Home / BL / 神ゲーマーふたりは今日もオンライン / 11.このまま一緒に住む?

Share

11.このまま一緒に住む?

last update Huling Na-update: 2025-08-09 16:00:30

その日の夜。リクエストがあったので、夕飯はハンバーグにした。好物に顔をほころばせながら箸を進める先輩は、いつ見ても平和だ。

「ゲームパッド、慣れませんでしたね」

そう話す俺に、おかわりに立った先輩がご飯を山盛りにしながら呟くように言う。

「……まぁ、久しぶりだったからな」

「先輩は普段、PCでやってるんですよね? 練習もそっち使ったらどうです」

「神谷はどうすんだよ」

「俺はこのままゲーム機でいいです。本当はPCが2台あればいいんですけど……家から持ってこようかな」

冗談のつもりだったけれど、座ってハンバーグの続きにとりかかった先輩の頬にさっと朱が差したことに気がついた。

「あれ。先輩、顔赤いですよ。……どうしました?」

「べつに」

「言ってくださいよ」

「……しつこい」

無性にいじわるしたい気分になり、俺は先輩のハンバーグの皿を素早く取り上げる。

先輩は「あっ!」と声をあげてふくれっ面をしていたが、そのうち諦めたように息を吐いて話し始めた。

「この家にずっと住むわけじゃないんだから、って思っただけ」

「それって……これからも俺と一緒に住みたい、って意味ですか?」

からかうように聞いたら、手の甲をぎゅっとつねられた。

「いって!」

「ハンバーグ返せ」

「顔赤くしてんの、かわいいですよ。先輩」

「~~~っ!!!」

ムキになって俺を殴ろうとしてくる先輩を、ギリギリのところでかわした。

普段、ゲームパッドにしか反射神経を向けない奴のパンチなんて当たりませーん。

「生意気!」

「どうも」

いら立ったように吐き捨てる先輩。しばらく気持ちを落ち着けるように深呼吸していたけれど、彼は何やら不遜な笑みを浮かべて言った。

「最近、お前が律みたいに俺のことをからかい始めたのは知ってるよ。……でも、俺がこの2週間の共同生活で、お前の弱点を見つけなかったとでも思うのか?」

嫌な予感がする。

先輩は俺のあごをがっしりとつかみ、みそ汁に入っていた茄子を箸でつまんだ。

「野菜食えよ、神谷。……お前のみそ汁だけ茄子が入ってないことも、カレーのときに自分の皿にだけにんじんよそわなかったことも、全部バレてるんだからな」

うっ。なんで知ってるっ!

口をこじ開けて無理やり中に茄子を入れようとしてくる先輩。俺は必死に抵抗した。

「い、いやだっ! こういうのをパワハラって言うんですよ。知ってました?」

「俺は後輩の栄養バランスを心配してるんだよ。食べさせてやるから、口開けな」

「いーやー!!」

室内をドタバタと走り回り、茄子を食べさせようとしてくる先輩から逃げ回る。ついにベッド際に追い詰められた。観念して口を開く。

「~~~っ!!」

「美味いよな、茄子って。俺はすげー好き」

(まずい、まずい、まずいっ……!!)

この青臭い香りも苦手だし、食感は謎にぐにゃっとしてるし、何より味にはえぐみがある。噛むのも嫌なので、そのまま飲み込んだけれど……先輩は床に倒れ込んだ俺を、満足そうに見下ろしていた。

その顔が、本当に気に入らない。

俺は身体を起こし、茄子を飲み込んだその口で……先輩の唇にキスをした。

「~~~っ!!」

「ふんっ。茄子のお返しです」

先輩は前と同じく、あっという間に真っ赤な顔になる。

(無理やり野菜なんか食べさせるからだ……)

