LOGIN仰向けにされ、乱暴に下着を脱がされたあと、両足を抱えて思いきり左右に開かれる。内腿に熱い息遣いを感じたとき、和彦はすでに賢吾に支配されていた。
「ああっ――」 敏感なものをいきなり舐め上げられ、和彦はビクビクと腰を震わせながら、声を上げる。快美さが全身を駆け抜け、一瞬にして賢吾の愛撫に搦め捕られた。「酒の肴としては極上だな、この肉は」 羞恥を煽るようなことを呟いて、賢吾が和彦のものを口腔に含む。和彦は大きく息を吸い込んで、畳の上に足を突っ張らせる。 賢吾は容赦なかった。和彦のものをきつく吸引しながら、柔らかな膨らみを揉みしだいてくる。鋭い快感に悲鳴を上げた和彦は、身悶え、賢吾の愛撫から逃れようとするが、腰を揺するたびに先端に歯列が擦りつけられ、上擦った声を上げさせられる。「んあっ、あっ、嫌、だ……。それは、怖い……」 切迫感と甘さを含んだ声で和彦が訴えると、楽しげに賢吾が応じる。「俺が、先生に痛い思いをさせるはずないだろ。大事に大慌てて水をとめた和彦は、ハンカチを取り出しながら洗面台の前から退く。「ぼくは先に出ているから――」 玲の横を通り過ぎようとして、腕を掴まれた。ハッとして玲を見ると、ひどく苦しげな顔をしていた。さきほどまで、愛想よく大人たちの会話に加わっていた青年と同一人物とは思えない。「玲くん……?」「――……佐伯さんの態度が、気になったんです。車の中で、俺と御堂さんが話をしてから、なんとなく、佐伯さんがよそよそしくなったみたいで。それに食事をしている間は、得体が知れないものを見るみたいに、ときどき俺のことを見てました」 聡い子だなと、内心で驚きながらも和彦は、感情が表に出ないよう努める。「気のせいだよ。……ちょっと驚いただけだ」「佐伯さん、ヤクザは嫌いですか?」「そんなことは言ってないっ」 思わず声を荒らげた和彦は、すぐに我に返って口元に手をやる。「……嫌いなんて言う権利はない。ぼくは、そのヤクザの稼ぐ金で生活しているんだから」「じゃあ、俺のことは嫌いですか?」 玲に試されていると、一瞬にして悟った。キッと睨みつけ、腕を掴む玲の手を振り払う。「言っただろう。夜が明けたら、夢は終わりだと。君はあくまで、連休の間、一緒に連れ立ってあちこち行っただけの仲だ。だから、互いの事情に首は突っ込まない。……そのほうが、いい別れ方ができる」 そう言い置いて和彦は、足早にレストルームを出る。出入り口のすぐ側に護衛の男たちが立っていたため、不意をつかれて面食らい、視線を逸らした先に、御堂が立っていた。和彦は、ちらりと背後を振り返ってから、御堂の元へと行った。「御堂さん、聞きたいことがあるんですが……」 声を潜めて話しかけると、灰色の髪を掻き上げて御堂は薄い笑みを浮かべた。「玲くんとの、車の中での会話のことかな」「……普通の高校生だとばかり思っていたので、あの物言いが気になって」
何事もなかったように御堂が正面を向く。和彦は困惑しながら、たった今交わされた二人の会話を頭の中で反芻する。具体的なことは何一つわからないが、ただ、ぼんやりと湧き起こるものがあった。 伊勢崎玲という青年は、本当にただの高校生なのだろうかという疑問が。** ホテルのレストランでの朝食の味は、正直よくわからなかった。 同じテーブルについた玲と御堂、そして綾瀬との一見和やかな会話に加わりながら、和彦はさりげなく視線を周囲のテーブルへと向ける。一つのテーブルには、和彦たち三人の移動中からついていた護衛が。別のテーブルには、綾瀬の護衛が座っている。 いまさら、この状況について何か言うつもりはないのだが、護衛に囲まれている自分の立場については、あれこれと思いを巡らせる。 酸味の強いオレンジジュースを一口飲んだところで、吸い寄せられるように玲と目が合った。周囲を、特殊な立場にある大人たちに囲まれながらも、玲は落ち着いて見えた。 地元では護衛はついていないと言っていたが、本当なのだろうかと、今になって疑ってしまう。