Beranda / BL / 血と束縛と / 第21話(14)

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第21話(14)

Penulis: 北川とも
last update Tanggal publikasi: 2026-03-22 14:00:47

 寒さ以外のものから、和彦は大きく身震いする。大蛇を背に宿した男の冷たい目を、ふいに思い出したのだ。

「……里見さんに対して、やましい気持ちはない。佐伯家の情報を得たいだけだ」

「そんな理由があるのに、長嶺に打ち明けていないのはどうしてだ」

 鷹津は真剣な顔で、和彦の目を覗き込んでくる。賢吾に代わって、自分が和彦の言葉の真意を探ろうとしているかのように。

「あの人は、堅気だ。ぼくとは違う。――ヤクザと交わらせたくない」

「ヤクザから、昔の男を守りたいってことか。健気だな」

 そうじゃない、と和彦は声に出さずに呟く。決して、そんなきれいな理由だけではないのだ。

 里見に迷惑をかけたくないという想いはある。そしてもう一つ、和彦自身の今の生活と、自分を大事にしてくれる男たちがいる世界を壊したくないという想いが。

 一人で気ままに生活をしているときは、無視していればそれでよかった佐伯家だが、今は、里見まで利用する姿勢に、たまらなく嫌な予感がするのだ。

「まあ、何かあったと
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  • 血と束縛と   第29話(9)

     それに、賢吾がこちらの状況をある程度把握している様子なので、急いで連絡する必要性はなさそうだ。しかも、何日も滞在するわけではないのだ。  和彦はそう自分に言い聞かせ、気持ちを落ち着かせる。こうして中嶋を寄越してくれた効果は、絶大だというわけだ。  ボストンバッグを足元に置いて、和彦は頭を下げる。 「こちらの事情に巻き込んで、面倒をかけてすまなかった。それと……ありがとう」 「俺としては下心たっぷりなので、先生に頭を下げられると、心苦しいんですが」 「それでもいいよ。ここにぼくがいることを、君だけじゃなく、組長も把握していると知って、安心した」  中嶋がふいに腰を屈めて、顔を覗き込んでくる。何事かと和彦は目を丸くした。 「……なんだ?」 「いえ、明かりのせいかとも思ったんですが、先生、顔色が悪いですね」 「別に体調が悪いわけじゃないが、今日は疲れた……」  だからといってすぐにまた横になる気にはなれない。昼間は雨に濡れ、うたた寝をしている最中には汗をかいた体は気持ち悪い。それに、今日は朝からほとんど何も食べていないので、さすがに胃に何か入れておきたかった。  和彦が腹に手をやると、察したように中嶋が提案してくれた。 「来る途中で、弁当を買ってきたんですよ。どうせここだと、インスタントか、冷凍食品を温めるだけかと思ったんで。俺の分も買ったんで、ここで食べて帰っていいですか?」  和彦が頷くと、持ってきますと言い置いて中嶋が部屋を出ていく。その後ろ姿を見送った和彦は改めて、中嶋を寄越してくれた賢吾の気遣いを、心憎く思っていた。中嶋特有の配慮は、今はとにかく心地よい。  久しぶりに会った兄より、下心があると言い切るヤクザに対して安心感を覚えるとは――。  皮肉っぽくそう考えた和彦は、口元に淡い苦笑を刻んだ。** 中嶋が帰ったあとの隠れ家は、まるで建物全体が息を潜めているかのように静かだった。和彦以外に二人の男が滞在しているのだが、そもそも建物自体が広いため、少数の人間が動いたところで物音も聞こえないのだ。  かつては何人もの男たちが同時に入っていたであろう風呂も

  • 血と束縛と   第29話(8)

