تسجيل الدخول俺の中に一つの疑念が生まれた。
“性欲が増しているかも”という、少し笑えなくなってきた種類のやつだ。
禁欲明けとはいえ、朝までいろはとようこを相手にしてしまった夜を思い返す。
あれは若さではなく、“何かが噴き出してる”感じだった。
創作への熱。
誰かの言葉に触れた夜に、脳の奥がカチッと切り替わる瞬間。
そして、ようこと並んで机に向かったときの、あの奇妙な昂り。
“やりたいことが増えていく”と同時に、“身体がそっちに引っ張られている”感覚がある。
いろはが毎晩搾ってきても夜の回数が落ちないのも、理由はそこなのかもしれない。
……それに、最近、変なことまで考えるようになった。
自分が創るのはもちろんやりたい。
でも、それと同じくらい“誰かの創作を支える”のもやりたい。
問題は――俺には技術はない。あるのは“情熱と金”だけ。
金をばら撒く気はない。
“金で集まった人間”の薄っぺらさを、俺はもう十分知っている。
だからこそ、俺はまず、いろはに相談した。
自分の曖昧さごと全部をさらけ出すように。
いろはは、しばらく黙って、何かを計算するみたいにブツブツ呟いていた。
「え……待ってよ?つまり、現状の検証が終わってないまま次?
間が悪いですね……しずかさんの籠絡も進んでないし……いや、ようこさんに協力を……
でもようこさんもいつもってわけじゃ……りえ……いや、友達は巻き込めないし……」
何を考えてるのかはわからない。
けど、“真剣に俺のことを考えている”って空気だけは伝わってきて、なんだか胸が熱くなった。
「いろは。どうだろう。またしずかやようこにも相談した方がいいかな?」
俺がそう言うと、いろはは「それなら」と即答で2人を呼び出した。
―
「は?じゃああんたが会社作れば?」
しずかの第一声。あまりに雑で、逆に説得力がある。
「会社……?」
「というか“会社みたいな枠”ね。
金を撒くんじゃなくて、困ってるクリエイターを受け止める"箱"。
あなたは代表で、やりたいことが見つかるまで誰かに協力すればいいだけ」
ようこがすかさず乗ってくる。
「面白そうじゃない?私もフリーだし。
あんたからの依頼が有料になるなら、なおさら悪くないわよ?」
聞いていると、俺の頭の中で“点”だったものが、ゆっくり“線”になっていく。
確かにこれは、金のばら撒きじゃない。
“お互い納得した契約”という形なら、誰も傷つかないし誰の尊厳も踏みにじらない。
そんなことを考えながら、気づけば俺は口にしていた。
「じゃあ手始めに……しずかとようこ。2人は参加してくれるか?」
「私はいいわよ?」
ようこが肩をすくめる。
「自由に仕事していいんでしょ?じゃあ参加してあげる」
「私も、別に断る理由はないわね」
しずかも軽く笑った。
胸が熱くなる。
“スタート地点”が、ここにできた。
「じゃあ、俺はそのための勉強だな。いろは!」
呼ばれたいろははビクッと肩を揺らした。
さっきからずっと青い顔をしていたけど、俺は深く気にせず続けた。
「いろはは簿記持ってるよな。
経理とか、依頼の管理とか、手伝ってほしいんだけど……給料もちゃんと払う」
そのためにはバイトを続けていくのは難しいだろう……思い入れの強いバイトだと思ったから、一応確認したつもりだった。
だが返ってきたのは、驚くほどあっさりした返事。
「いいですよ?辞めます。
それが今のヤスタカさんのやりたい事なんですよね?
