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武神に認められた僕は、高天原の面倒事を処理することになりました
武神に認められた僕は、高天原の面倒事を処理することになりました
مؤلف: 景文日向

転機は突然に

مؤلف: 景文日向
last update تاريخ النشر: 2025-09-10 19:01:58

 僕は、一人だった。人には視えない何かが視える、それだけで両親からは距離を置かれた。霊感なんて欠片もない、弟二人が羨ましい。そんな日々を送っていた。

 僕の家の近くには、大きな神社がある。そこに居る時だけ、心が休まっていた。清廉な空気が、傷ついた心を癒してくれた。そして、他の人には視えていないであろう『人間じゃない存在』も。

 神社に通っていた幼少期の、とある日のことだ。

「貴様、私が視えるのか?」

 その存在は、とても美しかった。青緑色の、大きく澄んだ瞳。長い水色の髪は、毛先に向かうにつれ青くなっている。長い睫毛は耽美な雰囲気を構成していた。明らかに、この世のモノを超越している美しさ。それは今でも、僕の目に鮮明に焼き付いている。

「……あなたは?」

 目の前の存在は、口元をほころばせて答えた。

「私は神だ。この神社で祀られている、偉大な神だ。崇めると良いぞ。……そういえば、貴様。名は何という」

 神様というのは、随分高飛車だと思った。だけど、名前を訊かれているのに答えないわけにはいかないとも考えたので、とりあえず名乗る。

「僕は、如月一成きさらぎいっせいです。ええと……神様はどんなお名前なのですか?」

「一成か、良い名だ。私の名は……れん。貴様の才能を認め、制御する術を教えようと思っている」

「才能?」

 僕に何の才能が? そう思い問うと、蓮は答えた。

「一成、貴様は私が視えるだろう。それに、この世のモノではない——言うなれば幽霊などを惹きつける体質だ。現に、私の目にも貴様の存在が留まった。まだ幼い貴様にはわからないかもしれないが、それは危険な状態だ。私の様な神ならともかく、悪霊に憑りつかれでもしたら貴様も困るだろう。そこで、私が貴様に能力の制御を教えてやろう……という訳だ。感謝するがいい」

 一方的な押しつけの様にも思えるが、当時の僕は何も考えずに

「はい、よろしくお願いします」

 と承諾してしまったのだった。

 それから十五年、蓮の修行は厳しいものばかりだった。投げ出そうと思ったこともあったが、自分の為になると諭されて続けてきた。その結果、僕は自分の力を使いこなすことが出来るようになり——幽霊退治に勤しんでいる。

『嫌だ、まだ成仏なんかしたくな——』

「往生際が悪いですよ、成仏しなさい」

 目の前の中年男性の姿をした幽体に向けて、手をかざし念じる。段々と幽体が天へと昇っていくのを見届けながら、一息つく。

 もう夜も遅い。早く家に帰って、弟たちを安心させなければ。

 弟二人は、有難いことに僕に懐いてくれている。

三兄弟の真ん中である宗吾は、素直ではないが根は優しい。昔は真っ直ぐな子だったのだけれど、反抗期なのか最近はあまり話せていない。誰に対してもそんな感じなので、嫌われているという訳ではないだろう。

末っ子である蒼麻は、宗吾に対してはつっけんどんだが僕にはデレデレだ。宗吾と昔大喧嘩したことを、今でも引きずっているらしい。僕からしたら可愛い弟だけど、宗吾は複雑な感情を抱いていそうだ。

「ただいま、帰りましたよ」

「兄さん、お帰りなさい!」

 大体出迎えてくれるのは蒼麻だと決まっている。宗吾はバイクに乗っているか、部屋で勉強しているかだ。一応、蒼麻に尋ねてみる。

「宗吾はどうしていますか?」

「宗吾? 今日は肝試しで学校に行くとか言ってたような……あんな奴どうでもいいでしょ。そのうち帰ってくるよ」

 嫌な予感がした。霊感がなくても、普通の人よりは宗吾も蒼麻もこの世のモノではない存在を引き寄せる体質だ。そんなところばかり僕に似なくてもいいのに、と思うが今はそれどころではない。

「ちょっと出かけてきます。ごめんなさい、すぐ戻りますから」

「あ、ちょ、兄さん⁉」

 蒼麻の静止を無視し、家を飛び出す。幸いなことに、宗吾が通っている高校は家から近い。飛んでいけば五分もあれば到着するだろう。周りに人が居ないことを確認し、ジャンプをして念じる。ふわりと身体が宙に浮く。これは人目があるところでは絶対に使えない技だ。騒がれては色々と困る。今が夜更けであることに感謝し、目的地へと急ぐ。

