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第16話(6)

Autor: 北川とも
last update Fecha de publicación: 2026-02-11 08:00:40

 賢吾なりに、和彦との会話は気分転換だったのだろう。楽しげに喉を鳴らして笑ったあと、軽くあごをしゃくった。

「うちの連中は、ダイニングで交代で昼メシを食ってる。もうほとんど食い終わっただろうが、先生が楽しみにしていたおせちが残ってるはずだ。食ってくればいい。夜から、俺や幹部たちと一緒にまた出かけてもらうが、それまではゆっくりと過ごせ」

 わかった、と応じて和彦は応接間を出ていこうとしたが、大事なことを思い出して足を止める。

「予定が狂ったと言ってたが、総和会の会長への挨拶は――……」

 こう切り出したとき、自分の声にわずかな期待が込められていることを、和彦はよく自覚していた。賢吾は大仰に片方の眉を動かす。

「俺たちは済ませたが、先生だけ、また日を改めるしかないだろうな。いつになるかはわかんねーが。何しろ、気まぐれなジジイだ。残念だったな、先生。〈楽しみ〉にしていたのに」

「まったくだ」

 賢吾の当て擦りを、まじめな顔で和彦は躱した。

 総和会会長との顔合わせがキャンセルとな
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  • 血と束縛と   第26話(8)

     車から降りた和彦は、警戒しながら南郷に歩み寄る。マンション前に花束を持って立っていて、和彦以外の人間を待っているとは考えにくい。知らん顔をして通りすぎるなど不可能だった。 それに――、和彦よりも先に状況を把握したのだろう。鷹津までもが歩道脇に車を停めて降り、険のある視線を前方に向ける。目を凝らしてみてみると、街灯の明かりを避けるようにして車が一台停まっていた。「大丈夫だ。あれは、うちの隊の人間だ。佐伯先生の見舞いに行くと言ったら、何を心配したんだか、ついてきたんだ」 声を荒らげているわけでもないのに、南郷の声は夜の空気を震わせる。和彦はハッとして、再び南郷を見た。「……見舞いって、なんのことですか……?」「襲われたと聞いた」「誰がそんなことを言ったのか知りませんが、ぼくはこの通り、なんともありません」 和彦は、南郷が持っている花束を渡されたくない一心で、冷ややかに言い放つ。一方の南郷は、和彦の反応を楽しんでいるかのように口元を緩めた。 夜ということもあり、人通りはほとんどないのだが、それでも、マンションを出入りする人間に、明らかに堅気ではない男と話している場面を見られたくない。 和彦が半ば強引に会話を打ち切ろうとしたところで、嫌なタイミングで南郷が切り出した。「――長嶺組の動きが慌ただしいという報告だけは、すぐに耳に入っていたんだ。だが、一体何が起こったのか、総和会になかなか情報が上がってこなかった。見舞いが遅くなったのは、そういう理由からだ」「長嶺組と総和会の情報のやり取りについては、ぼくにはなんとも……。連絡役になっているのは、中嶋くんでは?」「もちろん、長嶺組の本宅に中嶋を向かわせた。が、何も知らされず、聞いたところで答えをはぐらかされたようだ」 それなのに南郷は、襲撃の件も、その場に和彦がいたという事実も把握している。どうやって知ったのか、と考えてまっさきに頭に浮かんだのは、秦の存在だ。秦と中嶋の関係を思えば、情報のやり取りが皆無とも考えにくい。 しかし、和彦の心の内を読んだように、すかさず南郷に言われ

  • 血と束縛と   第26話(7)

