Share

第76話

Author: 笹しぐれ
翌日、夕凪は腕の傷がまだ痛むのも構わず、警察署へ向かった。圭吾から事件の話を聞きたくて、じっとしていられなかったのだ。

「捜査の結果、写真に写っていた女性は、君の大学時代のルームメイト、葉山蓉子(はやま ようこ)で間違いないと裏が取れた」

圭吾の声は硬かった。

夕凪の体がこわばった。

写真を見た時から、蓉子ではないかとは思っていた。それでも、圭吾の口から決定的な事実を聞かされると、すぐには受け止めきれなかった。

夕凪は痛ましげに眉を寄せた。

「蓉子が……?それはつまり、清音を死なせた実行犯が蓉子だということですか?でも、どうして蓉子がそんなことを……彼女には、清音を殺す動機なんてありません」

大学時代、蓉子とは同じ寮の部屋でルームシェアをして暮らしていた。特別に親しかったわけではない。かといって、仲が悪かったわけでもない。

少なくとも、恨みを買うような覚えはなかった。

圭吾は少し間を置いてから続けた。「葉山さんが大学を卒業した年、両親が相次いで重い病に倒れたんだ。家の金は治療費に消えたが、父親はまもなく亡くなった。母親は半身不随になり、それからずっと寝たきりの状態にな
Continue to read this book for free
Scan code to download App
Locked Chapter

Latest chapter

  • 私を投獄した後、クズ夫は後悔に狂った   第216話

    夕凪がようやく肩の力を抜いた時、司は反射的に彼女の手を引き、場所を変えて話を続けようとした。だがその時、修一がスマホへ目を落とし、間もなく冷ややかな声を響かせた。「瀬戸夕凪。連絡用チャットを見ろ。視察団の集合場所が急きょ涼崎空港に変わった。乗れ。俺も行くから、ついでに送ってやる」今の夕凪は、とにかく一刻も早く司から離れたかった。すぐに車のドアを開け、乗り込んだ。シートベルトを引き出した時になって、ようやく何かがおかしいと気づいた。次の瞬間、夕凪は大きく目を見開き、鋭く息を呑んだ。瀬戸夕凪?視察団?連絡?夕凪は反射的にスマホへ目を落とした。確かに管理者から、集合場所を涼崎空港へ変更するという通知が届いていた。夕凪は言葉を失った。待って。修一は……どうして自分が瀬戸夕凪だと知っているのだろう。まさか前回、修一が望みもしないのに噂話を聞かされた、その当事者が自分だと、もう気づいていたのだろうか。それに、どうして修一まで連絡用チャットに入っているのだろう。あれは御堂グループの事業視察団だ。修一に何の関係があるというのか。修一の車の後部座席に座った夕凪は、体面を保つため、表面上は懸命に何事もない顔をしていた。だが胸の内では、すでに激しい波が荒れ狂っている!「あの……神崎社長、今ふと思い出したのですが、忘れ物をしてしまいました。ここで降ろしていただいて、取りに戻りたいのですが……」夕凪は驚きと後悔と焦りが入り交じった表情を作ってみせた。すべて演技なのに、演技だとは少しも悟らせないようにした。夕凪には、どんな相手でも騙し通せる自信があった。案の定、修一はうなずいた。「わかった」夕凪がようやく安堵しかけた時、修一は冷ややかな声で続けた。「次の交差点なら引き返せる。俺が忘れ物を取りに連れていく」修一は本当にハンドルを握り、今にも車を引き返させようとしている。夕凪の心臓が、びくりと震えた。夕凪は慌てて止めた。「あの……今、思い出しました。やっぱり持ってきたみたいです!戻らなくても大丈夫です!」「本当か?」修一が低い声で尋ねた。「はい、間違いありません……」すると修一は、あまりにも滑らかな動きでハンドルを切り戻し、そのまま元の方向へ走り続けた。夕凪は不意に、奇妙な感覚に襲われた。示

