เข้าสู่ระบบ「前に先生に飲ませた薬です。先生が服用している安定剤より、少し効き目が強いですが……それはご存知ですよね?」
どうしてそんなものを飲ませたのかと、秦を睨みつける。体は確かに眠りたがっているが、悪夢を見たくなくて、和彦は自分に処方された安定剤すら飲んでいなかったのだ。 秦は、和彦のきつい眼差しを平然と受け止め、愛撫を再開する。胸元に唇を押し当てながら、熱くなって震えているものを再び扱き始めた。もちろん内奥では、ローターが小刻みに、激しく振動している。「嫌な夢を見て憂鬱になるというなら、誰かに側にいてもらえばいいんですよ、先生」「……一人でいたいんだ。誰かが側にいると、自分でもわけのわからない感情をぶつけて、相手に嫌な思いをさせそうだ」「あれだけ大事にされているのに、意外に、甘えるのが下手なんですね」「余計な、お世話だ……」 秦が微かに笑い声を洩らし、胸の突起を舌先でくすぐってくる。小さく悦びの声を洩らした和彦は、仰け「面倒や迷惑っていうなら、それはこっちの台詞だ、先生。俺たちはとっくに、先生に面倒も迷惑もかけ通しだ。いや、そんな言葉じゃ足りない。先生の順風満帆な人生を奪ったんだからな。寝首を掻かれても、文句は言えない」「……そんなこと、ぼくにできるはずがないと、思ってるんだろ」 和彦がきつい視線を向けると、予想に反して賢吾は表情を引き締め、自分の首筋に片手をかけた。「やりたいなら、やっていいぞ。組の跡目はもういるからな。こっちの古狐が睨みを効かせている間は、うちの組にちょっかいを出す輩もいないだろうし、千尋でもなんとかなるだろう」 賢吾が本気で言っているわけではないとわかってはいるが、冗談にしても毒気が強すぎる。さきほどから黙っている守光が、さすがに苦笑を浮かべていた。「自分の父親の前で、よくそんなことが言えるな」「――さすがのあんたも困るか? 俺がいなくなると」 こう言ったときの賢吾の声には冷たい刃が潜んでいるようで、聞いていた和彦が驚いてしまう。一体何事かと思い、父子を凝視する。守光は、穏やかな口調で応じた。「困る、困らないという話ではないだろう。息子を失うということは。それにお前は、長嶺組の大黒柱だ。折れることはもちろん、亀裂一本、入ることは許されん。その点では、千尋は柱どころか、ただの若木だ。すんなり伸びて美しいし、しなやかではあるが、弱い。あれはこれからもっと、わしとお前とで鍛えてやる必要がある」「長嶺組に大事があれば、それは、総和会に細い亀裂が一本入りかねない、ということか」「亀裂一本とは、控えめな表現だな。巨体が傾ぎかねんと、わしは考える」「巨体とは、何を指しているんだ。総和会か、それとも――」 賢吾が意味ありげな視線を、守光に向ける。守光は堂々とその視線を受け、笑った。守光のこの余裕は一体どこからくるものなのだろうかと、和彦は考えていた。賢吾を育ててきた父親としてのものなのか、巨大な組織の頂点に立つ者としてのものか。 無意識のうちに息を詰め、二人のやり取りを見つめていた和彦に気づいたのだろう。ふいに賢吾がこちらを見て、わずかに表情を和らげた。「びっくりさせたな、先
「あんたを、長嶺の本宅に直接送り届けなかったのには、それなりの理由がある。わしに――総和会会長に対して、報告の義務を果たしてほしかったからだ。あんたと佐伯家の人間を接触させることに、多少なりと危険を冒したつもりだ。わしも、賢吾も」 長嶺の男は、甘くはない。 和彦は、賢吾の表情をちらりとうかがう。守光の言葉に異を唱えなかったということは、賢吾も同じ意見なのだろう。ここが総和会の本部である以上、会長である守光を立てなければならないということもあるだろうが、賢吾もまた、長嶺組組長として組織を背負っている責任がある。 和彦が頷くと、賢吾に促されてイスに腰掛ける。正面に、賢吾と守光が並んで座ったが、荒々しさを感じさせない顔立ちと物腰の二人から、圧倒されるほどの凄みを放たれ、和彦は息を呑みつつも、改めて実感していた。 