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助け

Auteur: 伊桜らな
last update Date de publication: 2025-08-13 22:33:18

目が覚めると、白い天井が視界いっぱいに広がっていた。淡い光が漏れる病室の天井は見覚えのないものだった。目だけでキョロキョロと周囲を見渡すと、ベッドの横には点滴の袋が揺れている。窓の外では、遠くから人の声や足音が微かに聞こえてきた。

「……ここは……っ」

 呟く私の声は乾いていた。頭の中で記憶をたどる。今朝、私は新幹線に乗っていたはずだ。大阪から東京へ戻る途中、車内でモバイルオーダーサービスの対応をしていた……。そして、次に思い出したのは、体がふらつき、誰かの腕に支えられたことだった。

 ドアが開き、女性の声が柔らかく響いた。

「望月さん、目が覚めましたか?」

「……はい。ここはどこですか? あなたは」

「ここはさくらファミリー総合病院です。私は看護師の和久井といいます。今、先生が来てくださいますので」

 その声に少しだけ安心する。緊張と恐怖で固まっていた体が、わずかにゆるむ。

 ドアをノックする音がして、白衣の男性が入ってきた。

「初めまして、望月さん。私は産婦人科医の佐倉といいます。倒れられた時のこと、覚えてますか?」

「いえ……でも、誰かに支えられたことは覚えています」

 先生の穏やかな声に、胸が少し落ち着く。

「そうですか。今回倒れられたのは、脱水症状と軽い栄養失調です」

「栄養失調……?」

 確かに最近、食事がまともに取れていなかった。吐きづわりで気持ち悪く、水すら思うように飲めなかったことを思い出す。今日もまだ何も口にしていない。胸の奥で小さく、焦りと自己嫌悪が渦巻く。

「歩けていたのが不思議なくらいですよ。望月さんは妊娠悪阻という病気になります。点滴をしていくので、一週間の入院をしましょう。病室に移動しますが、よろしいですか?」

「はい、……大丈夫です。よろしくお願いします」

 「病気」と名前を付けてもらえただけで、なんだか少しほっとした。自分が弱くなったわけではなく、身体がちゃんとサインを出してくれたんだ——そう思えたからだ。

「あ、先ほど友人の方が荷物を持ってきてくださったので、一緒に運びますね」

 言葉の最後まで聞こうとしたのに、安心感と疲労に押され、再び意識が薄れていった。

 次に目を開けると、外は真っ暗になっていて、病室の雰囲気も少し違っていた。

「部屋が違う……そういえば病室変わるって言ってたな……それに、一週間の入院か……所長に話をしないと」

 頭の中で、仕事のことがすぐに浮かぶ。強気で「今まで通り働けます」と言ってしまったのに。この体調では到底無理だ。怒られるだろう、最悪異動かもしれない——。焦燥感と不安で胸がぎゅっと締め付けられる。

 翌日のお昼、病室の扉が開き、桃花と所長が入ってきた。

「調子はどう?」

 桃花の笑顔は安心感をくれるけれど、所長がわざわざ病院まで来てくれたことには驚いた。身体が熱くなる。点滴の影響もあり、まだ起き上がることは難しい状態だった。

「所長……こんな状態ですみません」

「無理に起きなくていいわよ。そのままで大丈夫。少し話をしたくてね」

 優しい言葉に、胸の奥の緊張が少しだけ解ける。ベッドに身を預けたまま、耳を傾ける。時短勤務を勧められるのか、それとも休職を——。今の体では働くことなんて想像もできなかった。