  • 私を投獄した後、クズ夫は後悔に狂った   第215話

    夕凪は小さくため息をついた。「私が司さんの立場なら、お姉さんを選びます。姉は一人しかいませんが、恋人ならいくらでも見つけられますから」夕凪は心から、自分の言っていることは少しも間違っていないと思っていた。だが司は、きっぱりと言い切った。「夕凪は、この世に一人しかいない!」おやおや、口ではずいぶんと立派なことを言う。夕凪は胸の内で半ば感心しつつも、冷ややかに見定めていた。「それなら、私が『お姉さんと縁を切ってくれたら結婚する』と言ったら、そうしてくれますか?」夕凪は司の目をじっと見つめた。瞬きもせず見つめ続けたのは、彼の顔に浮かぶどんな些細な変化も見逃さないためだった。もし司が少しのためらいもなく、微塵の後ろめたさも見せずに「必ずできる」と約束したなら、夕凪は迷うことなく彼の求婚を受け入れるつもりだった。もちろん、妻のために実の姉を裏切れるような男なら、いつか別の誰かのために妻を裏切る日が来るかもしれないことは、夕凪にもわかっている。それでも、司にそこまでの覚悟があるというのなら、自分にも彼と結婚する覚悟がある。その先で何が起ころうとも、絶対に後悔しない。しかし司は、ためらっただけでなく、視線を泳がせ、夕凪の目をまっすぐ見ることさえできなかった。司は気まずそうに、小さな声でつぶやいた。「どうして……そこまでして縁を切らなきゃならないんだ?夕凪、君はそんな女じゃないと思ってた。母親と恋人が同時に溺れたらどちらを先に助けるか、なんてくだらない質問で相手を試すような人じゃないだろう……」夕凪は怒るどころか、ふっと笑みをこぼした。「司さんご自身が、私を『女』だと言ったじゃないですか。女なら誰だって、そういう二者択一を気にするものです。ただ、直接口に出して尋ねる女もいれば、口には出さず、相手の行動を黙って見極める女もいる――それだけのことです。お姉さんの反対があまりにも激しいからこそ、私は直接尋ねるしかなかったんです」夕凪は笑っていた。だが司には、彼女の瞳の奥に冷たく砕けた氷が沈んでいるように見えた。そこには笑みも、わずかな温もりさえない。失望しているのではない。むしろ……重い肩の荷が下りたような、すっきりとした目だった。司は不意に言い知れぬ寒気を覚え、ブルッと体を震わせた。「夕凪、姉貴は君にひどいこと

  • 私を投獄した後、クズ夫は後悔に狂った   第214話

    視察団の専用車に乗り込むと、贅を尽くした広い車内にいるのは、なぜか夕凪ただ一人だった。夕凪は落ち着かず、座っていてもどうにも居心地が悪かった。これから峻に顔を合わせた時、どんな態度をとればいいのかわからない。夕凪は深く息を吸い込んだ。駄目だ。自分から取り乱してはいけない!今回は造園デザイナーとして、峻の率いる視察団へ参加するだけだ。あくまで仕事上の関係にすぎない。二人が元夫婦であることは事実だが、それもすべてはもう終わった過去のことなのだ!ところが集合場所へ着くと、夕凪を悩ませたのは峻ではなく、全く別の男だった。「夕凪!昨夜、何度も電話したのに、どうして出なかった!?姉貴に家に閉じ込められて……君に会いに行くなと止められてたんだ!さっき、ようやく隙を見つけて抜け出してきた!夕凪、出張へ行くのか?いつ戻るんだ?」突然現れた司は、夕凪の手を強くつかみ、焦燥に駆られた声でまくし立てた。その司の姿を一目見た夕凪は、驚かずにはいられなかった。確かに司は、しばらく「軟禁」でもされていたかのようなひどい有様だった。口の周りには、青黒い無精髭まで伸びている。それだけではない。これほどまでに緊張し、不安に苛まれている司の表情を、夕凪は今まで一度も見たことがなかった。いつもふざけたような笑みを浮かべ、自由奔放に振る舞っていた以前の桐生家の御曹司とは、まるで別人のようだった。夕凪は自分をつかむ司の手を静かに振りほどき、ぎこちなく答えた。「……日程は一週間です」「一週間!?」司は眉をひそめ、あからさまに不満を口にした。「どうして、そんなに長いんだ!?夕凪、行かないでくれないか。心配しなくていい。姉貴は俺が絶対に説得する。必ず俺たちの結婚を認めさせてみせる!結婚したら、君は妻として家にいて、家庭を守り、子供を育ててくれればいい。もう外に出て働く必要なんてないんだ!」必死で訴えかける司をじっと見つめているうちに、夕凪の脳裏に、かつて峻と結婚していた頃のある記憶が不意に蘇ってきた。ある日、帰宅した峻は、夕凪がソファに寝転がり、くだらないネットドラマを見ながら何の悩みもなさそうに笑い転げている姿を目にした。その時、峻は眉間に深く皺を寄せ、整った顔を険しくしてこう言い放ったのだ。「夕凪。俺には君を養っていく力がある。だが、君