背負い、身の内に飼っている生き物は違えど、この二人は血が繋がった父子で、同じ世界に生きる極道なのだと。 和彦の緊張を感じ取ったのだろう。賢吾がわずかに唇を緩めた。「そう、硬くなるな、先生。いつも俺に世間話をしているように、自分の兄貴と何を話したか、教えてくれればいい。何を聞かされても、少なくとも今は、佐伯家にちょっかいを出す気はねーからな」「……今は?」「長嶺の男から、先生を取り上げようとするなら、こっちにも考えがあるということだ」 本当に話していいのだろうかと、急に不安に駆られたが、男たちが何を考え、もしくは企んでいるのか、和彦に読みきることは不可能だ。口を噤んでいることも。 英俊の怜悧な眼差しを思い浮かべ、覚悟を決めた。放っておいてほしいというこちらの気持ちを無視しようとするのなら、ささやかに牙を剥く権利を与えられても許されるだろうと、誰に対してかそう言い訳をしながら、和彦は口を開く。 英俊から聞かされた内容そのものには、特に驚かされるものがあるわけではない。鷹津が得てきた情報が確かなものであったと裏づけが取れたようなものだ。重要なのは、佐伯家が和彦を必要としていると、英俊の口から告げられたことだ。「ぼくの後ろに誰かがいると、感づいているようだった。だけど――…&hell
**** 日曜日の夕方まで、山の中にある隠れ家で過ごした和彦は、説明もないまま車に乗せられて移動する。総和会との関わりで、必要な情報を与えられないまま連れ回される情況に、さすがに慣れた――というより、諦めてしまった。 だからといって、何も感じないわけではないのだ。 車がどこに向かっているのか、さすがに察してしまうと、これだけは慣れない緊張感に襲われる。車が停まったのは、総和会本部だった。 まだ、総和会の人間に囲まれる状況が続くのだろうかと、表現しようのない不安に心が揺れる。促されるまま車を降り、いつものようにエントランスホールを通って、一人でエレベーターに乗り込むと、四階に上がる。 和彦が知る限り、守光の住居空間を守るための配慮なのか、四階には人気がないことが多いのだが、今日は違った。エレベーターの扉が開くと、正面のラウンジに数人の男たちがおり、真剣な――というより、緊迫した面持ちで話していた。一瞬、自分は上がってきてよかったのだろうかと困惑した和彦だが、男の一人がすぐにこちらに歩み寄ってきた。守光の身の回りの世話をしている男だ。「お疲れ様です、佐伯先生。会長がお待ちです」「は、い。……あの、何かあったんですか?」 男は曖昧な笑みを浮かべ、守光の住居のほうを手で示す。「行かれたら、おわかりになると思います。先生でしたら大丈夫でしょう」 気になる物言いだが、男たちの様子は、あれこれと質問できる雰囲気ではない。ますます緊張を募らせて、廊下の突き当たりにあるドアの前に立つ。インターホンを鳴らすと、誰何されることなくドアが開き、着物姿の守光が姿を見せる。「大変だったな、先生。さあ、入りなさい」 温和な表情で守光に出迎えられ、和彦は戸惑う。さきほどの男たちの緊迫した様子と、すぐに結びつかなかったからだ。ぎこちなく玄関に足を踏み入れると、そこに、革靴が並んでいた。和彦は、意識しないまま小さく声を洩らす。「さっきから、あんたの到着が遅いと言って、機嫌が悪い。早く顔を見せてやるといい」 守光に促されてダイニングに向かうと、スーツ姿の
「素直になったな、先生」 唇を吸い合う合間に、そんなことを南郷が言う。和彦は弾んだ息を誤魔化すため、抑えた声で応じた。「ぼくが暴れたところで、あなたは簡単に押さえ込めるでしょう。……ぼくは、痛い思いはしたくないんです。痛い目に遭うぐらいなら、多少の不快さは我慢できます」「不快、か。あんたは、弱いんだか、強いんだか、わかんねーな。まあ、今はっきり言えるのは、俺はあんたとのキスを、かなり気に入ってるってことだ」 次の瞬間、南郷が覆い被さってきて、和彦はベッドに仰向けで倒れ込む。また、体に触れられるのかと身構えた和彦に対して、南郷が甘く恫喝してきた。「セックスみたいなキスをしようぜ、先生。