LOGINラムーさんを手伝い、木箱に入りきるだけの泡立て器を持って移動しようとしていたので、アイテムボックスに入れて両手をフリーにしてあげると、めちゃくちゃ喜んでいた。
「ありがとうございます。本当に、アイテムボックスまで持ってるなんてタカナシ様はすごい方ですね」
「どうせお店の見物へ行くついでなので。向こうで渡せばいいんですよね? 」
「はい、よろしくお願いします。あーこれで肩が楽になった」
「しかし、人数分の泡立て器ですか……必要なんですか? 」
「ええ、従業員全員分必要でしょう? 」
人数分? という引っ掛かりはあるが、まあとりあえず持っていくとしよう。現金なもので、急にリラックスし始めたラムーさんに少し苦笑いしてしまう。ラムーさんの後に続き商業ギルドから少し離れて太い幹線道路を進むと、すぐに列を発見することができた。これがマヨの列なのか。
並んでいる客を見ると、容器を持っている客と持っていない客両方が存在する。
「容器は…&
「いくつか確認しておきたいことがあります。白い皿が作れないのは土がないから、つまり白く焼くための原料が手に入らないから、ということでいいんですね? 」 適当に開いている椅子に座って、お互い話し合いをはじめる。お茶も何も出てこないが、そういうものをもらいに来たわけでもないので気にせずにおく。ちなみにセルフィは奴隷の身分で自分も座るわけには……と、立ったままだ。「そうだ、白く焼くための土が近くで取れるならその限りじゃないが、この辺ではそこの水差しみたいな碧を出すのが精いっぱい。それ以上白っぽいものとなると釉薬を使うしかないわけだが、白と言っても若干黄色味を帯びてしまう。なかなか作り出せるものじゃないし、運よくうまく行っても作れる枚数を考えたらかなりお高いものになってしまう」「ちなみに、その白の皿を一枚作るにはいくらぐらいかかるとお考えで? 」「そうだなあ……銀貨二枚ぐらいはいっちまうかなあ。ヤマナリさんところで利益をちゃんと確保しつつ、銀貨二枚のおまけをつけるにはパンを何個売れば元が取れそうなんだ? 」「うーん……一年? とてもじゃないがその間待っててくれというには値段も時間もかかりすぎる。その間につぶれてしまうのが関の山だと思う。もっと短期間で収益を上げられて、安くお皿を作る方法があればその限りじゃない。もしくは、その一年に見合うだけの高品質なものである必要があるね」 高品質か、低価格か。どっちを実現するか、というところなのかははっきりしているが、高品質過ぎてもいけないというのはわかる。つまりそれなりにお安くできなければいけないということだな。「骨って、安ければいくらで買えますか? この際牛ではなくてもイノシシ……ミニボアでもいいです」「骨なら……ゴミ捨て場に行けばいくらでもあるんじゃねえかな。何に使うんだそんなもん」 ということは、この世界には豚骨料理もないんだな。もしくは、出汁として知らないうちに使ってしまっているか、というあたりか。これならいけそうだな。「骨を焼
翌日、さっそく朝の儀式を終えた後、食事をとり、その後、親父さんがパンを買いに行くついでにヤマナリパンを訪れた。道中で新しくできたというパン屋にも立ち寄り、朝食ついでに一つパンを買ってみた。 どうやら新規開店した分だけ新しい釜で焼いているらしく、古い小麦の匂いの染みついていないパンと小麦をしっかりと使った柔らかいパン、そして、小麦を混ぜ込んだ、真っ黒ではない黒パンも人気のようだった。 値段はヤマナリパンに合わせてきているようで、どうやら小麦の自前の入手ルートがあるらしい、ということまではわかってきた。市場で小麦を仕入れていてはこの値段で出すことはできないし、新しい釜だからこそ燃料費も節約できて、トータルで割安の料金に仕上げることができているのだろう。「これはなかなか強敵だなあ。