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#2

last update Última actualización: 2026-01-02 13:56:51

マジでやばい。今度こそ貞操の危機だ。

脚を開かされたため覚悟したが、ミコトは見るだけで何もしなかった。

「うん、特に傷はないね。良かった」

「え? 傷?」

「君すごい美人だから、あの研究施設で暴行を受けてないか気になってたんだ。他の職員達に聞いて、施設で監禁されていることも分かったし」

ミコトは安心したように瞼を伏せた。愛おしいものに触れるように、震えるレアルゼの手を取る。

「怖い思いをしてないなら、それでいいんだ。頑張ったね」

「…………!」

以前も、似たような出来事があった。

そうだ。放課後、先生に雑用で捕まったとき。家に帰りたくないから丁度いいと答えた時の反応そのもので、少し驚いた。

よく分からないところで褒めてくれるんだよな。

この人は、やたら先生の影をちらつかせる。

懐かしさに目を細めた。

でも、そういえば気になることがある。現実世界で最後に覚えているシーンは放課後の渡り廊下。意を決して先生に告白して、そこまでは分かるのだが。────家に帰った記憶がない。

「あら、やっぱり顔色が悪いね」

「っ!?」

過去を奪うように、顎を掠め取られる。

そうだ、昔のことを思い出してる場合じゃない。目の前の青年から逃げねば。

「まだお腹熱い?」

「大丈夫……だから、触らないでください……っ」

ミコトは堂々と下腹部を触ってくるから、威圧を込めて睨んだ。

「はは、本当に可愛いね。こんな公然といたずら……可愛がれるなんて役得だ」

「貴方、その……男が好きなんですか」

「うん」

軽いな。

まさかこれ……BLゲームの世界観か?

「それで、君は?」

「え。俺は……」

真っ直ぐな、胸を射抜くような視線にたじろぐ。

「初めて惹かれた人は、男でした。でも今は、……よく分かりません」

息継ぎもせず、掠れた声で続ける。

「拒絶されたから。想いを打ち明けたら、駄目だと言われて……人自体苦手になった」

俺の初恋にして、恐らく最後の恋。

担任の中都藍斗先生。艶やかな黒髪で、どの先生よりも優しく、面倒見が良かった。

眼鏡をかけていてもはっきりイケメンだと分かる為、多分俺と同じゲイの生徒は皆彼に惚れていたと思う。

彼は俺が所属していた吹奏楽部の副顧問で、三年で部長になったこともあり特に関わりが深かった。

ぼんやりした世界を、鮮明に象ってくれた人だったけど……あんな顔をさせてしまうなら、告白なんてしなきゃよかった。

( ……ん? )

あんな顔って、どんな顔をしてたっけ。

「……想いを伝えること自体は悪いことじゃないよ。受け取り方は人それぞれだけどね」

ハッとして顔を上げる。ミコトはシャツを羽織り、自身の膝に頬杖をついていた。遠い過去を手繰り寄せるように、視線を合わせる。

「俺は逆の経験がある。好きになってもらって、告白された。それは本当に嬉しかったけど……一応立場というものがあるから、拒絶してしまった。どうすれば彼を傷つけずに済んだのか。今も分からず、後悔している」

「……!」

彼は淡々と教えてくれたけど、その横顔は酷く葛藤しているように窺えた。

人並みの悩みを抱えてることを知り、初めて親近感のようなものを覚えた。

「そうですか。告白って、する方もされる方も辛いものなんですかね」

「はは、そんなことはないよ。タイミングがちょっとズレてただけだ」

タイミング……。

俺が先生に告白したのも、タイミングが悪かった? 

いや、それだけじゃないよな。

「さあ、この話は終わり! レア、お風呂にしよう」

「あ、どうぞ」

「どうぞじゃなくて、君も一緒に入るんだよ。一応汚れた部分は拭いたけど、気持ち悪いだろう?」

確かにあそこが少しベタベタしてる。お風呂には入りたいけど、何で一緒?

