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第35話(17)

Autor: 北川とも
last update Fecha de publicación: 2026-06-16 08:00:14

 言葉で辱められながら、ゆっくりと律動を繰り返される。

「ふっ……、んっ、んっ、んくっ……、うぅっ、いっ……、気持ち、いぃ」

「ああ。だが、あまり飛ばすなよ。もう少し、ゆっくり楽しもうぜ」

 鷹津に両手を掴まれてベッドに押さえつけられる。和彦は荒い呼吸を繰り返しながら、すがりつくように鷹津を見上げる。頭がぼうっとしてきて、体中が火照っている。ワインの酔い――とは少し様子が違う気がするが、大した問題ではない。

 手をしっかりと握り合うと、鷹津が顔を近づけてくる。そっと唇が重なり、柔らかく吸い上げられてから、和彦は吐息をこぼす。やはり、この男と交わす口づけが好きだと思った。

 鷹津の唇が耳に押し当てられ、耳朶に歯が立てられる。和彦は痛みに声を上げたが、鷹津が低く笑い声を洩らして指摘した。

「中、締まったぞ。痛くされるのが好きなのか?」

「そんなわけないだろ。……痛いのは、嫌いだ」

「だったら、俺
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     総和会からの依頼は、男の顔を、顔写真の顔に近づけてくれというものだ。いまさら詳しい事情を聞いたりはしないが、顔写真付きの身分証明書が関わっているのではないかと推測できる程度には、和彦はこの手の仕事をこなしていた。賢吾の側に在り続けるとは、つまりこういうことだ。 急ぎ仕事なのは明らかで、一時的に見た目を変えろと言われて取れる手段は限られる。和彦が製剤入りの注射器を手に取ると、男がくぐもった声を洩らす。とてつもない痛みを覚悟しているようだが、昼間は一般の女性、ときには男性が意外に手軽に受ける施術で、体に負担はかからない。害のない製剤を皮膚の奥に注入するというもので、頬をふっくらさせたり、あごに丸みを持たせたり、鼻を高くしたりできる。男の場合は額にも打って、全体としてふくよかな印象を持たせる施術となる。メスを入れる場合とは違い、数か月も経てば製剤は自然に体に馴染んでなくなり、顔も元に戻るのだ。 用意した注射をすべて打ち終えてから、念のため体調変化を見るため、一旦待機となる。さんざん注射を打たれて精魂尽き果てた様子の男に、付き添いの男たちが揶揄めいた声をかけている。 和彦はその光景を横目に見ながら処置を行った部屋を出ると、殺風景ともいえる小部屋に入る。一応ここが休憩室のようだが、置かれているのはパイプイスと折り畳み机だけだ。大がかりな施術を行ったわけでもないため、クリニックに来てもらったほうが手間がかからなかったのではないかと思わなくもないが、総和会としては、ほんの数日前の騒動でピリピリしているのかもしれない。もちろん騒動とは、クリニックに玲が――伊勢崎組組長の息子が押しかけてきた件だ。 あらかじめ準備されていたお茶のペットボトルを手に取ると、一気に半分ほど飲む。気が抜けた途端に空腹を自覚した。いつもなら遅い夕食をどうしようかと悩むところだが、今日は事前に笠野から連絡があり、カレーのお裾分けをマンションに届けてもらうことになっている。おそらくもう、鍋に入ったカレーと、炊き立ての白米が和彦の帰りを待っているはずだ。業務用の大鍋で作られる本宅のカレーは美味しいのだ。 カレーのことを考えて、ますます空腹感が強くなってくる。アタッシェケースの中に、クリニックのスタッフからもらった飴を何個か入れたままにしていたことを

