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第17話(1)

Auteur: 北川とも
last update Date de publication: 2026-02-20 20:00:59

 軽く肩を揺すられ、和彦はゆっくりと目を開く。なぜか、三田村に顔を覗き込まれていた。

「――こんなところで寝ていたら、湯冷めする」

 三田村に言われてようやく、自分が湯に浸かり、バスタブの縁に頭を預けた状態であることに気づいた和彦は、慌てて体を起こそうとする。つい居眠りをしてしまったようだ。

 派手な水音を立てて身じろぐと、すかさず三田村が片手を差し出してくれる。和彦はその手を掴んで立ち上がった。

 浴室を出てバスマットの上に立った和彦の体を、当然のように三田村がバスタオルで拭いてくれる。されるに任せながら和彦は、風呂に入る前までの自分の行動を思い返す。

 中嶋とベッドの上で絡み合い、その中嶋を見送ったあと、ゆっくりと湯に浸かりたくなったのだ。

 優しい手つきで髪を拭いてもらいながら、和彦はじっと三田村の顔を見つめる。三田村は、無表情だった。

「……何があったのか、知っている顔だな」

「中嶋が先生にひどいことをしていたなら、只じゃ済ませない」

 ここで三田村が、軽
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     忘れてならないのは、同じ店で和彦は、秦に薬を飲まされて淫らな行為に及ばれたことがある。あの頃はまだ秦の正体も知らず、律儀に敬語を使って話していたのだ。 それが今では――。 自分の痴態も含めていろいろと脳裏に蘇り、危うく体温が上がりそうになった和彦は、慌てて頭から追い払う。『予定では一か月ほど店を閉めることになるので、昨夜はお客様たちを招いて、派手に騒いだんです。そして今夜は、わたしも経営者という肩書きを忘れて、先生と楽しく飲みたいと思いまして』「……今回も、中嶋くんは?」 和彦の問いかけをどう受け止めたのか、電話の向こうから微かに秦の笑い声が聞こえてくる。『残念ながら、中嶋は今夜は仕事だそうです。――大丈夫。中嶋がいないからといって、先生に変なことはしませんよ』「そんなことは心配していないっ」『でしたら、おつき合いいただけますか?』 秦は、和彦が断るとは思っていない口ぶりだった。和彦の機嫌が悪いと聞かされながら、あえて電話をかけてきたぐらいだ。やはり賢吾から、気分転換させてやれとでも言われているのかもしれない。「――つき合ってもいい」 そう和彦が答えると、また電話の向こうから、秦の笑い声が聞こえてきた。『料理や酒を準備しておきますから、いつでもいらしてください。あっ、護衛の方の分も用意しておきますよ。中嶋が一緒じゃないので、護衛をつけないと夜遊びはできないでしょう、先生は』 気が利くなと呟いて、電話を切る。和彦は携帯電話を握ったまま、すぐには動き出さず、ぼんやりとしてしまう。 秦の優しい口調で問われると、言わなくていいことまで話してしまいそうで、隠し事をしているときに会うには、意外に厄介な相手だ。やはり断ればよかっただろうかと、ちらりと頭の片隅で考える。 しかし、秦はどこまでも気が利いていた。握っていた携帯電話が再び鳴り、和彦は反射的に電話に出る。今度は、いつも護衛を務めている組員からだった。 すぐに出発しますかと問われ、力なく笑ってしまう。「三十分後に迎えに来てくれ」 そう答えて電話を切ると、今度こそ立ち上がった。

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  • 血と束縛と   第5話(18)

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  • 血と束縛と   第5話(14)

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