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第三十七話:影の葬列②

مؤلف: 花柳響
last update آخر تحديث: 2025-11-25 20:00:00

 斎の言葉は、正論だった。

 あまりにも合理的で、反論の余地がないほど完璧な論理。

 だが、その「正しさ」こそが、今の静には何よりも恐ろしく、醜悪なものに思えた。

 人の心がない。この人は、本当に人間なのだろうか。体温のない爬虫類が、人間の皮を被って喋っているだけなのではないか。

 その時だった。

 静の足元――畳に縫い付けられていた「影」が、ズズッ、と大きく蠢いた。

 激昂する静の感情に呼応したのか、それとも斎の言葉に反応したのか。

 直立していた影の輪郭が、崩れるように歪み、苦悶するような形状へと変化していく。

 そして、影の「手」が、静の足首ではなく、自らの「首」を絞めるような動作を始めた。

「……あ、が……ッ」

 静の喉から、空気が漏れるような音が漏れた。

 自分の首を絞められているわけではない。

 なのに、息が苦しい。

 喉の奥が、泥で詰まったように塞がる感覚。

 影が感じている「苦しみ」が、ダイレクトに静の神経に逆流してくる。

(くる、しい……たす、け……)

 頭の中に、ノイズ混じりの声が響く。

 それは燈の声だった。

 だが、いつもの明るい声ではない。沼の底から、泥水を吐き出しながら呻いているような、絶望的な響き。

「……燈?」

 静は胸を押さえ、涙目で影を見つめた。

 影は、苦しんでいる。

 助けを求めている。でも、それは「生きたい」という希求ではなく、「終わらせてほしい」という悲鳴のように感じられた。

 斎は、苦悶する静と影を冷ややかに見つめ、言った。

「見ろ。それが『残穢』の正体だ。現世に留まること自体が、彼にとっては永遠の窒息に等しい。君が『助けたい』と願って彼を繋ぎ止めることは、彼に終わらない溺死の苦しみを強いているのと同じだ」

 その言葉は、決定打だった。

 静の心臓を、冷たい針が貫く。

 私が、燈を苦しめている?

 助けたいという願いが、彼を縛り付けている?

「……そんな」

 力が抜け、静はその場に崩れ落ちた。

 影からの共感痛で、激しい吐き気が襲ってくる。胃の中のものが逆流しそうな不快感
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