     板張りの薄暗い部屋には、ベッドやテーブルセット、テレビにエアコンだけではなく、クローゼットまで揃っており、他の部屋とは明らかに様子が違う。「特別なお客さんが使う部屋です。クローゼットの中に、サイズはバラバラですが、クリーニングした服がいろいろ揃っているので、自由に使ってください。それと――」 家の中での行動は自由だが、外には出ないようにと、何度も念を押された。そもそも、動き回る気力もなく、ドアが閉まるのを待ってから、和彦はぐったりとベッドに腰掛ける。 まだ一日が終わったわけではないが、今日は大変だったと、改めて実感していた。 英俊と交わした会話を思い返そうとしたが、頭の動きは鈍く、記憶が上手く繋がらない。ここで和彦は、自分がまだジャケットも脱いでいないことを思い出した。 億劫ながらも一旦立ち上がり、脱いだジャケットとネクタイをイスの背もたれにかける。ついでに窓の外に視線を向けてみたが、家の前の様子ぐらいしか見えなかった。 ふらふらとベッドに戻り、そのまま横になる。その瞬間、自分が肉体的にも精神的にも、ひどく疲弊しているのだと思い知らされた。もう、起き上がるどころか、目を開けることもできない。 賢吾に連絡しなければと思いながらも、抵抗する間もなく、和彦の意識はスウッと暗いところへと引きずり込まれていた。** 瞼越しに光が差し込んできて、和彦はビクリと体を震わせる。詰めた息をゆっくりと吐き出しながら目を開けると、なぜか、よく見知った顔が目の前にあった。電気の明かりがまぶしくて、数回瞬きを繰り返す。「――……何、してるんだ……」 ぼんやりとした意識のまま問いかけると、相手は、ヤクザらしくない優しい笑みを浮かべた。「先生の寝顔を見ようとしていたんですよ」「……つまらないぞ、見ても」 和彦の返答に、中嶋が短く噴き出す。「どんなときでも、先生は先生ですね。マイペースというか、危機感がないというか」 危機感、と口中で反芻してから、自分が置かれた状況を思い出す。途端に、一気に気分

  • 血と束縛と   第29話(7)

    ** まだ午後三時にもなっていないというのに、和彦が車から降りたとき、日暮れかと錯覚するほど辺りは薄暗かった。 すかさず差しかけられた傘に雨が落ちる音がする。鬱陶しいほどの湿気は覚悟していたが、街中で生活していてはまず嗅ぐことのない、青草と土の匂いが立ちこめていた。 移動の間中、後部座席はカーテンで覆われていたため、外の様子がよくわからなかったのだが、ようやく和彦は周囲をじっくりと見渡すことができる。山間の、木々に囲まれた場所だった。天気のせいだけではないだろう。なんとなく、鬱蒼とした景色だと思った。 少なくとも、活気はない。なんといっても、和彦の目の前に建つ一軒家以外、辺りに人家が見当たらないのだ。当然のように、人も車もまったく通っていない。とにかく静かで、総和会の男たちがぼそぼそと交わす会話は、重苦しい静寂を打ち破るほどの威力はない。 日常から切り離されたような――という表現が、ふと和彦の脳裏に浮かぶ。観光地として、あえて静かな環境を保っているという様子はなく、ここは普段、人が立ち入らないような場所なのだろう。 だからこそ、身を隠すにはうってつけだ。 和彦はそっと息を吐き出すと、傘を差しかけている男に短く問いかける。「ここが?」「はい。佐伯先生には日曜日まで、ここで過ごしてもらいます。不便でしょうが、我慢してください」 和彦はもう一度息を吐き出して、車中で受けた説明を思い返す。 デパートの地下駐車場で車に乗り込んだあと、一旦身を隠してもらうと言われたものの、どんなところに連れて行かれるのかと不安でたまらなかったのだが、いざ目的地に連れて来られると、不安が解消されるどころか、新たな不安が募る。 長嶺組から、和彦の護衛を完全に引き継いだ総和会の目的は、理解したつもりだ。和彦と長嶺組の繋がりを、佐伯家に知られる事態は避けなければならない。 そのため、英俊と別れた和彦に尾行がついていれば、長嶺組は一旦手を引き、和彦の身を総和会に委ねることにしたのだという。これは、総和会という仕組みに関係がある。 総和会に名を連ねる十一の組の誰かが犯罪を犯して逮捕されたとき、組の名が表に出ることは

  • 血と束縛と   第29話(6)

