めに入れてくれるようになったみたいだ。後でお礼を言っておかないとな」「そうですね、催促したみたいでなんだか悪い気分です。でも、リバーシでお客さん読んだりマヨで儲けさせたりしてますからそこはイーブンですよね」「むしろ、マヨで儲けさせてる分だけ向こうのほうが美味しい思いをしているはずだ。その分昼食でサービスしてもらっていると思えば悪い気はしないな」「……これにもマヨが塗られているみたいですね。なんか高級っぽいお味になってますよ。酸味があって美味しいです」 焼いたパンの内側に塗ったマヨ。そしてお肉の汁とまじりあってこれがなかなかにイケている。イメージ的にはウサギ肉のマヨレタスサンドイッチなのだが、ウサギ肉に塗られたソースがまたマヨと混ざり合って美味しさを引き立て合っている。「次はどんな食べ物にするかな……」「まだ何か美味しいものが出てくるんですか? ご主人様の頭の中にはどれだけの食べ物への情熱が詰め込まれているんでしょう。楽しみです」「まあ、思いついたらちょこちょこと作って出す……程度のものかな。まあ、材料があるかどうかはわからんからな。また市場調査して作
パナメラのダンジョンの本っぽい何かを読み終わり、元の位置に戻すと冒険者ギルドを後にして、そのまま北門へ向かう。北門では今日も門番が暇そうにしつつも、まじめに出入りする人間の身分確認を行っていた。「おつとめご苦労様です」 探索者証を見せてそのまま通り抜けようとする。……が、Eランクの探索者証を見せたとたん少し顔色が変わり、こちらに少しだけ圧をかけ始める。「ん? お前たち、この前までFランクだったんじゃないか? 気をつけろよ、Eランクになってすぐに怪我をする奴が多いんだ。パナメラのダンジョンへ行くんだろうが、無理に五層へ行こうとせずに体を慣らしていくんだぞ」 普通にいいおせっかいだった。ここは素直にお礼を言っておこう。「ご忠告どうもありがとうございます、気を付けます」「うむ、無事帰って来いよ」 門番もこうやって適度にコミュニケーションを取っておかないと暇なんだろうな。それでも、誰も守っていなかったらモンスターが大発生したりした場合の対応が遅れることになる。先日のようなミニボアやワイルドボアの大発生に対応するときも必要だろう。「暇なんですかね。もしくは新人冒険者には一言かける決まりでもあるんでしょうか」「さあな。さて、三十分歩く間にミニボアを狩りながら行こう。何もしないよりは金になる」 パナメラのダンジョンまで片道30分。セルフィとのんびり話をしながら行くのも悪くないが、それでは金にならない。 それに、30分も語るほどのネタはお互いにないのはわかり切っているし、思い出話はセルフィのトラウマを刺激する可能性があるので危険。だから、モンスター退治をしているほうが合理的といえるだろう。 草原部分からちらちらと見えているミニボアに軽く水魔法や土魔法で刺激を与えてやり、こっちを向いたところでミニボアを仕留めては、アイテムボックスから半分だけ出して血抜きをしながら歩く。そしてそのうちに血抜きが終わり血が止まると、完全にアイテムボックスの中にしまい込む。 これを繰り返してミニボアをできるだけ綺麗な状態でアイテムボックスにしまい込み、冒険者ギルドに
銅貨90枚分の支払いをして、木工ギルドにさよならを告げる。親方が作る分は、いざ売れた時に商業ギルドと直接交渉して決めるらしいので、俺が発注したことにはならないらしい。とりあえず、ゲームの遊び方の説明書が必要だな。同じものを三枚用意する必要があるだろう。帰ったら紙に書いて説明書を作るか。セルフィにも文字を覚える練習にもなるだろうしな。 さて、戻るか。今日は一日良く休んだ。明日は何をしようかな……と、銀の卵亭に戻ると、セルフィはお休み中だった。よく寝ている。寝る子は育つというし、寝ている姿はかわいい剣聖様だ。さて、寝ている間にリバーシのルールを書
「さて……休みにふさわしい豪勢な昼食を食べに行こう。お金はさっきもらったから、今なら店ごと買えそうなぐらいだぞ」「そこまでですか! 」「セルフィ二人分ぐらい儲けたからな。マヨのおかげでセルフィも救われたようなもんだ」「私二人よりマヨのほうが価値があると言われているように感じて少しなんだか微妙な気分です……」「まあ、そのおかげで今日の財布には余裕がある。仕事もしてないのに人の手伝いをして右から左へ商品を流しただけで大金貨1枚の儲けだ。さあ、何を食べたい? なんでもいいぞ」
泡立て器を使って滑らかに混ぜ込みながら、油を継ぎ足していく。おおよそ酢や卵と油の割合は5分の1ほどだ、とわかってはいるものの、実際に作った分量はレシピとして残さないといけないので、それぞれ重さや分量を計ってもらって計算してもらうことに。俺作る人。彼記録する人。なのでこっちは分量ぎりぎりまで油をちょい足ししながらマヨをひたすらかき混ぜる。「そのかき混ぜてる道具は見たことありませんね。それも新商品ですか? 」「鍛冶師のギド親方のところで作ってもらったんです。これがあるとマスタドの実をつぶすのはともかくとして、かき混ぜるのがずいぶん楽になりますから」
マルタさんは俺の言葉を飲み込むと、一口ティーを飲んで落ち着いた後、話をまとめ始めた。「タカナシ様は冒険者を続けたいのですか、それとも店を持って商人として今後やりくりを続けたいのですか、そのどちらを取るかで決まる、ということでしょうね」 ある程度将来の展望をこれまでの商売の例になぞらえて、いくらかのアドバイスをくれるようだ。「商人の道を選ばれるなら、商業ギルドとしても全面的に支援し、マヨの専門店を立ち上げることも叶うでしょう。その利益は莫大なものになるでしょうし、タカナシ様は毎日ひたすらマヨを作るだけで済みます。当然雇う従業員には奴隷契約な







