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第10話(14)

Author: 北川とも
last update publish date: 2025-12-25 14:00:23

 ジャケットのポケットから素早く取り出した携帯電話を握り締め、和彦は立ち上がる。

「すみません。組からの連絡かもしれないので、ちょっと出てきます」

 藤倉は笑顔で頷き、慌てて座敷を出た和彦は、襖を閉めると同時に、相手も確認しないまま電話に出ていた。

『――まさか、素直に電話に出るとは思わなかった』

 人を小馬鹿にしたような話し方と声に、瞬間的に鳥肌が立つ――はずだったが、和彦の体が最初に示した反応は、体温の上昇だった。

 めまいがしそうなほど体が熱くなると同時に、激しく動揺してしまう。ほんの数秒の間に和彦の中で駆け巡ったのは、電話の相手である鷹津から受けた、恥辱に満ちた行為の数々だった。

「なんの、用だ……」

 和彦はようやく声を絞り出したが、その時点ですでに後悔していた。電話の相手が鷹津だとわかったのなら、このまま電話を切ってしまえばよかったのだ。そうすれば少なくとも、鷹津の声を聞くという苦痛からは逃れられる。

『お前に聞きたいことがある。これから俺と会え』

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    「あんたは、貴重だ。長嶺の男たちと相性がよく、他の物騒な男たちも上手く手懐けて使っている。荒事が苦手な日和見主義のようでいて、肝が据わっている。だからといって、わしたちのような極道というわけではない。だが、すでに堅気でもない。あんたの存在は、この世界にいるからこそ妖しさが際立つ」 守光の手がさらに深く両足の間に差し込まれ、命じられたわけでもないのに和彦は足を開いていた。 まるで検分するように、スラックスの上から敏感なものを押さえつけられ、唇を引き結ぶ。羞恥はあったが、驚きはなかった。賢吾に強引にオンナされたばかりの頃、怒りと戸惑いを覚えている和彦に、賢吾は車中で何度も体に触れてきた。あれは、賢吾なりの和彦に対する教育だったのだ。 どんな状況であれ、どのように扱われても、受け入れなくてはならないと。それが、ヤクザのオンナになる――されたということだ。 和彦の目を覗き込み、守光は柔らかな笑みを浮かべた。見ていると怖くなるような笑みだが、和彦は目は逸らさなかった。逸らせば、多分食われる。「――忘れるな。あんたに特に価値を感じているのは、長嶺守光という男だ」 守光が囁き終えると同時に、唇が重なってくる。この瞬間、和彦が感じたのは恐怖でも嫌悪感でもなく、純粋な肉の疼きだった。我ながら度し難いと思うが、長嶺の男と相性がいいというのは、戯言では済まないところまできていた。その事実を和彦は、体で実感している。 唇を吸われているうちに、守光の舌が当然のように口腔に侵入してくる。おずおずと舌先を触れ合わせていると、守光の指に敏感なものをまさぐられる。 拒むこともできずうろたえる和彦に、守光が思いがけない問いかけをしてきた。「賢吾に、激しく求められたかね?」 咄嗟に質問の意味が理解できず、和彦は目を見開く。「えっ……」「わしと旅行に行ったことを、感情的に責めるとも思えん。だとしたら賢吾が、あんたに対して取る行動は限られると思ってな」 意味ありげな守光の指の動きでやっと、何を聞かれているのか理解する。数日前の、賢吾との濃厚な交わりが蘇り、和彦の体は熱くなる。そんな和彦を、なぜか守光は満足そうに見つめてい

  • 血と束縛と   第22話(22)

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    last updateLast Updated : 2026-03-28
  • 血と束縛と   第12話(30)

    「……どちらさまですか」  思いきり皮肉を込めた声で問いかけると、モニターに映った人物はニヤリと笑った。 『お届けものです』 「へえ。警察から、運送業に転職したのか」  和彦の言葉に、運送業者――ではなく、〈まだ〉現役刑事であるはずの鷹津は肩をすくめた。 『いいから、早く開けろ。ここは寒いんだ』  仕方なく和彦は玄関の鍵を開けてやる。すかさず外からドアが開けられ、まるで獣のような荒々しい空気を振り撒きながら鷹津が入り込んできた。鷹津とともに入り込んできた冷たい風に首をすくめ、小さく身震いする。ここ数日、急に寒さが増してきた。

    last updateLast Updated : 2026-03-28
  • 血と束縛と   第12話(26)

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    last updateLast Updated : 2026-03-28
  • 血と束縛と   第12話(14)

     さすがの和彦も返事ができないでいると、千尋が恨みがましい目で見つめてくる。和彦は苦し紛れに、もう一度千尋の頬を軽く抓った。「そういうことを聞くのは、はしたないぞ、お前」「……俺、難しい言葉わかんない」「ウソを言えっ」 広いベッドの上で千尋と揉み合う――というより、じゃれ合っていると、柔らかなバリトンが割って入った。「仲がいいな、二人とも。母犬に、子犬がじゃれついているみたいだ」 ベッドの上をころりと転がった和彦は、ドアのほうに視線を向ける。薄い笑みを浮かべた賢吾が立っていた。

    last updateLast Updated : 2026-03-28
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