俺を満足させてくれ」 唇を吸われて呻き声を洩らした和彦だが、それ以上の抗議も抵抗もできなかった。南郷が大きな手で髪を撫でながら、下唇と上唇を交互に甘噛みしてくる。合間に歯列を舌先でくすぐられ、肉欲の疼きが体の内から湧き起こる。 昨夜からずっと、南郷によって官能を刺激され、鎮まりかけても巧みに煽られ続けていた。南郷は不気味な男だが、〈オンナ〉である和彦の扱いをよく心得ている。恐怖と屈辱と羞恥だけではなく、しっかりと快感を味わわせてくるのだ。「――今、発情した顔になったな」 唇を離した南郷に指摘され、カッとした和彦は肩を押し退けようとする。おどけた仕種で南郷は体を揺らし、和彦のささやかな反抗を簡単に受け流した。ますます和彦がムキになろうとしたそのとき、部屋のドアがノックされた。「南郷さん、そろそろ出発の時間です」 ドアの向こうからそう声がかけられ、おう、と短く応じた南郷があっさりと体を起こした。唇を拭う和彦を見て、気を悪くした様子もなく南郷が言った。「先生ともっと遊びたかったが、俺の時間切れだ。これでも隊を率いていて、何かと忙しい身でな」「……失点がどうとか言ってましたが、本当は、あなたがここに来るほど、切迫した理由はなかったんでしょう」「切迫した理由はなかったが、来る必要はあった。怖い長嶺組長の目が届かない状況なんて、そうはないからな。先生とは、もっと打ち解けてお
男たちの顔を思い浮かべたあと、和彦はつい苦笑する。賢吾の思惑通りなのか、自分は男たちへの情で雁字搦めになっていると、改めて痛感していた。そのうち自分は、男たちへの情で溺れ死んでしまうのではないかと、ありえない想像までする。 ここで和彦は、眉をひそめる。何かの拍子に脈打つように強い頭痛がして、吐き気まで伴い始める。そのため、ドアがノックされても、返事をする気にもなれなかった。何より、相手が容易に推測できた。 案の定、遠慮なくドアが開き、新しいポロシャツに着替えた南郷が姿を見せる。手には、ミネラルウォーターのボトルと、小さな箱を持っていた。「食堂に置いてある救急箱に、鎮痛剤があった。飲むだろ、先生」 あんなことをしておきながら、何事もなかったように声をかけてくる南郷に対して、やはり不気味さを感じる。それと、戸惑いも。猛烈な怒りを抱くには、肉体的にも精神的にも疲れていた。当然、意地を張る気力もない。 和彦は頷くと、慎重に体を起こす。傍らに立った南郷から受け取ろうとしたが、当の南郷は、ボトルと鎮痛剤の箱を、枕元に放り出した。からかわれたと思った和彦は、南郷を軽く睨みつけてから、ボトルに手を伸ばそうとする。すると、ベッドに腰掛けた南郷にその手を掴まれた。「頭が痛いと言っていたが、熱もあるんじゃないか。顔が赤い」「……陽射しにあたって、火照っているだけです」「陽射しだけか?」 揶揄するように言った南郷につい鋭い視線を向ける。和彦の反応をおもしろがるように唇を緩めた南郷は、鎮痛剤の箱を開け、シートを取り出した。大きなてのひらに錠剤を二つのせて、こちらに差し出してきたので、和彦は錠剤を受け取って口に入れる。さらに南郷はボトルを手に取り、和彦の見ている前で自分が口をつけた。 意味ありげな眼差しを寄越された和彦は、伸ばされた南郷の手を一度は押し退けたが、あっさりと肩を抱かれて引き寄せられる。「んっ……」 南郷の唇が重なり、冷たい水をゆっくりと口移しで与えられる。少しだけ唇の端からこぼれ落ちたが、和彦は微かに喉を鳴らし、鎮痛剤と一緒に呑んだ。 和彦が抵抗しなかったことで気
