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第640話

Autor: 清水雪代
体は、悠人の温もりを少しも拒んでいなかった。

頭のなかの「記憶」では、浮気をしたこの人を激しく拒絶している。

完全に矛盾している、と智美は冷静な頭の片隅で思った。

ただ、自分の体のことは自分が一番よくわかっている。本能が無防備に彼を受け入れているなら、それはきっと、心の底から深く愛しているという絶対的な証拠だ。

沈黙の中で葛藤する智美を、悠人は深い瞳でじっと見つめていた。

遠回しな探り合いなど、彼の性には合わない。

「智美。今、君の頭のなかで何を考えているか、隠さずに話してくれないか」

記憶は、目の前の悠人を疑えと警鐘を鳴らしている。

でも、本能はまったく違うことを訴えかけていた。

智美は最後に、自分の直感を信じることに賭けた。まっすぐに悠人を見据えて口を開く。

「悠人。あなた……浮気したこと、ある?」

その唐突な問いに、悠人は一瞬目を丸くした。それから、一切の迷いなくはっきりと首を振った。「ない。誓ってない」

「じゃあ、事件に遭う前の私なら、あなたにこんな馬鹿な質問は絶対にしないはずよね?」

悠人が真剣な顔でうなずく。「ああ。絶対にしない」

その答えを聞い
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