ざまあみろ、と得意げに先輩を見下ろしているあいだ、先輩は涙目になりながら手の甲で唇を拭いていた。

「……やめろって言ってんだろ、こういう冗談」

「今、初めて聞きましたけど」

先輩は「かわいくねぇ!」と言い捨てて、鼻息も荒く立ち上がる。

「……どこ行くんですか?」

「トイレだよっ!」

どうやら、拗ねたか機嫌を損ねてしまったらしい。

「ご飯の途中ですよ」と言う俺の言葉も無視して先輩はトイレに直行し……俺が食べ終わる頃になって、ようやく部屋に戻って来た。

Patuloy na basahin ang aklat na ito nang libre
I-scan ang code upang i-download ang App

Pinakabagong kabanata

  • 神ゲーマーふたりは今日もオンライン   20.グランドファイナル

    8月31日、渋谷。2,000人が入る大きなホールは観客で賑わっていて、会場には司会進行役のタレントやゲストの配信者など、有名な人もたくさん集まっているようだった。午前中からバトルソウルの試合が行われ、野田と笹原部長が現在進行形で頑張っている。俺たちは応援もそこそこに、5人で集まって最後のミーティングを開いていた。「さ、さすがに緊張するよね~……。会場も雰囲気あるし、人もいっぱいいるし」珍しく、律先輩が真っ青な顔をしていた。玲先輩が、お兄ちゃんらしく隣で背中をさすってあげている。「落ち着いてくださいよ、律先輩。……いつも通りにやればいいんですから」「えっ、いおりんは逆になんで落ち着いてんの??」「えっ??」「神谷はメンタル強そうだもんなぁ~。俺も正直、手が震えてるよ」萩原先輩も珍しく弱音を吐きながら、苦笑していた。玲先輩が背中をさすりながら補足してくれる。「……この中で全国の決勝まで進んだことがあるのは、小神野だけだからな。俺たちは前回、違うチームだったから」「そうだったんですね。……じゃあ、小神野先輩も」「あー……俺もこういうのは平気。注目される状況は、むしろアガる」「うわぁ……メンタルお化けだぁ……」そう言いながら、「うっ」と吐き気に口元を押さえる律先輩。俺にも何かできることはないかと探していると、ふと、萩原先輩と目が合った。「……そうだ! じゃあ、神頼みでもするか」にっと笑って言った萩原先輩が俺と小神野先輩を並んで立たせ、手を合わせる。「あー、そういうこと……」玲先輩が納得したように言って、同じように頭を下げ、手を合わせた。(どういうこと?)律先輩も「そういうことね」って顔で笑うなり、俺たちを拝んでいる。

  • 神ゲーマーふたりは今日もオンライン   19.決戦の前に

    暑さも本格的になってきた7月。新葉高校は予選を無事に勝ち抜け、2位で関東ブロックの代表に選ばれた。全国大会になると、レベルがいちだんと高くなる。初戦の中部ブロックとの試合に何とか勝利した俺たちは、ついにグランドファイナルと呼ばれる決勝戦へとコマを進めた。ゼロ・グラウンドは4つの国が争うゲームということもあり、今年から決勝は4チームで行われるらしい。参加する高校は去年とほぼ同じ。京都の犬桜高校、仙台の白雲高校、東京の新葉高校、そして前回大会で優勝した強豪・横浜の龍鳳高校。関東ブロックの代表を決める決勝戦でも、俺たちは龍鳳高校に負けた。だが、まったく届かない実力差でもなかった。全員で力を合わせれば何とかなりそうな――そんな手応えを感じていた。「あとは、作戦だよなぁ~……」部室のミーティングスペース。萩原先輩が宙を仰ぎながら言った。「初動が大事になってくるよな。他の3チームはどう動いてくると思う?」玲先輩が全員を見回して聞いたので、俺は控えめに手を挙げる。「龍鳳高校は間違いなく、新葉を最初に狙ってきます」「ほう。いおりん、その心は?」「小神野先輩がいるからです」龍鳳高校は5人が全員、俺みたいなタイプのプレーヤーだ。戦略ストラテジーには強いが、逆に小神野先輩ほどFPSの上手いプレーヤーはいない。おそらく、撃ち合いになったときに不利になるプレーヤーを早めに潰しに来るはずだった。「犬桜高校と白雲高校はどう出るかな?」「わかりませんが……仮に龍鳳と一緒になって俺たちを潰したところで、あの2校だけで龍鳳と互角にやり合えるかどうかは、微妙なところだと思います。それなら、俺たちと協力して先に龍鳳高校を落とした方がまだ勝ち目がある……」「俺たちとしても、まず龍鳳高校を倒さないと、後がキツイもんな……」「ですね」「色んなパターンを想定して、どう対応するか考えておく必要がありそうだな」「俺、覚えられるかなぁ……」律先輩が不安げな声をあげる。萩原先輩が肩を叩いて、励ましていた。「みんなで少

