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第111話

작가: 霧乃吟
感情の込もっていない言葉だったが、澪の耳にはどうにも不快に響いた。

今さら、言葉の裏までいちいち考える気にもなれない。

夫としての思いやりからの助けてくれたわけではないことなど、とうに分かっている。

ただ、取引の材料として差し出しただけだ。

征司の冗談めいた言い方には取り合わず、澪は驚くほど冷静に言い返した。

「ここまで高価なものだと、所有権をめぐって揉める可能性もあるでしょう。できれば、私のものだと分かるように、書面を作ってもらえる?」

この香箱はそう簡単に手に入るものではない。

彼女は元々用心深く、いかなるミスも許さない。

それに先日病院で、征司とは完全に離婚の話がついている。離婚協議書にも、征司は当然目を通しているはずだ。

離婚が目前に迫っている今、征司が金を出して買い戻したこの品を、不倫の償いとして受け取るつもりなら、なおさら曖昧にはできない。

「分かった。書面はこっちで用意する」

「じゃあ、これで決まりね。いつできるの?」澪はほっと息をつき、顔に喜びが浮かんだ。

朝比奈家の品が戻ってくるなら、もうすぐ元夫になる男の恋愛事情に協力し、紗耶とのことを黙
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