「宗吾、どこですかー⁉ 返事をしてください」

校庭に降り立ち、彼の名を呼ぶ。夜の学校は幽霊の溜まり場だ。特に、プールに水が張ってある夏場——今は一年の中で最も幽霊が多い。宗吾の様な存在がいたら、餌食になる可能性も十分にある。

校舎に入り、何度も宗吾の名前を叫んだ。しかし、答える声はない。こちらの存在を不用意に察知されたくないが、そうも言っていられないので目に力をこめる。一時的に千里眼と化した僕は、宗吾の姿を捉えた。最悪なことに、彼らはプールに向かっている。もうここまで目立っているのだから、何をやっても同じだろう。自らの脚に触れ、霊力を流し走るスピードをあげる。

「宗吾!」

プールに繋がっている扉をバン、と開くと宗吾と——恐らくその友人——が立っていた。

「兄貴、何の用なんだよ。邪魔すんなっての」

「え、あれ宗吾の兄貴なん? 姉貴かと思ったわ」

 友人の一人がそう言って、僕の顔を凝視している。確かに僕はよく女性に間違われるけど……今はそれどころじゃない。

「宗吾、肝試しは危険です。家に帰ってください」

「あー、蒼麻のやつ喋りやがったな⁉ クソが……。絶対帰んねーからな、ムカつくし」

 話を聞く気はないようだ。これは骨が折れる、と思った次の瞬間——プールから何かが姿を現した。

 それは、巨大な手だ。それは、一直線に宗吾に伸びたかと思うと、ひょいっと彼を掴み上げた。

「宗吾!」

 宗吾は、何が起こっているのかわからない様子で口をパクパクさせている。友人たちは、彼をおいて逃げてしまった。

『この子、宗吾って言うのね。可愛い顔……』

 手は、テレパシーで語りかけてくる。そして、指を宗吾の顔に伸ばし撫で上げる。

「なっ……何なんだよ! おいクソ一成、早く助け——」

 宗吾の言葉は、途中で途切れた。骨が折れる音と同時に、彼の首が血飛沫と共にプールへと落ちる。

 何が起きたのか、わからなかった。殺された? 宗吾が? 僕の目の前で?

『あ、力入れすぎちゃったわ。まあ、人間だものね。別にいいか』

 いけない。どんな時も冷静でいろと、教えられたじゃないか。そうでないと、霊力が暴走するから——息を深く吸い込む。しかし、頭は全く冷えない。目の前のこいつを殺らなければ、次は僕がああなる。何より、宗吾の命を奪ったこいつを許すわけにはいかない。

「絶対に許しません、ここで葬ります」

『出来るかしら? 無力な人間に』

 相手の語りかけは、僕には届かなかった。霊力で作った即席の刀で、手の先から根元まで一刀両断にしたからだ。崩れて粒子になっていく幽体から、宗吾の体が解放され地面に落ちる。

「……無力な兄でごめんなさい」

 宗吾の魂は、もう還ってしまった。戻ってくることは二度とない。少し軽くなった体を抱き、家へと歩き始める。飛ぶ気分ではない。家族にどう説明しようか、そればかり考えていた。

 家の扉を開けると、流石に夜遅いからか全員寝ているようで迎えはなかった。宗吾の体をそっと置く。せめて安らかに眠ってほしい。誰か起こそうかとも思ったが、僕自身考えが整理できていないので上手く事情を話せないと判断してやめた。

 ……とりあえず、一度寝よう。血に塗れた手を洗い、部屋に行く。目の前で誰かが、しかも肉親が死ぬなんて思いもしなかった。自分の力に自惚れていたのかもしれない。明日、蓮に相談しよう。

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  • 武神に認められた僕は、高天原の面倒事を処理することになりました   処遇

