Masukどこか楽しげな口調で呟いた賢吾に両膝の裏を掴まれ、足を抱え上げられる。何をされるのかと身構える間もなく、柔らかな膨らみに舌が這わされた。唇を噛んで声を堪えた和彦だが、淫らな愛撫にすぐに理性は陥落する。
熱い口腔に含まれて舐られると、はしたなく腰を揺すり、放埓に声を上げて感じてしまう。刺激が強すぎてつらくなってくるが、和彦がいくら賢吾の頭を押し退けようとしても、愛撫がとまることはない。「はっ……、やめ……、つらい、んだ」 和彦は必死に訴えながら、押し寄せてくる快感に爪先を突っ張らせる。顔を上げた賢吾に再び足の指を舐められ、柔らかな膨らみを指で刺激される。弱みを弄られると、意識しないまま上擦った声が出る。賢吾がそんなことをしないと知ってはいるが、容赦なく潰されるかもしれないという恐れは、一方で強烈に甘美だ。「うあっ、あっ、あっ、あぁっ」「涎を垂らしっぱなしだな、先生。そんなに、ここを弄られるのはいいか?」「……うる、さっ&hel**** 和彦の緊張が電話越しに伝わったのだろう。いつもなら他愛ない世間話から始める里見が、今日はまっさきにこう切り出した。『何かあったのか?』 さすがに鋭いなと、内心で苦笑を洩らした和彦は、携帯電話を一度顔から離す。軽く呼吸を整えてから、努めて落ち着いた声で答えた。「――兄さんから、連絡があったんだ。ぼくの携帯に……」 たったこれだけで、察しがよすぎるのか、それとも心当たりがあったのか、里見は事情が理解できたようだ。『わたしのせいだな……』「里見さん、ぼくの番号、〈K〉で登録してあるんだってね。甘い、と兄さんが言ってた」『……迂闊と言ってくれていい。本当に、わたしのミスだ』「それはいいんだ。もう。知られてしまったんなら仕方ない。里見さんもまさか、兄さんが携帯電話を盗み見るなんて思いもしなかったんだろ」 里見の返事は、重いため息だった。和彦としては、英俊の行為にいまさら愚痴をこぼすつもりはなかった。結果として、こちらが行動を起こすきっかけとなったのだ。 昼の休憩に入って静かなクリニックとは違い、電話越しに慌しい空気が伝わってくる。本来はゆっくり話せるよう、連絡は夜にすべきなのかもしれないが、和彦としては、里見と話し込み、決意が揺れるのが怖かった。「兄さんと少し話した。相変わらずだったよ」『彼は、身近な人間に対しては言葉を選ばない。わたしも、彼の上司だったときは、それなりに敬ってはもらっていたが、今はまあ……。彼なりの、親しさの表現かもしれない』「優しいな、里見さんは」 皮肉でもなんでもなく、本当にそう思った。少なくとも和彦は、実の兄に対して好意的な表現はできない。肉親と他人の違いと言ってしまえば、それまでかもしれないが。「兄さんと電話で話して、キツイことを言われた。それで、いろいろ考えたんだ。一度兄さんと会って、こちらの希望をきちんと伝えるべきじゃないかって」『希望?』「…
「何度も言ってるだろ。お前は、俺にとって大事で可愛いオンナだと。それは、他人とは言わない。恋人でもない。こっちの世界じゃ……、いや、長嶺の男にとってそれはもう、家族と呼ぶんだ」 不覚にも、胸が詰まった。ヤクザの口先だけの言葉など、と返すことすらできなかった。 賢吾に唇を吸われてから、魅力的なバリトンで囁かれる。「もう一度呼んでみろ」 反射的に顔を背けた和彦だが、反応を促すように賢吾に腰を揺らされ、内奥深くまで埋め込まれた欲望の興奮を知らされる。今すぐにでも引き抜かれそうで、はしたなく締め付け、襞と粘膜で奉仕する。「ほら、早く呼べ」 和彦は、賢吾を軽く睨みつけてから、ぎこちなく呼びかけた。「――……賢、吾」「もう一度」「……賢吾」 何度も賢吾に求められ、そのたびに和彦は応じる。まるで、甘い睦言のようなやり取りだった。その間も律動は繰り返され、内奥から否応なく肉の悦びを引きずり出される。