    「この調子なら、連休中にでも抜糸できそうだ」 連休、と小声で呟いた鷹津が、傷口の消毒を始めた和彦に問いかけてくる。「このクリニックも、連休があるのか?」「一週間ほど休むことになっている。ぼくはカレンダー通り開けていてもいいんだが、組長に言われると、何も言えない」「ヤクザは優雅なものだな。そのオンナも」 鷹津が左手を伸ばし、頬に触れてこようとしたので、咄嗟に払い除ける。触れられることが嫌だというより、賢吾から言われた言葉が蘇ったのだ。 鷹津に情を移すなと、賢吾は言った。それがどういうことなのか和彦にはよくわからない。鷹津は相変わらず嫌な男だし、好意的な感情を抱いていないつもりだ。だが、それだけで鷹津との関係は割り切れない。そう、単純なものではないのだ。「……治療中だ。邪魔するな」 あえて鷹津の顔を見ないで注意すると、和彦は黙々と手を動かす。治療とは言っても、傷の様子を診たかっただけで、あとは消毒をして、ガーゼと包帯を取り替えるだけだ。 手早く包帯を巻き終え、立ち上がった和彦は片付けを始める。「また何日かしたら連絡をする。そのとき、傷が化膿していなかったら抜糸をする。――用は済んだから帰ってくれ」 鷹津に背を向けて素っ気なく告げると、突然、肩に手がかかる。驚いて振り返ると、いつの間にか鷹津が目の前に立っていた。怖いほど真剣な顔で見つめられ、察するものがあった和彦は後退ろうとしたが、うなじに手がかかって反対に引き寄せられる。「おいっ――」「長嶺に、何か言われたか? えらくピリピリしているな」 和彦は思わず視線を逸らしたが、肯定したも同然だ。鷹津は鼻先で笑い、顔を寄せてきた。「〈あれ〉で、餌を食わせ終えたなんて思ってないだろうな? 俺はお前の命を助けたんだぜ。せめて、この怪我が治るまで、好きなだけ食わせてもらうぞ」「そこまで恩着せがましいことを言うと、せっかくの善行も価値がなくなるぞ。助けられたほうも、うんざりしてくる」 睨みつけながら和彦が言うと、鷹津は意外なほどあっさりと身を引いた。「腹が減った。これからメシを食いにいくぞ」

  • 血と束縛と   第26話(6)

     しっかりと腰を抱え込まれて、内奥で賢吾の欲望が脈打ち、爆ぜる。熱い精をたっぷりと注ぎ込まれ、その感触に和彦は軽い絶頂状態に陥る。きつく目を閉じ、眩暈に耐える。 内奥から賢吾のものが引き抜かれ、体をひっくり返される。手荒く頬を撫でられて、ようやく和彦は目を開けることができた。顔を覗き込んできた賢吾に唇を吸われ、ぎこちなく応える。優しい声で問われた。「俺が今言ったこと、しっかりと頭に叩き込んだか?」 頭がぼうっとしているが、それでも和彦は頷く。「お前は、俺の大事で可愛いオンナだ」「あ、あ……。ぼくは、あんたのオンナだ。ぼくは、あんたには逆らえないし、逆らうつもりもない」「そういう言われ方をすると、俺がまるで暴君みたいだな」 声同様、優しい表情を見せた賢吾にもう一度唇を吸われ、そのまま舌を絡め合う。その間に、賢吾の指が内奥に挿入され、注ぎ込まれたばかりの精を掻き出される。発情している和彦の内奥は、物欲しげにその指を締め付けていた。「本当に、お前はいいオンナだ……」 指が引き抜かれ、まだ硬さを失っていない賢吾の欲望が、閉じきっていない内奥の入り口に押し当てられる。すぐにまた挿入されるのだと思って喉を鳴らした和彦に、怜悧な笑みを浮かべた賢吾はこう囁いた。「欲しかったら、俺の見ている前で――漏らしてみろ」 ハッとして和彦は顔を強張らせる。〈何を〉漏らしてみろと言っているのか、問い返すまでもない。求められるのは初めてではないが、だからといって慣れることはない行為だ。「……ここ、で……?」「心配するな。二人分の浴衣があれば、吸い取ってくれるだろ。お前一人の――」 耳元に露骨な単語を注ぎ込まれ、和彦は羞恥と屈辱を覚えると同時に、異常な高ぶりを感じていた。 賢吾に両足を広げた格好を取らされ、手慰みのように柔らかな膨らみを揉まれる。ときおり弱みを指先で刺激され、早くしろと無言で急かされる。 何度目かの攻めで、和彦の理性は陥落した。 賢吾が見ている前で『漏らした』のだ。

  • 血と束縛と   第26話(5)

