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第82話

Author: 雨の若君
素羽は手元のグラスを持ち上げ、赤ワインを一気に飲み干した。さっきまで甘く感じていたワインも、今はただ苦いだけだ。

テーブルの上のバラにはまだ水滴が残り、瑞々しく咲き誇っている。けれど今、その美しさを愛でる人は誰もいない。ただ、花は寂しく萎れていくだけ。

言葉は通じなくても、人の表情は万国共通だ。

羨望から賑やかさへと変わる空気の中、美宜が現れたことで、素羽は一瞬にしてみんなの笑いものになってしまった。

ワイングラスをテーブルに戻し、素羽は沈んだ気持ちのままレストランを後にした。

さっきまで青空が広がっていたはずなのに、外に出ると風と雨が世界を包んでいた。まるで天気まで、彼女の心を読んでいるかのようだった。

素羽は雨に打たれるまま立ち尽くす。すぐに顔は濡れて、雨粒と涙が混ざり合い、これなら誰にも泣いていることは気付かれない。

「やめろ、帰るぞ」

素羽は彼らがもう帰ったと思っていた。まさかまだ、ドラマみたいな痴話喧嘩を続けているとは。

司野は美宜の手を引き、車に乗せようとしていた。

美宜はしおれた花みたいな顔で、「帰りたくない」と呟く。

「さっき約束してくれたじゃない
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