「別々が良いです」

「だーめ。俺が傍で監視することが、牢に入らない条件なんだよ。お風呂はもちろん、トイレも」

「無理です勘弁してください」

「大丈夫、責任はとるよ」

絶妙に噛み合わねえ……。

お先真っ暗で青ざめるレアルゼに、痺れを切らしたミコトはにこやかに手を叩いた。

「とにかく、これからは俺と常に連帯行動。嫌なら即投獄。いいね?」

人として大切なものを失った気がする。

人権とか尊厳とか……きっと、こういう時にも使う言葉だ。十八年生きてて、改めて身に染みた。

「レアは本当に肌が白いな。男の子とは思えない」

「やめてくださいな」

堂々と胸を触ってくるミコトの手を払い落とし、バスルームの姿見に目をやる。

以前の自分とは似ても似つかない、目を見張る青年がそこにいる。

確かに、明るい場所でよく見るとミコトが美しいと連呼するのも納得の容姿だ。華奢で艶やかで、白銀の髪がぬれていると女性と見紛う。しかし瞳には強いエメラルドグリーンが宿っている。

自惚れそうになるが、これはレアルゼという青年だ。俺じゃない。

「儚げだよね。ま、服を着てても体つきで分かるけどね」

“男”だって。

ミコトは短く笑い、洗髪する。彼と密室にいる状況は怖過ぎるのだが、警察だから仕方ない。

正直、彼の肉体美に興味もある。鍛えられた身体は、文化部で生きてきた自分にとって魅力抜群だった。

「……そんなに見つめられると体に穴が空きそうだ」

「え、何で分かるんです?」

ミコトはずっと瞼を閉じて頭を洗っている。なのに自分が凝視していることに気付いていた。

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Último capítulo

  • 異世界半分自惚れしっかり   #2

    昨日は今日の昔という言葉が思い浮かんだ。桜の花びらを見ると改めて痛感する。誰にも言えない体験をしたことは、薄れはしても消え去ることはない。まだ少しチョークの跡が残ってる黒板に触れ、瞼を開ける。窮屈なネクタイを外し、御代は誰もいない教室を後にした。時間の大切さは分かっていたつもりなのだが、この世界に戻ってからは光の速さで日々が流れた。コンクールや入試はともかく、卒業式なんて体感的には十五分だった。今は廊下の窓から、校門に集まっている卒業生達を眺めている。保護者と一緒に帰る者、後輩に囲まれる者、友人と遊びに行く者。皆これから大きな世界へ飛び込んでいく。後輩達から貰った色紙を鞄に仕舞い、階段を降りる。壁にかかった姿見に映る自分は、なんてことない黒髪の青年だった。……いや、それも違うか。世界でひとりだけ。ありふれてるけどここにしかいない、唯一無二の存在だ。眼鏡を外し、昇降口を抜けた。青い空に舞う桜を見上げながら、ふと、自分の髪に触れた青年のことを思い出していた。「現状維持は最悪の選択……か」腕を組み、うーん、と首を捻る。俺は不変大好き人間だから現状維持が最善だと思ってしまう方だ。でも、こと恋愛に関しては違うのかな。お節介で優しいカミサマの言うことは忘れないでおこう。「御代!」校門に続く道に入ると、後ろから名前を呼ばれた。振り向くと、そこには息を切らした中都先生がいた。「連絡したんだけど、見てないな……?」「え? あ、ほんとだ。すみません」スマホを開くと、先生から今どこにいる? とメッセージが届いていた。朝からずっとミュートにしていたから気付かなかった。「あはは、でも会えて良かったです。先生、今日は忙しいのかなって思って」「気遣いありがと。でもどんなに忙しくても時間はつくるさ。大切な日なんだから」先生は呼吸を整えると、ゆっくりこちらへやって来た。「お前とここで会えるのは最後か。寂しいな」「寂しいですねー」「何か軽くないか?」「いや、寂しいですよ!」はい。実は、来たる大学生活の方に俄然気持ちが入ってる。なんて正直に言ったら絶対ど突かれるから隠しておこう。中都先生は訝しげに見つめてきたが、やがて笑いながら自身の腰に手を当てた。「はは。ごめんな。白状すると、俺はこの日をずっと待ってた」寂しいのは本当だけど。と、目の