    ** 歩くごとに、靴の裏から水が染み込んでくるかのように、足取りが重かった。さらに、ムッとするような湿気が体中にまとわりついてくる。とにかく、何もかもが不快だった。 急き立てられるように速足のせいか、さきほどのレストランでのやり取りのせいか、和彦の息遣いは荒く、心なしか頭が痛い。 雨で濡れた髪を掻き上げた和彦は、左頬に触れる。すでに痛みはないが、少しだけ熱を帯びている。ここであることに気づき、自分の手を見る。微かに震えていた。正直、殴られることは想定していたが、喉元に手をかけられたことには衝撃を受けた。当然、英俊は本気ではなかっただろうが、脅しとしては効果的だ。 子供の頃、英俊からさんざん与えられた痛みの記憶が一気に噴き出してきて、気分が悪い。意識した途端、その場で嘔吐してしまいそうだ。 なのに和彦は、歩くのをやめられない。立ち止まった瞬間、英俊に背後から腕を捕まれそうな恐怖があった。もしかすると、本当に英俊が背後から尾行してきているのかもしれないが、振り返って確認することもできない。 傘を差して歩いている人たちの間を縫うようにして、ひたすら前を見据えて歩き続けるのが精一杯だ。 長嶺組の組員からは、英俊と別れたあと、タクシーを数回乗り換えてほしいと言われていた。佐伯家が尾行をつけていないか確認してからでないと、迂闊に和彦と接触できないのだ。 本当はホテルのエントランスからすぐにタクシーに乗り込みたかったが、天候のせいでタクシー待ちの客が並んでおり、悠長に列に加わる気にはなれなかった。歩き出してはみたものの、通りを走るタクシーはほとんど客を乗せている。 少し座って休みたいと思い、慎重に周囲を見回す。すると突然、ジャケットのポケットの中で携帯電話が鳴った。一瞬、英俊かと思って動揺しかけたが、すぐに思い直す。着信音は、組などとの連絡に使っている携帯電話のものだ。「もしもし――」『佐伯先生、尾行がついています。このまま真っ直ぐ行って、その先にあるデパートの地下二階の駐車場に降りてください。それと、後ろは振り返らないで』 聞き覚えのない声に、和彦の頭は混乱する。「誰だ?」『今日先生を護

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     ほお、と芝居がかった口調で洩らした英俊の目に、狡知な色が浮かぶ。それと同時にゆっくりとイスから立ち上がった。 その光景が、和彦の記憶を刺激する。子供の頃の体験が生々しく蘇っていた。 本能的な危機感から、怯える小動物さながらの動きでテーブルを離れる。和彦が出入り口の扉に行かないよう牽制しつつ、英俊が近づいてくる。広い個室とはいえ、逃げ回れるほどのスペースがあるわけではなく、あっという間に和彦は窓際へと追い詰められていた。 英俊はあくまで優雅な仕種で、和彦の喉元に片手をかけてきた。力を込められたわけではないが、それだけで息苦しくなり、完全に動きを封じられる。「あまり、お前の顔を殴るのは好きじゃない。忌々しいぐらい、わたしに似ている顔だからな。だからといって、蹴るのは野蛮だ」 英俊に冷たい迫力に圧され、無意識に後退った和彦の背に窓ガラスが当たる。完全に逃げ場を失った和彦に対して、英俊が顔を寄せ、低く抑えた声で囁いてきた。「里見さんが気になることをちらりと洩らしていたが、なるほど。こういうことか」「何、が……」「こちら側の動きを、お前がある程度把握しているということだ。確かに、お前の今の物言いは、何かを知っている感じだ。どこまで知っている? 誰から聞き出した? いつからこちらの動きを探っている?」 立て続けに質問をぶつけられながらも、和彦が気になるのは、喉元にかかった英俊の手にじわじわと力が込められていることだった。 体格はほぼ同じなので、英俊を押しのけることは不可能ではない。それどころか、顔を殴りつけることもできるはずなのだ。だが、和彦の手は動かない。頭ではわかっていても、兄に逆らうという行為に、体がついてこない。「お前単独での動きじゃないはずだ。身を潜めながら日常生活を送り、そのうえでこちらの動きを探るなんて、一介の医者には無理だ。協力者なんて言い方はしない。――お前のバックには誰がいる?」 間近から目を覗き込まれ、和彦は唇を引き結び、瞬きもせず見つめ返す。かまわず英俊は話し続ける。「わたしは正直、あの画像を見たとき、お前が性質の悪い奴に騙されたか、自ら進んで仲間になって、佐伯家を

  • 血と束縛と   第29話(4)

