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第一七話

作者: 久遠遼
last update publish date: 2026-06-17 20:47:38

【玲司side】

 自分に背を向けて離れていく千景を、ただ見送ることしかできなかった。

 俺はただ、静かに目を伏せる

 あんな屑のような母親を慕い、偽りの理想で塗り固めた母親像を、いつまでも本物だと信じて疑わない哀れな女。

 そんな女が喉から手が出るほど必要な金を、目の前で破り捨てた。

 そうだ。あの女は、かつてはそういう女だった。

 一歩引いた場所から周囲を立てる。

 波風を立てないよう、誰よりもうまく立ち回る。

 けれど、その芯まで誰かに明け渡すことはない。

 普段は穏やかに微笑みながら、決して譲れないものの前では、驚くほど真っ直ぐな目をする。

 その落差に興味を持ち、その人柄に惹かれた。

 そして、時折見せる屈託のない笑顔に、心を奪われた。

 かつては、本気で愛し、永遠を信じた相手だった。

 あの汚らわしい女の娘だと知るまでは――。

 不意に、千景が成瀬とかいう男に支えられていた光景が脳裏をよぎる。

 倒れかけた千景の身体を、あの男が抱きとめていた。

 声をかけられた瞬間、千景はわずかに表情を緩め安心しきっているように見えた。

 それが妙に鮮明に焼きついて頭
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