南郷の指に内奥の入り口をまさぐられ、さすがに和彦が身じろごうとしたとき、尻の肉を鷲掴まれた。痛みを予期して体を強張らせると、容赦なく尻の肉を左右に割られた。南郷の視線がどこに向けられているか、振り返って確認するまでもない。 背後から南郷が、笑いを含んだ声で言った。「昨夜、俺がたっぷり可愛がったせいか、まだ赤みが強いな。それに、柔らかい。こうすると――」 唾液で濡らされた指が内奥に挿入されてくる。「ひっ……」 内奥で蠢く指が、まだ残っている昨夜の官能の余韻を掻き出し、再燃させる。悔しいが、下肢から蕩けていきそうだった。和彦は間欠的に声を上げ、南郷の愛撫に反応する。南郷も、興奮していた。「本当に、忌々しいぐらい、いいオンナだ。あんたは……。このまま、後ろから犯してやりたくなる」 感じやすい粘膜と襞を指で擦り上げられ、歓喜する内奥全体がきつく収縮する。和彦はその場に崩れ込みたくて仕方なかったが、それを許さない南郷に片腕で腰を支えられる。「ほら、先生、しっかりしろ。尻以外も可愛がってやれねーだろ」 腰を撫でられ、背を舐め上げられる。和彦が喉を鳴らすと、媚態を示した褒美だといわんばかりに、反り返って震える欲望を握り締められた。「あっ、あうっ、くうっ……ん」「出すか?」 南郷に短く問われ、何も考えられないまま和彦は頷く。南郷の手の動きが速くなり、あっという間に絶頂へと昇りつめる。和彦は熱い吐息をこぼして、精を迸らせていた。すると、余韻なく体の向きを変えられ、だらしない顔を南郷に間近から見つめられる。 現状を認識し、視線を逸らす間もなかった。「俺に掴まってろ」 短く告げた南郷に唇を塞がれ、和彦はその口づけを拒めない。まだ息が整わないうちに口腔に舌を押し込まれると、受け入れるしかないのだ。互いに荒い呼吸を繰り返しながら、浅ましく舌を絡め、濡れた音を立てて唾液を交わす。 塀にもたれていても自分の力で立っていられない和彦は、南郷が言った通り肩に掴まる。 南郷は、燃えそうに熱くなったてのひらで和彦
三田村なりの独占欲の表れなのだろうかと思うと、愛撫で得る以上の悦びが、和彦の体を駆け抜けた。 凝った胸の突起を、執拗に舌先で弄られる。焦れた和彦が三田村の頭を抱き締めると、ようやくきつく吸い上げられ、心地よい疼きに体が震えた。 顔を上げた三田村と唇を啄み合い、舌先を触れ合わせる。戯れのようなキスを繰り返しながら和彦は、三田村の背にてのひらを這わせる。可愛がるように虎の刺青を撫でていると、和彦の手つきに感じるものがあったのか、三田村が笑った。「先生の手にかかると、俺の背中の虎も、猫と一緒だな」「ああ。ぼくに身を任せてくれるなら、虎も可愛い」
リビングのテーブルには、真っ赤なリボンが結ばれた箱が置いてあった。どうやら、クリスマスプレゼントらしい。 一度はテーブルの前を素通りして、コートとマフラーを置いてこようかとも思った和彦だが、コロンの残り香に搦め捕られたように足が止まり、結局、テーブルに引き返す。「……開けるのが怖いな」 じっと箱を見下ろしながら、ぼそりと呟く。 プレゼントの贈り主は、箱の上にしっかりとカードを残していた。『先生へ』という短い一言と、贈り主である男の名が記されている。 長嶺組組長という物騒すぎる肩書きを持ったサンタクロ
十二月も中旬を過ぎると、本当に慌しいなと思いながら、和彦はふっと息を吐き出す。それでも、差し出された伝票にサインをして、大きな花束を受け取ったときには、意識しないまま笑みがこぼれた。 華やかなイベントとは無縁の人生を歩んできただけに、豪華な花束が次々に届くと、贈り手の思惑はともかく、やはり嬉しいものだ。 配達人を見送ってドアを閉めた和彦は、花の間に差し込まれたカードを取り上げる。そこには、ただK・Nというイニシャルだけが記されていた。開業日には大きな花輪を贈ってやると言っていた男だけに、今日は花束で勘弁してくれたらしい。 カードはジャケットのポケット
「プレゼントを用意してあるんだ。好みじゃなくても、文句は言うなよ」 すかさず手からマフラーが取り上げられ、コートも脱がされる。三田村がハンガーにかけている間に和彦は、持ってきた袋の中から、ラッピングされた小さな箱を取り出した。 慣れない様子でその箱を受け取った三田村は、曖昧な表情を浮かべる。「……こういうとき、どんな顔をすればいいんだろうな。嫌なもんだな、ヤクザってのは。体面を取り繕ってばかりだから、素直に喜ぶのが下手なんだ。……いや、俺が下手なだけか」 こちらからは何も言っていないの