なら私は、その隣で手伝うだけですよ♡」
迷いゼロ。
思わず抱きしめたくなるほど心強い。
「ありがとう、いろは……」
と、その瞬間。
「で?もう一つ相談があるんでしょ?」
ようこがにやりと笑ってきた。
まるで、先の展開まで見透かしているみたいな目をして。
俺は息を整えながら切り出した。
「この間会った“あいさん”にも声をかけたい。
ライターとしても、クリエイターとしても、すごい人だと思った。
仲間にできたら心強いと思う」
ここで、視界の端でいろはが“うわぁ…”という顔をしたのは気のせいだろうか。
そうと決まったらまずは勉強だな。
まあ、創作しようとした段階で個人事業主についてはある程度勉強したから、支援団体の運営についての勉強だ。
明確な方向性が見えたせいか、やる気が満ち溢れてきた。
だが、そんな俺と反比例するかのようにいろはは疲れているようだ……だが、隙あらば搾ってくるし、夜は2人がかりで攻めてくるしで、そっちの元気はあるようなんだが……もしや俺の疑念は当たったいたのだろうか。
ー
ある日、ようこからの着信。あいと話がついたらしい。
聞けば、やはり仕事は順調とは言い難いらしく、二つ返事とはいかなかったが詳しい話を聞きたいそうだ。
話し合いはファミレスにすることにした。あまりかしこまった話にはしたくなかったからだ。
一度会っているとはいえ、ほぼ初対面のようなものだ。
あいはかなりの美人で、しかも金髪碧眼の長身美人なので忘れることはないが、俺はどこにでもいる普通のおっさん……
きっと覚えてはいないだろうと思っていたが、あいの方から声をかけてきた。
「おお!ヤスタカ殿!ここだここだ!」
あいは先に到着していて、軽く手を振り席へ促してくる。
「ヤスタカ殿。改めて自己紹介させてもらう。あいだ。よろしく頼む」
固い……ようこの話では、これが素の話し方らしいが、それにしても固い。
なんというか……武士?騎士?確かにこれはクライアントとの折衝はうまくいっていないのも頷ける。
それに、なんとなくだが警戒心を強く感じる。
ようことは都合が合わず2人だけなのも、女性として当然の警戒なのかもしれない。
軽く挨拶を済ませて、本題に入る前に気になることを解決することにした。
「えっと……あいさん……取り敢えず"殿"はやめにしませんか。むず痒くて……」
「そ、そうか……じゃあ私にも敬語はいらないし"さん"も不要です。で、早速その……互助会?の説明を聞きたいんだけど」
そこから俺は、詳しい説明をした。とは言え、まだ始まってもいないので"こうしていくつもり"という説明になってしまうのだが……
「……つまり、今のままフリーとして仕事をしつつ、ヤスタカの依頼を受ければいいと……しかもそれで依頼の報酬と別で給料まで……」
ブツブツと呟きながら考え込んでしまった。
仕方ない。今はまだ机上の空論レベルだから、怪しむなという方が無茶な話だ。
だが、あいが気にしていたのはそこではなかった。
「おかしい……話がうますぎる!おいおまえ!まさかその依頼というのはいやらしいことじゃないだろうな!給料を餌に!薄給の女達を……私を……ハァ……ハァ……なんてやつだ……ご褒美か!?美味しすぎる!」
……あ〜ダメだ……どんな人間かわかってしまった……
だが、あいの書き物を読んで、才能があるのはわかるだけに惜しい……惜しいが……
「あい!落ち着いて!周りの目もあるんで!俺が社会的に死ぬんで!ちゃんとした仕事!クリエイターとしての仕事をお願いするだけなんで!」
幸い、周りは大声に反応しただけで、内容は聞こえてはいなかったようだ。……取り敢えずこの時点で、俺はあいに対して畏まることはしなくなった。
「ご、ごめんなさい……どうも私はすぐ熱くなってしまって……」
わかってくれたようだ。まあこの熱くなるのも思い込みの激しさもクリエイターならよくあることだろう。
「それで?あなたはようことどんなプレイを?酔わせて気絶するまで追い込んだりしたのか?」
あいはまだ誤解……でも無いので返答に困るが、それは結果であって目的では無いので誤魔化す。
「順番に説明するぞ?まず給料ではなく生活補助金で、あいが自分で受けた自分名義の仕事の報酬は全部受け取ればいい。
俺からの"ちゃんとクリエイターとしての"仕事の時は、団体名義で書いてもらうから、そこが団体の収入。ちゃんと売り上げはあいにも還元される。ここまではいいか?」
あいは深く考え込んで返してきた。
「つまり、生活費と引き換えにヤスタカの性奴隷になるということだな?仕方ない……ハァハァ……」
……仕方ないって言ってるしもういいかな……入ってくれるだろ……
「……と、とにかく!団体の目的は、才能ある個人への助成が目的の団体だからな?あいにはデメリットはないようにするから!じゃあ!ようこも入る予定だから!」
俺は逃げるようにその場を後にした。もちろん支払いは俺で。
ー
「ヤスタカさん、痛いのも痛がられるのも苦手ですもんね〜相性悪いのかも?ハム……」
チュプ……
帰ってきて着替えながらいろはに今日の顛末を話した。
そうなのだ。人の性癖は千差万別、そこに俺の主観が入る事は無いが、やはり自分に置き換えると苦手意識が先に出てしまう。
ジュル……ピチュ……
「ところでいろはさん?何をしてるの?」
チュパ……
「なにとは……服を脱がすのを手伝っているだけですが?お疲れのところを労っているだけと言いますか……ん……ん……」
今日もいろはは積極的だ。
「でもそうですね……ヤスタカさんはその人が欲しいんですよね?なら……私が教えてあげます♡」
ー
お風呂も晩御飯も勉強も終わり、いろはとベッドに寝転がる。ここまではいつもと同じだ。
だが一つだけ違うことがある。
それは、ベッドの上に置かれたモノだ。
アイマスク、ソフトタイプの手枷、“あんなおもちゃ”、どれも普段は使わない……なんならこの部屋にあるのも知らなかった品々だ。
「……いろは?これは?」
「んふ♡ヤスタカさんへの教材、“簡易SMセット”です♡」
いろははこう続ける。SMは特殊性癖ではないと。ほとんどの場合、決まった相手との愛情の形であると。痛みや苦しみそのものが快楽ではなく、誰に与えた、与えられたものかが大事であるのだと。
「ですから、あなたを大好きな私と、私を大好きなあなたとで試してみませんか?♡」
いろははずるい……こう言われては俺が引けないことを分かった上で誘っている。
そしてもっと悔しいのが、少し興味が出ている自分がいるという事実だ。
ー
結論から言おう……確かにこれは、異常性癖、特殊性癖などではないという認識に変わった。
日頃の行為とは違う高揚感が俺を包んでいく……また、その過程こそが愛情の形であると……
それはそれとして、今度ようこにも試してみよう。
あいの性癖を黙っていた意趣返しにこれくらいは許容してもらおう。絶対にだ!
