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【第29話】夜明けの問いかけ

last update 최신 업데이트: 2025-11-30 22:58:57

夜明け前の空気は、まだひんやりと冷え、その透明な静けさが、琉苑の胸の奥を柔らかく刺した。

寝台の縁に腰を下ろし、重ねた布をそっと撫でながら、彼はぽつりと言葉を吐いた──

「人って、やめられるのか?」

問いは小さく、しかし重く落ちた。

それはシュアの話を聞いたからだ。幾度目かの自分と竜との話。

隣で、シュアは目を覚まし、深い瞳で琉苑の顔を覗き込んだ。

その瞳に映る月光は冷たく、しかし熱を灯すように揺れていた。

静かに呼吸を繰り返す竜の胸。

その鼓動と夜気が、琉苑の感覚をぐらりと揺さぶる。

「……何を、言い出す」

低く、けれど怒りは混じらない。

その声に、琉苑は真っ直ぐ視線を返した。

「お前と、生きたい。……だけど、この“人”のままじゃ、いつか終わるんだ。それが……嫌だ」

言葉に嘘はなかった。

胸には熱さと、冷たさと、切なさとを、全部をごちゃ混ぜにした感情が渦巻いている。

今の自分になって、まだこの男と長くいたわけではない。

契りだって、交わしてはいない。

けれど、そうした思いを持ってしまうのは積み重なった運命なのか。

竜はしばらく黙ったまま、その瞳を琉苑に据えた。そして、ゆっくりと唇を開いた。

「人を、やめることはできる。我はそれを知ろうと思った」

その言葉は、静かすぎて――儀式の鐘のように――胸に響いた。

「だが、人であることを――捨てるなら」

声に切り出すように、竜は言った。

「それは“死”に等しい。肉体も、名前も、記憶も、形も。すべてを脱ぎ捨てることになる」

ため息のように零れたその言葉に、琉苑の胸がきしんだ。

「それでも……」

言いかけたとき、竜の手が伸び、琉苑の唇が首筋へ、頬へ、静かに降りた。

熱を帯びた吐息が肌を撫で、琉苑の背筋に小さな震えが走る。

「生き様を変える──それが望みなら、選べ。だが覚えておけ。変わるということは、何かを捨てるということだ」

指先が髪を梳き、肌をなぞるように。

その所作は、祈りにも見えて、呪いにも見えた。

琉苑は息を呑み、目を閉じた。胸の奥で、戦うように、理性と欲望が交錯する。

(……俺は……お前と、いつまでもいたい。でも……)

きらきらと残る月影。遠くで風が吹き、夜気が喉を打つ。

「……俺は、どうしたいんだろうな」

声は震えた。

けれど、竜の手は離れず、その温度は温かい。

「考えておけ。安易に決めることではない。覚悟があるな
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