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第85話

Auteur: 笹しぐれ
――私って、なんて馬鹿なの。

夕凪は一歩後ずさった。

車内からこちらを見る冷酷な男の顔を見つめながら、できることならこのまま通りを挟んで向かい側まで逃げ去ってしまいたかった。

「お二人とも用事があるみたいだし、忙しいんでしょう。それなら、私はもうお邪魔しないわ」

この瞬間、夕凪の心は完全に冷えった。

もしこの男との離婚を望むなら、残された希望は圭吾ただ一人だ。圭吾が一日も早く事件の真相を解き明かし、無実を証明してくれることを祈るしかない。そうすれば、峻も自分への無意味な復讐を諦め、離婚に同意するはず!

夕凪は背を向けて立ち去ろうとした。

「夕凪」

だが、峻は無言で車を降り、夕凪の前に回り込んでその行く手を遮った。

「瀬戸さん!」

その時、傍らから別の男の声が響いた。

峻と夕凪が振り返ると、一人の刑事がこちらへ向かって歩いてくるのが見えた。

圭吾だ!

夕凪は驚きと同時に、激しい緊張に襲われ、無意識に峻の顔色を窺った。

圭吾が三年前の事件を再捜査していることを、今ここで峻に知られるわけにはいかない……

峻は圭吾を一瞥し、次いで夕凪を見ると、不快げに眉をひそめた
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