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第84話

Auteur: 笹しぐれ
夕凪は呆然と峻を見つめた。

視線がぶつかったまま、胸の中でいくつもの複雑な感情が入り混じる。

峻の声には、疑いようのない強固な意志が宿っていた。

これまで何度も離婚を切り出してきた。けれど、そのたびに峻は頑なに拒絶した。

峻は、いったい何を考えているのだろう。

本当に、自分と離婚したくないのだろうか?

血の気の引いた夕凪の唇が、かすかに震えた。

「でも……私たちの結婚は、とっくに終わっているのよ。このまま無理に繋ぎ止めても、お互いを苦しめるだけだわ。だったら、きちんと別れて、それぞれやり直したほうがいいじゃない」

頭の中がぐちゃぐちゃに乱れていた。

認めたくはなかったが、峻のその言葉で、完全に冷え切っていたはずの心がまたドクンと揺さぶられてしまったのだ。

峻の声は低く、そして重かった。そこには、かすかな怒りさえ滲んでいる。

「俺の辞書に、『諦める』なんて言葉はない。結婚は遊びではない。一度結ばれた以上、それは一生のものだ」

それが、峻の絶対的な結婚観だった。

上流階級の世界では、別離や裏切りなど少しも珍しくない。醜い愛憎劇も、泥沼の愛人関係も、掃いて捨てるほど
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Commentaires (1)
goodnovel comment avatar
碇ワンワン
痴態を軽蔑してるのに愛人は捨てない?
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