    「……スセリ」 すっかり勇ましくなったスセリヒメを、天照大御神は優しく抱き寄せる。「天照大御神様、根の国の者に触れては」 雷斗が慌てて制止しようとしても、彼女は聞く耳を持たない。「触らないで! こんな……こんな、醜い私を……」 スセリヒメでさえ、拒絶の意を表す。それでもお構いなしに、天照大御神は語りかける。「ごめんなぁ、うち……冷たすぎたな」 もう全員、黙るしかない。僕に至っては部外者だし。「高天原は、確かに大事やよ。でもな、血の繋がった姪も大事やねん」「貴女……今更何を……」 スセリヒメの声が震えている。低いけれど、前より情の伝わる声だ。「あんた、ホンマは高天原を壊したいわけやなかったんやろ?」 ……え? そうなのか? スセリヒメの方を見ると、涙を流しながら頷いている。「……そうよ。本当に、認められたかっただけなの……」 そうして、一連の事件の話をし始めた。「アマツミカホシをけしかけたのは、紛れもなく私。でも、それは貴女に私のことを認めて欲しかったから。どんな罰でも、望んで受けるわ。高天原から見た私が異物なのは間違いないわけだし」 認めた。一件の黒幕は、彼女だったらしい。 天照大御神は、それを聞いても表情を変えない。慈愛に満ちた眼差しのままだ。「うん、わかっとったよ。うちはね、立場上認められへんのよ。根の国に親族っていうの」「わかってるわよ」「でもな、スセリのことは大事に思っとるで。心の中では、ずっと昔から」「じゃあ、どうして」 嗚咽混じりになってきたスセリヒメが問う。答えはさっき聞いたような気もするけど、当事者だとまた違うのだろう。「やからね……」 天照大御神も、めげずに語りを続ける。彼女は本当に、忍耐の塊のような存在だな。 スセリヒメがひとしきり泣き終わった頃には、朝どころか昼になっていた。流石に眠い。 だが、こんなところで意識を手放したらどうなるかわからない。その一心で目を開けている。「……あの……」 そんな状況でも、突っ込みたいことはある。「僕は、もう帰っていいですか?」「ならぬ」 疲れ切っているのだから、もういいだろう。僕は部外者だし、留まる理由も本来ならない。 帰宅を拒否しているのは、蓮の方だ。確かに、蓮からすれば故郷。でも僕は違う。何の理由で引き留めているのだろうか。 「スセリヒ

  • 武神に認められた僕は、高天原の面倒事を処理することになりました   変容

     スセリヒメからは、香木の香りがする。何だかとても、懐かしい匂い。 ただ、肝心の神力の源らしい髪は狙えない。そもそも、この読みがハズレである可能性もあるのだが。「天照大御神、私だけど」 神殿の扉を開けると、予想外の光景が広がっていた。「……誰だ、お前」 雷斗だ。時間稼ぎは、どうやら成功だったらしい。 蓮の姿は見えなかったが、それは普段と姿が違うからだった。 フツノミタマ。有事には、蓮は神剣と化すらしい。 何も語らないが、それは物理的距離の問題かもしれない。雷斗とは話しているのかも。「私はスセリ。天照大御神の弟である、スサノオノミコトの娘よ」 スセリヒメの瞳から、少しだけあった光が消えた。「やからぁ、認めたらあかんのよ。それは」「……だ、そうだが?」 天照大御神の柔和な否定に便乗する雷斗。僕には触れてこないのも、雷斗らしい。「だから、認めさせるのよ。やっておしまいなさい、私の式神たち」 また髪を数本抜き、式神を形成するスセリヒメ。やはり、神力の源は髪っぽいな。雷斗か蓮に、それを気づかせるしかない。「式神使いか、面白い」 雷斗は何だか余裕そうに笑みを浮かべているが、捕らわれている僕はそれどころではない。「気をつけてください! 髪! 髪なんです、彼女の神力の源は」 雷斗の視線が、スセリヒメの髪に向いた。「一成……恩にきる」 短く言葉を発し、すぐ彼女の懐に潜り込む雷斗。悔しいけど、武神としては超一級だ。 僕ができないことを、すぐやってのける神なのだ。それは、蓮だって全幅の信頼を寄せる。「……余計なことを」 後ろに飛び退こうとしたスセリヒメの腕を掴んで、雷斗は引き寄せる。 その後は一瞬だった。 スセリヒメの腰まであった長い髪は、根本からすっぱり断ち切られた。 それと同時に、僕の拘束も解けた。神殿に、長い黒髪の束が落ちる。式神も、消え去ってしまった。 もう、長かった時代など想像もつかないほど勇ましい髪型になってしまった。風の刃は、彼女の髪を刈り上げてしまった。これじゃ、女神というより武神のような。  僕の見立てが当たっていたのは、幸いだ。これで間違っていたら、雷斗に何と言われるかわからない。 スセリヒメの変化は、髪型だけではなかった。「……神力が暴走しているな……」 いつの間にか人間体に戻った蓮が、そう呟く。

