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第十章:変わりゆく日常

Author: 佐薙真琴
last update Last Updated: 2025-12-17 07:54:00

 それから、二人の関係は密かに続いた。

 表向きは義理の兄弟。

 だが、誰もいない場所では――恋人のように。

 レオンの日常は、少しずつ変化していった。

 仕事の合間にアレクシスのことを考えている自分。

 彼からの連絡を待っている自分。

 次に会える日を楽しみにしている自分。

 以前のレオンなら考えられなかったことだ。

 ある日、レオンとアレクシスは青山のカフェで会っていた。

 ガラス張りの店内は明るく、若い客で賑わっている。

「兄さん、次の仕事は?」

「ミラノでのファッションショー。お前は?」

「ソウルで撮影。残念、すれ違いですね」

 二人は普通に会話をしている。

 だが、テーブルの下では、足が絡み合っていた。

 アレクシスの足が、レオンのふくらはぎを撫でる。

 レオンは表情を変えずに、コーヒーを飲んだ。

「……人前でそういうことをするな」

「誰も気づきませんよ」

 アレクシスは悪戯っぽく笑った。

 レオンは呆れながらも、その笑顔に心が温かくなるのを感じた。

 おかしい。

 こんなの、おかしい。

 でも――幸せだった。

 この異常な関係が、レオンに初めて本当の幸福感を与えていた。

 カフェを出て、二人は青山の街を歩いた。

 並木道を歩きながら、アレクシスが突然立ち止まった。

「兄さん、あれ見てください」

 指差す先には、ショーウィンドウがあった。

 高級ブランドの店で、ウィンドウには美しいスーツが飾られている。

「似合いそうですね、兄さんに」

「……そうか?」

「ええ。今度、一緒に買い物に行きませんか?」

 その提案に、レオンは少し驚いた。

「買い物?」

「ダメですか? 兄弟が一緒に買い物するのは、普通でしょう?」

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