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3.『海の瞳』を持つ王女、マリッサ

Author: 杵島 灯
last update Last Updated: 2025-09-03 20:06:08

 もちろんマリッサは、遠いグリージアの嘲りなど露ほども知らない。

 彼女の胸を占めていたのは、ただひたすら王太子ハロルドへの思いだけだった。

 空と海とが溶け合う場所。広がる青に抱かれた国・シーブルーム。その王女として生まれたマリッサは、幼いころから父に言われ続けてきた。

「いいかい、マリッサ。お前は『海の瞳』を持つ者、海に選ばれし者だ。いずれこの国を離れることになる」

 蜜を溶かしたように温かな肌、月光を織り込んだ銀の髪。

 そして澄んだ青い瞳には、銀の輝きが瞬いている。これはシーブルームで稀に見られる『海の瞳』と呼ばれるもので、「他国に恵みをもたらすしるし」とされてきた。

 ゆえに『海の瞳』の持ち主は国を出て、遠い地で新たな縁を結ぶのが習わし。もちろん王女マリッサも例外ではない。

「嫁いだ先こそ真の故郷とし、新たな自国の幸せを願いなさい」

 父王の言葉どおり、十五歳になった年にマリッサの縁談が定まった。

 海を越えた大陸の奥、山間の小国グリージア。そこがマリッサの新たな故郷となる場所であり、伴侶はグリージアの王太子だと告げられたのだ。

「ご覧、マリッサ。この方がお前の夫となる方、グリージアの王太子ハロルド殿下だ」

 差し出された絵は、見事な彫刻の施された額に収められていた。中から見つめてくるのは、長いマントを引き、上品なえんじ色の上下をまとい、腰には剣を佩いた凛々しい少年――だろうとマリッサは想像したのだが、こちらを見つめる彼は驚くほど愛らしく、どこか少女の面影さえ帯びていた。

「まあ! とっても可愛い子ね!」

 思わずそう声を上げてしまい、父や母からと苦笑されたのを覚えている。

 以降は二国間で手紙や、贈り物や、絵のやり取りが繰り返された。

 愛らしい少女のようだったハロルドは年を追うごとに体つきがしっかりとして、立派な青年へと変わっていく。

 いつしかマリッサは「ハロルドの姿絵が届いた」と連絡が来るたびにまず、鏡を覗くようになった。

「ねえ、髪は乱れていないかしら? このドレスはおかしくない? 口紅はもう少し薄い色のほうがいいと思う?」

 そんなマリッサを見て兄たちは「届いた絵を見るだけなのに、変な妹だ」と笑った。

 彼らをいさめてくれるのは母だった。

 母はきっと気付いていた。マリッサがハロルドに恋してることに。例え絵であろうとも、ハロルドの前に立つときは綺麗にしていたいという乙女心に。

 マリッサはハロルドに会ったことはない。絵のハロルドはとても素敵だったが、もしも絵が似ても似つかなくても、マリッサには関係がなかった。

 なぜならハロルドから送られてくる手紙は思いやりに満ちていたから。それに、几帳面な文字は、彼の心がまっすぐなことを示しているように思えた。

(きっとハロルドは、繊細で優しくて、誠実な人なんだわ)

 必ず彼をを好きになれる。マリッサはそう確信していた。

 やがてマリッサはニ十歳になった。祝いの品と共に届いた最後のハロルドの絵は、最初の絵が嘘のようにとても凛々しかった。

(……なんて素敵なの……こんな瞳で見つめられたら、私はきっと何も話せなくなってしまうわ……)

 高鳴る鼓動を聞きながら、マリッサはいつまでも絵の中のハロルドに見入っていた。

 ついに今年は本物のハロルドに会える。

 マリッサはシーブルームを出て、グリージアへ向かうのだ。

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