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部屋の匂い、昔の自分

Author: 中岡 始
last update Huling Na-update: 2025-08-01 10:32:45

障子を閉めると、和室の空気は急に音を失った。光もほとんど差し込まず、四隅に薄暗さが滲み、畳の上にかすかな埃が舞っているのが見えた。空気はひんやりしていて、雨上がりの湿り気と、古い木材のにおいが混ざり合っていた。

智久は廊下から一歩中に入り、ふと足元に目を落とす。畳の縁がすこしほつれていて、その先にあるピアノの脚がどこか頼りなく立っているように見えた。

漆黒のアップライトピアノ。壁に寄せられたその楽器は、今ではもう家族の誰にも触れられず、ただそこに置かれているだけの存在だった。けれど、近づくほどに、確かにそこに刻まれている記憶の粒が、じわじわと胸の奥に広がっていく。

手を伸ばすと、鍵盤の蓋はすでに少し開いていた。そっと指をかけて持ち上げると、音も立てずに静かに開いた。

鍵盤には、かすかに手垢のような跡が残っていた。昭江が最後に使っていたまま、磨かれることもなく、眠るように閉ざされていた鍵盤。智久はしばらくそれを見下ろしたまま、動けなかった。

ほんの少しだけ、指を伸ばして、白鍵のひとつに触れる。指先に感じる冷たさは、今でも鮮明だった。鍵盤の重みが、そのまま時間の重みに思えて、息を飲む。

そのとき、遠くから七菜の声がした。けれど声というよりは、空気に滲むようなささやきだった。

「パパ、ひけるの?」

振り返ると、七菜が襖の向こうから顔だけのぞかせていた。目は大きく見開かれていて、興味と少しの不安が入り混じったような表情をしていた。

智久は軽く息を吐き、うなずきかけて、すぐに言葉を探した。

「ちょっとだけ、昔にね」

そう答えながら、また鍵盤に視線を戻す。指が動かない。いや、動かしたくないのかもしれなかった。何かを確かめるように、鍵盤の表面をなぞると、微かなざらつきが指に触れる。それは思い出の手触りそのもののようで、胸の奥が少しだけ、きゅっと締めつけられるような感覚に包まれた。

…春樹の顔が、ふと浮かんだ。

あれは、自分がまだ小学生の高学年だった頃。春樹は、三つ下のまだ声変わりもしていないような少年だった。隣に住んでいた彼は、当時から音楽が好きで、よく庭から聞こえてくる鼻歌が家の中まで届いていた。母がピアノの先生だったから、春樹は自然と教室に通うようになった。智久も、一度だけ母に促され、春樹と一緒にピアノに向かったことがある。

あのとき、春樹の隣に座って鍵盤に手を置いた自分は、自分の指が不器用でどうしようもなく感じられて、何度も鍵を打ち損ねた。リズムも外れて、先生だった母に「落ち着いて」と何度も言われた。

でも、春樹は怒らなかった。ただ、じっと隣に座り、淡々と弾き続けていた。その横顔を、智久は今でも忘れられない。眉が少し寄っていて、けれど表情は真剣で、その指先から生まれる音は、妙に優しくて、どこか遠くを見つめているような印象だった。

「春樹…」

つぶやいた声は、自分の耳にだけ届いた。

あれから、どれくらいの時間が経ったのか。

今、自分は三十二歳になった。ならば、春樹は二十九歳。あのころ、小さな体でピアノの前に座っていた子が、今はきっと立派な大人になっているはずだ。

智久はそっと椅子に腰を下ろし、ためらいながら鍵盤に指を置く。ほんの一音だけ、押してみる。低く、くぐもった音が鳴った。それは決して美しい音ではなかったが、それでも確かに、生きていた。眠っていたものが、少しだけ目を覚ましたような感覚が、静かに体を包む。

「もう弾けないと思ってた」

自分でも驚くほど自然に、言葉が口から漏れた。七菜は襖の向こうで、小さく頷いたように見えた。

「でも、音はまだあるんだね」

鍵盤にもう一度指を置き、違う音を試す。今度は少し高めの音。短く、跳ねるような響き。その響きが和室の静寂にしみこむ。

柱がきしむような音がして、天井の隅にある電球がわずかに揺れた。そんな小さな変化さえも、今はどこか意味を持っている気がする。

昔の自分。隣に座る春樹。笑いながらピアノに向かう七菜。

どれもが少しずつ混ざり合い、この部屋の空気の中に、ゆっくりと広がっていった。

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