車内での御堂とのやり取りが、和彦は引っかかっていた。 玲とは、知り合ってほんの数日――数十時間しか経っていない。それで、玲のことを知った気になったのは、体を重ねたからだ。そんな自分のささやかな驕りを突き崩されたようで、知らず知らずのうちに和彦の頬は熱くなる。 自戒も込めて、自身に言い聞かせるのは、玲のことはもう知りたくないし、知ってはいけないということだ。 穏やかな表情で玲に話しかけていた綾瀬が、さりげなく腕時計に視線を落とす。すかさず御堂が声をかけた。「仕事の時間が近いんでしょう? どうぞ、行ってください。みんな、ほぼ食事は終えていますから、誘っておきながら失礼だ、なんて言いません」「そう言って、さっさと俺を追い払いたいんだろう」「そんな薄情なことは思っていませんよ。ただ、気遣っているだけです。いろいろと、忙しいでのでしょう?」 いろいろと、という単語に微妙な含みを感じたのは、和彦だけではなかったようだ。綾瀬は目を眇め、物言いたげな様子で御堂を眺めていたが、ふっと口元を緩めた
「それはどういう……。玲くんは、普通の高校生ですよね?」「今は、かな」 意味ありげに呟いた御堂が、ポンッと和彦の肩を軽く叩いて立ち上がる。「さて、玲くんも戻ってきたことだし、朝食にしよう。といっても今朝は、外で食べるつもりなんだけど。――綾瀬さんが、お礼も兼ねて、君たちを誘いたいと言ってね」 和彦が目を丸くすると、諦めてくれと言いたげに御堂は首を横に振った。「あの人も忙しい人だし、玲くんも今日の昼にはここを出るから、一緒に食事するとなると、朝食ぐらいしかないんだ。……自分と伊勢崎さんの再会が、殺伐としたものにならなかったのは、君らがいてくれたおかげ、と言いたいんだろう、綾瀬さんは」 一瞬、複雑そうな表情を見せた御堂に対して、どういう意味かとは問えなかった。 せっかくの綾瀬からの誘いを断ることもできず、慌ただしく身支度を整えて玄関に向かうと、困惑顔で玲が待っており、和彦と目が合うなり、こうぼやいた。「俺……、走って戻ってきて、シャワーも浴びてないんですよ。一応着替えて、制汗剤も使ったけど、多分まだ、汗臭いです……」 笑いかけようとした和彦だが、失敗した。明け方まで包まれていた玲の汗の匂いを思い出し、胸の奥が妖しく疼く。いまさらながら、目の前の〈高校生〉と体を重ねたのだという現実に、戦いていた。「大丈夫だよ。この距離でも気にならないんだから。それに、煙草臭いとか、酒臭いとかじゃないんだから、健康的だ」「……男子高校生の醸す男臭さを甘く見ないでくださいね、佐伯さん。体育の後なんて、更衣室の臭さは半端じゃないんですから」「想像はつくよ。ぼくだって高校生だったときはある」 砕けた口調で会話を交わしながらも、互いが相手を意識しているのは、強く感じていた。和彦のほうは微妙に視線を逸らそうとするのだが、対照的に玲は、強い眼差しをまっすぐこちらに向けてくる。 夜が明けたら夢は終わり、何もなかったふりをする――。その約束自体が無理だったのではないかと、すでに和彦は危機感を抱きつ
それだけではなく、俊哉と交わした会話も、和彦の胸を重く塞いでいる。他言するなと釘を刺されたことが、まるで遅効性の毒のようにじわじわと精神を侵食してくるのだ。「一緒に行動していて、ときどきつらそうな顔をしていましたね、佐伯さん」「いままで、べったりした関係でもなかったのに、何かの拍子に思い出して、ああ、これが、胸に穴が空いたという状態なのかなって。君と出歩きながら、その感覚を紛らわせようとしていた」「……その特別な人間って、佐伯さんにとって、どういう意味で特別なんですか?」 難しい質問だなと、和彦は答えに困る。鷹津とは恋人同士ではなかったし、胸が苦しくなるような想いを寄せていたわけでもない。ただ、特殊な生活の中で、少なからず和彦の支えとなってくれ、情も交わした。 とにかく、特別な人間――男だったのだ。「いざ言葉にしようとすると、困るな。