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第25話:ちょい苦戦

Author: 大正
last update publish date: 2026-05-07 07:00:06

 コボルトファイターは武器も立派な割に動きのほうがついてこれてない。それが分かっただけでも儲けだ。もし、こちらのほうが確実に早く動けるならば一方的にボコることができるので美味しいモンスターだと言えるだろう。

 だが、コボルトスカウトは斥候と名前がついている以上、素早いモンスターである可能性が高い。ナイフも持っているようだし、それだけ危険であるかもしれない。苦手なのはこっちかもしれないな。

 しばらくコボルトファイターを倒して三層をうろうろしていると、コボルトと同じぐらいの大きさでナイフを持った、コボルトっぽいものがタタタッと駆け寄ってきた。自然に出てきたので普通に見逃しそうになったが、こいつはモンスターだな。

 これがコボルトスカウトか。確かに素早い動きをしてくるモンスターであることに違いはないだろう。そのまま近寄られてすれ違いざまに切りつけられるところだった。危ない危ない。

「こいつ……環境に溶け込んでいるな」

 試しにショートソードを振ってみるが、ナイフに阻まれる。コボルトファイターよりやはり幾分か動きが早い。

「むむむ……戦いにくいぞ」

 ショートソードを突き入れるが、なかなか当たらず再三躱され、やっとのことで一撃を入れる。しかし、コボルトスカウトはその分体が弱くできているのか、一撃入れただけで黒い霧に変わっていった。コボルトよりも弱いかもしれない。でも、戦闘力はコボルト以上だったな。

「やりにくいぞ、こいつは」

「もっと素早く動けばいいんですよ。がんばってください」

 セルフィがちょっとだけ無茶を言う。剣聖さまレベル2だと今のでも十分ゆっくりに見えるらしい。コボルトファイターとコボルトスカウトが今の俺たちのぎりぎり余裕で戦える範囲だ、ということだろうか。ここより下はさらに厳しいし、Fランクならパーティーで四層まで、ということなので、二人っきりの俺たちには三層でもちょいと厳しめなのかもしれない。

「よし。今日はここで鍛えていくか。これ以上厳しい所で戦っても効率が悪いだけだ。ちょい厳しいか、ちょい楽ぐらいなところで数をこなしていくほうが大切だし、収入になる。あんまり上の階層で戦ってても回数の割に収入が寂しい、ということにもなりかねないし、ここで何とか戦えるならここでしっかり稼いでいこう」

「そうですね、ご主人様にお付き合いします。次にレベルが上がったらまた考えるということで」

「そういうことでよろしく! 早速……コボルトスカウトか」

「まずは苦手意識を取り去るところが大事かもしれません」

 ◇◆◇◆◇◆◇

 しばらく三層で戦い続け、コボルトファイターのほうはかなり楽に戦える勝ち筋が見えてきた。こうなると、後はコボルトスカウトといかにして戦っていくかが問題になる。結局頑張って追いついて倒す、という脚力と瞬発力に全振りした体の動かし方になったが、40代の体ならまだしも、20代のこの体なら多少の無理も効く。もし明日筋肉痛になったらという不安もない。

 なんて素晴らしい世界なんだ……ぎっくりへの配慮や頭皮へのダメージを気にしなくていいのは非常に助かる。さて、ところで今どのぐらいの時間なんだろう。ダンジョンへもぐると時間の感覚がなくなるから困るな。腹時計に聞くしかないのが仕方ないところだ。

 今日は少なめのご飯にたっぷりの運動だから、普段よりちょっと早めに腹時計が動き出すかもしれない。早めに動いて早めに気が付く。町まで歩いて30分あるし、そのぐらいでちょうどいいんじゃないだろうか。

「時計がないと不便だな。せめて太陽の傾きぐらいは気にしたいところだが……ここじゃ無理だな」

「時計なんて高級品、持ってる人なんてまずいませんよ。あの服屋さんぐらいじゃないですかね、持ってるとしても」

 サイバルさんは確かに持っていても不思議ではないな。それだけの事業を手掛けているんだし、違和感なく懐から時計を取り出していそうだ。

「さて、そろそろ早いけど帰るか。なんか腹減ってきちゃった。お昼が少なめなのもあったけど、移動時間を考えたら早めの撤収でいいんじゃないか? 」

「そうかもしれません。私はご主人様にお付き合いいたします」

「じゃあ、帰ろう。今日もいっぱい戦ったし、むしろ数だけなら過去一頑張ったかもしれない。コボルトファイター30匹にコボルトスカウト12匹、これだけで銀貨1枚ちょっとになるなら、ダンジョンで稼ぐのも悪くないってことになる。やっぱりダンジョンは稼げるのかな」

「かもしれません。ダンジョンに潜る人が減ると魔石の供給源がなくなって町も商売がしにくくなりますからね」

「その辺がまだよくわかってないんだよな。今日の夜にイアンちゃんも見に来るって話してたし、その時にゆっくり話を聞かせてもらうことにするか」

 帰り道を急ぐ。急ぐ深い理由はないが、もしも外に出た時もう暗かった場合、日暮れまでに戻るという約束を破ってしまうことになる。それは非常にまずいし、暗い中帰るのは足元が見えなくて危ないかもしれない。月が出ていたらまだマシだが、月の出ない夜だと普通に迷いそうだ。これから何か時間が計れるような……そんなスキルはないのかな。

 今度探してみるか。もしかしたら身につくかもしれないし、神崎さんも自分で身に付けられるスキルもあると言っていた。24時間で……とはいかなくても、12時間、6時間、日の出てる間、とそれぞれ段階を刻んで学べるかもしれない。日の出とともに起きてきているのだから、体になじませていくことで人間時計、みたいなスキルを学べるかもしれない。

 急いでダンジョンを出て確認すると、日は傾き、いい感じの時間になっていた。

「おお、悪くない時間に出てこれたな。もうちょっと遅くてもよかったが、ゆっくり歩いて帰ってギルドによって魔石を現金にしてもらって、それから宿に帰って一息ついたらちょうどお湯をもらう時間にちょうど良さそうだ」

「ですねえ。今日はお疲れさまでした」

「お疲れ様、セルフィもよく頑張ったな」

 頭を撫でてやる。気持ちよさそうにむふーっと息を吐きながら、その手に気持ちよさそうに肌を寄せる。しかし、昨日の今日で仲良くなりすぎじゃないか? 俺とセルフィ。二日前は目のハイライトがなくなっていた子がこうだぞ? 何かセルフィの琴線に触れるようなことをしていたのかもしれないな。

 とりあえず、町まで三十分。道中にミニボアでも居たら狩って帰るか。血抜き作業は町に戻ってからやることにすれば、減額こそされるものの買取拒否ということもないだろうしな。

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