  • 私を投獄した後、クズ夫は後悔に狂った   第213話

    「ええっ?夕凪さんって、どんだけ運がいいのよ!」ほかの女性社員たちは、揃って心底がっかりした様子だった。茜は冷たく言い放った。「夢を見るのはやめなさい。佐藤会長が全社員の経歴書を提出して、御堂グループから返ってきた答えが、条件に合うのは夕凪一人だけ、というものだったの。文句があるなら、御堂グループへ乗り込んで、御堂社長本人に問いただしてきなさい」誰も言葉を返せなかった。その瞬間、全員が一斉に口を閉ざした。誰も文句を言わないことを確かめてから、茜は顔面蒼白になっている夕凪へ向き直った。「今すぐ帰って、荷物をまとめてきなさい。あとでプロジェクトの連絡用チャットの招待QRコードを送るわ。出発時刻と集合場所は、管理者からそっちで通知されるから」茜はいったん言葉を切ると、念を押すように言った。「夕凪。今回の連絡用チャットには、私でさえ入る資格がないのよ。普段は外見を気にしなくても構わないけれど、今回の出張では、あなたの言葉も振る舞いも非常に重要になってくるわ。会社の代表として見られるのだから、身だしなみには常に気を配りなさい」借りている部屋へ戻り、荷物をまとめていた夕凪は、茜のあの意味ありげな言葉をふと思い出していた。自分だって馬鹿ではない。茜が言いたかったのは、自分がひどく垢抜けない、ということだと痛いほどわかっていた。ただ、茜が気遣って遠回しに言ってくれただけだ。自分は、いったいどれほど垢抜けないのだろう。夕凪は思わず姿見の前まで行き、頭の先から足元まで、鏡に映る自分の姿をじっと見つめ直した。身につけているのは、グレーのロングコート。その内側から白いパーカーのフードを覗かせている。ボトムスは濃い色のジーンズで、足元は白いスニーカー。長く黒い髪は、バンスクリップで後ろに無造作にまとめただけだった。夕凪は近視ではないが、生まれつき乱視があり、眼鏡を手放せなかった。透き通るほど白い肌に、墨のように黒い髪。黒縁眼鏡のせいで顔の白さが一層際立ち、どこまでも地味で飾り気のない印象を与えている。以前の夕凪は、フレーム眼鏡など絶対に使わず、常にコンタクトレンズをつけていた。峻には、少しでも美しい自分を見てもらいたかったからだ。刑務所に入ってから眼鏡を使うようになり、出所後もすっかりそれに慣れてしまっていたのだ。ただし