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  • 異世界半分自惚れしっかり   #4

    先生はああ言ってくれたけど。自分が抱えているのは、いつかは報われる恋なんだろうか。「やり直したいな」ぽつりと零した。先生に告白した時に強く願ったこと。「……っ?」その言葉を口にした直後、雲が黒くうねりだした。嵐でも来そうな空に、胸がざわざわする。御代は白衣を羽織り直し、館の屋上階で洗濯物を取り込んだ。この世界に来てから一ヶ月近くが経った。地下施設から出た後は毎日が晴天だった為、こんな天気は初めてだ。独りでいるのが嫌で、足は自然と彼の部屋へ向かった。「中都先生? 雨が降りそうなので、洗濯物取り込んでおきました。中で干しておきますね」「あぁ。ありがとう、御代」書斎で書き物をしていた中都は、慌てて振り返った。正体は別世界の人間でも、やはり仕事はしないといけない。今日も忙しそう……。先生は目的を達していると言うし、もう現実に戻っていい。戻る手はずも整っていると教えてくれた。それを一旦断ったのは御代だ。何故だか怖かった。こんな得体の知れない場所にいる方が恐ろしいのに、いざ帰ると思うと足がすくむ。このまま中都とこの世界で暮らした方が幸せなんじゃないか。( そんなわけないだろ…… )ここは自分達のいるべき場所ではない。分かってるのに、急に例えようのない不安に襲われた。進路はどうなるだろう。父は、俺が消えて良かったと思ってるかもしれない。ただの教師と生徒に戻り、中都先生とは距離が遠のくだけ……。良いことって一つもなくないか?ここにずっと留まっていたい。そう言ったら、先生はどんな反応をするだろう。「御代? どうした」「っ!」ぼーっとしていたせいで、彼が近付いてきたことに気付けなかった。不意に額に手を与えられ、ビクっと震えてしまう。「顔色が悪いぞ。気分は?」「あ……すみません。大丈夫です」しどろもどろになりながら、彼の手から逃げる。そして白衣の裾をぎゅっと掴んだ。「先生。この世界に来る直前のこと、覚えてますか?」「急にどうした?」「全然思い出せないので。先生に告白した後のこと。……家に帰った記憶がないんです」ため息まじりに肩を落とす。すると先生の顔は曇った。しかしそれは本当に一瞬のことで、よく見る前に頭をぐしゃぐしゃ撫でられた。「そっか。……そうだったんだな」「…………っ?」先生は少し苦しそうに頷いている。ますま

  • 異世界半分自惚れしっかり   #3

    押し殺さないといけない願望が、水面のすぐそこまで上がってきている。顔を出す前に突き放さないと。だが、御代はゆっくり首を横に振った。「偶然でもいいし、気まぐれでもいい。それでも俺は救われたんだから……それが全てじゃないですか」 それ以上の理由を求められても困る。むしろ、恋愛ってそういうものじゃないか。御代は可笑しそうに、そう言った。 「仲良くないけど何か気になるとか、気付いたら好きになってたとか。他人からすれば中身ゼロの理由ですけど、そんな始まりのカップルは星の数ほどいます。俺は、きっかけよりもその後の方が大事なんじゃないかと思うんです」「……」 正直、少し驚いていた。昔から御代は自分といる時は特に多弁だったが、ここまで自分の意見を伝えてきたのは初めてだ。無理に明るく振舞おうとしていた時とも違う。純粋に、中都に惹かれた理由を話している。 「俺は先生を幸せにする自信もあります」「ちょっ。すごい飛躍したな」 付き合いたい理由を聞いていたはずだが、結局プロポーズに戻ってしまった。御代は堪えきれない様子で、あどけない子どものように吹き出した。 「ごめんなさい。何年も頭の中でシミュレーションしてたから気持ちばかり先走っちゃうんですよね」 彼も分かっているらしく、目元を擦りながら頷いた。 「現実世界から飛ばされて、次元が変わっても先生に対する“好き”は変わらなかった。それが一番嬉しいのかもしれない」「……っ」 御代のホッとした笑顔を見た瞬間、胸の中が熱くなった。いてもたってもいられず、彼を強く抱き締める。 「わ、せんせ……」「好きだ。俺も……お前が好きで好きでたまらない」 一方的な好意をぶつけている。御代はそんな風に思っているのだろう。でもそれは半分正解で、半分不正解だ。俺も無意識に、彼を手に入れようとしていたのかもしれない。 初めて会った時のよそよそしい一年生の彼も、三年生になり、頼りないが一所懸命なときも。 常になにかに押し潰されそうになりながら、ひたむきについてくる彼が可愛くて仕方なかった。 俺はとっくに彼に落ちていたんだろう。この世界に来て、その事実に布を被せて隠したかっただけだ。御代は笑いながら瞼を擦った。 「はは。両想いなのに付き合うのは駄目って、困りますね」「そうだなぁ」笑いながら、また御代の額に口

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