     微かに濡れた音を立てながら先端を吸われ、熱い吐息をこぼして和彦は身悶える。欲望の形を舌先でなぞられ、さらに柔らかな膨らみも舐られる。「うっ、うっ、うあっ、あっ――」「今度鷹津に教えてやれ。長嶺組の組長は、自分のオンナのこんなところまでしゃぶって、感じさせてくれると。あいつは、どうするだろうな」 賢吾の言葉は、見えない執着の炎となって和彦の全身を炙る。不意打ちのように内奥の浅い部分をぐっと指の腹で押し上げられ、呆気なく和彦は絶頂を迎えた。精を迸らせ、下腹部を濡らしていた。 そんな和彦を見下ろし、唇の端に笑みを刻んだ賢吾は、あっさりと内奥から指を引き抜く。浴衣を剥ぎ取られた和彦はうつ伏せの姿勢を取らされ、高々と腰を抱え上げられる。身構える間もなく、背後から貫かれた。「んううっ」 力を漲らせた賢吾の欲望は、容赦なく内奥を押し広げ、襞と粘膜を強く擦り上げてくる。背後から突かれるたびに和彦は畳に爪を立て、衝撃に耐える。重苦しい痛みが下腹部に広がるが、それ以上に、内から焼かれそうなほど賢吾の欲望が熱い。尻を鷲掴んでくる手も。「待っ……、賢吾、さ……、もう少し、ゆっくり……」 和彦の切れ切れの訴えは、乱暴に内奥を突き上げられることで応じられる。賢吾の逞しい欲望が、根元まで捻じ込まれていた。 奥深くまで呑み込んでいるものの存在を、呼吸を繰り返すたびに強く意識する。賢吾は内奥の収縮を堪能するように動きを止め、その代わり、両手を駆使して和彦の体をまさぐってくる。 和彦の肌は、嫌になるほど賢吾の手の感触に馴染んでいる。てのひらで撫で回されているだけで肌はざわつき、汗ばみ、官能を生み出す。和彦のその従順さを、背後から貫きながら賢吾は堪能していた。「……惚れ惚れするほどの、いいオンナっぷりだな、先生。こうして眺めているだけでわかる。俺を欲しがっているってな。もっとも――」 軽く腰を揺すられ、内奥で欲望が蠢く。意識しないまま、食い千切らんばかりに欲望を締め付けていた。「尻のほうはさっきから、グイグイ締まりまくってるがな。突

  • 血と束縛と   第26話(4)

    「……この家の主が仕事をしているのに、その主の部屋でダラダラしているのは、気が引けるんだ」「仕事といっても、電話で片付くような用だ。だから、そう待たせなかっただろ」「気にせず、じっくりと話してくれてもよかったのに……」「俺が気にする」 和彦のすぐ背後に立った賢吾の手が、肩にかかる。浴衣の布越しに体温が伝わってきて、それだけで和彦は冷静ではいられなくなっていた。 慌てて正面を向くと、両肩をしっかりと掴まれ、力を込められた。「あっ」 絶妙な力加減で肩を揉まれて、思わず和彦は声を上げる。背後から笑いを含んだ声で言われた。「凝ってるな、先生。気疲れすることが多すぎるせいか?」「……あんたは、原因の一つだからな」「遠慮なく、俺が原因の大部分だと言っていいんだぞ」 返事の代わりに、和彦は笑い声を洩らす。 長嶺組組長に肩を揉んでもらうという贅沢を堪能できたのは、わずかな間だった。肩を揉んでいた賢吾の片手が前へと移動し、浴衣の合わせから入り込んできた。 大胆に蠢く手に胸元をまさぐられ、あっという間に凝った胸の突起を、捏ねるようにてのひらで転がされる。指先で捉えられて爪の先で弄られる頃には、和彦の呼吸は弾んでいた。「――鷹津にも、ここをたっぷり弄ってもらったか?」 突然、冷めた声で問われる。背後に立っているのは賢吾だと知っていながら、和彦は一瞬、別の男に入れ替わったのかと混乱した。それぐらい、賢吾の声音が一変したのだ。 本能的な怯えから、和彦は愛撫の手から離れようとしたが、賢吾は焦った素振りすら見せなかった。 立ち上がろうとしたが、いきなり座椅子を引かれてバランスを崩す。すかさず賢吾の腕に捕らえられて、畳の上に放り出された。 悠然とのしかかってきた賢吾を、顔を強張らせて見上げる。手荒な行動とは裏腹に、賢吾は薄い笑みを浮かべていた。「鷹津とのセックスはよかったようだな、先生。……鷹津のことを話すときの顔を見ていたら、いままでにない表情を浮かべてい

  • 血と束縛と   第26話(3)

