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第1208話

作者: 風羽
自分の願乃だ。

彼女は二十二歳のとき、彼のもとに来た。

それを他人に渡せるはずがない。

だが、どうしようもなかった。

……

車は小刻みに揺れながら、空港の地下駐車場を抜け出す。

一時間後、静かに一軒の邸宅へと滑り込んだ。

そこはかつて、彰人と願乃がともに暮らしていた場所だった。

立都市に戻ってきた今も、彼はここを選んだ。

使用人はすでに総入れ替えされている。

涼香は現在、彰人の専属秘書として身の回りの世話を担っていた。

体調は以前よりずっと安定し、脳の手術も無事に終えている。

それでも彼女は離れなかった。

自ら辞めるとは言わず、彰人もまた、彼女を手放そうとはしなかった。

――とくに、願乃に恋人ができた今となってはなおさら。

涼香はこの邸宅には住んでいない。

少し離れた場所にあるマンションで暮らしている。

通いやすいようにと、彰人が用意したものだった。

この数年、涼香は彼を支え続けてきた。

その献身はもはや他人とは呼べないほどで――二人は半ば家族のような関係になっていた。

車を降りると、使用人たちが一斉に頭を下げる。

「氷室様、お帰りなさいませ」
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  • 私が去った後のクズ男の末路   第1208話

    自分の願乃だ。彼女は二十二歳のとき、彼のもとに来た。それを他人に渡せるはずがない。だが、どうしようもなかった。……車は小刻みに揺れながら、空港の地下駐車場を抜け出す。一時間後、静かに一軒の邸宅へと滑り込んだ。そこはかつて、彰人と願乃がともに暮らしていた場所だった。立都市に戻ってきた今も、彼はここを選んだ。使用人はすでに総入れ替えされている。涼香は現在、彰人の専属秘書として身の回りの世話を担っていた。体調は以前よりずっと安定し、脳の手術も無事に終えている。それでも彼女は離れなかった。自ら辞めるとは言わず、彰人もまた、彼女を手放そうとはしなかった。――とくに、願乃に恋人ができた今となってはなおさら。涼香はこの邸宅には住んでいない。少し離れた場所にあるマンションで暮らしている。通いやすいようにと、彰人が用意したものだった。この数年、涼香は彼を支え続けてきた。その献身はもはや他人とは呼べないほどで――二人は半ば家族のような関係になっていた。車を降りると、使用人たちが一斉に頭を下げる。「氷室様、お帰りなさいませ」「玉井様、お帰りなさいませ」……彰人は軽くうなずくだけで、そのまま二階へ上がっていった。涼香はその場に残り、細かな指示を出す。やがてすべてを終え、二階へ上がると――彰人はリビングにいた。ソファに座り、指先でその布地をなぞっている。まるで、何かを確かめるように。足音に気づき、彼は顔を上げることなく、静かに言った。「ここの家具、もう十年以上そのままだ。でも、替える気になれないんだ。願乃との思い出だから。なあ、涼香。願乃とあの男……藤宮陽斗との関係は長く続くと思うか?もし別れたら――その時、俺がもう一度彼女を追いかけたら……振り向いてくれると思うか?また、一緒にいられると思うか?」楓人は言っていた。彼の余命はあと二十年は問題ないと。その残された時間を彰人は願乃とともに生きたいと願っている。だが――その機会がまだ残されているのかは分からない。涼香の胸がぎゅっと締めつけられた。この三年間、彰人は一瞬たりとも楽ではなかった。ようやく帰国したと思えば、目の前にあったのは――願乃の新しい幸せだった。それでもなお、彼の想いは変わらな

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