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第07話 夫が知っていた名前

last update publish date: 2026-10-22 19:19:55

 十一月十七日、火曜日の夜。

 拓真が帰宅してリビングのソファに腰を下ろし、ネクタイを緩めるのを待ってから、千景は対面の椅子に座った。

 千景の手には、仕事で使う黒い小型のICレコーダーが握られている。彼女はそれをローテーブルの中央に置き、拓真の目を真っ直ぐに見据えた。

「これからの会話は、記録します」

 千景ははっきりと告知し、録音ボタンを押し込んだ。レコーダーの赤いランプが点灯する。

 拓真は目を丸くし、次いで鼻で笑った。

「はっ。なんだそれ、刑事の真似事か? 夫婦の会話を録音してどうするつもりだ」

「一昨日、あなたは私に向かって『離婚の理由は私の不倫だ』と断言しました。もはや、夫婦として通常の対話ができる状態ではありません。言った、言わないの水掛け論を防ぐため、そして今後の代理人間の交

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     十一月十七日、火曜日の夜。 拓真が帰宅してリビングのソファに腰を下ろし、ネクタイを緩めるのを待ってから、千景は対面の椅子に座った。 千景の手には、仕事で使う黒い小型のICレコーダーが握られている。彼女はそれをローテーブルの中央に置き、拓真の目を真っ直ぐに見据えた。「これからの会話は、記録します」 千景ははっきりと告知し、録音ボタンを押し込んだ。レコーダーの赤いランプが点灯する。 拓真は目を丸くし、次いで鼻で笑った。「はっ。なんだそれ、刑事の真似事か? 夫婦の会話を録音してどうするつもりだ」「一昨日、あなたは私に向かって『離婚の理由は私の不倫だ』と断言しました。もはや、夫婦として通常の対話ができる状態ではありません。言った、言わないの水掛け論を防ぐため、そして今後の代理人間の交渉のために、発言はすべて客観的なデータとして残させてもらいます」 隠し録りではない。これは、自分が理不尽な攻撃に対して正当に防衛しているという、調査員としての明確な意思表示だった。 拓真は忌々しそうに舌打ちをしたが、レコーダーを取り上げるような力行使には出なかった。「好きにしろよ」「では、まず確認します」 千景は手元のノートを開いた。「十一月十五日、あなたは私の同意なく共有家計アプリの閲覧権限を解除し、十一月六日には、婚姻中の貯蓄口座から四百万円をご自身の別口座へと移動させています。これは事実ですね?」「ああ、事実だ」 拓真はソファの背もたれに寄りかかり、ふんぞり返るような姿勢をとった。「お前が俺

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