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第63話 欲しかった言葉

Autor: 宵更カシ
last update Fecha de publicación: 2026-09-01 07:18:47
プロポーズの言葉はまだ無いけれど。

薬指に嵌めた指輪は、確かな意味を示してる。

でも・・・・・・と私はベッドから起き上がって口にした。

「彼の口から聞きたい」

二度目の精密検査で、

「もう大丈夫でしょう。退院です」

怪我の度合いがそこまで大きくなかったからか、一週間程度の入院で済んだ。

これで仕事に戻れる。

でもその前に、慎太郎に聞かなくちゃいけないと思った。

指輪を渡すだけだなんてあまりに寂しい。

「本社へお願いします」

私は運転手に告げると最初は困惑していたが、

「慎太郎に会いたいの」

伝えて納得してもらえると、サムズアップまでしてくれた。

「香織?!」

社長室に入ると、慎太郎のあたふたした声が聞こえてくる。

直行してきたことがそんなに意外なんだろうか?

「体はもう大丈夫なのかい?」

「うん。異常ないって」

「そっかぁ」と、彼は胸を撫で下ろしていた。

「それでね」

と私は切り出して、左の薬指を押さえる。

言うんだ。しっかり。

「この指輪の意味なんだけど、慎太郎の言葉で聞きたいの!」

流れ
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    プロポーズの言葉はまだ無いけれど。 薬指に嵌めた指輪は、確かな意味を示してる。 でも・・・・・・と私はベッドから起き上がって口にした。 「彼の口から聞きたい」 二度目の精密検査で、 「もう大丈夫でしょう。退院です」 怪我の度合いがそこまで大きくなかったからか、一週間程度の入院で済んだ。 これで仕事に戻れる。 でもその前に、慎太郎に聞かなくちゃいけないと思った。 指輪を渡すだけだなんてあまりに寂しい。 「本社へお願いします」 私は運転手に告げると最初は困惑していたが、 「慎太郎に会いたいの」 伝えて納得してもらえると、サムズアップまでしてくれた。 「香織?!」 社長室に入ると、慎太郎のあたふたした声が聞こえてくる。 直行してきたことがそんなに意外なんだろうか? 「体はもう大丈夫なのかい?」 「うん。異常ないって」 「そっかぁ」と、彼は胸を撫で下ろしていた。 「それでね」 と私は切り出して、左の薬指を押さえる。 言うんだ。しっかり。 「この指輪の意味なんだけど、慎太郎の言葉で聞きたいの!」 流れる雲が一瞬、止まったように思えた。 私の言葉に沈黙して、言い掛けようとしたときだった。 「ごめん香織。その言葉、少しだけ待ってくれないかな」 「え?」 その返事に、私はめまいがしてしまった。 だって指輪を渡されて、言葉は待って欲しいなんて分からなかったからだ。 「違うの? 私と結婚しようって」 「違くない。でも、まだなんだ」 どういう意味・・・・・・。 私は拳を握ってしまっていた。 それは欲しい言葉を言ってくれない怒りなのか。 本当の意味を知りたいじれったさなのか。 「ねぇ・・・・・・言ってよ」 自分でも駄々をこねてるっていうのは分かってる。 でも、でもでもでも。 私は社長室を飛び出してしまった。 「香織っ!」 追おうとする慎太郎だが、その背中は見守るしかなかったんだろう。 社長室からは出てこず。 私はロビーの裏の方で一人、泣いてしまった。 なんで、こんなに強欲になってしまったんだろうか。 慎太郎が私の事を好きでいるっていうことが、そうさせてしまったんだろうか。 早く欲しいと願ってしまう。 一週

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  • 豪華客船で棄てられた社長令嬢の私が、海を統べる剛腕御曹司(幼馴染)に溺愛されています   第59話 コンフリクト

