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私を散々泣かせたクズ男たちが、今さら本気で愛してくる
私を散々泣かせたクズ男たちが、今さら本気で愛してくる
Autor: すずかん

【第一章】地雷系ホスト・みおん 1

Autor: すずかん
last update Última atualização: 2026-01-12 16:43:06

最初は、本当に夢みたいだった。

深夜まで続くLINEのやりとり。

既読がついただけで胸が跳ね上がり、そんな小さなことで一日が光るほどだった。

「お前のこと、本気で好きになりそう」

それが営業トークだと頭ではわかっていた。

けれど、その言葉の温度は確かに私の肌を温め、理性の隙間からじわじわと入り込んできた。

誰かを一目で心ごと奪われる感覚を持ったのは、生まれて初めてだった。

だから、彼の言葉が偽りだとわかっていても、私は信じる“ふり”をした。だって、騙されても一緒にいたかったから。

目の前に差し出された幻想を受け取るほうが、冷めた現実を抱えるより、まだ救われると思った。

馬鹿だと笑われてもいい。

私は、狂うほどあなたを愛している。

***

薄暗い店のソファ席。柔らかな照明は輪郭をぼやかし、誰の顔も少しだけ美しく見せる。

香水とタバコの匂いが混ざり合い、空気は静かに湿っていた。

グラスの中で氷がひとつ、チリ、と音を立てる。その小さな音にすら、胸の鼓動はひとつ跳ねた。

みおんはスマホを弄りながら、何気ないふうに言った。

「ねえねえ、今週ほんとに厳しくてさ。助けてくれない?」

その瞬間、あざとく演出された無垢の表情が顔をのぞかせる。

大きなくりくりの瞳、ふっくら光る涙袋、すっと通った鼻筋に白い肌――私の好みにぴたりと重なる顔が、上目遣いでこちらを見つめていた。

私は知っている。こういう「助けて」には、いつも金額が伴うことを。

反射的に出た声は震えていた。

「え……シャンパン?」

「うん。」

みおんの返事は簡潔で、どこか無邪気だった。

膝にそっと手を置き、上目遣いで寄せる仕草。

世界が一瞬だけ、光を増したように感じられる。

私の内側には、ふたつの自分がいた。

――生活を切り詰めて、やっとここに来た自分。

――彼の隣にいられるなら、何でも差し出したい自分。

「……ごめん、今日ちょっと厳しくて」

言葉と同時に視線を逸らす。

胸の中では、錐が回るように痛んだ。

財布の紐を締め、冷蔵庫の残り物を数えた夜を思い出す。

ここで頑張ったところで、明日の食事がどうにかなるわけではない。

それでも、彼の笑顔のために、私はいつも自分を削っていた。

みおんは顔をゆっくりとこちらに向け、柔らかく声をかける。

「俺には紗月ちゃんしか頼れる人がいないんだ。弱音吐けるのも紗月ちゃんだけだよ?」

包み込むようなその台詞は、同時に私の胸を締め付けた。

「う…うん。力になりたいとは思ってるよ。でもさすがに今日はお金が。」

自分でも情けなくなるほど、弱々しい声だった。

みおんは一瞬だけ真剣な表情を見せ、少し切ない笑みを浮かべる。

「前にも言ったけどさ、俺、成人する前に両親を亡くしてて…親戚もいないんだ。だから本当はね、紗月が世界の全部なんだよ? つい頼っちゃってごめんね? でも紗月だけは離さないでほしいな。」

傷を見せるその語り口は同情を誘い、私をさらに馬鹿な女にさせる。

彼の肩に抱かれると、その温もりは一瞬、真実に思えた。

けれど、わかっている。

この人は、私のものにはならない。

彼の「好き」は、店の時間とともに巡り、誰にでも向けられるものだと。

店内に明るい声が響いた。

「姫様シャンパン入りました――!」

キャストたちが寄ってきて、シャンパンコールが始まる。私はその中心で、拍手の波に呑まれながら笑っていた。笑顔は板についている。

けれど、その下で、何かが静かに崩れていく音がする。

彼の「ありがとう」「好きだよ」という言葉は、私を高揚させながら、砂の城を少しずつ崩していく。

それでも私は席に留まった。

危険だと知っている恋を、今日もまた選んでしまう。

背中に刺さる冷たさを感じながら、彼の手の温もりを、しっかりと握りしめた。

自分がその瞬間に何を失っているのか、まだ全部はわからない。ただひとつ、わかっているのは――

いま、ここにいることが、私にとって何より欲しかったということだけだった。

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