「望月さん、これは提案なんだけど、福利厚生の“つわり休暇”を使わない?」

「えっ、そんなのがあるんですか?」

 思わず目を丸くする。無給になるとはいえ、二週間の休暇が取れるという。入院の期間だけでも使えるとの説明に、少し安心した気持ちが湧く。

「また書類を持ってくるわね。じゃあ私は帰るわね」

 所長が帰った後、桃花が部屋に入る。

「花耶、少しだけ顔色良くなったんじゃない?」

「え、そうかな。点滴のおかげかも……吐き気もないし。でもベッドとお友達だけどね」

 桃花は鞄から袋を取り出し、中身を差し出した。

「これは頼まれてた母子手帳」

「ありがと、桃花。母子手帳だけは部屋に置いたから助かった」

 袋の中には服も入っていた。退院時のことを考えると本当に助かる。心の中で、改めて桃花の存在のありがたさに感謝した。

「いいよ、いいよ。そういえば、花耶を助けて救急車呼んでくれたの、ここの病院の人なんだけど会った?」

「えっ、駅の人じゃないの?」

「あれ聞いてない? 倒れそうになった時に受け止めてくれたんだよ。清水川さんっていうんだって。救護室まで運んでくれて、救急車も呼んでくれたの」

 胸の奥が温かくなる。同時に、誰も教えてくれなかったことに少し寂しさも覚えた。直接お礼も言えずに終わってしまうかもしれない——。

「お医者様に聞いてみたら? この病院の先生なら知ってるんじゃない?」

 桃花の言葉で少し気持ちが楽になる。回診の時間になれば、佐倉先生に聞いてみようと決めた。

 回診の時間、佐倉先生が看護師さんと一緒に病室に入ってきた。

「……あぁ、清水川のことですね。では、貴女が会いたがっていることを伝えます。彼も気にしていた様子だったので」

「ありがとうございます。よろしくお願いします」

 その声を聞くと、胸の奥が少しだけ高鳴った。どこか懐かしい、聞き覚えのある名前の響き——。だけど答えはまだ思い出せない。睡魔がゆっくりと意識を侵食し、私は深い眠りに落ちていった。

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     あの連絡からようやく食事会か実現し会えることになったのは二週間後のことだった。お医者さんはやっぱりお忙しいらしい。「わ〜、やっぱかわいいね。そういう服!」「ごめんね、桃花。朝早く来てもらっちゃって」「ううん。久しぶりに花耶のことを着飾れてよかったよ」 今日は仕事用のメイクではなくちゃんとしたメイクをしようと桃花に来てもらいしてもらった。服もマタニティ服だけど、ブランドの可愛らしい服を買ってそれを着た。「でもやっと会えるね。今日は呼び出しとかないといいね」 本当にそうだよ。今まで、三回ほど約束したけどオンコールがあったり緊急手術で要請があったりと待ち合わせて一分で病院に行ってしまうこともあったし……今日こそはちゃんと話をしたい。「今日は迎えに来てくれるんだっけ」「うん、今日はちゃんと休み宣言してくるって言ってたから」「そっか。なら安心だね」 そんな話をしていると、スマホがピコンと鳴った。「来たみたいだから行くね」「じゃあ玄関まで送るよ」 彼女と一緒に部屋を出て下に降りると、この前よりラフの服を着た清水川さんがいた。「おはようございます、花耶さん」「おはようございます。今日は迎えに来ていただいてありがとうございます」「そんないいよ。俺のほうこそ、何度もドタキャンしてしまってごめんね」 挨拶を交わしていると、後ろにいた桃花も挨拶をした。「おはようございます。今日は花耶のことよろしくお願いしますね」「はい。お任せください」  一言二言話すと桃花は「行ってらっしゃい」と言い寮の中に入って行った。その後ろ姿を見ていると清水川さんにひとまず車に乗ろうかと誘われて車を停めてきたという場所に向かった。「車ってあれですか?」「うん、そうだよ。この前乗ったのは仕事用で、これはプライベート用」「そうなんですね……意外ですね、ファミリーカーなんて」「あはは、よく言われるよ。なんか好きなんだよね。後部座席倒すとベッドになるから旅行とかのとき楽だしいっぱい荷物詰めるんだよ。よくバーベキューとかキャンプやる時に重宝してる」 バーベキューするんだ……それも意外だ。それにキャンプも。すごいなぁ 清水川さんは車を開けると乗る時に手を出して支えてくれて楽に乗ることができた。「シートベルトはこれ。やってもいい?」「はい。お願いします」 そう言え

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