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    **** 土日はたっぷりと賢吾と怠惰に過ごした。もともと和彦は予定がなかったし、賢吾も仕事をする気はなかったということで、ある意味二人とも気合いが入ったのだ。 買い込んでいた食料とアルコールを消費しつつ、ときおり情欲に身を任せ、それ以外では買い込んだ本を読んだり、他愛ない会話をしたり。スマートフォンの電源も切っておいたので、どこからも連絡は入らず、部屋に直接やって来る人間もいなかった。おそらく賢吾が、組員によほど太い釘を刺しておいたのだとは思うが、和彦もあえて指摘はしなかった。 日曜の夜にようやく部屋を出ようかというところで、賢吾がさっぱりした口調で放った言葉を思い返す。『――決めた。この部屋は手放す』 帰りの車中で賢吾は、こう結論を出すに至った心情を語った。部屋を手放す踏ん切りや理由が必要だったが、所有していて差し障りがあるわけでもなく、なんとなくここまで来てしまったのだ。それが、和彦と部屋で過ごしたことで、ようやく背を押された気持ちになったのだという。欲しがるなら千尋に譲ってもいいとは言っていたが、幼少期からの数年間、週に一、二度過ごしていたときとは様相が一変した部屋に、果たして千尋自身が愛着を持っているのか、父親である賢吾にも疑問らしい。 反抗期の証だったというなら、別に所有したままでもいいのではないかと、和彦は率直に疑問をぶつけてもみたが、賢吾はニヤリと笑ってこう言った。『何より手がかかって、目が離せないものが側に在るからな。できるうちに身軽にしておかねーと』 これを賢吾の薄情さから出た言葉だとは、和彦は思わない。長嶺組と共にあるために、何かしらを削ぎ落とし続けてきたであろう男にとって、あの部屋は組の外に存在しているものとして必要――というより、ただ在り続けたものなのかもしれない。在り続けるから、反抗期の証などというもっともらしい理由を与えたのか。 そして今度は和彦が、賢吾の側に在り続けることになる。さまざまな経験や思い出を積み重ねながら。 意識しないまま口元が緩みそうになり、マスクの下でぐっと唇を引き結ぶ。酷薄そうな見た目に反して情が深い大蛇の化身のような男を想って、にやついている

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    「どうした?」「……話、続きっ……」 一瞬、虚をつかれたような顔をした賢吾だったが、寸前までのやり取りを思い出してくれたようだ。「大した話じゃない。この部屋を手放さないのは、自分が築いた家庭を懐かしむためとかじゃなく……、そうだな、俺が張った意地を、目に見える形で残したかったんだろうな」 賢吾の唇が気まぐれに胸の突起に触れ、優しく吸い上げられる。舌先で転がされて控えめに声を洩らすと、緩やかに円を描くように内奥で掻き回される。和彦は愉悦に喉を鳴らして目を細めながら、賢吾の髪に指を差し込む。「よく、わからない理屈だ……。自分のことなのに、他人事みたいな口ぶりだし」「お前のその正直なところも、好きだぜ」 賢吾にとっての千尋や、別れた妻、守光の存在など、深く知りたいことはいくらでもあるが、今、賢吾が語りたいのは、この部屋のことなのだろう。和彦としてはいくらでも聞いてやりたいところだが、体の反応にどうしても意識が引きずられる。 熱っぽい吐息を洩らすと、賢吾の指にそっと唇をくすぐられた。「伊勢崎の息子がお前に向けた青臭い感情に、張り合いたくなった。……俺もまだ青臭さを持っている男だってな」 そう言って喉を鳴らして笑う賢吾だが、獰猛な獣の威嚇の声にも聞こえる。和彦は呆気に取られて見上げていると、唇を吸われて応じる。 ゆっくりと内奥を突き上げられ、和彦は甘えるように賢吾にしがみつく。「……もう、吐かせようとするのはなしだからな」「悪かった。やっぱり大事なオンナは苦しめるより、こうして可愛がるほうがいい」 両足をしっかりと抱え上げられてから、ぐうっと奥深くまで熱い肉を穿たれる。一気に背筋を這い上がってきた快感が頭の先まで行き渡り、和彦は掠れた声を上げる。 乱暴に腰を揺すられ攻め立てられながら、賢吾の欲望が充溢した大きさとなったのを感じる。和彦がよく知る男の形だ。その瞬間、ズキリと胸の奥が疼いた。きつく賢吾のものを締め付けけながら、潤んだ

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  • 血と束縛と   第50話(17)

