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血と束縛と
血と束縛と
Author: 北川とも

第1話(1)

Author: 北川とも
last update publish date: 2025-10-14 10:26:49

「あうっ……」

 熱く濡れた舌にべろりと首筋を舐め上げられて、思わず和彦かずひこは呻き声を洩らす。同時に背には、ゾクゾクするような疼きが駆け抜けた。

 しなやかな体つきと荒々しい気性を持つ獣が、体の上で暴れているようだなと思いながら、和彦は乱れた息の下、小さく笑ってしまう。

「あっ」

 ふいに、和彦の上で卑猥な律動を繰り返していた獣――ではなく、千尋ちひろが声を上げた。和彦は、千尋の茶髪を撫でてから、問いかける。

「どうした?」

「今、先生の中、すげー締まったから、よすぎてイきかけた」

 まじめな顔でそんなことを言った千尋の頬を、汗が伝い落ちている。和彦はてのひらで汗を拭ってやってから、短く言い放った。

「――バカ」

「バカだけど、セックスは上手いだろ、俺」

 悪びれることなくヌケヌケとそう言った千尋が、緩く腰を揺らす。すでに充溢した硬さと熱さを持つ千尋のものが和彦の内奥深くで蠢き、簡単に官能を刺激する。

「うっ、あぁっ……」

 和彦が上半身をしならせると、嬉しそうに目を輝かせた千尋が顔を寄せてくる。野性味たっぷりのよく日焼けした肌が、若々しく端正な顔立ちにはよく映える。引き締まった頬のラインは、どこか粗野さも感じさせはするのだが、強い輝きを放つ切れ上がった目は子供っぽくもあり、顔立ち以上の魅力を千尋に与えている。

 自分が二十歳のときは、こんなに生気を漲らせ、輝く存在だっただろうかと和彦は思う。こんなにしなやかで、熱い体を持っていただろうかとも――。

 和彦はてのひらで愛でるように、千尋の体を撫でる。律動のたびにぐっと筋肉が硬く引き締まり、千尋の体が、しなやかではあるもののひ弱さとは対極にあるのだと、教えてくれる。

「先生、キス」

 千尋にせがまれ、貪るように唇を重ねて、舌を絡め合う。和彦の中で、千尋のものが力強く脈打っているのがよくわかる。

「はあっ……、先生の中、興奮しまくり」

 ペロッと和彦の唇を舐めてから、熱い吐息交じりに千尋が洩らす。和彦はお返しとばかりに千尋の下唇に軽く歯を立てた。

「興奮してるのは、お前のほうだ」

「若いから、俺」

 ニヤリと笑いかけられて、和彦は千尋の滑らかな背に爪を立ててやる。もちろん本気でないと千尋もわかっており、ぐっと腰を突き上げて、心地よさそうに目を細めた。

 こんな表情をされると、自分より十歳年下の生意気な千尋を甘やかしたい衝動に駆られる。甘やかせば付け上がる生き物だとわかってはいるのだが。

 そして案の定、千尋は付け上がった。

「――……佐伯さえき先生」

「断る」

 猫なで声で呼んだ千尋に対して、すかさず和彦はぴしゃりと言う。千尋は顔をしかめながら唇を尖らせた。

「俺まだ、佐伯先生としか言ってないじゃん」

「お前がぼくをそう呼ぶときは、ロクなことを言い出さない」

「ロクなことじゃない。今の俺たちにとっては大事なことだ」

 芝居がかったようにまじめな顔の千尋だが、片手は油断なく和彦の両足の中心に這わされ、中からの強い刺激で反り返り、先端から透明なしずくを滴らせている和彦のものを掴んできた。

「おいっ――」

 力を込めて上下に扱かれ、息が弾む。唇を噛んだ和彦を見て、楽しそうに笑いながら千尋は腰を動かす。すぐに和彦は声を抑えきれなくなり、それどころか自ら腰を揺らしていた。そのタイミングで千尋が囁いてきた。

「ねえ、生でしていい?」

「……そう言って中で出すから嫌だ。後始末が面倒なんだ」

「でも先生、生でするのも、中で出されるのも好きじゃん」

 和彦の内奥から千尋のものが引き抜かれる。小さく声を洩らした和彦の唇に軽いキスを落としながら、千尋が装着したゴムを外し、再び内奥に熱いものを挿入した。

「んうっ」

 和彦が仰け反ると、体を起こした千尋に両足を抱え直され、激しく腰を突き上げられる。たまらず和彦は頭上のクッションを握り締め、欲望が抜き差しされる様子も、開いた両足の間で、律動のたびにはしたなくしずくを垂らして揺れる和彦自身のものも、すべて千尋に見られる羞恥に耐える。ただしその羞恥は、ひどく甘美だった。

「あっ、あっ、ちひ、ろっ……」

「やっぱり、生のほうが反応いいよね、佐伯先生。俺も、こっちのほうがいい」

 一際乱暴に奥深くを突き上げられた瞬間、和彦は声も出せないまま下腹部をビクビクと震わせる。頭の中が真っ白に染まり、強烈な快感に全身を貫かれていた。千尋の見ている前で、直接触れられないまま、和彦は白濁とした絶頂の証を噴き上げ果てたのだ。

 だが、これで終わりではない。

 和彦の反応でさらに勢いを得たのか、千尋の動きに余裕がなくなり、ひたすら欲望を内奥に打ち込んでくる。それだけでも、肉の愉悦を生むには十分だ。

 自らが放った精で下腹部を濡らしたまま、和彦は身を捩り、喘ぐ。千尋が感嘆したように洩らした。

「今みたいな先生を眺めてるの、俺好きなんだよ。俺が年上のこの人を支配してるんだって、実感できて、興奮するっ……」

 ぐっと腰を突き上げて、千尋が動きを止める。一方で和彦の内奥では、千尋のものが震え、熱い精をたっぷり吐き出していた。不快さとは紙一重の陶酔が和彦に襲いかかり、身悶える。のしかかってきた千尋の体を抱き締めて受け止めていた。

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