    そのお願いに頷けなかった。 信じていないわけじゃない。 役に立つって分かってる。 全てを終わらせる為。 でも、それでも。 「ごめんなさい」 彼に深々とお辞儀をして謝る。 逡巡していた。 田沢湖 羽海の前に出ることが。 「少し、考えさせて欲しい」 私は苦い顔をして言う。 きっと慎太郎は困ってしまうだろうと思った。 でも彼は、 「ううん。ゆっくり考えて欲しい」 私にも、これが田沢湖 羽海の意志を挫くには最良だと考えていた。 けれど同時に恐怖が背筋を伝っている。 私はそのまま社長室を出て、一人レストランへ向かった。 カウンターの席で、サラダを頬張りながら、 「どうしたら、良いんだろう」 ぼやいてしまう。 今まで、慎太郎のお願いには無条件で頷いてきたはず。 なのにこれだけは譲れない。 私は、私自身が大切なのだ。 情けない・・・・・・。 慎太郎たちは命を張って、戦ってるのに―― 「やぁ香織君」 不意に声を掛けられて、俯きがちだった顔が上がる。 「立花さん」 「珍しいね。一人なんて」 「ちょっと考え事していて」 そういうと、立花さんの気さくな笑みが曇る。 「喧嘩かい?」 「そういうのじゃないんです。ううん、私自身で喧嘩してるのかも」 自分で言っていて、意味が分からない。 けれど彼は汲み取ったみたいで、 「コンフリクトって奴かな」 「え?」 コンピューターで競合、つまりぶつかり合ってることを意味する言葉だ。 「考えがぶつかり合ってるってことだよ」 確かにそうだ。 心が揺れている。 慎太郎のお願いに応えたい自分と、恐怖で足が竦んでいる自分。 情けないという自責と、立ち向かいたい勇気。 言い得て妙だと思った。 「詳しくは聞かないよ。でも、君には君にしかできないことがあるんじゃないかな」 「私にしかできないこと?」 「あぁ。成すべき事を成す。リスクを背負っても、与えられた使命なら果たすだけ。僕の矜持かなこれは」 この人は察してくれてるかもしれない。 慎太郎が何をしようとしてるのか。 私がどうなってしまうのか。 それで背中を押してくれている。 信じても良い。 今までだってそうだった。

  • 豪華客船で棄てられた社長令嬢の私が、海を統べる剛腕御曹司(幼馴染)に溺愛されています   第5話 意外な最初の反撃

     邪魔者が消えた客船で、「んんぅもっとよぉ純」 寝言を言う羽海の隣で、俺は人生最高の朝を迎えた。 日野内グループの不正が世に出回り、暴落した株を俺達『一条グループ』が買い占めた。 これで莫大な資産、そしてこの船は俺の物。「お前は最高の女だよ羽海」 成功の喜びで恋人と唇を交わし続けた俺は、横に寝る女の頬を撫でる。 『田沢湖 羽海』が不正の話を手にしていなかったら、俺はあいつの言いなりになっていただろう。 親父の代から、日野内の奴らは気に食わなかった。 俺達が築き上げてきた業績を、まるで自分の功績のように語ってのし上がりやがって。 だが、あそこまで蔑まされて、反撃の一つもでき

  • 豪華客船で棄てられた社長令嬢の私が、海を統べる剛腕御曹司(幼馴染)に溺愛されています   第4話 エルアリナイトの王様

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  • 豪華客船で棄てられた社長令嬢の私が、海を統べる剛腕御曹司(幼馴染)に溺愛されています   第3話 方舟の中で誓いは呼び起こされる

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  • 豪華客船で棄てられた社長令嬢の私が、海を統べる剛腕御曹司(幼馴染)に溺愛されています   第2話 海賊たちとオサの声

     冷たい海水から這い上がったとき、デッキからこちらを見下す二人と目が遭う。「ほらあそこ見ろよ。お前のために用意したボートだぞ」 ボートを見つけた私は必死に泳ぐ。 たどり着いて乗ろうとするも、手が滑ってなかなか上がれない。「がんばれがんばれ。早くしないとサメに食われちゃうぞ」「泳がないと餌になっちゃうよぉ香織ちゃん。サメさんも不味くて捨てちゃうかキャハハ」 ようやくたどり着いて這い上がる。 するとデッキでは二人は熱いキスを交わし、「ねぇ私が言った通りでしょう?」「あぁ。これで日野内グループは俺の物だ」「私たち、のでしょ」 手を振ったり、指を差したり――私の命を弄んで笑う。

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