賢吾の下で煩悶しながら和彦は、抑え切れない嬌声を上げていた。「うあっ、あっ、あっ、い、い……。気持ち、いいっ――」「ああ、俺もだ。俺をこんなに感じさせてくれるのは、お前だけだ」 嬉しいと、率直に思った。和彦は意識しないまま笑みをこぼし、誘われるように顔を寄せた賢吾と、激しい口づけを交わす。 それだけでは満足できない和彦は、言葉にならない強い求めを知らせるため、筋肉が張り詰めている逞しい肩にぐっと爪を立てる。和彦の求めがわかったのだろう。賢吾は猛々しい鋭い目つきで和彦を見下ろしてきながら、内奥深くに熱い精をたっぷりと注ぎ込んできた。** 賢吾とのセックスはいつでも激しく濃厚だが、今日は特別だったと和彦は思う。 剥き出しの肩先を撫でられて、それだけで淫らな衝動が胸の奥で蠢く。暴れ出さないよう、慎重に息を吐き出した和彦は、賢吾の肩にのしかかるように描かれた刺青に触れる。「――そうやって先生に触れられるだけで、まだ興奮する」 本音半
和彦がぎこちなく手を動かしているのとは対照的に、賢吾の指の動きは巧みだ。確実に和彦の弱みを探り当て、弄んでくる。すべてを賢吾に委ねた証として、無意識のうちに力が抜け、自ら大きく足を開いて愛撫を求めてしまう。そんな和彦を見下ろしながら、賢吾はそっと目を細めた。 オンナの従順ぶりを愛でているようでもあり、そのオンナに、同じような愛撫を施した男の動きを追っているようでもある。「どの男に対しても、こんなにいやらしい蜜を垂らして悦んで見せているんなら、少し仕込みすぎたかもしれねーな」 ゾッとするほど優しい声で囁いた賢吾の片手が、反り返り、先端から尽きることなく透明なしずくを垂らしている和彦の欲望にかかる。唇を噛んで声を堪えたが、反応そのものを堪えることはできない。賢吾の手が動くたびに腰を揺らし、熱くなったものを震わせる。「ふっ……」 凶暴な熱の塊が、ひくつく内奥の入り口に擦りつけられる。それだけで和彦の背筋に、痺れるような疼きが駆け抜けていた。指で解されたとはいえ、まだ狭い場所をゆっくりとこじ開けられ、痛みと異物感が生まれはするものの、大蛇の化身のような男に内から食らわれるという高揚感の前には、あまりに淡い感覚だ。 和彦はすがるように賢吾を見上げながら、逞しい腕に懸命にしがみつく。そんな和彦を見下ろしながら、賢吾が残酷な質問をぶつけてきた。「――こんなふうに、南郷を受け入れたか?」 瞬間的に怯えた和彦だが、欲望の太い部分を内奥に呑み込まされ、強い刺激に気を取られてしまう。さらに追い討ちをかけるように、賢吾が緩く腰を揺する。「んあっ、あっ、あうっ……」「どうだ」 反り返った欲望を、賢吾の下腹部に擦り上げられながら、唇の端を軽く吸われる。吐息をこぼした和彦は、ようやく言葉を発することができた。「……な、い……。受け入れて、ないっ……」「本当か?」 賢吾の口調が穏やかだからこそ、腹の内に滾っているものを想像して恐怖する。和彦は恥らう余裕もなく、事実を答えていた。
念を押すように賢吾に問われ、顔を背けながら和彦は頷く。ここで一旦賢吾が体を起こし、ベッドに沈められそうな圧迫感から解放される。だが、ほっとはできなかった。顔を背けたままの和彦の耳には、しっかりと衣擦れの音が届いていたからだ。 再びのしかかられ、今度はしっかりと素肌同士が重なる。全身で感じる賢吾の体の重みと熱さに和彦は、一気に高まった高揚感から眩暈に襲われる。その間にも膝を掴まれて両足を広げられると、逞しい腰が割り込まされる。擦りつけられた賢吾の欲望は、すでに猛っていた。「先生、俺を見ろ」 傲慢に命令され、和彦はおずおずと従う。見上げた先で、賢吾は唇に薄い笑みを浮かべていた。かつては酷薄そうに見えていた笑みだが、今は違う。ひどく官能を刺激される魅力的な表情だと思った。「あっ……」 こちらの求めがわかったように、賢吾に唇を吸われる。