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指先から③

Author: 藍沢咲良
last update publish date: 2026-09-15 15:27:12

その言葉に、呼吸が止まる。

氷室さんの手が、ゆっくりと私の手に重なる。

掴まれている裾の上から。

離させるでもなく。

強く握るでもなく。

ただ、重ねるだけ。

「今触ったら」

声が少し荒れる。

「もう、止められない」

心臓が跳ねる。

逃げなきゃいけないはずなのに。

「……止めなくて、いいです」

自分でも信じられないほど、静かな声だった。

その瞬間。

氷室さんの理性が、明らかに揺れた。

一度、完全に手を離す。

距離を取る。

深く息を吐く。

──離れようとしている。

分かる。

それが、この人の“最後の理性”だと。

「……っ」

思わず、腕を掴んだ。

弱い力なのに、止まる。

氷室さんの動きが、止まる。

視線が落ちてくる。

真っ直ぐに。

「……もう、いいから」

胸の奥から、言葉が零れる。

「氷室さんの、そういうところ」

「……」

「全部分かってて、言ってます」

沈黙。

長い沈黙。

そして。

次の瞬間。

氷室さんの手が、今度ははっきりと肩に触れた。

逃げ道を残した触れ方じゃない。

選んだ触れ方。

ゆっくりと引き寄せられる。

抵抗しようとは思わなかった。

むしろ、身体の方が先に預けていた。

胸元に額
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