どう表現すればいいのか……」「だったら、好きということでいいんじゃないですか。特別嫌いな人間がいなくなっても、あんなふうにつらそうな顔はしないと思います」「……なんだか今は、君のほうが年上みたいだ。すっかり人生相談をしている気分になった」「なら、人生相談の締めとして、言っておきます。どんな理由があったとしても、俺は佐伯さんを嫌いになったりはしません。むしろ俺は、弱っている佐伯さんにつけ込んだと言えるのかも」 そんなことないよと、柔らかな口調で応じた和彦は、玲の背にてのひらを這わせる。ふと思いついたことを口にしていた。「大学生になっても、君にはスポーツは続けてほしいな。せっかく、きれいな筋肉がついているんだし」「もう、鈍りかけてますよ。陸上は続けないかもしれないけど、体は動かし続けたいと思っています。ジムに入ってみようかな」「運動系のサークルに入ってみるのは?」「そうですね……。時間があれば、入ってもいいかも――」 玲が大きくあくびをして、抱きついてくる。つられて和彦もあくびをすると、玲の頭に顔を寄せた。 性欲を満たしたあとに、即、
** ひどい脱力感に苛まれながら和彦は、なんとか体の向きを変えると、隣に横たわっている玲を見る。 しなやかな手足を投げ出してはいるものの、和彦のようにぐったりしているというより、充足感に満ち満ちているという様子で、これが一回り以上の年齢差というものなのだろうなと、妙に納得させられる。 息も絶え絶えという状態からようやくわずかに回復し、和彦は口を開く。「夜が明けたら、夢は終わりだ。朝、ダイニングで顔を合わせても、何もなかったふりをするんだ」「――……佐伯さん、冷静ですね」 そう言って玲もごろりと寝返りを打ち、体の正面をこちらに向ける。胸元に散る愛撫の痕跡を目の当たりにして、まだ上気している頬がさらに熱くなる。自分がやったこととはいえ、大胆なことをしたものだと自省する。一方の玲は、和彦の体に残るものを見て、表情を和らげた。 体温が感じられるほど身を寄せ、和彦の肌に指先を這わせてくる。 まだ、夜が明けるには早い――。和彦は自分に言い聞かせながら、そっと玲の頭を引き寄せる。玲は素直に胸元に顔を埋めてきた。「君が着ていた浴衣、いつの間にか体の下に敷き込んでいて、汚してしまったんだ。朝のうちに洗濯するから、すまないが今夜は、Tシャツでも着て休んでくれ。……ああ、シーツも洗わないと」「体も拭かないと。とりあえず後で、俺が濡らしたタオルを持ってきます。俺より、佐伯さんのほうが大変だと思うし……」 玲の手が腰から背へと回され、さらに下へと移動する。好奇心の強い指が、熱を持って疼いている部分をまさぐってきた。簡単な後始末はしたものの、触れられると、玲が残した精が奥から滴り出てくる。 情欲の嵐が去り、和彦の気持ちは落ち着きを取り戻しているが、玲は違うようだ。何かの拍子にまた猛々しさを取り戻しそうな激しさを、肌に触れる息遣いや指先から感じる。「玲くん」 声をかけると、玲が顔を上げる。和彦は後ろ髪を撫でながら、優しく唇を重ねる。すぐに玲が口づけに応え、唇を吸い返してきた。激しく求めてこようとする玲を、和彦はなだめる。丹
末恐ろしい高校生だなと思いながら、ちらりと笑った和彦は玲の胸元に唇を押し当てる。舌先でくすぐり、柔らかく肌を吸い上げ、確認しながら小さな鬱血を残していく。 引き締まった腹部から胸元に舌を這わせてから、自分がされたように腕の内側に吸い付く。軽く歯を立てると、玲がビクリと身を震わせた。 切ない声で呼ばれ、口づけを交わす。腰を抱き寄せられ、擦りつけられたので、男を甘やかしたいという和彦の本能が疼く。舌を絡ませながら、手探りで玲の欲望を掴むと、精を溢れさせる内奥に呑み込んでいく。玲の息遣いが弾み、同時に、内奥深くまで受け入れた欲望が震えた。 体を繋げる快感を知ったばかりの玲を驚かせないよう、ゆっくりと腰を動かす。心地よさそうに玲が目を細め、掠れた声を上げた。 