和彦は箍が外れたように賢吾の唇を吸い返しながら、夢中で両腕を広い背へと回し、てのひらで存分に大蛇を撫で回す。口づけの合間に賢吾に問われた。「――こいつが愛しいか?」 和彦は息を喘がせながら、賢吾の目を覗き込む。背だけではなく、この男は身の内にも大蛇を棲まわせている。残酷で獰猛なくせに、蕩かしそうなほどオンナを甘やかしながら、底知れない強い執着心と独占欲を持つ生き物だ。だからこそ、己の手から離れると知ったとき、この生き物は容赦なく、オンナの首をへし折ってしまうだろう。他人の手に渡るぐらいなら、と。「そんなわけ……ない。こんな、怖いもの……」「だが、欲しいだろ?」 甘く優しい声で囁かれ、和彦は賢吾を睨みつける。しかし賢吾の唇が瞼に押し当てられると、もう抗えなかった。「……欲し、い」 指にたっぷりの唾液を絡めた賢吾が身じろぐ。予期したとおり、濡れた指が内奥の入り口をまさぐり始め、和彦は反射的に腰を揺らしていた。内奥をこじ開けるようにして指を挿入され、堪えきれず呻き声を洩らしていたが、賢吾は冷静に和彦の内を探る。 きつい収縮を繰り返す内奥から指を出し入れし、確実に入り口を解してい
反論は唇に吸い取られ、そのまま舌を絡め合う。賢吾の指が器用に動き、ネクタイを解かれ、ワイシャツのボタンを外されていく。賢吾の指がわずかに肌を掠めるだけで、鳥肌が立ちそうなほど感じてしまい、浅ましく愛撫をねだってしまいそうになる自分が忌々しい。「……そんな、気分じゃ、ない……」 ほんの一時間ほど前に会った南郷の顔がちらつき、情欲のうねりとは裏腹に、拒否感がチクリと胸の奥を刺激する。嫌でも、あの男に触れられたときのことを思い出していた。 そして、賢吾に申し訳ないと感じてしまうのだ。「生憎だが、俺は、そんな気分だ。――他の男の毒気にあてられたオンナを、さっさと正気に戻してやらねーとな」 大蛇が潜む目でじっと見据えられ、危うく息が止まりそうになる。一見、普段と変わらない――むしろ機嫌がよさそうにすら見えた賢吾だが、胸の内では激しいものが吹き荒れているのだと、この瞬間、思い知らされた。 怯えた和彦が何も言えなくなった間に、賢吾にワイシャツのボタンをすべて外され、ベルトも緩められる。「うっ……」 賢吾の熱い体が覆い被さってきて、首筋に唇が押し当てられる。所有の証を刻み付けるように、強く肌を吸い上げられた。さらに舌で舐め上げられ、このとき和彦は、首筋に牙を突き立てる大蛇の姿を想像し、恐怖で竦み上がる。 和彦の体の強張りを感じ取ったのだろう。皮肉げな口調で指摘される。「俺が怖いか?」「……ぼくはいつでも、あんたが怖い」「あんたじゃない。賢吾さんだろ。今は」 再び首筋に唇を這わされながらワイシャツを脱がされ、腹部から胸元へとてのひらが這わされる。愛しげに丹念に肌を撫で回されているうちに、寸前の会話を忘れ、簡単に身を任せてしまいそうになっていた。 期待と興奮で硬く凝った胸の突起を、焦らすように指の腹でくすぐられてから、摘まみ上げられる。小さく声を洩らした和彦は、無意識のうちに賢吾の頭に手をかけていた。 和彦の求めがわかったらしく、賢吾の唇が首筋から移動し、胸元に押し当てられる。「
「そうだったな。俺は先生から堅気の生活を奪った。挙げ句が、長嶺の男三人の〈オンナ〉という立場……いや、役目を押し付けている。とっくに腹を刺されていても、不思議じゃない。なのに、こうして俺がピンピンしているのは――どうしてだ?」 賢吾に顔を覗き込まれ、和彦はスッと視線を逸らす。長嶺の男は、いつも和彦から欲しい答えをもぎ取ろうとするのだ。 低く喉を鳴らして笑った賢吾の指に、あごの下をくすぐられる。「先生は俺にとって、大事で可愛い、特別なオンナだ。逃がさないために、何重にも鎖を巻きつけて、この世界に留めておきたくなる。先生にどれだけつらい思いをさせようがな」「まだ……、そこまで、つらい思いはしていない。