     ぐうっと内奥を押し広げてくる熱の塊に、感じた痛みが焼かれていく。魔が差したようにふっと脳裏を過ったのは、賢吾はこの部屋で、元妻を抱いている姿だ。あくまで想像でしかないが、それでも生々しさを伴っており、口腔に指を突っ込まれた余韻もあって和彦はまたえずいてしまった。「……苦しいか?」 強引な行為に及んでいる最中でありながら、賢吾がそう気遣ってくる。だが、やめるつもりはないようで、容赦なく内奥の奥深くに押し入ってくる。色っぽいやり取りがあったわけでもないのに、賢吾のものは興奮しきっており、力強く脈打っていた。 間欠的に声を上げてから身じろぐと、和彦が逃げようとしていると思ったのか、腰を掴む指に力が加わる。賢吾のものを根本まで受け入れさせられ、腹の中を掻き回す勢いで動かれる。腰を揺さぶられるたびに鈍い痛みが下腹部に広がるが、悲鳴を上げるほどではない。和彦はただ眉をひそめて耐えていた。すぐに自分の体に訪れる変化を知っているからだ。 ゆっくりと痛みが溶けていくのを感じた。新たに生まれたのは、ゾクリと身震いしたくなるような疼きだ。上擦った声が鼻から洩れると、賢吾は丹念に内奥を擦り上げるように動きを変える。 おそらく、と和彦は考える。この部屋で、行為に及ぶことが賢吾にとっては大事なのだ。ふいに後頭部を手荒く撫でられた。「――余裕だな。この状況で考え事か」 揶揄するような口調に煽られたりはしない。和彦は荒く息を吐き出してから、顔を動かし、なんとか視線だけを背後に向けた。賢吾の顔を捉えることはできなかったが、目の動きは伝わったはずだ。「この部屋は、あんたにとって特別な場所、なんだな……」「さっきも言ったが、一家団欒の――」 そういうことではないと、和彦は緩く首を横に振る。賢吾は一旦動きを止めてから、何か思案している気配を漂わせる。そっちこそ余裕ではないかと思ったが、口から出たのは違う言葉だ。「あんたは、そんな男じゃないだろ」「……聞きようによっては、俺にケンカを売ってるような言葉だな」「そんなつもりはない……。特別

  • 血と束縛と   第50話(16)

     ゾクリと背筋に駆け抜けるものがあり、和彦は手足をばたつかせてもがくが、反対に賢吾は指の根本まで呑み込ませようとしてくる。さきほどの比ではない激しさでえずき、息を詰まらせる。涙目で睨みつけた先で、明らかに賢吾は興奮していた。「あんた、こんな嗜好があったのかっ……」 ようやく指が引き抜かれて、咳き込んだあとに和彦が非難の声を上げると、悪びれる様子もなく、ぬけぬけと賢吾が言い放った。「いままではなかったから、きっとお前のせいだな」「人のせいにっ――」「それとも、この部屋のせいか」 再び口腔に指を押し込まれて、抗議の声は消える。代わって、和彦のくぐもった呻き声と嗚咽が部屋に響く。口から溢れ出る唾液で顔の下半分がドロドロになっても、それでも賢吾はやめない。 生理的な反応から涙まで出てきたが、その頃には困惑を上回る怒りから、賢吾を睨みつける。今の賢吾から感じるのは、明確な支配欲だった。それが嫉妬によって誘発されたものにせよ、甘受できるものではない。込み上げてきたものでいよいよ窒息しかけたところで、ようやく解放されると、和彦はカーペットに顔を伏せて激しく咳き込む。今この瞬間の賢吾なら、力加減を間違えて自分を殺しかねないと、本能的な危機感を抱いていた。 和彦は肘をつき這うようにして離れようとしたが、易々と腰を掴まれ引き戻され、ついでとばかりにベルトを緩められる。「賢吾っ」 有無を言わせずパンツと下着を引き下ろされ、奪い取られてから、荒々しく尻の肉を掴まれる。いつになく乱暴な行動に、往生際悪く足をばたつかせて抵抗を試みていた和彦だが、背にどっかりと乗りかかられて息が止まりそうになる。あとはもう、悔しいがなし崩しだ。「うくっ」 尻の間に指が這わされたかと思うと、内奥に指がねじ込まれる。唾液で湿らせる程度の配慮はあるようだが、雑に蠢かされてすぐに指の数が増やされる。指の腹で強く襞と粘膜を擦り上げられて、痛みに声を洩らす。 好き勝手に動く指に肉を押し広げられ、解される。自分ではどうしようもできない反応として、内奥がひくつき、賢吾の指を締め付ける。その感触を楽しむように、指が出し入れされると、たまらず和

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