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last update Last Updated: 2025-11-10 20:25:28

「その力を使って業者に圧力をかけ、我々に納品する素材を、証明書とは違う安価な偽物へとすり替えさせた。もし断れば会社を潰すとでも、脅したのでしょう。全ては佐藤専務の影を我々に悟らせないための、用意周到な偽装工作です」

 佐藤はダミー会社を隠れみのにしながら、私たちを攻撃していた。そういうことか。

(ひどい。私を攻撃するだけじゃなく、業者を乗っ取るなんて。乗っ取られた業者は、巻き添えで信用を傷つけられた)

 あの業者は、一流の顧客を多く抱えていた。信用問題は大きなダメージになるだろう。

 私は心が痛むのを感じた。

「これで相沢さんの潔白は証明されました」

 湊さんが頷く。

「良かった。でも、湊さん。乗っ取られた業者が気の毒です」

「それは……やむを得ないでしょう。株の買い占めにあったとは言え、脅しに屈したのは彼ら自身の選択ですから」

「……」

 湊さんは柔らかな表情ながらも、きっぱりと言った。

 私は言い返せない。

 私は、自分の潔白が証明されたことに安堵する。

 でも、それだけではなかった。

 佐藤のやり方は、これまでの妨害とは質が違っていた。

 私が正しい手続きで、正しい判断で選んだ業者と信頼そのものを、私を陥れるための罠に変えてしまったのだ。

 正しく仕事をすればするほど、その正しさが自分を追い詰める凶器になる。

 用意周到で卑怯で、巧妙な罠。

 そんなやり方が、何よりも恐ろしかった。

 その日の午後、ホテルで緊急記者会見が開かれた。

 私もデザイナーとして、その場に同席する。

 会場には無数のフラッシュが焚かれて、熱気が渦巻いていた。テーブルに並んだおびただしい数のマイク。私に向けられる、無数の探るような視線。

 私はただ、固く口元を引き結ぶことしかできない。

 時間になると、湊さんが私の隣の席に着いた。

 彼は私にだけ一度安心させるように小さく頷くと、まっすぐに前を向いた
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