  • 武神に認められた僕は、高天原の面倒事を処理することになりました   拘束

     彼女はそう言うなり、何本か髪を抜いた。そして、それを手で握りしめる。 髪は形を変え、やがて人の姿へと変わった。「やっておしまいなさい、私の可愛い式神たち」 なるほど、これが彼女の手の内。 自分では戦わず、使い魔に倒させる。だから、一人でも高天原を壊せるのか。圧倒的な数の暴力だ。 何にせよ、ここではマズい。神殿が壊れた時、責任を負わなければならなくなるのは僕だ。それは避けたい。 後ろ姿は見せずに、段々後ずさる。「戦いはあかんよ〜」 天照大御神は、こんな時でも平和主義だ。正直、今はそれどころではない。 自分の神殿が破壊されるかどうか、という状況なのに。呑気なのか、それとも僕が考えつかない何かがあるのか。それはわからない。 そんなことより、まずはスセリヒメの戦い方を解析するところからだ。 髪を抜いて式神にした、ということは恐らく神力の源は髪。蓮や雷斗も、アマツミカホシ……記憶に新しいところで言えばタケミナカタも長かった。多分、基本的には髪と神力は一体だ。だから、力を削ぐには髪をどうにかすればいい……のだと思う。その、どうにかの方法を考えなくてはいけないのか。 切る以外にあるか? 長さが力と直結しているのであれば、それが一番手っ取り早い。 では、どうやって? 女性の体とはいえ、神だ。本来なら、僕と住む次元が違う。髪を切る隙なんて、当然だが存在しない。接近するのも危険だ。この仮説が合っているのかもわからないが、やる価値はある。いや、やるしかない。 ……フツノミタマって、アレは……蓮だよな。風神の力を持つフツノミタマであれば、意図しない形で髪を断ち切れるのではないか。となれば、今は防戦するしかない。神殿の外に出たし、逃げ回ってみよう。タケミナカタのように。 体をふわりと浮かせ、空を駆ける。スセリヒメ派当然ついてきた。いけるかもしれない。「喧嘩を売っておいて逃げるなんて、本当は自信がなかったのかしら?」「どうでしょうね」 どんどん加速していくと、彼女もそれに適応してきた。やはり、三貴紳の娘。莫大な神力だ。 僕の神力は無限じゃないから、効率的に使わなくてはならない。あと何時間したら、蓮達は来るのだろう? それさえわかっていれば、もっと上手く立ち回れるのに。「さて、お遊びは終わりよ。私が直々に葬ってあげること、感謝なさい」 結局、逃げ

  • 武神に認められた僕は、高天原の面倒事を処理することになりました   風の力

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    last updateآخر تحديث : 2026-03-22
  • 武神に認められた僕は、高天原の面倒事を処理することになりました   道中、穏やかな訳もなく

     車の運転は、かなり久しぶりだった。大学に行くにも、蓮の神社に参るにも電車か徒歩だから。 神様を乗せるなんて未知の経験なので、とても緊張する。そんなことを考えているうちに、神社に到着した。”蓮、迎えに来ましたよ” そう心に呼びかけると、目の前に二柱が現れた。「何だこれは?」 蓮は車を興味津々に観察している。もしかして、車を知らないのか? 神様だし、やはり現代には疎いのかもしれない。「移動手段です」 車をいちいち説明するのも面倒くさかったので、やめておいた。「早く乗ってください」 後部座席のドアを開け、急かす。一刻も早く出発したいのは、全員同じはずだ。 二柱が乗り込んだの

    last updateآخر تحديث : 2026-03-20
  • 武神に認められた僕は、高天原の面倒事を処理することになりました   雷斗とタケミナカタ

     無事、寝台特急の予約を取ることには成功した。本も返した。雷斗の神社には、車を禁止されたので電車で行くしかなかった。鹿島線って本数が少ないし、かなり不便だな。関東とはいえ、過疎地域の路線だから仕方ないのか。 鹿島神宮駅からは歩いて十分。途中が坂道なので、毎日通っていたら足腰が鍛えられそうだ。 鳥居をくぐると、静謐な空気に覆われた。やはり、格の高い神社というのはそういう風になっているのかもしれない。蓮の──香取神宮もそうだ。「あの、すみません。お伺いしたいことがあるのですが」 人の少ない、奥の方で声を上げると目の前に光の玉が現れた。それはやがて雷斗の形になり、見慣れた彼の姿が現れた。

    last updateآخر تحديث : 2026-03-27
  • 武神に認められた僕は、高天原の面倒事を処理することになりました   ドライブ?

     翌日の早朝。人が居ないことを確認し、一気に空へと駆けあがる。 やはり、飛行が一番移動効率がいい。空気も澄んでるし、伸び伸びとした気分になる。「む、一成か。何かわかったのか」 蓮の神社に降りると、すぐに出迎えてくれた。「おはようございます。はい、何とかアマツミカホシの居場所らしきものは突き止めました。ここです」 僕はマップを起動し、地図を見せる。ピンをした場所は、例の神社。「……何だこれは」「アマツミカホシの居場所……だと思います」「だと思う?」  まだ、憶測の域を出ない。だが、そこまで行く価値はあるだろう。これで本人……人ではないけど……がいなかったら振り出しに戻るのだが

    last updateآخر تحديث : 2026-03-20
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