ピンポーン 私、“まあや”は、山奥の一軒家のチャイムを鳴らす。 ネットでこんな噂を耳にしたからだ。 人里離れた山奥に住まう、トップクリエイター集団の事を。 曰く、このハウスに入れば成功は約束されたようなものだと…… 例えば、視聴回数数百程度の動画のアカウントが日本でわずか数%の上位配信者に食い込んだとか。 ただ、悪い噂もある。 曰く、その団体の代表は、若い女性クリエイターを金で集めて性的に搾取していると…… 成功と性交を天秤にかけて……やかましいわ! こほん……つまり、私でもワンチャン成功できると言うこと!歌い手として! とはいえ、田舎から出てきてまた山奥の田舎に来ると言うのは正直複雑です。 でもそんなことは言ってられない。 動画で予習した限りでは、この巨大な日本家屋の中にとんでもない最新設備が備わっているとか。 だけど、設備だけで成功できるほどこの業界は甘く無い。なにか特別なノウハウが?いや、そんな怪しげなセミナーみたいな……歌い手として名をあげるのに、精神論のノウハウなんて学んでいる暇はない。 悪い方の噂にはちょうどいい田舎具合なのでしょうけど…… あれ?これは……早まったかも…… 成功したい一心であまり考えずに来てしまった…… そんな事を考えていると、玄関が開けられた。 しまった!チャイムを押していたんだった!「はーい。あなたがまあやさんね? ヤスタカ……代表から聞いてるわ。才能のありそうな歌い手なんですって?上がって。 ああ、私はしずか。小説家よ」&n
こんにちは、りえです。 皆さん私のことをチョロい女だと思っているようですが、そんなことはありません。 私だって、それなりに経験を積んだ大人の女です。 ほ、本当です!信じてください!ヤスタカさんが異常なんですよ! ー「さあいろは、帰りましょう」 ここは高校の教室。授業も終わり、部活に入っていない私といろはは帰る準備を整えていました。 そんなとき、いろはのスマホにLINEが……「ごめーんりえ!この間のおじさまからお誘い来ちゃった♡」「またですか?最近特に多くないですか?」 私の言葉に不思議そうな顔をするいろはは、確かに最近毎日学校終わりに誰かの元に行ってしまう。 なにやら2人の会話に齟齬を感じたいろははこともなげにこんな言葉を言い放ちます。「ああ違う違う。最近また人数増えちゃってさ。ローテーションしても毎日でも時間が足りなくて♡学校終わりから回らないと全員と会えないんだよね♡」 私はジト目でいろはを見ます。「回るって……ああそうですか。私には関係ありませんが、病気やトラブルは勘弁してくださいよ?」 何の話かといえばいろはのセフレの話です。 このいろはという子は、初体験は小学校、中学卒業の頃には経験人数が3桁に及び、女子高生というブランドが付いてからは加速度的に人数が増えていっています。 その間、“彼氏”と呼ばれる相手も何人かはいたようですが、彼女の性欲と多様なSEXへの探究心は、1人の男の背中には重過ぎるのです。 よって、“彼氏っぽい男”は絶えずいるのですが、いろはとしては1人に絞る気はないようです。前
いろはです。私の原点を語るとしましょう。 私の原点。即ちヤスタカさんとの出会いから、私が私になったと言えます。 それまでの私を語るには……BAN待ったなしの条例違反です。 ー 都内のソープランド。私の職場です。 経緯はアレですが、SEXが好き過ぎる私には天職でした。 今日も順調に趣味と実益の両立です♡「いろはちゃん。今日のラストは新規で90分、オプションは即尺とマットね。ラストだから延長ガッポリ稼いできてよ」「はーい♡私、明日休みなんで閉店朝でもいいですか?♡」「む……オプション追加できたらな?」「任せてください!タマタマも財布も空にしてやりますよ!♡」 ー「初めまして、いろはです♡」「初めまして、ヤスタカです。きょ、今日はよろしくお願いします」 ベビードールに身を包み、三つ指をついて出迎える私。 恐らく風俗経験が乏しく緊張が伺えるその人は40代後半といったところでしょうか。 白髪混じりの髪と、苦労を物語るほうれい線が浮かぶ顔。 身長はそこそこ高いし筋肉もありそうですが、“使うための筋肉”のようです。 ガテン系によくあるオラ付きが見えないことから製造工場勤務といったところでしょうか。「んふ♡緊張してるんですか?身構える必要ありませんよ♡どうかリラックスしてください♡良かったら敬語も無くして欲しいです。無理にとは言えないですけど……」 私は、相手が不慣れと見るや早速あざとく親密度を改ざんします。 少し悲しげな表情で上目遣いで“可愛いお願い