  • 私を投獄した後、クズ夫は後悔に狂った   第212話

    峻は言葉を失った。謝罪一つに、これほど多くの作法と駆け引きがあるとは、思いもよらなかった。企業を買収したり、株式市場で防衛戦を指揮したりするよりも、はるかに複雑じゃないか。考えるだけで頭が痛くなる!だが、どれほど頭が痛くても、峻は知景の言った内容を一つ残らず胸に刻み込んだ。翌日、夕凪が出社すると、茜が彼女の席まで歩いてきて、指の関節でコンコンと机を叩いた。「夕凪、あなたには瀬戸グループの案件から外れてもらうわ」夕凪は目を丸くした。そばにいた同僚たちも、驚いて動きを止めた。どうして?どうして彼女だけ、あんな激務から抜け出せるの?同僚たちから羨望と嫉妬と恨めしさが入り交じった視線を浴びる中、夕凪は表面上こそ平静を装っていたが、胸の内では飛び上がりたいほど喜んでいた。昨夜は不安のあまり、何度寝返りを打っても眠れなかったのだ。今回の案件を通じて志織と顔を合わせれば、志織は必ず自分の本当の身分を暴露するだろう。それだけではない。自分を陥れるために、あらゆる手を使い、会社へ圧力をかけて解雇させることさえ考えられる。今の自分には何の後ろ盾もなく、志織と争える資格も力もなかった。そもそも、争う気すらない。自分はこれからの人生を、誰とも関わらず穏やかに生きたいだけだった。夕凪が心の中で快哉を叫んでいると、茜は言葉を継いだ。「明日、御堂グループの御堂峻社長が自ら視察団を率いて、南嶺県朝峰町で進めている文化観光プロジェクトの視察に向かう。参加するのは、技術会社、建築設計会社、造園設計会社、企画運営会社の各代表。そのうち、当社の造園設計代表として、あなたに行ってもらうわ」夕凪は言葉を失った。目の前が真っ暗になり、そのまま気を失いそうになった。み……御堂峻!?お願い、嘘だと言って!「一難去ってまた一難」とはまさにこのことだと、夕凪は身をもって思い知らされた。夕凪は小声で懇願した。「森本主任、私のような経験不足の者では、それほど重要な大役は務まらないと思います……私は残って瀬戸グループの案件をやりますので、視察はどうか別の方にお願いできませんか?」それを聞いた同僚たちは、夕凪は頭がおかしくなったのではないかと疑った。隣の女性社員はすぐさま勢いよく手を挙げ、興奮した声で叫んだ。「私が行きます!森本主任

  • 私を投獄した後、クズ夫は後悔に狂った   第211話

    全部、昔の同級生である峻のせいだ。あの男に、まんまと嵌められたのだ!昨夜、十年以上会っていなかった小学校の同級生・峻から突然電話があり、知景はある頼み事を持ちかけられた。もちろん、ただの頼みではない。その見返りとして、峻は桐生グループと三年間の提携契約を結ぶと約束してきたのだ。知景は最初、内心で小躍りするほど喜んでいた。だが今は、引き受けたことを死ぬほど後悔している。知景と司は、幼い頃からとても仲のいい姉弟だ。弟が心から大切にしている女に、姉が裏で嫌がらせをしていたと知られでもしたら、どれほどの修羅場になるかわからない。ところが峻は、頭を抱える知景の苦情などまるで意に介さず、さっさと一方的に電話を切ってしまったのである。通話を終えたあとも、峻の胸の昂りは少しも収まっていなかった。わざわざ知景を巻き込んでまで仕掛けた今回の探りは、ようやく彼に望みどおりの結果をもたらした。夕凪と司の間には、本当に何もないのだ!御堂グループの次期総裁たる峻は、今や自宅のソファから弾かれたように立ち上がっていた。家に使用人たちがいなければ、喜びのあまり大声で叫んでいたに違いない!そう、峻は心の底から歓喜していた。夕凪を取り戻す機会がまだ自分に残されていると、ようやく確信できたからだ。ところが、その時また知景から電話がかかってきた。電話に出るなり、知景が怒りに満ちた声でまくし立てた。「ちょっと御堂峻、用済みになったらポイ捨てってわけ!?人の話を最後まで聞かずに、勝手に電話を切るなんて!」峻は淡々と言った。「提携の契約書を用意して、来週俺のところへ持ってこい」知景は一瞬、言葉を失った。そして、さらに腹を立てて声を荒らげた。「御堂峻!私たち、いちおう小学校の同級生でしょう!私がそんなに、金と利益でしか動かない女に見えるわけ!?私が言いたいのは別のことよ。瀬戸夕凪はあなたの前妻じゃない?彼女の性格くらい、よくわかってるでしょう!一度は夫婦になった仲なんだから、こそこそ探るより、直接会ってきちんと謝れば済む話じゃないの!」峻は、仮にも御堂グループの次期総裁だ。世間では「冷徹無比な帝王」と恐れられている男でもある。それなのに今回は、人目を忍んでコソコソと嗅ぎ回り、まるで泥棒みたいな真似をしている。こんな姿が世間