    「聞くまでもないだろう。――返事は、ギリギリまで引っ張ればいい。オヤジの腹の内が、もしかすると読めるかもしれない」 それしか打てる手はないのかと、和彦は小さくため息をつく。すかさず賢吾に言われた。「物騒な男に気に入られると、物騒なことに事欠かないな、先生」「他人事だと思って……」 自棄酒というわけではないが、和彦はグラスのワインを飲み干す。『物騒なこと』という話題の流れから、秦の店を襲撃した男たちのことを聞いてみたい衝動に駆られたが、守光の話題が出たことで、軽々しい好奇心は慎むべきだと思い直した。三日前の秦との電話でのやり取りがなければ、危うく口に出していたかもしれない。 自らが踏み込めない領域について、あれこれと思索する和彦とは対照的に、秘密すら踏み散らすような無粋ぶりで賢吾が切り出した。「鷹津には、美味い餌を食わせてやったか?」 和彦は咄嗟に言葉が出なかった。激しい動揺と羞恥で一気に顔が熱くなったが、賢吾の向けてくる冴えた眼差しに首筋は冷たくなるという感覚を、同時に味わう。 賢吾は今日まで、怪我をした鷹津とどう過ごしたか、和彦に一切尋ねてはこなかった。二人の間に何があったかは想像するまでもなく、だからこそ賢吾は知る気がなかったのだろうと解釈していたが、どうやら違ったようだ。 和彦が逃げられない状況になるまで、虎視眈々と機会を狙っていたのだ。「――……餌はやった」「自分が切りつけられながらも、先生を守ったんだ。俺が思った通り、あいつは態度は悪いが、優秀な番犬だ」「何日かは利き手が使いにくくて、不便だろうな」「通って面倒を見るか?」 冗談めかした口調とは裏腹に、ヒヤリとするような感覚が和彦を襲う。賢吾が、鷹津のことを話す自分の反応を観察していると感じ取り、警戒していた。「ぼくはそこまで甲斐甲斐しくない。……ただ、傷の具合を診る必要があるから、夜、クリニックに足を運んでもらうことになる」 慎重に言葉を選んで話した和彦は、賢吾の反応をうかがう。「その顔は、俺の許可を求め

  • 血と束縛と   第6話(26)

     すでに敷いてある布団の一つにどかっと胡坐をかいて座り込むと、片手に持っていた缶ビールを開け、豪快に飲み始める。和彦は、さりげなく部屋の隅へと移動しながら、そんな賢吾を見つめる。 昼前に目的地に着いてから、賢吾たちは病院に向かったが、和彦だけは組員一人を運転手としてつけられ、なぜか観光地巡りをさせられた。組員ではない和彦を、組員たちが集まった病室に連れて行かないだけの配慮を、賢吾はしてくれたのだ。 用意された宿は、こじんまりとして古くはあるが部屋も風呂もきれいで、いかにも温泉地にある宿といった風情を持っていた。観光シーズンから外れているためか一般の宿泊客も少なく、

    last updateÚltima actualización : 2026-03-21
  • 血と束縛と   第6話(32)

    「まあ、ぼくに何かあるはずもないので、護衛の彼らも暇なんじゃないかと――」 ふいに、ジャケットのポケットの中で携帯電話が鳴った。取り出して見てみると、長嶺組が、和彦の護衛に就く組員に渡している携帯電話からだ。 何事かと思いながら電話に出た和彦は、すぐに緊迫した空気を感じ取った。「何かあったのか?」『先生、今、トラブルが起きているんで、絶対、駐車場には来ないでください』「トラブルって……」『警官の職質です。駐車場に停めた車で待機していたら、突然パトカーがやってきたんです。通報があったと。いえ

    last updateÚltima actualización : 2026-03-21
  • 血と束縛と   第6話(7)

     反り返ったものの先端から、はしたなく透明なしずくを滴らせる。誤魔化しようのない快感の証だ。すると三田村は、和彦のものを握り締め、律動に合わせて上下に扱いてくれる。和彦は呆気なく、二度目の絶頂を迎え、精を迸らせた。 ここで三田村が深い吐息を洩らし、動きを止める。内奥では、逞しい欲望が脈打ち、三田村の限界が近いことを知らせてくる。 和彦は三田村の顔を撫で、伝い落ちる汗を拭う。微かに笑みらしきものを浮かべた三田村だが、次の瞬間には表情を引き締め、律動を再開する。 三田村が動くたびに、滴る汗が和彦の肌すらも濡らしていた。そして、汗だけではなく――。

    last updateÚltima actualización : 2026-03-21
  • 血と束縛と   第6話(28)

    「あうっ……」 声を洩らした和彦は、前に這って逃れようとしながら、首を左右に振る。「そこは、まだっ――」「先だろうが、後だろうが、感じまくるのは一緒だろ」 情緒の欠片もないことを言いながら賢吾は、慣れた手つきで和彦の柔らかな膨らみを揉みしだき始める。何度味わわされても、この愛撫の強烈さには慣れない。一瞬にして下肢に力が入らなくなり、愛撫を与えてくる相手に従わされてしまう。「あっ、あっ、あうっ」 巧みに蠢く指に弱みをまさぐられ、弄られる。強弱をつけて揉み込まれると、意識しないまま和彦は腰を揺

    last updateÚltima actualización : 2026-03-21
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