それどころか、ひどく甘やかされているようだ」「甘い地獄だ。品がよくて優しい一方で、したたかで多淫な先生は、繊細だ。壊さないように大事にしながら、抜け出せないよう深い場所にまで引きずり込む」「……ぼくがそこまで堕ちたら、本性を見せるんだろ」「もう見せているとは、考えないのか?」 返事に詰まった和彦の反応をおもしろがるように、賢吾は目元を和らげ、そして、額に唇を押し当ててきた。 暴発寸前だった怒りが消えてなくなっていくようで、そんな自分の現金さに和彦はうろたえ、視線をさまよわせる。「――ぼくの機嫌を取っているつもりなのか?」 こめかみに唇を這わせる賢吾の息遣いが笑った。「取ってほしいか?」 カッとした和彦は賢吾の肩を押し上げようとしたが、簡単にあしらわれ、強引に唇を塞がれる。喉の奥から呻き声を洩らした和彦は、なんとか賢吾の顔を押しのけようとするが、反対にがっちりと頭を押さえ込まれていた。 食らいつくような勢いで唇を吸われたかと思うと、熱い舌を口腔深くまでねじ込まれ、犯される。あまりの口づけの激しさに息苦しくなり、必死に身を捩ろうとするが、覆い被さっている体はびくともしない。 このまま窒息させられるのではないかと、本気で怯え、動揺した和彦の抵抗をすべて受け止めながら、賢吾は口づけを続ける。 ようやく一度
** 軽く咳き込んだ和彦は、モゾリと身じろいで寝返りを打つ。うつ伏せとなって、布団から手を出してみると、肌に触れる空気はふんわりと温かい。 誰かが気を利かせて、客間のエアコンを入れてくれたようだ。おかげで、朝の身震いするような寒さは感じなくて済むが、その代わり、ひどく空気が乾燥している。 もう一度咳き込んだ和彦は、ようやく薄く目を開く。障子を通して、朝の柔らかな陽射しが室内に満ちていた。 緩慢にまばたきを繰り返しながら、どうして今朝は、体が心地いい充足感に満たされているのだろうかと考えてすぐに、小さく声を洩らす。布団に包
携帯電話は持っていくが、念のため、外出することを長嶺組に報告しておく。組員からは、すぐに護衛の人間を向かわせると言われたが、中嶋が同行することを告げると、渋々引き下がってくれた。 総和会の中で出世した中嶋への信頼感の表れか、何かしらの思惑があるのか――と考えるのは、穿ちすぎかもしれない。 身支度を整えた和彦がエントランスに降りたとき、約束した時間には五分ほど早かったが、マンション前まで出ると、すでにタクシーが一台停まっていた。中から中嶋が手を振っている。「――それで、どこまで行くんだ」 タクシーが走り始めてから、首に巻いたマフラーの端を弄
「お前に行動を予測されるなんて、自分が単純だと言われてるようで、軽くショックだ……」「ひでーよ、先生。俺こそ、どれだけ先生に単純だと思われてるんだよ」 たまらず声を洩らして笑った和彦は、並んでいるマフラーを指さす。「お前の予測だと、ぼくのマフラーを一緒に選ぶ、というのも入ってるのか?」 もちろん、と返事をした千尋が、率先してマフラーを取り上げ、和彦の首元に持ってくる。その状態で、側に置かれた鏡を覗き込んだ和彦は、今度こそ本気で驚いて目を見開く。反射的に振り返ると、そこには、さきほど別れたばかりの澤村が立っていた。
**** ヤクザの跡目の披露式とは、どれだけ仰々しいものかと身構えていた和彦だが、拍子抜け――というのは表現が悪いが、想像していたほど格式張ったものではなかった。 凶悪な面相をしたダークスーツの男たちで埋め尽くされているのかと、内心では戦々恐々としていたのだが、確かにダークスーツを着た男たちは何人かいたが、言われなければヤクザとは思えない物腰と容貌をしている。どちらかといえば、めでたい席のために集まった親戚の男たち、といった印象を受ける。 座布団の上に正座した和彦は、グラスに注がれたビールを飲みながら