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第16話(24)

Author: 北川とも
last update Last Updated: 2026-02-14 17:00:59

 紳士、という単語が和彦の脳裏を過り、それが違和感なく、隣のテーブルにつこうとしている男性に当てはまった。

 左足を庇うようにして、少しぎこちない動きでソファに腰掛けた男性が、ふとこちらを見る。露骨に視線を逸らすのも失礼で、和彦は軽く会釈をした。これで、テーブルが隣り合った者同士のやり取りは終わるはずだったのだが――。

 重々しい音を立て、男性が傍らに置こうとした杖が床に落ちる。咄嗟に和彦は立ち上がり、杖を拾って男性に手渡した。

「――ありがとう」

 外見からは想像もつかない、太く艶のある声に、一瞬驚いた。和彦は小さく笑みを浮かべて、もう一度会釈をすると、自分のテーブルに戻る。

 ただこの瞬間から、和彦と男性の間に繋がりのようなものが芽生えていた。見知らぬ他人が集う場所で、ささやかな接触を持ったせいだ。

 どうやら同じものを、男性も和彦に感じてくれたらしい。ごく自然な流れで、二人は会話を交わしていた。

「孫と待ち合わせをしているんだが、どうも年寄りには、こういう場所は身の置き場がなくていかん…&h
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