  • 神ゲーマーふたりは今日もオンライン   18.戻ってきた日常

    週明けの部活。俺たちは部室にそろって顔を出し、前回の試合の反省を活かしながら、練習を繰り返していた。奥の席に小神野先輩。その手前に俺。週末は色々あって恋人モードだった先輩も、部活が始まればいつものokaPに戻るわけで……。イヤホンからは俺を呼ぶ「神谷っ!」という怒声が聞こえていた。「お前っ、今なんで先に壁出さなかったんだよっ! ルーク使ってんだろっ!?」「いや、そもそも出すつもりなかったですよっ! 敵のモブ兵士が来たから、分断するために使っただけです。……先輩こそ、なんで俺が壁出す前提で動いてんですかっ!!」「こういうとき、いっつも出すだろうがっ!!」「出しませんよっ! もうちょっと、俺の動きよく見て覚えてくださいっ!!」いつにも増して言い争っている俺たちの隣で、玲先輩がヘッドセットを外しているのが見えた。「あ〝ぁ~~~、耳が痛すぎて、もう無理! ミュートにするか」「ねーねー、何かあったの? あのふたり。何か聞いてる~? 玲」「知らねぇ!」「先週、玲に言われたのもあって、色々話し合ったらしいぞー」萩原先輩があいだに入って、小神野先輩から聞いたことを説明していた。「へぇ~、そうなんだ。まぁ、プレー自体はあのふたりらしくなってきたからいいと思うんだけど……。それにしても、うるさいよね」「ああ。前の3割増しでうるさい」「本音で話し合った結果、意思疎通は図れるようになったけど……その分、言い合うことも増えたんだって」「まじか」「嘘でしょー……」「耳いてー」マイクが音を拾っていて、彼らの会話は俺たちにもばっちり聞こえていた。「聞こえてんぞ、お前らー」小神野先輩が小言をこぼすと、防衛隊3人は「さぁー仕事だ、仕事」とわざとらしく言って、それぞれの持ち場に戻る。この試合は俺たちの言い合いこそ多

  • 神ゲーマーふたりは今日もオンライン   17.週末の話(悠馬side)

    「……んっ……」鼻にかかった自分の声で、ふと目が覚めた。まだ寝息を立てている神谷が下着しか見に着けていないのを見て、昨日の夜に何があったかを思い出す。(~~~~~っ!!)急に、恥ずかしさが込みあげてきた。昨晩の出来事を簡単にまとめると、俺は神谷との勝負に……負けた、と言ってもいいと思う。あいつの宣言通り、昨日の夜はあいつがどれだけ俺を好きなのか『わからされた』。(……男は無理だと思ってたのにな)彼女がいたって話も聞いてたし、どこかでまだ、気の迷いなんじゃないかと疑ってた。でも、一晩かけて、本気だってことをしっかり証明されて……。(……恥ずかしい)隠れるようにタオルケットを頭から被ったところで、背中の方からかすれた声がした。「……先輩、起きたの? おはよ」まだ眠そうな声。振り向くと、寝ぼけたままの神谷に腰のあたりから抱き寄せられる。「身体、大丈夫そ?」改めて聞かれると、羞恥心が込みあげてきてくすぐったかった。心臓の鼓動がうるさい。このまま時間が止まればいいのに、なんて……お決まりのセリフが胸をよぎる。額にキスしてくる神谷の胸に頭を埋めると、神谷の匂いがした。パジャマではないけど、同居生活の夢がひとつ叶ったような気がして嬉しい。「あれ……今日って、学校……?」「まだ、寝ぼけてるみたいだな。今日は休み。月曜は明日」「そっか……」眠そうに目をこすって、へらっと笑う神谷は今日もカッコよくてかわいかった。「じゃ、先輩とずっとこうしててもいいんだ」じっと見つめられて、唇にキスされる。明るいところで見られるのが恥ずかしくて背中を