  • 私を投獄した後、クズ夫は後悔に狂った   第3話

    二十分後。忠はアクセルを踏み抜かんばかりの勢いで車を飛ばし、ようやく最短時間で峻を本家へ送り届けた。玄関をくぐるなり、御堂グループの次期総帥ともあろう峻が、またしても祖母にこっぴどく叱り飛ばされた。峻は一言も言い返さず、黙って叱責を浴びていた。が、頭の中では別のことを考えていた。御堂家の先代当主と夕凪の外祖父――瀬戸グループの創業者は、血の繋がりこそないが義兄弟の契りを結んだ仲だ。夕凪は幼い頃からしょっちゅう本家に遊びに来ていた。静江には三人の息子と一人の娘がいて、孫も五、六人、さらに外孫娘もいる。けれど昔から誰よりも可愛がっていたのは、血の繋がりのない夕凪だった。御堂家の

  • 私を投獄した後、クズ夫は後悔に狂った   第2話

    刑務所を出た夕凪が真っ先にしたことは、銭湯へ行って湯につかることだった。まずはこの身にまとわりついた穢れを、きれいさっぱり洗い流したかったのだ。浴槽に足を踏み入れ、熱い湯の中にゆっくりと体を沈めていく……ああ、気持ちいい。思わず目を閉じて、浴槽の縁に頭をもたせかけた。あまりにも穏やかで、あまりにも安らかで――ずっと張り詰めていた糸がふっとほどけた途端、記憶の底に沈めていたものが、ひとりでに浮かび上がってきた。六年前、御堂グループは突如として経営危機に陥った。窮地を脱するため、峻は自ら夕凪のもとを訪れ、プロポーズした。瀬戸グループに支援させるための政略結婚だった。父は反対して

  • 私を投獄した後、クズ夫は後悔に狂った   第1話

    刑務所の門を出た瞬間、冷たい風が吹き抜け、枯れ葉がカサカサと舞い落ちた。真冬だというのに、瀬戸夕凪(せと ゆうなぎ)は目を閉じ、外の空気を貪るように胸いっぱいに吸い込んだ。三年前、裁判長から重々しく非情な判決が言い渡され、殺人の罪で懲役三年が確定した。そして今日、ようやくその刑期を終えたのだ。ふと視線を上げると、遠くの路肩に艶やかな漆黒の高級車が停まっていた。見覚えのある一台だった。心臓が、大きく跳ねた。――あの人だ。御堂峻(みどう しゅん)。途端に、三年前の光景がまざまざと脳裏に蘇る。法廷で、峻は夕凪が彼の初恋の相手――涼風清音(すずかぜ きよね)を殺害したと

  • 私を投獄した後、クズ夫は後悔に狂った   第9話

    「ふざけんな!たかが掃除のおばちゃんの分際で、俺に楯突こうってのか。ただで済むと思うなよ……!」惟人が激昂して腕を振り上げ、力任せに打ち下ろしてきた。夕凪の背後は壁だった。逃げ場などどこにもない。迫ってくるその手を、目を見開いたまま見つめることしかできなかった。「唐沢さん、相手はただの清掃員ですよ。そこまで熱くなることはないでしょう」ちょうどその時、ドアを押し開けて司が入ってきた。にやにやと笑いながら。司の姿を見て、惟人の腕が宙で止まった。彼は忌々しげに舌打ちして、手を下ろした。司が、早く行けとばかりに夕凪へ目配せをした。夕凪ははっと我に返った。顔面は蒼白だった

More Chapters
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status