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第1話(2)

Author: 北川とも
last update publish date: 2025-10-14 10:29:17

 胸元に飽きずに唇を押し当てる千尋の背を、事後のけだるさに身を委ねつつ和彦は撫でる。その手つきは、犬を撫でる仕種にも似ている。というより、そのものだ。ときおり髪をくしゃくしゃと掻き乱してやると、千尋は首をすくめて笑う。

 戯れに唇を啄ばみ合いながら、千尋の腕に手をかけた和彦は、ここであることがいまさらながら気になった。

 千尋は左腕の上のほうにタトゥーを入れている。しなやかな筋肉に覆われた腕に、凝ったデザインの鎖が巻きつき、その鎖には、艶かしく蛇が絡みついているのだ。初めて見たときは、タトゥーの生々しさにドキリとしたのだが、今もまだ慣れない。

 タトゥーに対してイメージがよくないというより、あまりにタトゥーのデザインが千尋の存在感に似合いすぎて、個性的で魅力的ではあるが、単なる二十歳の青年でもある千尋に、どことなく凶悪な空気を嗅ぎ取ってしまう。

 裏を返せば、千尋をより刺激的な存在にしている小道具ともいえる。

「先生、よく俺のタトゥーを撫でるよね。もしかして、気に入ってる?」

 タトゥーを撫でる和彦の手を取って、神経質な性質を表すような細い指先に千尋が唇を押し当ててくる。和彦は手を抜きとると、千尋の引き締まった頬を軽く抓り上げた。

「そんなわけないだろ。……若いときに勢いでこんなもの入れて、将来どうするのかと思っているだけだ。タトゥーは、いざ消すときに苦労するぞ」

「消す気ないし」

「今はそう言ってろ」

 拗ねたように千尋が唇を尖らせたが、顔立ちと仕種がおそろしく似合ってない。和彦は苦笑を洩らすと、子供の機嫌を取るように千尋の頭を撫で、引き寄せられるまま、今度は千尋の上に和彦がのしかかる格好となる。

 千尋の滑らかな肌に舌と唇を這わせると、心地よさそうに吐息を洩らした千尋の体が、再び熱を帯び始める。若くて反応が素直な千尋の体に触れるのは好きだった。

 せがまれるまま千尋のタトゥーに舌先を這わせながら話す。

「さっき、消すとき苦労するって言っただろ。痛いわけ?」

「痛いというのもあるが、きれいに消そうと思ったら、手間と時間がかかる。一回の施術でそう大きな範囲を処置もできないし、一度施術すると、肌の状態が元に戻るのを待たないといけないから……最低でも一か月は間を置かないと、二回目の施術ができない。それを何回も繰り返したところで、本当にきれいにタトゥーが消えるか、絶対とは言えないしな」

 くくっ、と笑い声を洩らした千尋に、後ろ髪を優しく梳かれる。他愛ない行為だが、和彦の中で燻る情欲の火がまた燃え上がりそうになった。

「さすが、先生。美容外科医だけあって、専門だ」

「皮膚のトラブルは、ぼくの専門じゃない」

「じゃあ、先生の専門は?」

 顔を上げた和彦は、ニヤリと笑って千尋の頬を撫でる。

「骨を削るのは上手いぞ」

「……サド全開の表情で、怖いこと言わないでよ」

 笑い合った二人は、再びベッドの上を転がるようにして抱き合い、貪るようなキスを交わす。また高ぶりを見せた千尋のものが腿に擦りつけられ、和彦はゾクゾクするような興奮を覚える。千尋の、底のない欲望も魅力的だった。

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