    「ただ、ずいぶん雰囲気が優しくなった気がする。お前の友人から様子は聞いていたんだが、正直、荒んだ生活を送って、相応の見た目になっていると思っていたんだ。だが今のお前は――実家にいた頃より、満ち足りているようだ」「ぼくがなんと答えたら、兄さんは満足なんだ」「お前に関することで、わたしは一度でも満足したことはない。今までは」 英俊の言葉は容赦がないというより、和彦を傷つけるための鋭い刃を潜ませている、という表現が正しいだろう。ときおり自分の口から放たれる毒は、きっとこの兄に影響されてのものだと和彦は思っている。「そんな不肖の弟に会いに来たんだ。早く本題に入ったら?」 英俊はグラスの水を軽く一口飲んでから、ようやく切り出した。「お前も知っている通り、わたしは国政選挙に出馬することにした。問題が起きなければ、二年後に」「ずいぶん先だ」「わたしは、勝てない勝負に打って出る気はない。そのために今は、父さんと一緒に準備している最中だ。地盤を譲ってくれることになっている代議士も、最後の花道のために、いろいろ仕掛けているようだしな」「――……楽しそうだ」 ぽつりと和彦が洩らすと、英俊はしたたかな笑みを浮かべて頷く。理性的で、和彦に手を上げる以外では感情の起伏が表に出ることが少ない英俊だが、こういう表情をすると、ドキリとするような艶やかさをまとう。 漠然とだが、しばらく会わない間に英俊は、人を惹きつける魅力を手に入れたように感じた。「佐伯家の血だろうな。野心的な計画に対しては、際限なくのめり込む。母さんも、違う方面で協力してくれていて、やっぱり楽しそうだ」 ふいに和彦の胸の奥から、苛立ちにも似た感情が込み上げてきて、それを誤魔化すように乱暴に髪を掻き上げる。「家族三人で上手くやっているなら、それでいいじゃないか。そもそも畑違いの仕事をしているぼくに、なんの手伝いが出来るっていうんだ」「家族一丸となって、と薄ら寒い言葉があるだろう。あれだ。本来、候補者の隣に美人妻が立って――というのが理想なんだろうが、わたしは独身だ。だったら、見た目も職業も申し分ない弟を利用しない手はない」

  • 血と束縛と   第7話(32)

     賢吾にこうされるときの高揚感と快感は異常だ。ヤクザの組長という肩書きを持ち、何人ものヤクザを従わせている男が、たかが若い医者でしかない和彦のものを口腔で愛撫しているのだ。倒錯した興奮が、快感に拍車をかける。「ふっ……、あっ、んあっ、ああっ――。賢、吾さっ……」 熱い舌にねっとりと先端を舐め回され、ビクビクと腰を震わせて感じてしまう。賢吾の名を呼ぶとき、賢吾の愛撫は淫らさと情熱を増すのだ。 賢吾の髪に指を差し込み、掻き乱す。上下に賢吾の頭が動き、締め付けてくる唇に和彦のものは扱かれながら、きつく吸

    last updateTerakhir Diperbarui : 2026-03-23
  • 血と束縛と   第8話(26)

     秦は自分の切り札になるかもしれないと言いながら、普通の青年の顔をして野心をたっぷり抱えたヤクザは、本当はどんな気持ちで、この性質の悪い男の面倒を看ているのか。中嶋の気持ちを想像して、和彦の胸は不穏にざわつく。 愛欲に満ちた和彦自身の今の環境のせいもあるし、何より、秦という男の存在が鮮やかで艶かしく、謎に満ちているせいだ。 自分のような存在と、秦のような存在は、本来は近づくべきではないのだと、なぜかこの瞬間、甘さを伴った危機感が芽生えた。「先生?」 秦に呼ばれ、我に返る。何もなかったふりをして和彦は、コルセットと上着を押し付けた。

    last updateTerakhir Diperbarui : 2026-03-23
  • 血と束縛と   第8話(18)

     唇を引き結んだ和彦を、賢吾が意地の悪い笑みを浮かべてからかってきた。「なんだ、フォローはなしか、先生。やっぱり俺は腹黒いか?」「人に聞かなくても、自分でわかっているだろっ」 機嫌を損ねたふりをして、さりげなく賢吾から離れようとしたが、それを許すほど甘い男ではない。反対に、さらに引き寄せられた挙げ句、あごを掴まれて唇を塞がれた。熱い舌に無遠慮に唇をこじ開けられ、口腔に押し込まれる。和彦は一瞬だけ体を強張らせたが、すぐに力を抜き、身を委ねた。 たっぷり口腔の粘膜を舐め回され、引き出された舌を吸われたかと思うと、甘噛みされる。身震いしたくなるよ

    last updateTerakhir Diperbarui : 2026-03-23
  • 血と束縛と   第7話(26)

     患者の容態が気になるが、焦りを読み取られないよう、和彦は必死に強気を装う。すると鷹津は唇を歪めた。「――今日は、肝が据わった目をしてるな。ヤクザのオンナらしくない、ムカつく目だ」「なんとでも言ってくれ」 ここで鷹津が、脱ぎかけていた靴を履き直す。そして和彦に笑いかけてきた。「俺の用は、お前に携帯電話を届けにきただけだからな。友人同士、楽しくお茶を飲んでいたところを邪魔して悪かった」「いいえ。ご親切にありがとうございました」 たっぷりの皮肉を込めた会話を交わし、このまま鷹津は玄関を出ていくかと思ったが、ふと何かを思い

    last updateTerakhir Diperbarui : 2026-03-22
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