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第23話:コボルトに無双

Author: 大正
last update publish date: 2026-05-05 07:00:11

 次のコボルトを探す。探さなくてもその辺にうろうろしているが、この中で一番近いコボルトを探す。できれば同時に三匹以上の集団には出会いたくない。こっちは二人、同時に相手にできるのは二匹が限界だ。

 もっとこなれてくれば複数モンスターにも対処できるようになるかもしれないが、こちとら戦闘はまだ三日目なんだ。そこまで手慣れたベテランでもないし、もしかしたら戦闘開始三日目でダンジョンに潜るというのも無謀な話だったのかもしれない。しかし、実際にできてしまっていることを考えたら決して無謀な策ということでもないらしい。

 さて、俺の番だ。コボルトは決して大きい体格をしていないが、十分素早く、俺が目で追いきれないというほどではないが体が追い付かない可能性はある。その場合無事でいられるんだろうか。

 一匹がこちらに気づく。走り込んできたコボルトの棍棒をショートソードで受ける。さすがに棍棒とはいえ刃が欠けることはなく、そのままスッと刃が入るが、途中で止まってしまう。しかし、刃が中途半端に入ってしまったおかげで抜けなくなった。コボルトに蹴りを入れ、棍棒ごとこちら側に引き寄せる。

 蹴り飛ばされたコボルトは離れて転がっていく。その間に棍棒からショートソードを無理やり引き抜いて、その辺へペイッと捨てる。これで相手は噛みつくしかなくなったな。棍棒をいまさら拾いに行くでもなく、やはりそのまま噛みつきに来た。ショートソードを前に構え、コボルトの攻撃に備える。

 コボルトを誘い込むように近づくと、そのまま噛みつきに来た顎に一撃いいのを入れると、ガフッとよだれを吐き出しながら顎を切られる。そのまま踏み込んで更にもう一撃、首を落とすような動きでショートソードを一気に振り抜く。すると、意外とあっさりと首を落とすことができた。

 どうやらそれほど強くはないらしいというのは本当らしい。俺でもなんとかなるか。数さえ同時に来なければ何とかなりそうだな。

 魔石を拾ってアイテムボックスに入れて、ふぅ……と一息つく。初めて戦うモンスターは緊張するなあ。

「大丈夫そうですか? ご主人様」

「ああ、初めて戦うモンスターだから緊張したけど、何とかなりそうだ」

「なら安心です。このぐらいのモンスターなら問題なく戦えそうですから、そのまま戦っていきましょう」

 二層はまだまだ空いている。朝一から入り込んでくるという冒険者がいないのか、まだ準備時間だからなのかはわからないが、まだまだモンスターの密度はまだ高い。今のうちに数をこなして戦い続けるほうがいいだろうな。

 ◇◆◇◆◇◆◇

 コボルトとの戦闘は問題なく進み、二層の地図も出来上がってきた。この調子なら三層までは行けるかもしれないな。と、そろそろお腹が空いてきたな。場所を開けてそこで食べるか、一度一層まで戻って安全なところで食べるかしたほうがいいだろう。

 ダンジョンのモンスターの良い所は、血が出ないことだ。イアンちゃんの事前説明によると、どうやらダンジョンの魔素で構成されているモンスターはダメージを与えても全身が魔素でできているため黒い粒子に変換されていくだけで後に何も残さず、倒した肉体はおろか、与えたダメージや生理現象などもすべてダンジョンに再利用されていくらしい。

 そのため、ダンジョン内は見た目以上に清潔であり、ダンジョン内で怪我をしてもそこから病気になったり……つまり破傷風なんかの心配はない、ということらしい。気にせず怪我ができるということでもあるが、怪我はできるだけしたくないからな。安全安全に行こうと思う。

「よし、一回一層に戻って食事にしよう。そこまでカツカツの時間で過ごしているわけじゃないし、腹時計に従って安全なところで食事をすることにしよう」

「そうですね、お腹もすいてきましたし、安全なところへ戻るのが一番ですよね」

 セルフィと一層に戻り、一層の途中まで引き返したところで、先ほどの入り口近くの人がいっぱいいるあたりまで戻る。他のパーティーも昼食時間らしく、食事をとっているパーティーや干し肉をひたすらかじっている人、金属の容器に入ったスープみたいなものを魔法か何かで温めている姿などが見える。

 アイテムボックスからこっそり食事を出すと、セルフィに渡してさっそく食事を始める。ほかのパーティーからは少し離れているが、ここも安全地帯のはずなのでモンスターが出る心配はないだろう。

 ソースを絡めた肉を野菜で挟んで、両面を焼いたパンで挟んだだけの簡単サンドイッチだが、これでも十分にお腹が膨れるだけの肉の量もパンの量もある。コンビニサンドイッチ二袋ぐらいの量はあるだろう。味は単調だが、これだけあれば十分腹は満たせるな。

 後は竹のような入れ物に入ったスープも付属しているが、こっちは具なしの本当にスープだけ、という感じだ。おそらくはのどに物が詰まらないための、という配慮らしい。これで昼飯と同じ価格なのはかなりお得感がすごい。

「そういえば、どのぐらい倒しましたか? アイテムボックスからなら何が何個入ってるか見えるんですよね? 」

「そうだな、コボルトの魔石が45個、ビッグラットの魔石が8個かな。コボルトの魔石がいくらになるかはわからないが、ビッグラットの魔石が一つ銅貨1枚だとして……銅貨98枚分の仕事はできたような気がするな」

「なんだ、兄さんと嬢ちゃんはダンジョンは初めてか? 」

 ふと気が付くと、物知り顔の男が一人水を飲んでいる。ここでは水も貴重だろう。しっかりと持ち込んでいる様子を見ると、パーティーメンバーに水を生み出せる魔法使いか何かがいるのかもしれない。

「ええ、初めてなんですよ。コボルトの魔石って買い取りいくらになってるんですか? 」

「兄さんの予想通りだ。コボルトの魔石は銅貨2枚、ビッグラットが1枚だ。三層に下りれば銅貨3枚で交換してくれる、コボルトファイターやコボルトスカウトが出てくるな。どっちも刃物を持ってるから注意したほうがいい」

「あんた優しいな、こんなちぐはぐコンビにまで情報を教えてくれるなんて」

「冒険者をやめて初心者育成に力を入れてるんだ。人死にや怪我は少ないほうがいいからな。二人の得物なら十分戦えるだろうが、三層に行くなら注意したほうがいい。あと、このパナメラのダンジョンは五階層までしかないが、五層にはボスもでるし、どんなに深く潜ったとしても四層までにしときな。これは大先輩からの忠告だからな」

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