朝は驚いた。“私たちはみんな壊れている”。そう突きつけられた。ううん、突きつけられるまでもなく、このハウスが異常なのはわかっていたこと……だけど、ああもハッキリ言われると考えざるを得ない。思えば私はこんなんだったっけ?ヤスタカに恋して、ヤスタカについてきて、ヤスタカと交わって……これだけなら普通の恋愛。けどその間に7人もいるのは確かにおかしい……気がする……そんな関係も朝の話でどうなるやら……なんて思っていたけど……「ちょっとめぐみ……あなたここの倫理観に物申してなかった?なんで今日の今日で参加してるのよ……」夜。ここはヤスタカの部屋。朝の話で参加者が減ればヤスタカを独占できるかも、なんて思ったのに……「あははは……いやぁ普通じゃないとは思ってるのよ?けどまぁそれはそれ。“だからしない”とはならないわよ。気持ちいいSEXは別腹みたいな?あん!♡」「めぐみ、集中しろよ。全力が見たいんだろ?」「あ!そ、そう!遠慮しないで!ん!ん!♡あ、これヤバい!奥!潰れちゃう!あ"〜!」もう……ヤスタカの全力……私がお願いしようと思ったのに……というか、なんで全員いるのよ。朝あんな空気になってもすることはするとか……みんな性と思想が乖離しすぎよ……
「ん、ん、ん、そう……そこ!もっと……強く!」「くっ……!まだ!?ちょ……休ませて……」私は、男の人が崩れていく表情が好き。もちろん行為自体も大好きだけどね。でもハウスに住んでから、ちょーっと物足りないのもホント。ー「ふぅ!ようこちゃん……良かったよ」ベッドでうつ伏せになる男。タバコをふかす角度、満足げな表情と間。私はまだ足りないくらいだけど……でもこれくらいが“普通で日常”。大人の……恋愛ゲーム……気絶する方が、私の遍歴の中では異常事態。ヤスタカはバグね。「ふふ……そう?ありがと。じゃ、私は帰るわね?また連絡ちょうだい♡」「ああ、じゃあこれ、タクシー代。また連絡するよ」そう、これこれ。ドライでウェットな余裕ある大人の会話。そして私は余裕のある大人の女。妖艶で性剛で自由に生きる大人の女。ー「あ!あ!強すぎ!あ!あ!あ〜!♡……もう……無理……」バグには連戦連敗。なんならヤスタカも狙ってるわよね。ほんと、嫌な男。「あ、ようこ……またか……」
今日もハウスは通常運行。(これが通常?そんなわけない……はずよね?)不健全どころか、ハウスに来る前より健全だ。夜中に仕事をする人間が激減。朝起きて、ご飯を食べて、仕事して、夜はみんなでまったりと過ごす。夜型の多いクリエイター集団でこれは、なんなら一般家庭より健康的でしょう。(字面だけは……ね……)健康な大人の男女が交わるのも普通。むしろ、何もない方が不健全じゃないかしら?(そう思ってしまう自分がおかしいんでしょうね……本当は)大人数が暮らせばそういうことも……致し方ないんでしょうね。(致し方ない?普通は1対1。じゃなかったかしら……)……まあ、気を失うのが日常なのは、少し危険な香りがしなくもないけど。(うん、これは流石にアウト)ー「みんなおはよう!めぐみはさっきぶりだな」ヤスタカの、静かな朝の空気を切り裂く声。いつも思うけど、この人いつ寝てるのかしらね。ショートスリーパーってやつ?「おはよう。今日は朝ごはんの当番私だからね。他のみんなは?あいの拘束、ちゃんと解いてきた?」一時期少し悩んでたみたいだけど、すっかり晴れやかになって……罪悪感は消えたのかしら。ううん、違うわねこれは。抱えたまま前を向いている……そんなとこ