ふんわりしてて美味しいし、ヤマナリパンには普通にやってちゃ勝ち目ないかも」「たしかに、出来立てとはいえ、美味しいですもんね」「二人とも、まさかたどり着いて無理だから店を畳みましょう、なんて店主に伝えるつもりじゃないだろうな」 親父さんとセルフィと三人で買い食いをしながらヤマナリパンに向かう。親父さんも味については確かにヤマナリパンよりも美味しい……と心のどこかでは認めているらしく、心配そうにむしゃむしゃと白パンを食べていた。「まあ、ダメで元々……というところもありますし、俺の知識でだめでも、何人か集まればいい案が出るかもしれませんからね。せいぜいあがいてみますよ」 ヤマナリパンまでに買い食いを終わらせて、親父さんはいつも通り仕入れの分だけパンを買うと、帰っていった。俺とセルフィはヤマナリパンの店主の仕事が終わるまで、しばしヤマナリパンの売れ行きを見ていく。 どうやら常連であるとか、普通に世間話をして帰っていくような立場の人々は買い物に来ているので、完全に閑古鳥が鳴いている、という状態ではないようだ。 しばらくして店が一段落したのか、店主が出てきた。「どうも、お待たせしました。次のパンの仕込みが終わって一区切りついたので、今のうちにいろいろ回っていこうかと思いま
解体所の解体結果書と薬草の鑑定結果書をもって冒険者ギルドのカウンターにようやくたどり着き、書類を渡して本日の仕事の結果を受け取る。大銀貨3枚と銀貨1枚、それに大銅貨2枚での支払いを受け取った。 どうやら、合計で銅貨換算で3120枚分の仕事をした、ということになるらしい。ガルキン狩りまわった時の二倍ほどの金額になったか。薬草採取も結構儲かるんだな。「おかげで助かりました。薬草が少し心もとない状態だったんです、また足りなくなった時によろしくお願いしますね」 薬草採取でも鑑定の力を使えばかなり儲けることができると自信がついたな。薬草採取のスペシャリストとして名を馳せる未来もあるかもしれない。鑑定のおかげとは言わなければ問題はないだろう。「今日は儲かりましたね! 」「ああ、そうだな。ワイルドボアも倒せたし、段々と力をつけてきてこれたという自信もついた。あと二つもレベルが上がれば一人でもワイルドボアを倒せそうな気すらしてきた。この調子で頑張っていくか」 セルフィと軽く話しながら帰り道につき、銀の卵亭にたどり着いたところで早めに湯をもらっておく。メリーさんからは「今日はゆっくりだったねえ」と言われてしまった。 確かにいつもはもうちょっと早いし、できるだけメリーさんの都合に合わせて帰ってきているからな。その分今日は珍しく感じたんだろう。 今日は薬草採取の割に収入が多かったのと、冒険者ギルドでの鑑定に時間がかかったからだと言い訳をしておいて、そのままお湯をもらって部屋に戻る。 血まみれ……というほどではないが、ミニボアの返り血が程よく付いた服を水魔法で軽く濡らして軽く濡らして、こすり落とす程度にしておく。明日でもいいかな……朝にでもしっかり綺麗にして、乾かしてしまえば良いか。よし、明日明日。とりあえず今は体の汚れを落とすのが先だ。 ほぼ全裸になり全身をごしごしとこすりながら汗を落としていく。途中からセルフィに背中を拭いてもらい、お礼に背中を拭き返してやる。いつもの作業を終えたところで、着替えて食堂へ下りる。すると、親父さんから声がかかる。「タカナ
午後からも引き続き薬草を集めていく……が、やはり予想通り、ミニボアと薬草の取り合いになった。しかし、ミニボアも集団で一気に薬草の群生地を荒らしに来ているというわけではないようだ。 群生地に引きよせられるように一匹、また一匹と、ホルム草を掘り返すのに夢中になってる間にこっそり近づいて倒す、というミニボアを暗殺するような形で一匹ずつ倒している。 食後すぐの一件以来、ワイルドボアがまた出てくるという状態にはなっていないが、いつ出てきてもいいように注意はしている。ミニボアはともかく、ワイルドボアは足音の振動でわかる。 ミニボアの足音も分かるようになればいいのになあとは思っているが、そこまで大きいモンスターではないのでなかなか難しいというか、俺の過敏さではミニボアは判断できない。