  • 神ゲーマーふたりは今日もオンライン   16.心を開いて

    先輩の部屋に着くまで、俺たちはひと言も言葉を交わさなかった。部屋に入って、ローテーブルを囲んで座ったところまではよかったけれど……今日の試合の反省会なんて、ちっとも始まる気配がない。(……いや、始めるつもりがないのかもしれないな)俺たちの問題はそこじゃないと、お互いが何となくわかっているから。「……先輩、怒ってます?」そう切り出した俺に、先輩は不機嫌そうに聞いた。「なんで」「あの日の夜……俺が先輩を無理に、その……抱くみたいになったから」先輩はぴくりと肩を震わせ、そっけなく答えた。「……べつに。合意だったし」「じゃあ……今、何を考えてるんですか? 俺、先輩の考えてること、少しもわからないです」そう伝えてみたものの、先輩は下を向いて何か考えるばかりで……。俺は深く息を吐いて、先を続けた。「どうして、俺を部屋から追い出したんですか。……怒ってないなら、なんで」「……それは……これ以上、距離詰めんのは違う気がして」「は?」「だからっ、距離が近くなり過ぎるのはダメだと思ったんだよ」「なんで」そもそも、『意思疎通を図れるようになろう!』という目的で共同生活をしたんじゃなかったんだろうか?(本当に、何を考えてるのかよくわからん……)俺はいよいよ頭を抱えつつ、自分の気持ちを吐き出した。「……俺はわりと嬉しかったですけどね。先輩と一緒に過ごせて。前よりは先輩のことをよく知れたような気がしますし、一緒にご飯作ったり、終わった後でゲームしたりするのも楽しかった」「俺だって、あの

  • 神ゲーマーふたりは今日もオンライン   15.暗雲

    先輩はベッドの上で静かに寝息を立てていた。その身体にタオルケットをそっとかけ、俺は荷物をまとめて部屋を出る。明け方、まだ日が昇り切っていないくらいの時間だった。「クソっ……」つい、そんな言葉が口からもれる。昨日の自分は、衝動的だった。避けられているのが悔しくて……つい言葉で先輩のことを追いつめ、手を出してしまった。結局、最後まではしなかったけれど……俺の提案にうなずいた先輩が、いったいどんな気持ちだったのかまではわからない。(やったよな、これ……)今日も放課後には部活がある。間近に迫った、夏の大会の予選に向けての練習だ。(どんな顔して、会えばいいんだよ……)俺は顔を手のひらで覆いつつ、自宅までの道のりを、荷物を片手に歩き続けた。◇◆◇◆◇◆◇「ねぇねぇ、玲。……あのふたりさぁ、何かあったの?」「さぁ……?」「あ、それ……俺もさっきから気になってた」「萩っちも気づいてたかぁ~。昨日も変だったけど、今日はもっと変だよねぇ?」「そうだな。ゲームに影響がなきゃいいんだけど……」部活での俺たちは、簡単に言うと、超・腫れもの扱いだった。何かあったんだろうということはわかるが、聞けるような雰囲気でもない。実際、俺と先輩とは気まずい以外の何物でもなかった。考えないようにと気をつけていても、つい昨日のことを思い出してしまう。先輩は先輩で、平静を装っているように見えたけど、何やら考えごとをしている時間が増えた気がする。そして、試合中の連携は……何とか機能していたけれど、ヒヤリとする場面が多かった。「これは……」「フレンドリーファイア

Higit pang Kabanata
Galugarin at basahin ang magagandang nobela
Libreng basahin ang magagandang nobela sa GoodNovel app. I-download ang mga librong gusto mo at basahin kahit saan at anumang oras.
Libreng basahin ang mga aklat sa app
I-scan ang code para mabasa sa App
DMCA.com Protection Status