欲望を柔らかく締め付けながら和彦は、全身を使って玲を甘やかし、愛していく。玲は驚くほど柔軟に、貪欲に、快楽に馴染んでいく。もっと、もっとと欲していく。和彦の腰に両手をかけ、自らぎこちなく突き上げるようにして、律動を刻み始めていた。「あっ、あっ、い、ぃ……」 玲の眼差しが、律動に合わせて揺れる和彦の欲望へと向けられていた。反り返ったものは、先端から止めどなく透明なしずくを垂らしている。「佐伯さんがイクところ、見たいです。まだ一度も、イッてないですよね。俺ばかり気持ちよくなって、申し訳ないです」 玲の手が欲望にかかりそうになったが、和彦は柔らかく拒む。その代わり、自身のてのひらで包み込んだ。「んっ……」 欲望を扱き始めると、意識しないまま内奥を収縮させる。玲の欲望がゆっくりと膨らんでいくのを感じながら、そっと腰を上げ、すぐにまた下ろす。玲は、自分が何をやるべきか思い出したらしく、再び和彦の腰を掴んで、自ら動き始めた。 間欠的に喘ぎ声をこぼしていた和彦だが、激しさを増す玲の動きにバランスを保てなくなり、たまらず片手を布団に突く。「あうっ」 一際大きく下から突き上げられた拍子に、初めて絶頂を迎える。迸り出た精が、玲の腹部から胸元にかけて飛び散り、きれいな体を汚してしまったと思った途端、和彦は身を貫くような快美さ
また指で呼ばれ、和彦は賢吾のあとについていく。工事後は待合室となるホールでは、施工業者の人間が集まって持ち込む機材について話し合っている。その様子を一瞥した賢吾は、奥の部屋へと向かう。 「……護衛の人間は?」 ホールを見て、賢吾が一人でこのフロアにやってきたのは確認した。 「物騒なツラした人間を、一般の業者がいる場所に連れてくるわけにはいかないだろ。設計士は前からの馴染みだが、業者のほうはそうじゃないんだ。クリニックを始める前に、妙な噂は立てたくない」 「自分は物騒なツラじゃない、と言いたいんだな」 皮肉でもなんでもなく、思ったまま
「総和会から連絡したいことがあると、中嶋さんが来るの。奥さんがいる家より、こっちのほうが、難波さんが捕まりやすいんだと思う」 和彦の疑問を察したように教えてくれたが、その口調からは、愛人である自分の立場に対する引け目のようなものは一切感じ取れない。案外、仕事のようなものだと割り切っているのかもしれない。 「ねえ、佐伯先生、クリニックの話、本当?」 「あっ、まあ、クリニックを開くのは本当ですよ。今はまだ、準備中ですけど」 「だったら、開業したら、わたしのことも診てくれる?」 まだ二重瞼の手術を諦めていないのだろうかと思いながら、和彦は微
和彦は最初、性質の悪い男なりの笑えない冗談かと思ったが、そうではないようだ。 指先に唇を割り開かれ、押し込まれる。舌を刺激され、口腔から出し入れされるようになると、和彦も言われたわけではないが賢吾の指を吸い、舌を絡める。賢吾のものをそうして愛撫したように。賢吾の腰の動きが次第に同調し、内奥から逞しいものを出し入れされる。 指ではなく、口づけが欲しいと率直に思った。和彦がおずおずと片手を伸ばすと、口腔から指が引き抜かれ、甘く残酷に囁かれる。 「さあ、どうするんだ? 俺は名前を呼ばれないと、お前の欲しいものはやらないぞ。もうこっちには、お前の欲しいも
和彦の内奥を的確に指と道具で犯す男の背後に立ったのは、高そうなダブルのスーツをこれ以上なく見事に着こなした中年の男だった。四十代半ばぐらいだろうが、一目見て圧倒される存在感を持っていた。 全身から漂う空気は剣呑としており、それでいて威嚇するような攻撃的なものではなく、ただ静かな凄みを放っている。衰えを知らないような厚みのある体つきに相応しいといえた。何より、彫像のように表情が動かない顔は、冷徹そのものではあるが、端整だ。 だが、容貌はさほど重要ではない。男が持つ独特の鋭さや冷ややかさ、年齢を重ねているだけでは醸せない落ち着きが、男の存在自体を圧倒的なものにしてい