が、セルフィは判断できるらしい。「次、また来ますよ。やっておきますか? 」「対応よろしく……血抜きはこっちでやるから」「はい」 セルフィがミニボアを倒して、ミニボアの血抜きはこっちでやっておく。流れた血が薬草にかからないように注意しつつ、ミニボアの血でさらにミニボアが寄ってこないようにはしているものの、やはり血だまりはできてしまうことになる。 かといって移植ごて程度の大きさでは、血抜きした血を溜めておく穴を掘るのも一苦労だ。そのための穴を掘っておいても……結局あふれてしまうし、それならと思って垂れ流しにするのだが。 その血の匂いをたどってミニボアがまた一匹、また一匹とぽつぽつと出てくるので、そのたびにセルフィと倒して血抜きを繰り返す。 ◇◆◇◆◇◆◇ 段々、薬草を集めるよりもミニボアの相手をしている時間のほうが長くなりつつあるころ、日が傾き始めた。「そろそろ帰るか……途中からミニボアとホルム草の取り合いになったのはちょっと想定外ではあるが。まあ、ワイルドボアも二匹ほどさらに相手することになったし、その分収入になったと思えばいいか」 ワイルドボアはあの後、さらに二匹引っ掛かってきた
午前中を目いっぱい使って、ひたすら薬草集めをする。午後も薬草集めの予定だが、昼食のサンドイッチを食べながら、午前の分量を広げて、セルフィの取った薬草の一本一本判別して雑草を省きつつ、改めて束にしていく。「結構頑張って薬草ばかり抜いていたと思うのですが」「十分頑張ったほうだと思うぞ。7割から8割ぐらいはホルム草やハププ草だ。一部は雑草も混じってるが、このぐらいなら十分許容範囲だと思う」「じゃあなんで仕分け直してるんですか? そこまで詳細な鑑定はしなくても向こうでやってくれると思うんですが」「そりゃ、ギルドの手間を省かせるためでしょ。俺は鑑定で間違いなくホルム草やハププ草だと見分けられるんだから、大量にガバッとセルフィに取ってきてもらって、仕分けしてお渡しするだけでお賃金が得られるんだから、少ない程度の面倒は受け入れるってもんだ」 実際、ギルドではどうやって普通の草と薬草の見分けをつけているのか、まではわからない。俺みたいに鑑定もちの職員が仕分けているのかもしれないし、薬草鑑定士、みたいなより限定された職員がその仕事を任されているのかもしれない。 何にせよ、これが薬草でこれが薬草じゃない、とそれぞれわかってる限り、俺の性格上混ぜ込んでごまかすことはできないってことだな。どうせばらばらにされて組みなおされて新しく束を作り直されて、その作り直しの時間で、もう何束分か薬草を入手することができるはずだったとか。 そういう時間が出てくるならここで多少時間と手間がかかっても、きっちり仕分けしておくほうが、関わるみんなにとって無駄がなくなってよいことだ。俺の手間でみんなが得をするのは悪くない。 ホルム草とハププ草からそれ以外の草を完全に分けて、束にし直すと、ホルム草が37束、ハププ草が18束できた。それにテルミ草が8束出来上がっているので……全部買い取ってもらうとしても、午前の分だけで銀貨7枚分は堅いな。 それに加えてホーンラビットの血抜きした奴が10匹あるから、さらに銅貨50枚。今日はなかなかにいい収穫をしている。一日めいっぱい使えばまた銀貨10枚分稼げるのは確実だな。 これでまた、いつで
食事を終えていつもの装備に着替える。今日は血なまぐさいことをするかどうかはわからないが、とりあえずいつもの装備をそろえて冒険者ギルドへ向かう。いざ向かってみて、やっぱり戦闘用の装備が必要になったとかなら二度手間になるからな。 最悪装備が要らないとなったら全部アイテムボックスにしまっておけばいい。アイテムボックス便利。セルフィの分の装備も預かってしまえばお互い身軽に動けることになる。 リンカちゃんからお弁当を受け取り、いつも通り冒険者ギルドへ向かうと受付で確認する。「人手が足りていない仕事をやろうと思うんですが、どんな仕事が今人手が必要になってますか? 」「そうですね……とりあえず活性化したダンジョンのほうには相当数の冒険者の皆様が向かってますので、そちらに人数が割り振られている分、食肉や薬草採取なんかの、常設依頼のほうには、あまり人手が回っていないのが現状ですね」 常設依頼か……そういえばどんなものがあるのかを含めて、じっくり眺めたことはないな。少し見てみるか。 常設依頼の掲示板を見る。やはりモンスター退治、薬草採取、食肉集めの三種の神器ともいうべきこちらの依頼にはそれほど人手が出ている様子はないらしい。でも肉は先日結構集めたからな。 いくら都市の規模を考えても賄いきれるほどの量を納めたとは言いがたいものの、食肉ばかりではこっちも飽きる。ここは一つ、初日にもやった薬草採取をやってみるか。「よし、今日は薬草採取をやろう。鍛冶屋で移植ごてを扱ってないかどうか見て、扱ってたらそれを買って便利に根から保護していくぞ」「移植ごて……また新しい単語が出てきましたね。それはどんなものですか」 セルフィに移植ごてと言っても通じないらしい。身振り手振りでどういうものでどういう用途に使うのかを説明する。「ああ、シャベルのことですか」 どうやら、シャベルで通じるらしい。他の地域へ行ったら物の大小で名前が入れ替わったりしないよな? まあ、しばらく他の地域に行く可能性は低いので大丈夫だろう。 受付
朝が来た。相変わらず日の差し込みやすいこの建物の一室は、俺の目を直撃するように日が入ってくるので、目覚ましとしては中々に性能がいい。 ふともう一つのベッドに目をやると、セルフィが丸くなって眠っているので、もう少し寝かせておいてやるかと一人起き出し、トイレと顔洗いを済ませる。ボットン海綿トイレにも三日目にして慣れた。二日目は気になった、服に染み付いた自分の匂いも気にならなくなった。やはりこういうところではいかに早く慣れるかが大事だ、と神崎さんも言ってたっけ。 井戸から水を汲んで顔を洗うと、口もすすいで後は磨き砂でも口に含んで歯のほうも綺麗にしておく必要があ
食事を終えて、満腹になる。結局、もも肉の茹でたやつを追加で注文して、お金は定食と合わせて銅貨30枚ということになった。いいお店を教えてくれたのでここは俺のおごりだ。「さて、今後何をしていくかだが……ダンジョンへは一度向かってみたい。ダンジョンではどういう稼ぎができるんだい? 」「では、まず説明を。ダンジョンでは、モンスターの死体が残らず消滅します。その代わり、モンスターの体内に存在する魔石が必ず落ちてきますので、それを冒険者ギルドに出すことで報酬を得られます。モンスターが強いほど魔石の質もいいものが落ちると考えてください。そし
イアンちゃんのおすすめのお店に連れて行ってもらう。だが、少し血の匂いが残っている以上、まずは身支度を整えるのが先だ。イアンちゃんも一旦血の匂いを落としてから行きたいとのことなので、家へお互い戻って体を拭いてから再合流することになり、イアンちゃんに迎えに来てもらうことになった。 セルフィと宿に戻る途中で夜の鐘が鳴る。これは急がないといけないな。急いで宿に戻って、メリーさんに湯を二人分頼む。部屋に戻ると、ベッドがもう一つ運び入れられていた。どうやらセルフィ用にもう一つ運び入れてくれたようだ。ありがたいことだな。寝床をどうしようか少し悩んでいたところだ。「私の
日が暮れる前に門まで戻ってきちんと出入りを終える。「さて、急がないとな。今日は買い取ってもらうものが昨日より多いし、夜の鐘に間に合わないかもしれないな。血抜きはしてあるからある程度はいいとして、数があるからな。できるだけ急いで買取に出さないといけない、テンポよく行こう」「はい! 」 一日体を動かしてやる気があふれているのか、セルフィが鞘に入ったままの剣をぶんぶん振り回しながら町中を進む。「まず、冒険者ギルドに向かう。そこで今日の稼ぎを換金してもらって、それからそのお金で夕食をとって、宿を取ろう…&hellip